
『主夫になろうよ!』偏見をぶち破る
主夫になりたいと思ったことがある。思ったものの、主夫はあまりにも謎めいた存在であり、踏ん切りがつかなかった。あまりにも母数が少なく、ロールモデルが少ない。 炊事、洗濯、掃除。こなさなければならない家事があることはわかるが、想像力が乏しいからか生活者としての主夫像はなかなか見えてこない。 主婦の男版と考えればよいのだろうか。井戸端会議している主夫など見たことが
SM編集長
(2024年当時)
189記事

主夫になりたいと思ったことがある。思ったものの、主夫はあまりにも謎めいた存在であり、踏ん切りがつかなかった。あまりにも母数が少なく、ロールモデルが少ない。 炊事、洗濯、掃除。こなさなければならない家事があることはわかるが、想像力が乏しいからか生活者としての主夫像はなかなか見えてこない。 主婦の男版と考えればよいのだろうか。井戸端会議している主夫など見たことが

65歳以上の高齢者の万引きの増加が話題になったのは20年ほど前だったか。当時は全体に占める割合が1割に達したことで注目を集めていた。 本書によると警察庁発表の犯罪統計では高齢者による万引きは2011年には未成年者の検挙数を追い抜き、直近の公表値である13年は32.7%を占め過去最高を記録したという。万引き犯の3人にひとりが65歳以上という状況だ。人口全体が高

「送別会で『へへやか』に生きて、『ほたえじにたい』と挨拶したら、一同『だあ』って感じでしたよ」 日本で生まれ育ち30年以上経つが、「へへやか」など使ったことがない。へへやかは「のんびりと時日をすごすさま」、「ほたえじに」とは「遊び暮らして死ぬこと。酔生夢死すること」。「だあ」は「あきれたりして二の句が継げないこと」や「死ぬときの叫び声。また死ぬこと」である。

「やさしそう」 この5文字がどれだけの男女を傷つけてきただろうか。 初対面なのに、値踏みされ、コメントに窮した相手に、ひねりだされるこの5文字。 私自身の人生を振り返っても、小さい頃は親の知人、最近になっても彼女や妻の知人に言われ続けてきた。 そもそも、やさしくないしと言う言葉を飲み込み、愛想笑いでかわし続け、愛想笑いがこびり付いて35年。そんな非イケメン、


出会い系の売春で食いつなぐ少女たちを取材してきた著者が、シングルマザーを取材対象に選んだことは意外な感もあったが、「貧困」という同じ根でつながっていた。出会い系を利用していた30-40代の女性の多くは子どもを抱えたシングルマザーだったという。本書では著者が出会い系に直接アクセスして知り合った約20人の「売春するシングルマザー」たちへの取材を重ね、貧困の最底辺

職業柄、企業内で「エース」、「次期社長候補」と言われながら、外部環境の思わぬ変化などで社長の椅子を逃してきた人を多く見てきた。能力があっても出世は運に大きく左右される。社長にのぼりつめるにはなおさらだ。もちろん、「ひたすら頑張って仕事して社長を目指す」という選択肢もあるのかもしれないが、おふざけ気味のタイトルや表紙と対照的に著者の指摘は冷静だ。

自慰行為は体に悪いのか。馬鹿になるのか。思春期の男子ならば一度は頭をよぎったはずだ。インターネットが普及した現代では、「自慰 毎日 馬鹿」などと検索すればたちまち良くも悪くも多くの情報に接することができるが、残念ながら、近年までそのような利器はなかった。明治時代以来、欧米から流れ込んだ言説に惑わされ、悶々と時を過ごした若者は私を含めてどれくらいいただろうか。

ハンチング帽を被ったおじさんが「吉田類」ですと名乗っても液晶画面越しに「誰だよ」と突っ込まなくなったのはいつからだろうか。「吉田類、下戸」の週刊誌報道に好きだったアイドルが結婚した時以上の衝撃を受けたのは私だけだろうか。 もはや新橋界隈で働くサラリーマンではゲック(月曜午後九時)といえばBS-TBSともいわれている人気テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」でおなじ

「江戸時代の庶民って実はみんなハッピーだったんだよね」とマルクス主義者にドロップキックをかました名著『逝きし世の面影』。著者の渡辺京二氏の思想が詰まった幸福論が本書だ。 帯は強烈だ。 「成功」「出世」「自己実現」などくだらない とはいえ、本書自体が自己啓発書にしか映らないし、多くの著作を出し、和辻哲郎文化賞や毎日出版文化賞を受賞した人物に「成功などくだらない

歴史をどう捉えるか。専門家の間でも長年にわたって議論されてきた話だが、私を含め、門外漢からするとどうしても個人の行動を中心に読み解きがちだ。 だが、考えてみれば至極当然だが、我々の生活を形作ったのは、遠い昔の誰かであるケースは非常に少ない。長期の気候変動が食文化や生き方を変えてきたのが人間の歴史である。短期的、局地的に見ても歴史の転換点となる戦争の趨勢に気候


夏休みに恋人や家族と出かけた先でクマに出くわしたら、どう対処するか。ヘビに遭遇したらどう振る舞うか。こうした、真木よう子にいきなり求愛されるくらい小さい確率を気にかけてしまう妄想力が逞しいあなたにおすすめなのが本書だ。いつもは家族の前では読めない本ばかり紹介している私だが、今回は世間が夏季休暇の直前と言うこともあり、家族と一緒に楽しめる一冊を紹介したい。 表

中身に触れる前に、まずタイトルが凄い。「貞操」である。平成の世に、21世紀の日本で「貞操」である。久しく耳にしてない言葉である。貞操を飾る言葉が、「男子の」。「女子の」ではなく、「男子の」。「女子の」ならば「週刊SPA風味の肉食女子についてですか」ってオチも透けて見えて泰然と構えられるが、残念ながら「男子の」。中身が全くわからない。ガチンコに貞操について語る

世界タイトルまで行くには、テレビ局がついてくれなあかん。そのためには注目されることが大事や。おまえがプロデビューしたら、オレが適当な相手を見つけてきたる。おまえはとりあえず倒しまくったらええ。プロは倒してなんぼや。連続KOの日本記録を狙うんや

MJといえば昔はマイケル・ジョーダン、今やみうらじゅん。マイブーム、ゆるキャラと世に送り出してきたMJだが、真骨頂はエロについて語ったときであろう。

今週末に開幕するサッカーW杯。日本代表は辛くも前哨戦を勝ち、15日に初戦を迎える。ただ、W杯を迎えるたびに私のようなニワカは思ってしまうことがある。 「サッカー海外組」を何故か目指してドイツに渡った著者。ドイツ10部リーグでプレーして受けたカルチャーショックが『メッシと滅私』につながった。


立ち食い蕎麦といえば「安い、早い」で駅チカにあり、都市圏で働くサラリーマンの強い味方。ただ、立ち食い蕎麦と一括りにしてしまうには、近年はあまりにも店の雰囲気も提供される蕎麦も違うのが実情だ。「早飯」を嫌う女性からは「立ち食い蕎麦は立ち食い蕎麦じゃないの」という声も聞こえてきそうな中、女性の著者が首都圏の立ち食い蕎麦に潜入取材したのが本書。 日経ビジネスオンラ

「死ぬ時まであなたと一緒!」などというかつてどこかで聞いたせりふはもはや昼メロでしか見当たらないのかもしれない。死は最後の最後は誰もがひとりで直面するものだが「自宅で誰にも看取られずに亡くなり、その死が数日後に発見され、自殺や犯罪性を除く遺体」(孤独死)は年間3万体にも達すると言われれば穏やかではない。死ぬ時まであなたと一緒どころか、死ぬ時もひとりで、死んで

完全なタイトル買いである。書店で震えてしまったのは私だけではあるまい。 「ブラ男」。表紙からもわかるようにブラジャーをつけた男のことである。男にとってブラジャーほど謎な存在で、生まれもった身体の違いから不可侵な領域はないはずだ。男にも固有のものが付いている。ただ、男性もののボクサーパンツを女性が穿いても絵になるが、男がブラジャーを付ける姿は間抜けである。絶対

赤提灯を「ニッポンの文化」と声高に叫ぶ男がいる。男は自分をこう呼ぶ。「赤提灯国粋主義者」。昭和51年から延べ20年以上、日本で暮らし続けたマイク・モラスキー早稲田大学教授こそがその男だ。

「朝から競馬の話か」と思われそうだが、確かに競馬関連の本である。新書サイズだが、講談社新書でも集英社新書でも光文社新書でもない。もちろん岩波新書でも中公新書でも新潮新書でもない。競馬王新書である。インテリジェンスあふれるHONZ読者に、開かれたブラウザを全力で閉じられそうな展開だが、待って欲しい。巻末の用語集を読むと「厩務員」や「凱旋門賞」がある。競馬王新書

2009年秋、2つの連続不審死事件が明るみに出た。いずれも30代の小柄の肥満体型の女性が幾人もの男性を虜にして多額の金を貢がせていた格好だったが、世間の反応は対照的だった。 首都圏でネットを通じて知り合った中高年の独身男から金をだまし取り「セレブ」な生活を送った木嶋佳苗。法廷での服装や突拍子のない発言まで詳細に報じられ、佳苗の裁判の「追っかけ」まで登場した。

裁判官たちは何を考えて裁いているのか。我々素人は「法と証拠」と答えるかもしれない。だが、冤罪は後を絶たないし、冤罪の疑いが強まっても耳を傾けない司法の姿が浮かぶ。著者は裁判官の頭には裁判の公正や司法の正義の概念はないと説く。司法権力という見えない組織にがんじがらめにされ、根拠を深く考えずに自動機械的に事案を処理する「司法囚人」の姿こそが裁判官の実像だと本書全

79-96年に北関東で5人の少女が殺害、行方不明になった事件。この5つの事件に連続性を見出し、真犯人に迫ったのが本書だ。5件の事件のひとつが「足利事件」。著者はDNA型鑑定に着目した調査報道で、服役していた菅家利和さんの冤罪の立証を支えた。一方、DNA型鑑定に注目したことで、九州で2人の女児が殺害された飯塚事件の判決にも疑問を持ち、取材に乗り出すが、そのこと

12月の22時以降の山手線の中での「おじさん」の存在感はすごい。つり革を命綱に周りの人にぶつかりまくる泥酔おじさんや、飲んだ帰りなのだろうが何故か同僚にひたすらケンカを売りまくるおじさん。おまえの頭は何トンあるんじゃと突っ込みたくなるほど座席で隣のオネーさんに頭を預けるおじさんなどがいる。格好も千差万別で見ていて飽きない。ただ、私がこうした肯定的な気持ちを抱

この雑誌に出会った日が悪かった。金曜の昼過ぎ、アポイントメントまで時間があったのでJR御茶ノ水駅前の丸善書店に入ったところ、「おい、こっちをみろよ」といわんばかりにノンフィクションコーナーになぜか鎮座していたのでつい手に取ってしまった。『飲んだビールが5万本!』。雑誌だが1470円もするので、装丁はしっかりしている。作家の椎名誠が仕掛けた雑誌で、今号が創刊号

先日、ある私的な席でご迷惑をかけた知人にお詫びをしようと酒席を設けた。 もちろん、支払いはこちらが持つ前提だが、待ち合わせの前から日本酒をがばがば呑んでいたら、ぐでんぐでんになってしまい、記憶が無くなり、気づいたら家の寝室の天井を眺めている自分がいた。翌日知ったが、おごるどころかお金を一切払わず仕舞い。「おわびします」と呼び出しておきながら、おごらせる。鶯谷

人間の欲望が丸出しになる政治のゴシップは東西を問わず人を惹きつける。権力闘争、飛び交う札束、そして、男女関係。本書には、金欲と情欲が渦巻く世界を泳いだ現代中国を代表する10人の悪女が登場する。 元重慶市党委員会書記の薄熙来の妻で、夫の力を背景に蓄財をしながら、英国人の愛人を殺害した谷開来。枕営業で国民的人気歌手になりながら、政財界の秘密を知り過ぎてしまったか

最近、NHKの経営委員に選ばれたことでも話題の売れっ子作家の百田尚樹が帯に言葉を寄せる。 「ホラー小説も逃げ出すくらいの気味の悪い本だった!」 尼崎連続殺人死体遺棄事件。兵庫県尼崎市、香川県、岡山県で次々と明るみになった犯罪史上稀に見る凶悪事件。複数の家族がバラバラにされ、分かっているだけでも死者行方不明者は10人以上とされる。首謀者とみなされた角田美代子の

「白紙(894年)に戻す遣唐使」と遣唐使廃止の年号をランドセルを背負って覚えていたあの頃は何だったのか。895年でも893年でも良い気がするが語呂が悪くなるか。確かに894年は意味と語呂がぴったりくる。893年だと「ヤクザ(893)もびびる遣唐使」か。意味分かりません。、「やくみ(893)つるも大好き遣唐使」ってのもある。もはや支離滅裂。895年に至っては、

著者の一人である明治大学准教授の飯田泰之氏は本書の刊行によって講演がキャンセルになったという。 「『夜の経済学』なんてタイトルの本を書く奴の話なんて聞く気にならない!」 といきなりのキャンセルを喰らったとか。講演の依頼先までは明らかにしてないが、確かに、眉をひそめてしまう人もいるかもしれない。帯には「セックスから政治まで」とあるが、タイトルからわかるように、

昨年9月の六本木クラブ襲撃事件以降、新聞、雑誌をこの漢字四字はどれだけにぎわしただろうか。俗物の塊である私も雑誌を捲ったり、そういう筋を取材している知人に聞いたりもしたのだが、聞けば聞くほど、よくわからないのである。東京の夜の街を全て牛耳っているだの、山口組も戦闘力ではしのぐだの。メディアは実態が見えないからか、煽り続け、彼らの姿をひたすら肥大させた。こうし

朝っぱらから「ハムカツ」や「ホッピー」などの文字が並ぶレビューは書かないと決めたのは先月だったか。レビューを書くのは深夜だが、掲載は午前7時半だからだ。深夜のアルコールの勢いに任せて「ホッピー飲んでべろべろ」と書いたレビューを読者は通勤電車で読むのである。想像力が及ばなかったのは恥ずかしい限りである。実際、「酒」本のレビューはページビューを見ても、一部の少し

2万7858人。 2012年の日本の自殺者数だ。15年ぶりに3万人を割り込んだが、依然高水準にとどまっている。自殺者数が発表されるたびに、自殺の原因や対策を巡る議論があちこちで起きるが、自殺が起きない要素は議論されない。起きてない事象について「なぜ起きないか」を探るのは素人ながら難しいと思ってしまうのだが、果敢に挑んだのが本書だ。 太平洋に面する総面積27

向かって左上からQWERTYと並ぶパソコンのキー配列だが、これは19世紀にタイプライター発明者が考案した配列そのままである。当時はタイピストが速く打つと印字がうまくできなかったり、故障したり、問題が起きていた。苦肉の策で、速く打てないように並べた「非合理的な配列」が市場を席巻、1世紀以上たった今も残っているのである。 不思議な話である。我々はパソコンを使用す

個人的な話だが、昨日、夏休みが終わった。もちろん、ほとんど本も読まずに、旅行に出かけ、遊びほうけていた。休み明けにHONZのレビューの当番であることも、当然、すっかり忘れていた。「仕方が無い。今回は脱力系の本で軽くいくか」と書きたいところだが、お盆明けだろうがなかろうが、選書が軽い感じで変わらないのは気のせいだろうか。これはこれで少し悲しい。 今回取り上げる

ソフト人形を買い集め、イベントに足を運んだ。幼少時の憧れだったウルトラマン。本書を読んで驚いた。ウルトラマンは怪獣との戦いが長引き、ピンチになると胸の発光体であるカラータイマーが点滅して音を発するが、生みの親である円谷プロダクションの経営は私が幼少時に夢中になっていたときから、カラータイマーが鳴りっぱなしだったのだ。著者は円谷プロの元社長。「特撮の神様」と呼

納谷宣雄と聞いても「えっ、誰?」という反応が大半なはずだ。カズこと三浦知良氏の父親である。名字が違うのは納谷氏とカズの実母が離婚しているからであるが、「えっ、カズの父親の本?サッカー興味ないからなー」と思う人も多いだろう。確かに今回紹介する本はカズの父親である納谷宣雄氏の半生を描いているが、カズをどう育てたとか、サッカー論とかそういうものには満ちあふれていな