ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

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大阪で飲み、食う。『いっとかなあかん店 大阪』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

大阪で飲み、食う。『いっとかなあかん店 大阪』

お好み焼き、きつねうどん、押し寿司、ホルモン焼き、カレー、玉子トースト、ドーナツ、いか焼き……これは、私のアタマに読後浮かんだ食べたいものリストである。うーん、新幹線に飛び乗りたい。あの「食い倒れ」の街、大阪を知り尽くす著者が、街の人や場を堪能しながら、飲み、食う。さて、いちばんの御馳走はなんでしょう。 著者は、京阪神の街を紹介するあの『Meets Regi

『毒々生物の奇妙な進化』"悪魔の生物兵器"が見せる深遠な生物進化史 書影

生物・自然 / 教養・雑学

『毒々生物の奇妙な進化』"悪魔の生物兵器"が見せる深遠な生物進化史

マレーシアで金正男が暗殺された。VXという毒物が使われたと報じられている。この物質は人類がつくりだした化合物でもっとも毒性が高いと言われている。 その半数致死量は体重1キログラムあたり0.02ミリグラム。つまり1000分の2グラムもあれば、ひと一人を殺すことができる恐怖の化学兵器である。しかし、その1万倍も強力な毒物がある。 その毒とはボツリヌストキシンやテ

『Y先生と競馬』 先生と“賭け”めぐった日々 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『Y先生と競馬』 先生と“賭け”めぐった日々

ミリオンセラーとなったビジネス書『嫌われる勇気』は、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と喝破し、いまやドラマになるほどの人気ぶりである。その対人関係の中でも最も得がたきは、深い尊敬と愛情の絆で結ばれた師弟関係ではなかろうか。私は本書を、その生きた教科書として読んだ。 敬愛する直木賞作家・山口瞳(Y先生)と著者が過ごした、夢のような日々。もとは作家と

凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

凝集と拡散のせめぎ合い──『宇宙に「終わり」はあるのか 最新宇宙論が描く、誕生から「10の100乗年」後まで』

書名と副題からもわかる通り、本書は宇宙史を扱った一冊だ。 これがもうびっくりするぐらいおもしろい/わかりやすい! 他の解説本で、書かれている意味がよくわからずに何度も何度も辛抱強く読み返してようやく理解したようなことが、スッと理解できる形で、より短くまとめられていて、まずその端的なわかりやすさに感動してしまった。 本書は深いテーマを掘り下げていく類の本ではな

『ギリシア人の物語Ⅱ 民主制の成熟と崩壊』現代と引き比べるアテネ 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『ギリシア人の物語Ⅱ 民主制の成熟と崩壊』現代と引き比べるアテネ

待望の『ギリシア人の物語Ⅱ』が上梓された。急速に隆盛し急速に衰退したギリシア人の歴史を著者は三巻にまとめると最初に語っている。ならば第二巻は物語のピークだ。 民主政治の創始者であるギリシア人、それもとくにアテネで活躍した政治家たちは現代を映す鏡となっている。民主主義はどうあるべきか、リーダーはどのような人が好ましいか、民衆は政治にどこまで関与すべきか、など昨

『子どもの死を祈る親たち』魂の叫びは届くのか! 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『子どもの死を祈る親たち』魂の叫びは届くのか!

約二年前、長期間ひきこもり、家族に暴力をふるう子供を説得し、精神病院へ移送するという仕事について記した『「子供を殺してください」という親たち』(新潮文庫)が上梓された後、大きな反響があったそうだ。「子育てのノウハウを教えてほしい」という相談に対し著者の押川剛は言う。 私が得意とするのは、壊れてしまった家族への危機介入であり、子供を立派な人間に育てるためのプロ

『家族最後の日』植本一子の見えすぎる目 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『家族最後の日』植本一子の見えすぎる目

本書を読み終えたとき、自分を取り巻く世界が、ただただ愛おしく思えてならなかった。読後の深い余韻に浸りながら、ふとカレンダーに目がいった。 もしかしたらこの時点でもう、年間ベスト級の作品に出合ってしまったかもしれない。そう感じたのだ。 植本一子は、荒木経惟に才能を見出され、写真家としてのキャリアをスタートさせた。荒木が「私写真」という独自の世界を築いたように、

細胞レベルから健康になる 『テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

細胞レベルから健康になる 『テロメア・エフェクト 健康長寿のための最強プログラム』

「同じ年齢なのにどうしてこうも違うのか」と思うことが少なくない。たとえば同じ60歳でも、Aさんは背筋がピンとしていて、肌には張りがあり、病気などどこ吹く風。それに対してBさんは、腰が曲がっていて、肌にはシミやたるみが目立ち、多くの慢性的な疾患に悩まされている。では、AさんとBさんはどうしてそれほど違っているのだろう。 ふたりの違いに大きく関係しているのが、「

『1984年のUWF』 最強という幻想 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『1984年のUWF』 最強という幻想

プロレスラーは本当は強いんです 総合格闘技黎明期の1997年、今や世界最大の格闘技団体となったUFCが初めて日本で開催した大会 アルティメット・ジャパン で優勝した 桜庭和志 は、日本人選手の勝利に熱狂する観客にこう語りかけた。恵まれた体躯を厳しいトレーニングに晒し、筋肉の鎧をまとったプロレスラーが弱いはずがない、何を当たり前のことを、と思うかもしれない。と

『宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人』誰も見たことのない宮沢賢治を描く 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『宮沢賢治の真実 修羅を生きた詩人』誰も見たことのない宮沢賢治を描く

子どもの頃、ラジオパーソナリティーの軽快なトークに夢中になった。なにより憧れたのが、ゲストを気安く呼び捨てにするところだ。不思議なもので、それだけで親密度が増す。アイドルとまるで友だちのように語らうパーソナリティーを心底羨ましく思ったものである。もっともそれも演出の一環であったと後に知ることになるのだが。考えてみれば当たり前だ。アイドル全員と友だちのパーソナ

『兵士に聞け 最終章』ついに完結する「兵士シリーズ」 書影

教養・雑学 / 社会

『兵士に聞け 最終章』ついに完結する「兵士シリーズ」

ノンフィクション作家、杉山隆男の代表作といえば「兵士シリーズ」だろう。このシリーズは国防と言う重大な任務を背負いながら、国民にあまり知られることの無かった自衛隊、とくに兵士たちの生の姿を追い続け、見事なまでにその姿を浮き彫りにしてきた。第一作の『兵士に聞け』は1996年に新潮学芸賞を受賞、同作品はこれまでに6作目まで出版されている。そして今回ついにその続編に

『魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く』忘却へのジレンマが、それぞれの物語を生み出す 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『魂でもいいから、そばにいて 3.11後の霊体験を聞く』忘却へのジレンマが、それぞれの物語を生み出す

あの日から、もうすぐ6年の月日が経とうとしているが、今だに震災について語るべき言葉を持っていない。身の回りで大きな被害があったわけでもない。知人や親戚が被災地にいたわけでもない。ボランティア活動に参加したこともない。 だから自分が何を語ろうとしても、言葉が軽くなってしまう。そんなためらいを感じている方は、案外多いのかもしれない。しかし本書『魂でもいいから、そ

『フィリピンパブ嬢の社会学』学問を踏み越えて、愛する人とともに 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『フィリピンパブ嬢の社会学』学問を踏み越えて、愛する人とともに

人生も半ばを過ぎてようやくわかったことがある。それは「逢いたい」だの「好き」だのといったホステスの甘い言葉は、真に受けてはいけないということだ。 「は? その歳でようやく? バカじゃないの」という冷ややかな声が聞こえてきそうだ。いかにも。バカなおじさんであることは自覚している。 だが、経験者だからこそ、放っておけないということもあるのである。ましてやその人物

『宇宙はなぜ「暗い」のか?』絵本にして科学推理小説 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『宇宙はなぜ「暗い」のか?』絵本にして科学推理小説

量子論や分子生物学などの先端科学は、専門用語を理解し、わずかな時間、記憶するだけでも素人にとっては難しいものだ。中学高校で学習したはずの絶対温度やプラズマという言葉ですら、あやふやにしか覚えていないことが多い。そこで科学者たちは模式図やグラフ、写真を使って必死に説明しようと試みる。結果的に科学読み物は、小説やビジネス書などと比べるとはるかに絵本のような体裁に

『選択しないという選択 ビッグデータで変わる「自由」のかたち』とはいえ選択は終わらない 書影

医学・心理学 / 社会

『選択しないという選択 ビッグデータで変わる「自由」のかたち』とはいえ選択は終わらない

選択できるということは途方もない利益をもたらす。そして、選択できることは好ましいことと考えられている。一方で、同時に多大な負担を強いる。人間の時間と集中力は限られており、ときに不合理な選択や行動をしでかす。すべての選択について都度立ち止まって学習することは難しく、それが楽しいとも限らない。 だから、人類は歴史を通じて様々な工夫をしてきた。ナッジ(Nudge)

『江戸の乳と子ども いのちをつなぐ』母乳神話は、どのように育まれてきたのか? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『江戸の乳と子ども いのちをつなぐ』母乳神話は、どのように育まれてきたのか?

22年前、娘を産んだ。が、体つきが細く胸の小さかった私は、母乳がほとんど出ずに悩んでいた。妊娠中から母親学級などで母乳について学ぶのだが、とにかく「母乳にまさる栄養はない、母乳にまさる愛はない」といわれる。しっかり母乳マッサージをして出産に備えましょうということで、まあ随分と強くもまれて、痛かったものだ。 そうやってできる限り準備したつもりでも、母乳はほとん

『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』エロいものとエロくないものの両立は可能か? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『「ジュニア」と「官能」の巨匠 富島健夫伝』エロいものとエロくないものの両立は可能か?

ジュニアという音からは、エロい匂いがしない。カンノウはエロい雰囲気だし、ましてやカンノウショウセツは絶対エロい。エロくないものとエロいものというのを同じ人間が書き分けることは可能なのだろうか? エロくないものを描いているときに自分のエロさに蓋をして描いているのだろうか? それともその逆なのだろうか? いや、相反する二つの事象を高次元で統合することが可能なもの

『ダメな統計学 悲惨なほど完全なる手引書』で科学の基盤をより確かなものにする 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『ダメな統計学 悲惨なほど完全なる手引書』で科学の基盤をより確かなものにする

世界は数字であふれている。政治家の支持率から健康食品が病気のリスクを下げる確率まで、ニュースや広告を介して、新たな数字が次々とわたしたちに届けられる。しかしながら、その数字がどのようにつくられ、どのような意味を持つのかを真に理解することは容易ではない。特に、数字の送り手に悪意がある場合には注意が必要だ。50年以上前に出版された世界的ベストセラーの『 統計でウ

悪役になったのはここ最近『脂肪の歴史』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

悪役になったのはここ最近『脂肪の歴史』

原書房の“「食」の図書館”シリーズからの1冊である。豚肉、サンドイッチ、ビール、砂糖など、今まで食べ物や飲み物、調味料の歴史を取り上げてきたこのシリーズの流れからすると「脂肪」というのは少し浮いているような気もする。とはいえあくまで「食」の図書館ということで、脂肪といってもぜい肉の方ではなく、バターやマーガリンといった食用脂肪の歴史を辿っていく。 脂肪という

『言葉はこうして生き残った』「考える人」編集長が綴る知と魂! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『言葉はこうして生き残った』「考える人」編集長が綴る知と魂!

2017年2月15日の朝、 「考える人」休刊 のニュースをネットで見つけた。つい5日前にメルマガの最新号のコラム 『「鈴木伸子『シブいビル――高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトルモア)」』 を読んだばかりだったので驚いた。出版不況が長く叫ばれている中、休刊の報には慣れてしまったが、いよいよ「考える人」までそうなったか、と心底がっかりしてしまった。 週

紙がない!どうしよう!?……安心してください、『葉っぱのぐそをはじめよう』 書影

生物・自然 / 教養・雑学

紙がない!どうしよう!?……安心してください、『葉っぱのぐそをはじめよう』

学生時代、生物調査のために同級生たちと森でテント生活をしたことがある。当然、トイレはない。必然的に穴を掘ってそのへんにすることになるのだが、その方法には鉄の掟があった。 「紙は使うな、葉っぱで拭け」 ティッシュは簡単には分解しない。自然環境を学ぶ者として、紙を使わないことは最低限の自然への礼儀であった。 「たかが、野ぐそ」と侮るなかれ。適した葉っぱを見つける

トランプ政権の理論的支柱となる一冊『米中もし戦わば』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

トランプ政権の理論的支柱となる一冊『米中もし戦わば』

2017年2月10日、日米首脳会談が実現し、両首脳は日米の友好関係を大々的にアピールした。米国のドナルド・トランプ新大統領にとって、日本との友好関係を内外に示すことはどのような狙いがあるのか。日米同盟強化によって何に対峙しようとしているのか。大手メディアではあまり語られない米国の真意が本書に書かれている。 トランプ新政権の中枢に入る経済学者 ピーター・ナヴァ

豊かなる死語の世界がよみがえる 『俗語発掘記 消えたことば辞典』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

豊かなる死語の世界がよみがえる 『俗語発掘記 消えたことば辞典』

俗語、それも使われなくなった俗語が五十音順に百個あまり並べられている。トップはアイス。アイスクリーム?なわけはない。高利貸しのことらしい。わっかるかな?わかんねぇだろうなぁ~(©松鶴家千とせ)、これもほとんど死語ですけど。アイスクリーム⇒氷菓子(こおりがし)⇒高利貸し(こうりがし)とのこと。なるほどね。あれ?、どこかで聞いたことがあるなぁと思ったら、金色夜叉

『教養バカ』会話が通じない人へ 書影

教養・雑学 / 社会

『教養バカ』会話が通じない人へ

4歳の息子がお腹が猛烈に痛いと叫び、15分おきに下痢するので緊急で病院に行った。 ひととおり受診し、「先生、何の病気だったのですか?」と私が尋ねると先生は、 「カンピロではないと思います。その場合は一週間出血しますし、ノロ、ロタの類でもないでしょう。今は症状のジュウトク化を防がないといけません」 えと、それで…。私の質問に答えていないと判断したので、思わず

『映画と本の意外な関係』メグ・ライアンのサンドイッチ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『映画と本の意外な関係』メグ・ライアンのサンドイッチ

本書を読んで、映画とともに過ごした20代を思い出した。恋もしていた。それはまるで『紀州のドンファン』 (栗下直也のレビューはこちら) のような季節だった。・・・と、そんなことを書きたかったわけではない。読後に起きた、生活の変化について書きたかったのだ。 私は、遅ればせながらAmazonプライムに登録し、スマホの通信容量をあげて、会社の行き帰りの電車の中で映画

『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』プーチンに備わった6つのペルソナを読み解く 書影

教養・雑学 / 人物

『プーチンの世界 「皇帝」になった工作員』プーチンに備わった6つのペルソナを読み解く

ウラジミール・プーチンという政治家は多くの謎に包まれた男である。ユーラシア大陸にまたがる大国を長年にわたり統治し、欧米の価値観や政治スタンスとは一線を画す事により、周辺地域に大きな影響力を与え続けてきた。この男が何を考え、どのような世界観を持っているのか。大国ロシアを動かすプーチンを知ることは、明日の世界を知るために欠かすことのできないことである。 しかし、

『パスポート学』私が私であること、それを証明すること 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『パスポート学』私が私であること、それを証明すること

本は迷わず買うほうだが、それでも店頭だとパラパラとページをめくってみたり、少しだけ前書きや後書きを読んでみたりする。そんな中、表紙を見ただけで脊髄反射的にジャケ買い購入してしまうのが、類書がないと思われる本だ。この手の本は例外なく新しい知見を与えてくれる。だから見つけた瞬間、即購入しなければならない。 本書も、そんな即買い物件だった。人類学や歴史学、社会学、

『フンボルトの冒険 自然という<生命の網>の発明』 多事多難な探検と、そこから芽生えたアイデアの数々 書影

サイエンス / 生物・自然

『フンボルトの冒険 自然という<生命の網>の発明』 多事多難な探検と、そこから芽生えたアイデアの数々

偉大な探検家にして傑出した博物学者。壮年の文豪ゲーテに再び情熱の火を点し、その著書によってダーウィンをビーグル号乗船へと促した男。ジェファーソン米大統領に「現代を代表する最高の科学者」と評され、当時のヨーロッパにおいてナポレオンに次いで知名度があったともいわれる人物。それが、アレクサンダー・フォン・フンボルトであり、この伝記の主人公である。 フンボルトを一躍

『ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影』イノベーションに突きつけられた、大きな課題 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『ヒトの遺伝子改変はどこまで許されるのか ゲノム編集の光と影』イノベーションに突きつけられた、大きな課題

生殖医療技術と遺伝子改変技術の目覚しい進展により、人類はすでに、自分たちの遺伝子を改変する時代に入っている。 本書の「遺伝子改変は"どこまで"許されるのか」というタイトルは、いま議論すべき喫緊の課題である。本書では、生命倫理学の専門家である著者が、生殖医療技術と遺伝子改変技術の過去と現在を紹介しつつ、この課題の落としどころを冷静に探ってゆく。 ゲノム編集技術

『死にゆく患者と、どう話すか」医師・看護師のための超・実践的コミュニケーション論 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『死にゆく患者と、どう話すか」医師・看護師のための超・実践的コミュニケーション論

昨年の初夏、父が亡くなった。ある日、突然動けなくなり末期の肺がんだと診断された。担当医師は「夏を越えるくらいまで」という。告知をどうするか、私たち家族は悩んだ。 本書は日赤医療センターで、進行がん、特に肺がんの治療を専門とする國頭英夫医師が、日本赤十字看護大学の1年生に行ったコミュニケーション論の講義録である。 看護師を目指してこの大学に入ったとはいえ、つい

なぜ薬物依存が減らないのか『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』 書影

サイエンス / 社会

なぜ薬物依存が減らないのか『ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造』

薬物依存には大変恐ろしいイメージがある。一度でも手を出せば最後、もはや依存から逃れることは叶わず万難を排して薬を手に入れることに邁進し、捕まってもやめることはできない──。 確かにコカインやマリファナといった薬物には"依存"はある。だが、世間一般に流布しているイメージは科学的に正確とは言い難いものだ。違法薬物による依存とはどのような種類の依存なのか? 依存に

『わたしはこうして執事になった』なぜ「使用人」になるのか? 何が楽しみなのか? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『わたしはこうして執事になった』なぜ「使用人」になるのか? 何が楽しみなのか?

数年前にチャーチルの生家、ブレナムパレスに行ったことがある。オックスフォード近郊にあるその宮殿は、驚くことに渋谷区と港区と千代田区を合わせた面積に匹敵する広大なものだった。 その真ん中に屹立するのは200以上の部屋を持つまさにお城であり、その中では300年ほど前から貴族と使用人たちが暮らしていた。 いまでも階級制度が残るイギリスには、このような城が多数存在す

『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』失敗と、どのように向き合うのか? 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』失敗と、どのように向き合うのか?

本書の帯に、「英タイムズも絶賛!22ヵ国刊行の世界的ベストセラー、ついに日本に上陸!」とあるので、その言葉に釣られて買ってみたが、確かにその通りの素晴らしい内容だった。 『失敗の科学』というタイトルからは、直ちに「失敗学」を連想する。これは、『失敗学のすすめ』 で有名な東京大学の畑村洋太郎名誉教授が提唱した新しい学問分野で、起きてしまった失敗に対し、責任追及

『ブスの本懐』盛り込みすぎて、何のことだか分からなくしてしまえ! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『ブスの本懐』盛り込みすぎて、何のことだか分からなくしてしまえ!

美人について書かれた書物は、数多く存在する。一方ブスに焦点を当てた本は、実に少ない。皆が触れてはいけないと思っているからだ。ブスーーそれは響きだけで人を殺すパワーをもった言葉。人道的な理由から、禁止令が出されてもおかしくないほどだ。 私もタイトルを見たとき、強く惹きつけられるのと同時に、目を背けたくなるような感情に襲われた。レジへ持っていくまでに要したのは、

『ブレイクスルーへの思考』と『つながる脳科学』で知の広大さと深遠さを堪能する 書影

サイエンス / 教養・雑学

『ブレイクスルーへの思考』と『つながる脳科学』で知の広大さと深遠さを堪能する

東大の異端児的存在である東京大学先端科学技術研究センター(先端研)に所属する11名の研究者へのインタビュー集だ。「これまでの大学の殻を破るまったく新しい研究機関」として設立された先端研だけあって、インタビュイーの研究分野は多岐にわたる。ある者は情報と社会の関わり方のあるべき姿を語り、ある者は産学連携を推し進めるために必要となる科学者の姿を説き、またある者は障

『オスとメスはどちらが得か?』モテるためには命をかけて戦う 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『オスとメスはどちらが得か?』モテるためには命をかけて戦う

「どうして、男の子と女の子がいるの?」ラジオ番組に投げかけられた子供の素朴な質問から本書は始まる。 この他愛ないが本質的な質問に専門家は困惑しながら、「X染色体とY染色体」の話を持ち出すしかなかった。一生懸命、質問者の幼稚園児に説明を試みるが、到底理解できるはずもない。 気まずい雰囲気で終わるかと思ったその時、アシスタントのお姉さんが「○○君は、男の子だけで

『方言萌え』SNSで加速する、方言コスプレとは何か? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『方言萌え』SNSで加速する、方言コスプレとは何か?

えっ、方言コスプレ? 本書を手にしてまず目に飛び込んで来たのが、この言葉。コスプレと言えばコスチュームプレイの略語のアレですよね、そうですよね? 言葉ですよね、コスチュームじゃないですよね、方言って言葉ですよね? ですよね?? 混乱する中、岩波ジュニア新書から出された本書は私に語りかける。ジュニアとつくだけあって口調がなんだかとっても優しいのだ。優しくされる

『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か 』本当に恐れるべきなのは失望感 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か 』本当に恐れるべきなのは失望感

ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオが共演した名作『ギルバート・グレイプ』(1993年)で印象に残るのは、なんといっても給水塔だ。 生まれ育ったアイオワの田舎町からいちども出たことがないギルバート(ジョニー・デップ)には、知的ハンディキャップをもつ弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)がいる。アーニーは高いところが大好きで、ちょっとでも目を離すとすぐに

『紀州のドン・ファン』美女4000人に30億円を貢いだ男 書影

人物 / 事件・事故

『紀州のドン・ファン』美女4000人に30億円を貢いだ男

どんな目標でもいい、目標を持って本気でやれば年齢なんて関係ありませんし、いつかその目標は適うはずです 本書の結語である。ビジネス書では見慣れた台詞だ。夢を持て、できない理由を探すな、きっと適うのだから。その通りかも知れないが、本書の著者が十代から現代まで変わらず抱き続ける「目標」はシンプルだ。成功して、多くの女性と性交したい。 記憶に残っている方も多いかもし

『昆虫たちの世渡り術 』恋をしたら昆虫のことを思い出してください 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『昆虫たちの世渡り術 』恋をしたら昆虫のことを思い出してください

私たちは常に装っている。同じ集団の人間とみなされるための制服を、愛されるための装飾を、自分はこういう人間であるとみられるための記号を。 装うことは最大の武器だ。身を守るためにも、何かを得るためにも。 装うことを初めた最初の生き物は昆虫ではないかと思う。私たちは知らず知らずのうちに小さな昆虫たちの真似をしているのかもしれない。 昆虫と人間が似ている点は、他にも