ノンフィクションはこれを読め!

首藤 淳哉

1970年生まれ。大分県出身。ラジオ局で番組制作を担当。「本を読む」ことと「飲み食いする」ことをただひたすら繰り返すという単調な生活を送っている。妻子持ちだが、本の収納などをめぐり年間を通して家庭崩壊の危機に瀕している。太っているのに綱渡りの日々。好きなジャンルはノンフィクション、人文、サイエンス系。

(2024年当時)

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『団地と移民』団地をみればこの国の未来がわかる 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『団地と移民』団地をみればこの国の未来がわかる

戦後日本における画期的な発明といえば? 人によって答えはさまざまだろうが、個人的には「51C」を挙げたい。 「51C」とは、1951年度に計画された公営住宅標準設計C型の通称である。焼け野原からの復興の過程で、不足していた住宅供給をどうするかが国の喫緊の課題だった。そんな中、35平米というコンパクトな空間で、食べる場所と寝る場所を分ける「食寝分離」を実現させ

『森瑤子の帽子』「女であること」と向き合い続けた作家の生涯 書影

人物 / 社会

『森瑤子の帽子』「女であること」と向き合い続けた作家の生涯

確かあれは夏木マリさんの舞台を番組スタッフと観に行った帰り道だった。 「カッコいい女の人、というと誰を思い浮かべます?」 若いスタッフに訊かれた。たぶん彼女は夏木さんのパフォーマンスに圧倒されていたのだろう。質問のかたちをとってはいるけれど、言外に「夏木さんほどカッコいい女性はいないですよね」というニュアンスが込められていた。 もちろん夏木マリは文句なしにカ

『政治に口出しする女はお嫌いですか?』独裁者が恐れた「女の武器」とは? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『政治に口出しする女はお嫌いですか?』独裁者が恐れた「女の武器」とは?

性差別や憲法改正などについて積極的に発言している女性の議員や弁護士に対して、注文した覚えのない代引き商品が送りつけられるという嫌がらせが相次いでいる。 彼女たちは記者会見を開き、「女性の声を封じようという意図を感じる。嫌がらせには屈しない」と声を上げた。 こうしたことをする卑劣な人物は、どうやら政治に口を出す女性が嫌いらしい。残念ながら似たような考えの者が少

『吃音 伝えられないもどかしさ』誰にでも居場所がある社会をつくるために 書影

医学・心理学 / 社会

『吃音 伝えられないもどかしさ』誰にでも居場所がある社会をつくるために

自分が体験したことがないことを想像するのは難しい。 かつて我が身に降りかかってきたことや、常日頃から感じていることなどをもとに他者に共感することはできるが、体験したことがなく、ましてや関心すら持ったことがないことについては、なかなかイメージすることができない。 だが本書はあなたに驚くべき体験をもたらすだろう。 この本を読み終えたあとは、世界の見え方が変わるは

『スーパーカブは、なぜ売れる』世界で1億台! 超ロングセラーの秘密 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『スーパーカブは、なぜ売れる』世界で1億台! 超ロングセラーの秘密

一昨年の夏、ベトナムを旅した評者は、空港から車に乗った途端、おびただしい数のオートバイに圧倒された。 まるで魚の大群のようにオートバイの集団が交差点を横切っていく。気がつけば、こちらの車も前後左右を密集するオートバイに囲まれていた。あの迫力は忘れられない。 ベトナムは2輪車大国だ。年間販売台数およそ330万台(2017年)、このうち75%ほどのシェアを占める

『肉声 宮崎勤30年目の取調室』初めて明かされた「肉声」が語る真実 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『肉声 宮崎勤30年目の取調室』初めて明かされた「肉声」が語る真実

「声」は多くのことを教えてくれる。 その人が信頼できる人間か、それとも嘘をついているか。 心から楽しんでいるか、あるいは不安を感じているか。 どんなに表面を取り繕ったとしても、「声」だけはごまかすことができない。 長くラジオの仕事に携わっているとそのことが経験的にわかる。 「声」にはその人の本当の姿が現れるのだ。 1988年8月から翌年の6月にかけて、埼玉と

『ルポ企業墓 高度経済成長の「戦死者」たち』墓からみた日本人と企業 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『ルポ企業墓 高度経済成長の「戦死者」たち』墓からみた日本人と企業

長いこと本を読んでいると、性格が素直じゃなくなる。新しい本を手に取っても、「この手のテーマ、前も読んだことあるな、フン!」などとついつい思ってしまうのだ。すれっからしもいいところである。 だがこの本には驚かされた。まさかこんな切り口があったとは!『ルポ企業墓 高度経済成長の「戦死者」たち』は、文字通り企業が建立した「企業墓」をテーマにしたノンフィクションだ。

『いま、息をしている言葉で。「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』なぜ現代に古典が蘇ったのか 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『いま、息をしている言葉で。「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』なぜ現代に古典が蘇ったのか

この秋、出口治明さんと古典を学ぶ講座に参加している。毎月1冊、光文社古典新訳文庫のラインナップの中から出口さんがおすすめの作品を取り上げ、当日はその本にまつわるお話と(しばしば脱線するがこれが楽しい)活発な質疑応答とで、あっという間に2時間が経ってしまう。実に中身の濃い贅沢なひとときだ。 講座は全5回で、初回はダーウィンの『種の起源』、2回目はプラトンの『ソ

『ごみ収集という仕事 清掃車に乗って考えた地方自治』ごみ収集の現場は、ティール組織そのもの 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ごみ収集という仕事 清掃車に乗って考えた地方自治』ごみ収集の現場は、ティール組織そのもの

「ちっくしょぉぉぉー!!」思わず天を仰いでしまった。隣で立ち読みしていたビジネスマンをびっくりさせてしまったのは申し訳なかったけれど、こんな面白そうな本を見逃していたのだから仕方ない。奥付をみると初版は5月30日、9月10日で5刷とある。面白い本が出たよ!と超速でお知らせしたいHONZの一員からするとこの遅れは痛恨の極みだ。 偶然見つけた一冊は、『ごみ収集と

『サバイバルボディー』短パン姿でキリマンジャロに登れ!体当たりサイエンス・ノンフィクション 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『サバイバルボディー』短パン姿でキリマンジャロに登れ!体当たりサイエンス・ノンフィクション

「人間にはこんなことも出来るのか」と驚いたり感心したりした経験、みなさんにもありますよね。スポーツでアスリートの驚異的なパフォーマンスを目にした時なんかは特にそうかもしれません。身近な例で言うと、ある女優に聞いた話が印象に残っています。 きっかけは汗かきの話でした。ぼくは生来の汗かきで、人前で話す時に全然緊張してないのに汗ダラッダラになったりするんですが、き

『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む

一般に、本は読めば読むほど物知りになれると思われがちだが、実際は逆だ。読めば読むほど、世の中はこんなにも知らないことであふれているのかと思い知らされる。その繰り返しが読書だ。 「ディアトロフ峠事件」をぼくはまったく知らなかった。これは冷戦下のソヴィエトで起きた未解決事件である。 1959年1月23日、ウラル工科大学の学生とOBら9名のグループが、ウラル山脈北

HONZ in APU④ 悲観論にとらわれることなく、人生を楽しむこと 書影

HONZ活動記

HONZ in APU④ 悲観論にとらわれることなく、人生を楽しむこと

立命館アジア太平洋大学(APU)を訪問した興奮もさめやらぬ中、別府の繁華街へと繰り出す。出口治明学長はじめAPUのみなさんが懇親会の場を設けてくださったのだ。 この日は「べっぷ火の海まつり」が開かれていて、駅前の目抜き通りはたいへんな賑わいだった。 ところで、APUの噴水の話をおぼえているだろうか。噴き上げられる水の高さをめぐってHONZのメンバー間をフェイ

HONZ in APU③ ライブラリーをみれば、その大学の知性がわかる!! 書影

HONZ活動記

HONZ in APU③ ライブラリーをみれば、その大学の知性がわかる!!

のっけから一言、かますことをお許しいただきたい。 ライブラリー(図書館)をみれば、その大学の知的レベルがわかる!! お前ごときが知性を云々するなとか、早くも四方からのツッコミが聞こえてきそうだが、何を言われようがへっちゃらである。なにせここ別府は、アウェーではなくホーム。怖いものなしなのだ。 でもあながち的外れでもないだろう。実際、ライブラリーをみるだけで、

HONZ in APU② 学生たちが暮らすAPハウスは、異文化が混ざり合う場 書影

HONZ活動記

HONZ in APU② 学生たちが暮らすAPハウスは、異文化が混ざり合う場

立命館アジア太平洋大学(APU)は、2000年開学にもかかわらず、瞬く間に日本を代表する国際大学となった。たとえばイギリスの高等教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』による「世界大学ランキング2018年日本版」の「国際性」部門で、APUは私立大学で見事1位を獲得している。 開学からこれまで、世界147カ国・地域の生徒を受け入れており、現在も88カ

HONZ in APU① 立命館アジア太平洋大学、そこは天空のキャンパスだった! 書影

HONZ活動記

HONZ in APU① 立命館アジア太平洋大学、そこは天空のキャンパスだった!

ふるさとに特別な思い入れを持つ人は多い。 以前、会社を辞めて雪深い新潟にUターンした先輩の家を訪ねたことがある。鈴木牧之の『北越雪譜』(岩波文庫)を読んで、いちど豪雪地帯の暮らしを見てみたかったのだ。先輩は満面の笑みでぼくを出迎えてくれ、その日の晩は、地元産の美味しい食材をふんだんに使った料理が次から次へと出てくるわ、地元の日本酒やワインがグラスの空く暇もな

『消された信仰「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』世界遺産から黙殺された人々 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『消された信仰「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』世界遺産から黙殺された人々

ユネスコの世界遺産委員会で、日本の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されることが決まった。国内では22番目の登録遺産となる。 この「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、長崎から熊本にまたがる12の構成遺産からなり、その中には、現存する国内最古のキリスト教関連建築物で国宝の大浦天主堂(長崎市)なども含まれる。 一時の熱狂的な

『一発屋芸人列伝』大きく勝って、大きく負けた山田ルイ53世が、負けの中に見出した勝機 書影

人物 / 著者インタビュー

『一発屋芸人列伝』大きく勝って、大きく負けた山田ルイ53世が、負けの中に見出した勝機

その日、電車に揺られながら、ぼくは迷っていた。これから会う相手にどんなスタンスで話を訊けばいいのか悩んでいたのだ。待ち合わせ場所は新宿小田急百貨店。この中にある書店で、山田ルイ53世の『一発屋芸人列伝』の発売を記念したトークショーが予定されていた。 『新潮45』連載時に「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞した本書は、発売前から重版がかかるほど評判が高く

『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』不完全だからこそやってみる 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』不完全だからこそやってみる

気になって仕方がないことがある。スポーツ選手のインタビューで連発される「ネ」だ。え? 意味わからない? では以下に例文を。プロ野球でお立ち台に上がった選手にアナウンサーがインタビューする場面である。 アナ:「サヨナラホームランを打った○○選手です!おめでとうございます!」 選手:「ありがとうございます!」 アナ:「勝負どころで打てた、その理由について教えてく

『遅刻してくれて、ありがとう』加速の時代に「ほどほどの人生」をいかに取り戻すか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『遅刻してくれて、ありがとう』加速の時代に「ほどほどの人生」をいかに取り戻すか

小学2年生の子どもに「ジャーナリストって何する人?」と訊かれた。子どもの質問はおそろしい。ハシゴを外されるとか背中から撃たれるとか、サラリーマン生活における不意打ちには慣れているつもりだったが、思いがけない方向から簡単には打ち返せないボールを投げてくる。 真っ先に浮かんだのは、「政府が悪いことをしていないか見張る仕事だよ」といういかにも教科書的な回答である。

『宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』「真犯人」はなぜ封印されたのか 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』「真犯人」はなぜ封印されたのか

あの日、あなたはどこで何をしていただろうか−−。1995年(平成7年)3月20日。警察担当の記者だったぼくは警視庁にいた。 その朝の記憶は、「霞ヶ関駅構内で異臭事件発生」との一報を聞いて、駅に向かって全力で走るところから始まる。いま思えば軽率極まりないが、途中で通風口にひざまずいて臭いを確認したことを覚えている。やがて地下鉄の入口が点在する交差点が近づくにつ

『経済学者、待機児童ゼロに挑む』難攻不落の社会問題への挑戦 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『経済学者、待機児童ゼロに挑む』難攻不落の社会問題への挑戦

夫婦というのは、年数を重ねる中でそれなりに関係が変化していくものだが、我が家の場合、いまもお互い変わらずに抱いている感情がある。ときめき? まさか。いまや恋は遠い日の花火である。いまも夫婦で変わらずに思っていること。それは、ぼくらは「戦友」であるということだ。 夫婦にとっての戦いとは、子育てである。具体的に言えば、2人の子どもが小学校にあがるまでの延べ10年

『アーカイブズが社会を変える 公文書管理と情報革命』事実の積み重ねが未来をつくる 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『アーカイブズが社会を変える 公文書管理と情報革命』事実の積み重ねが未来をつくる

財務省の文書改竄問題をめぐってSNS上で繰り広げられている議論の応酬を見ていて残念に思うのは、現政権への好き嫌いの感情をベースに語られた言葉が実に多いこと。そしてやり取りがヒートアップすればするほど、問題の本質からはどんどん遠ざかってしまっていることだ。 今回の一件は、内閣が責任をとって総辞職すればそれですむような話ではない。またリベラルや保守といった政治的

『ルポ 川崎』リバーズエッジから見る日本の未来 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ルポ 川崎』リバーズエッジから見る日本の未来

もしこの国の未来を知りたければ、とっておきの方法がある。川崎を訪れてみればいい。それだけ?そう、それだけ。ただしちょっとした条件付きだ。 いちどだけでなく、なんども通ってみること。そこで暮らす人々と言葉を交わし、できたら友だちになること。 そうすればこの街はかならずあなたに未来の姿を見せてくれるはずだ。 川崎市は人口約150万。東京都と横浜市に挟まれた位置に

『白鵬伝』矛盾の大きさが示す破格の器量 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『白鵬伝』矛盾の大きさが示す破格の器量

いまもっとも話を聴いてみたい人物といえば、なんといっても白鵬である。昨年の九州場所を前に発覚した暴行事件以来、相撲界が揺れに揺れているのはご存知の通りだ。メディアはわかりやすい対立の構図を仕立て上げ、それぞれの陣営の応援団を買って出た関係者が次から次にワイドショーに登場してはもっともらしい背景を語ってみせる。相撲界をめぐる空騒ぎは一向におさまる気配がない。

『北朝鮮 核の資金源』国連制裁の最前線で、何が起きているか? 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『北朝鮮 核の資金源』国連制裁の最前線で、何が起きているか?

2017年11月29日未明、北朝鮮が発射したミサイルは、日米の防衛当局に衝撃を与えた。なぜならこの時発射された「火星(ファソン)15型」は、アメリカ本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)だったからだ。 ミサイル発射を受け、国連安全保障理事会は12月22日、北朝鮮への新たな経済制裁決議を全会一致で採択した。新たな制裁の柱はガソリンやディーゼル燃料、灯油

『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』麻薬王は、誰もがみな名経営者!? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ハッパノミクス 麻薬カルテルの経済学』麻薬王は、誰もがみな名経営者!?

「一般企業もマフィアもやっていることは同じですよ」 もしあなたが真面目なサラリーマンで、誰かに面と向かってこんなことを言われたとしたら、どんな反応を示すだろうか。おそらく内心ムッとするはずだ。そして「とんでもない! 反社会的集団と企業を一緒にしないでください」とかなんとか反論のひとつも付け加えながら、納得のいかない表情を浮かべるのではないだろうか。 だが本書

『黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い』悪戦苦闘の中に見えてくる、選挙制度の問題点 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い』悪戦苦闘の中に見えてくる、選挙制度の問題点

選挙があると思い出す光景がある。ずいぶん前のことだが、番組でお付き合いのあった関係で、ドクター・中松の街頭演説を見に行った。場所は下北沢駅の北口だった。 ジャンピングシューズをはいたドクターが登場するとたちまち人だかりが出来たが、聴衆はビヨ~ンビヨ~ンと跳ねるドクターの動きにつられて顔を上下させるばかりで、せっかくの演説を誰も聴いていないんじゃないかと思った

『降伏の記録』死へ向かう夫へのメッセージ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『降伏の記録』死へ向かう夫へのメッセージ

この秋、思いもよらない入院生活を体験することになった。幸いにも今後長期にわたる治療が必要になるような病気ではなかったが、それでも2週間ほどの入院が必要だと言われた。 それからが大変だった。ぼくの体調ではない。我が家の生活の話である。子どもはまだ小さいうえに妻も仕事がある。お互いの親は介護状態だったり遠方に住んでいたりで気軽に助けを求められるような状態にはない

『兵士を救え! マル珍軍事研究』戦場での赤い下着に効果はあるのか? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『兵士を救え! マル珍軍事研究』戦場での赤い下着に効果はあるのか?

長さ18メートルの砲身から時速650キロで放たれた砲弾がジェット機に撃ち込まれる。“砲弾”の重さは約1.8キロ。なにやら物騒だが、この砲弾の正体が「鶏肉」だと聞いたら、ほとんどの人がなにそれ?と首を傾げるに違いない。 アメリカ空軍のジェット機は年間3千回程度、バードストライクに見舞われるという。被害総額は年に5千万ドルから8千万ドルに及び、数年にいちどパイロ

『大学病院の奈落』変われない病院の体質が、惨劇を生み出した 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『大学病院の奈落』変われない病院の体質が、惨劇を生み出した

森友学園と加計学園をめぐる問題に揺れた今年の通常国会で、ある重要法案が可決・成立したことはあまり知られていない。特定機能病院の安全管理を強化する改正医療法である。大学病院のような高度医療を担う病院は、医療安全対策も高水準でなければならないという方針が、法律として明文化されたのだ。 改正のきっかけとなったのは、読売新聞のスクープ記事だった。 <腹腔鏡手術後8人

『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』良き敗者の魂 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』良き敗者の魂

「二課の花はサンズイ」と言われる。警視庁捜査二課は、汚職や詐欺、横領、背任、選挙違反などを摘発する部署だ。「サンズイ」は汚職の「汚」のサンズイに由来する隠語で、ゴンベン(詐欺)やギョウヨコ(業務上横領)などに比べ事件の格が一段上とされる。二課の刑事にとって、汚職事件の摘発は、命がけで成し遂げたい悲願である。 『石つぶて 警視庁二課刑事の残したもの』は、警視庁

『愛人形 LoveDollの軌跡』人形には魂が宿る 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『愛人形 LoveDollの軌跡』人形には魂が宿る

今回はスマホに保存してある美しい女性たちの姿をこっそりお見せしよう。家族はもとより友人や同僚にも見せたことのない秘密の画像である。満員電車の中などでご覧の方はどうぞご注意を。 こちらがその画像である。 実はこの美しい女性たちの正体は「ラブドール」。そう、性具の一種として、あるいは愛玩用などのためにつくられた人形なのだ。 先日、渋谷で『今と昔の愛人形』展という

『復讐者マレルバ 巨大マフィアに挑んだ男』獄中で本を読み漁るうちに… 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『復讐者マレルバ 巨大マフィアに挑んだ男』獄中で本を読み漁るうちに…

フランク・シナトラがシチリアのパレルモに到着したのは、1963年10月のことだった。マフィアの新しいドンであるジェンコ・ルッソを表敬訪問するため、アメリカのマフィアから親善大使として送り込まれたのだ。 ところが世界的大スターであるにもかかわらず延々と待ちぼうけを食わされ、ドン・ジェンコの自宅での昼食会に招かれたのは2日後のことだった。大広間に案内されると、そ

『『捨てられないTシャツ』Tシャツには、物語が溢れている 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『『捨てられないTシャツ』Tシャツには、物語が溢れている

幼い頃、母親からTシャツは下着であると教えられた。当時、下着は断然、白のランニング派だったので、Tシャツには見向きもしなかった。だから学生時代にアメカジブームに遭遇した時は面食らった。白いTシャツを着た男たちが街にあふれたからである。 そんなTシャツがいまや欠かせないファッションアイテムである。ならばさわやかに着こなしてやろうと意気込んでも、時すでに遅し。ぶ

『みんなの朝ドラ』もっとみんなで朝ドラについて語り合いたい! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『みんなの朝ドラ』もっとみんなで朝ドラについて語り合いたい!

朝の過ごし方に自分なりのルーティンがあるという人は多いだろう。「起き抜けに必ずトイレに行く」とか、「朝食には納豆が欠かせない」とか、人それぞれいろんなルーティンがあるだろうが、かなりの確率で「朝ドラを観る」と答える人もいるのではないだろうか。 みなさんにとって初めての朝ドラ体験といえば、どの作品になるだろう? 古い話で恐縮だが、ぼくの場合は『まあ姉ちゃん』(

『アウトサイドで生きている』自分の衝動や快楽にきわめて忠実な18名の表現者たち 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『アウトサイドで生きている』自分の衝動や快楽にきわめて忠実な18名の表現者たち

「いまも忘れられない美術展は?」ともし問われたら、答えは決まっている。1993年に世田谷美術館で開催された『パラレル・ヴィジョン』展だ。 ロサンゼルスを皮切りに、マドリード、バーゼル、東京を巡回したこの美術展は、「アウトサイダー・アート」と20世紀美術を並べて展示するという世界初の試みで話題となった。美術作品を観てあれほど衝撃を受けたことはない。どの作品も過

『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』自分がいま立っているその足元から発せられる言葉 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』自分がいま立っているその足元から発せられる言葉

保育園に子どもを迎えに行っていた頃、保育士が毎日のように子どもがこしらえたすり傷やたんこぶなどについて懇切丁寧に説明するのに面食らった。 「すべり台を降りた瞬間にお友だちとぶつかって……」、「ボールを追いかけていて転んで……」といった具合。こちらは田舎の野山を駆けずり回って育ったくちだ。子どもなんてケガするのが普通と呑気に構えていたものだから戸惑いを覚えてし

『物理学者の墓を訪ねる ひらめきの秘密を求めて』死者と過ごす静かな時間 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『物理学者の墓を訪ねる ひらめきの秘密を求めて』死者と過ごす静かな時間

世に渋い趣味は数あれど、極めつきの渋いやつとなると、「掃苔」ではないだろうか。「掃苔」は「そうたい」と読む。苔を掃除する。つまりは墓参りのことである。 何を隠そうぼくも掃苔愛好者だ。特にお気に入りは青山墓地で、これからの新緑の季節は特に気持ちがいい。職場のホワイトボードに「打ち合わせ 青山」などと書いて外出しているときは、ほぼ例外なく仕事をサボって青山墓地を

『本屋、はじめました』と『ローカルブックストアである』本屋の仕事の本質は、「待つ」に凝縮されている 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『本屋、はじめました』と『ローカルブックストアである』本屋の仕事の本質は、「待つ」に凝縮されている

荻窪駅の改札を出て、手頃な惣菜の店などが並ぶ庶民的な品揃えの駅ビルを抜けると、目の前はもう青梅街道だ。青梅街道を左折したら吉祥寺方面へと歩きはじめよう。迷ってはいけない。ひたすら歩を進めるべし。ただ駅を離れるにつれてお店も少なくなってくるし、「ホントにこの道でいいのかな……」と次第に不安になってくることはあらかじめお伝えしておこう。 しばらくすると目の前に環

『コンスタンツェ・モーツァルト 「悪妻伝説の虚実」』本当に「琥珀の中に閉じ込められた蠅」のようだったのか? 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『コンスタンツェ・モーツァルト 「悪妻伝説の虚実」』本当に「琥珀の中に閉じ込められた蠅」のようだったのか?

「世界三大○○」という見立てが日本人はなぜか大好きである。「料理」だったり「テノール」だったり、「〇〇」のバリエーションはいろいろだ。世界とまではいかないが、個人的に知っているところでは「芸能界三大悪妻」というネタもある。だがここでその名を明かすのはやめておこう。いま流行りの忖度というやつである。 世界三大〇〇にはもちろん「世界三大悪妻」もある。その三人とは