
万の心を操る『シェイクスピア 人生劇場の達人』
ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)は、おそらく世界で最も知名度のある詩人であり劇作家だろう。『マクベス』や『ハムレット』などの名作は世界各国でローカライズされ読み継がれ、今でも頻繁にオペラとなり舞台となり上演を続けている。 シェイクスピアの演目は20世紀後半まで英国ロイヤル・シェイクスピア劇団が最も権威ある公演と考えられてきた。しかし時代は変わ
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ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)は、おそらく世界で最も知名度のある詩人であり劇作家だろう。『マクベス』や『ハムレット』などの名作は世界各国でローカライズされ読み継がれ、今でも頻繁にオペラとなり舞台となり上演を続けている。 シェイクスピアの演目は20世紀後半まで英国ロイヤル・シェイクスピア劇団が最も権威ある公演と考えられてきた。しかし時代は変わ

健康診断を怠っている。フリーランスになってからというもの、よっぽど具合が悪くなければ医者に行くということもない。しかし、自分の健康を過信しているわけでもない。物忘れがひどければ「若年性の認知症?」と怯えるし、動悸が激しければ「心筋梗塞?」と脈を計る。手足が痺れると「脳梗塞」を疑い、しばらく様子を見たりする。 一般的には60歳以上に多いという脳梗塞。しかし鈴木

君は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(Dungeons & Dragons :以下D&D)を知っているか。 D&Dは紙と鉛筆とサイコロ、世界観や数値が記載されたルールブック、それに自身の想像力/対話を駆使して複数人で行うテーブルトークアールピージー(以下TRPG)である。1974年に発売された本作は世界中で流行し、プレイヤーが冒険者になりきってファンタジー世界を

HONZが送り出す、期待の新メンバー登場! 澤畑 塁は某大学出版会に勤める、爽やかな営業マンである。HONZメンバーの誰よりもHONZらしい選書と、驚きのスピードでレビューを量産していくことだろう。今後の彼の活躍にどうぞご期待ください!(HONZ編集部) 人間の脳は宇宙のなかで最も複雑かつ精巧であるとよく言われる。そして、それほど複雑かつ精巧であるゆえ、一見

今、多くのビジネスマンは、二つの戦いに追われているかもしれない。一つは勝手知ったるライバル企業との戦い、そしてもう一つは今はまだ視界に入ってきた程度だが、次世代において大きな脅威になりうる新たなライバルとの戦い。現在と未来、二つの時間軸での戦いを同時並行に行わなければならないのは、変化の速い現代社会の宿命である。 もちろん数字的なインパクトが大きいのは前者の

主夫になりたいと思ったことがある。2日ほどひとりで育児を朝から晩までして、断念した。育児の不条理さの前に呆然と立ちすくし、思いつきで指示されたり、理不尽に切れたりする職場の上司の方が子どもよりもよほど御しやすいと逃げ出したわけだ。 そうした過去もあり、主夫には敬意を払うが、世間の主夫への視線は厳しい。本書でも女子学生の主夫に対する「向上心がなさそう」という感

『怒りについて』や『生の短さについて』などを著した古代ローマの哲学者 セネカ は二つの顔を持っていたという。 ストア派 に属し簡素な生き方と節度、理性を求める哲学者の顔。もうひとつは皇帝 ネロ に仕えた政治家としての顔。著作の中で簡素な生き方を推奨しながら、一方で現実のセネカはローマでも一、二を争う資産家であり、植民地に高利で金を貸し、暴利を貪る金貸しでもあ

ロビンソン・クルーソーのモデル、スコットランドの船乗りアレクサンダー・セルカーク。南太平洋の無人島に漂着した彼は、4年4か月を1人きりで生き延びた。彼が漂着した島はチリにあり、現在ではロビンソン・クルーソー島と名付けられている。著者・高橋大輔氏は、広告代理店の職を辞してセルカーク住居跡の発掘プロジェクトを推し進め、13年かけて遂にそれを発見した。そんな高橋氏

本書は発売(6/16)とほぼ同日に重力波2度目の観測成功が発表され、即日で重版が決まったというあまりにも出来過ぎな1冊だ。とはいえ単なる偶然と片付けるのも味気ない。これは、人類がこれまで観測できなかった「音」が宇宙に満ちている1つの「確証」であるのかもしれない。 もう少し具体的に紹介すると本書『重力波は歌う アインシュタイン最後の宿題に挑んだ科学者たち』は重

著者の木下斉さんは「まちビジネス事業家」であり「地域経済評論家」である。16歳の若さで早稲田の商店会活性化に取り組んだのを皮切りに、以来18年、日本各地で地域活性化事業に取り組んできた。 木下さんが携わった事業のなかでも知られているのが、岩手県紫波町のオガールプロジェクトである。図書館など公共の施設を集客装置と位置づけ、それに民間の施設をドッキングさせ、民間

2003年のイラク、アメリカ軍は新たな敵との闘いに困惑していた。エリート中のエリートたる統合特殊作戦任務部隊(特任部隊)をもってしても、イラクの混乱状態を鎮静化できる道筋は見えなかった。地元の人間の寄せ集めで、旧式の武器しか持たないイラクのアルカイダ(AQI)は、徹底的に訓練され、ハイテク装備を身に着けた特任部隊を出し抜き、テロ活動を成功させ続けていたのだ。

何やらそそられるタイトルだ。とらえどころのない「こつ」と「スランプ」の正体に、いかにして迫っていくのか。そもそも、それらは研究できるものなのか。期待と不安が入り混じるまま読み進めた先に待っていたのは、思わぬアプローチと意外な着地点だった。 実は、「こつ」や「スランプ」についての話は本書の一面に過ぎない。研究対象とされているのはより広い領域、「身体知」である。

「テヅルモヅル」という生物をご存知だろうか。体の中心から五本の腕を伸ばし、その各々の腕を枝分かれさせ、まるで触手のようにうねうねと動かしながら海水中のプランクトンを捕獲し、それらを栄養源として生息している動物だ。腕を広げると、大きなものでは1メートルを超える圧倒的な存在感を持つモヅルもいるようだ.その様子にちなんで、一部の種は学名にギリシャ神話の「ゴルゴン」

ざんねんないきものとは一生けんめいなのに、 どこかざんねんないきものたちのことである。 世の中にはものすごく不便そうな体を持っている生き物や、どうしてそんな大変そうな生き方をしているの?って思う生き物。またそんな能力を持っていてどうするの?と思ってしまうような生き物が多数存在している。進化というのは一方通行であるがゆえに進化の過程において、かつては必要だった

サイエンスの面白さが存分に味わえる一冊だ。 タイトルに惹かれてつい手にとった一冊だったが、ホタルを題材にここまで科学の不思議さと面白さを紹介できるポピュラーサイエンス本の作者がいるとは想像だにしなかった。流麗で平易なことばで科学の謎を解き明かす著者の文章力は、『ワンダフル・ライフ』の著者でポピュラーサイエンスの巨匠スティーブン・グールドを彷彿とさせる。 白亜

老人の万引きが増加しているというのは聞いたことがあった。しかし、まさか、ここまでとは思っていなかった。驚いただけではなく哀しくなってしまったが、こういう現実を直視せずに現代社会を論じることはできないはずだ。 あちこちのスーパーに出向く保安員、現役の万引きGメンによって書かれた実録集である。20件あまりの事例が紹介されているが、それぞれに、あきれるような、腹立

あの日あのときあの本屋で、この本に出会わなかったら〜♫ と思わず歌いたくなる面白さ。読んでいなかったら、今日という日は寂しいものになっていたでしょう。物好き(失礼!)な著者が、日本どころか海外までも珍スポットに出かける漫遊記。なんですがこれがもう…… この本を書いた、金原みわさんの紹介から始めよう。 「珍スポトラベラーとして、全国の珍しい人・物・場所を巡りレ

中学2年生の頃に本屋で偶然出会ったのが、荘子だった。「人皆知有用之用 而莫知無用之用也」(荘子 内篇)そこには、人の役に立たないがゆえに天寿を全うする、樹木のことが書かれていた。高度成長の負の遺産や受験戦争に心を痛めていた私は、「かくありたい!」と膝を打ち、その道行きをはじめた。といっても、有用になるのを避け友人宅に入り浸って麻雀を始めただけだ。翻って本書は

毎年数冊はチャーチル関連の本が発売されている。私自身、以前にもHONZでチャーチルを題材にした本を レビュー している。チャーチルという政治家には、やはりそれほど魅力があるのだろう。個人的なことを言えば、劣等生であった少年が大学教育も受けずに、政治家として大成し、第二次世界大戦で世界の趨勢を決定するほどの大きな仕事を成しとげたという点に、とてつもない魅力を感

レオナルド・ダ・ヴィンチの名で何を思い浮かべるだろう。スフマート技法による『モナ・リザ』の作品だろうか、またはキリスト教の聖書に登場する『最後の晩餐』の画家としてだろうか?周知の通り、彼は絵画のほか彫刻・建築・科学・数学・工学・解剖学・地学・植物学など、極めて広い分野に精通していた。各分野における天才だということは確かだとしても、どのような環境で育ち、複雑な

2012年9月9日。晴れ渡ったロンドンの朝7時50分ごろ、スコットランド・ヤード(警視庁)に緊急電話が入る。ロンドン西部のモートレイクという街のポートマン通りに死体のようなものがあるという通報だった、電話してきたのは日曜日の朝に教会に向かっている男性で、血も見えるという。 5分後には警察が到着し遺体が確認され、周辺の聞き込みが始まる。電話があった直前、「ドン

紀元前から人類は図書館と共にあったが、それは場所が戦地にあってもかわらない。人はいかなる時であっても──というよりかは、過酷な状況にあってこそ書籍を求めるのかもしれない。 本書『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』は「第二次世界大戦時に、強いストレスに押しつぶされそうになっている兵士たちの心を癒やすため、海を渡って兵隊らに行き渡った書籍」についての歴史

SNSに功罪はあれど、「共感をベースにした評判社会」という言葉には何か否定できないものがある。他人の喜びや悲しみといった感情に寄り添うことができ、周囲からどのように思われているか可視化される状態であれば、さぞかし理想的な社会になるはずだ。 しかし、実態はどうだろうか。人々のつながりは誹謗中傷や負の感情を運ぶ時の方が勢いが強く、よりスキャンダラスな方向へと向か

ロボットはすでにわたしたちの生活に欠かせないものとなっている。工場で人間の代わりに不眠不休で働くばかりでなく、 エンターテインメント や ホテル受付 のようなサービス領域にもその活躍の場を広げつつある。マクドナルドの前CEOは「フライドポテトを袋に詰めるだけで時給15ドルも払わなくてはならない労働者を雇うより、3万5,000ドルのロボットアームを買う方が安い

それは突然湧き起こる。見知らぬ路地に出くわしたとき、身近な人の意外な一面を発見したとき、目の前の木からリンゴが落ちたとき……。 「好奇心」がテーマの一冊である。何が好奇心を枯渇させ、何が好奇心を豊かにするのか。好奇心に火がつくメカニズムはどのようなものか。好奇心を絶やさないために重要なことは何か。好奇心の強さとその人の所得との関係。などなど、「知りたい」気持

本書は、西日本新聞の女性投稿欄「紅皿」に寄せられた投稿のうち、42編を収録したものだ。西日本新聞は、福岡県を中心に九州で発売されている地方紙で、「紅皿」は敗戦から9年がたった昭和29年、「婦人の日日の明るい経験や意見、主張や(略)真実の声をほしい」という呼びかけのもと開設された。欄誕生から10年間に寄せられた約3千もの投稿のうち、戦争に関連する300余話から

本書は16人の在野研究者の生き様 を紹介するというシンプルな構成だ。謎の同人ウェブメディア「En-Soph(エン–ソフ)」での連載シリーズ「在野研究のススメ」を、再構成しまとめたもので、すべての章は読み切りだ。 論文の数や掲載誌のインパクトを追求する一般的な研究者とは異なり、我が道、我が学問を行く在野研究者たち。制度や固定観念に囚われることのない、彼らの研究

著者であるマイケル・S・ガザニガは書名にも入っているように認知神経科学を創りあげた(名付けた)人間である。てんかん発作を抑えるため当時まれに行われていた右半球と左半球をつなぐ脳梁を切断した患者を対象にした実験で、右脳と左脳がそれぞれ役割を分担しながら別個に働く現象を観察し、以後分離脳研究を中心として驚くべき実験成果を次々と生み出してきた。 本書はそんな輝かし

ビル・ゲイツの功績を一つだけ挙げよと聞かれたら、かならずこう答えている。それはOSを標準化したことではなく、集積回路すなわちLSIの価格を劇的に下げたことだと。 1965年、インテル創業者の1人であるゴードン・ムーアは「ムーアの法則」を発表した。その法則とはLSI上のトランジスタ数は18ヶ月ごとに2倍になるというものだ。近年にいたるまでこの法則は現実と符合し

マナーに関する話題は尽きない。テレビ番組でも「あなたのマナー、ここが間違い!」とか「芸能人マナーチェック!」とかの類いはつい見てしまう。「知ってましたよ」という顔をしながら内心ドキッとしたりしながら見る。そうだったのか!と。 納得いかないこともある。ある番組で「ティーカップのソーサーを手で持つのはマナーに反します」と言っていたがいやいや、日本茶の茶托は持ち上

こわいくらいに透き通ったアイスグリーンの海が真っ青な空に映え、小さな島の真ん中に立つ白い灯台が、週3便しかない小型貨客船のエンジンの振動につれて、少しずつ近づいてくる。 「すごいかもしれない、もしかして、すごくいい島かもしれない!」 1997年、夏。「沖縄離島情報誌で、たまたま最初に開いたページの島に行ってみよう」――そうして私が出かけたのが、西表島の北に浮

心に湧いてくる感情にぴったり合う言葉が見つけられない…。 言葉で表現しようとすると、ひどくまどろっこしくなってしまう…。 誰しもそんな経験を一度はしたことがあるのではないだろうか。 私たちは言葉があることで、思考することができ、他者と”目に見えないもの”を共有することができる。一方で、言葉によって私たちの思考は規定され、その範疇をはみだす部分については、表現

タイトルの「されど」が良い。人には仕事や趣味、家庭、習い事などいろいろあり、エロは「しょせんエロ」とされがちだ。だが、結局、人生はエロに行き着く。エロは人生の主食にはならなくても、副菜ではないのだ。 週刊文春の人気連載コーナーの書籍化第二弾。大概、シリーズものの第二作は映画にせよドラマにせよ小説にせよコケる。連載物の書籍化も勢いが落ちるのが定番だが本書はそう

この本は今年読んだビジネス書の中で、断トツにおもしろかった。まだ半年以上あるけれど、この本が2016年のベストビジネス書になるような予感さえしている。こんなにおもしろい本を読まないなんてもったいない!なによりこの本には読んだ人の人生を変える大きな力があると思うのだ。ザッポスのCEOトニー・シェイも「この本は人生を変える可能性をもち、幸福をもたらしてくれる」と

2015年1月、アメリカ国防省のとある職員が93歳で退任した。その男は40年に渡り、ネットアセスメント室(ONA)の長として歴代の国防長官に仕え、アメリカの安全保障政策に大きな影響を与え続けたという。一部ではペンタゴンのヨーダと呼ばれた アンドリュー・マーシャル こそ、本書の主人公である。この男がいなければ、今のような形でアメリカが冷戦に勝利することはなかっ

「家なき子」のウイルス。生物の細胞という部屋に入って、細胞膜という「壁」に囲まれ、リボソームという細胞内でタンパク質を作る役割を持つ言わば3Dプリンターを自由自在に操り、自身のDNAをたくさんコピーする。部屋が自分のコピーでいっぱいになったら、隣の部屋へと出て行く顛末となる。一見立派な策略を持っていそうなウイルスだが、純化するとただのタンパク質と核酸という分

カッコウ、である。見たことがあるような気もするが、記憶は定かでない。しかし、「♪静かな湖畔の森の陰からもう起きちゃいかが」と鳴くという童謡のおかげで、その名前はよく知られている。なんとなく爽やかだが、そんなイメージとは裏腹に、カッコウは『托卵』という眉をひそめたくなるような方法によって繁殖することで有名な鳥でもある。 托卵というのは「鳥が他種の鳥の巣に産卵し

東京、品川駅から電車で1時間半、終点の三崎口駅から歩いて30分。小網代は、都心からおよそ60キロの三浦半島にある自然の楽園だ。コンクリートで固められていく首都圏にありながら自然がまるごと残っており、しかも、誰でも歩ける身近な場所として大人気だ。なぜそんな「奇跡」が起きているのだろう? 「奇跡の森」。首都圏でも可能な環境保全の好例として、そう評される小網代の森

われわれはたった今医学の歴史を作った ルネ・ファバローロが世界で初めて心臓のバイパス手術を成功させたとき、ファバローロの仲間は高らかにそう宣言した。この宣言は決して大げさなものではない。なにしろ、ファバローロらによる バイパス手術 の手法が確立するまで、冠動脈の塞栓が原因となるありふれた疾患を含む多くの心臓病に直接的な治療の手段は存在しなかったのだ。 ファバ

中国の報道はプロパガンダ一色だから、人々は真実を知らないーーそう思われている方も多いかもしれない。だがそれは、ある意味では正しく、ある意味では間違っている。 微博(weibo) で活躍する知識人たちが当局から狙い撃ちされ、新聞記事は編集部も知らぬ間に校了後に差し替えられる。そんな締め付けが露骨に行われる一方で、高速鉄道事故の様子が微博で生中継され、テンセント