ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

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『インティマシーあるいはインテグリティー』ビジネスにも役立つ、超実践的な文化論 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『インティマシーあるいはインテグリティー』ビジネスにも役立つ、超実践的な文化論

HONZが送り出す、期待の新メンバー登場! 堀内 勉は外資系証券を経て大手不動産会社でCFOも務めた人物。自ら資本主義の教養学公開講座を主催するほど経済・ファイナンス分野に明るい一方で、科学や芸術分野にも精通し、読書のストライクゾーンは幅広い。今後の彼の活躍にどうぞご期待ください!(HONZ編集部) 去る7月21日、来日したトーマス・カスリス教授の東大駒場キ

謝罪道という様式美『謝罪大国ニッポン』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

謝罪道という様式美『謝罪大国ニッポン』

ベッキーや舛添要一前東京都知事をはじめ、謝罪のやり方を誤ったことで、奈落の底に追い込まれる例が後を絶たない。現代では謝罪の必要がないのに、第三者が謝罪を求め、そしてその人たちに向けて謝罪会見を開くというようなことが多くなっている。「世間をお騒がせして申し訳ございません」というのがその時に使われる常とう句であるが、世間は勝手に騒いでいるだけなのだから、それに対

『漂流』平成の漂流事件、海で2度行方不明になった男 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『漂流』平成の漂流事件、海で2度行方不明になった男

本書は、平成に起きたある漂流事件の詳細をつづったノンフィクションである。また、未解決行方不明事件を追うルポルタージュであり、沖縄における海洋民の成立と広がりを歴史的に考察する一書でもある。 1994年2月、一隻の漁船が連絡を絶った。沖縄のマグロ延縄船、第一保栄丸は、同年1月にグアムを出港、2月2日の無線を最後に連絡が途絶え、その後3月17日フィリピン沖、救命

『クラフツマン 作ることは考えることである』仕事への誇りを取り戻すための葛藤 書影

教養・雑学 / 社会

『クラフツマン 作ることは考えることである』仕事への誇りを取り戻すための葛藤

よい仕事とは何か、長らく考えられてきた問いである。本書ではクラフツマンとその精神性の歴史的背景を理解し、今の時代と文脈でどう再解釈できるかの議論を通じて、問いと対峙していく。シンプルな問いほど答えを出すのは難しい。本書も答えよりも、問いのまわりをクラフツマンの仕事と共に逡巡し続け、新たな問いを読者に投げかける。 近代の仕事は『絶望的に真面目』なのである。それ

新時代への議論の基礎──『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

新時代への議論の基礎──『人間さまお断り 人工知能時代の経済と労働の手引き』

この数年、怒涛のように人工知能関連本が刊行されたこともあって、今となっては「人工知能によって雇用は失われます!」と危険性を指摘するだけの本は真新しくもおもしろくもない。本書もその類の本なのかと思っていたが、議論は既存の同ジャンルノンフィクションに比べても一歩先に進んでおり、未来予測も頷くところ多しで予想を裏切って大変楽しく読ませてもらった。 最初に本書の内容

『漂うままに島に着き』自ずと変わっていく自分 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『漂うままに島に着き』自ずと変わっていく自分

内澤旬子さんが乳癌の体験の経緯を書いた『身体のいいなり』を読んだのは、私がたまたま軽度の脳梗塞を発症したときだった。独立した存在だと思っていた精神も、所詮、脳という機能の一部であって、身体の物理的な影響を逃れることはできない。まさに身体のいいなりになることこそ肝要。そう淡々と、しなやかに綴られたエッセイだった。 検査検査で病院通いの日々の中にあって、「素直に

『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』愛していたけど、殺してしまいました 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』愛していたけど、殺してしまいました

タイトルだけを見れば、自分には理解できない種類の人たちが、目を覆いたくなるような行為ばかり繰り広げる内容と思われるかもしれない。だがその予想は、大きく裏切られることになるだろう。最初はよくある感情の行き違い程度なのだが、それが引き寄せられるようにいくつも重なり合い、気付けば取り返しのつかないことになっているーーそんな印象だ。 本書『「鬼畜」の家 わが子を殺す

『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』 グーテンベルクがインターネットの生みの親? 書影

サイエンス / 世界史

『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』 グーテンベルクがインターネットの生みの親?

体重わずか数グラムのハチドリは、ほとんどの鳥が真似することも困難なホバリングをすることができる。空中の定位置に留まるためには、羽を打ち上げるときも打ち下げるときも揚力を発生さるような、回転可能な羽を進化させる必要がある。ハチドリがこの独特なデザインの羽を持つようになったのは、花蜜を吸うためであると考えられる。ホバリングは、花蜜を取り出すために威力を発揮し、ハ

『情報参謀』世のムードを可視化する 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『情報参謀』世のムードを可視化する

自民党が大敗して政権を失った2009年夏の総選挙。その直後から2013年夏の参議院選挙で政権を完全に奪還するまで、自民党の情報戦略の「参謀役」を務めた人物が1461日間にわたる活動を振り返った1冊である。 本書に書かれている野党時代の自民党の情報分析活動の内実は「一度として明らかになったことはない」という。「カネ」や「情実」といったイメージがつきまとう政治の

右でも左でもない。リアリストが問う国防論『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』 書影

人物 / 社会

右でも左でもない。リアリストが問う国防論『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』

2001年に海上自衛隊に 特別警備隊 という部隊が創設されるまで、自衛隊に特殊部隊は存在しなかった。特別警備隊はある事件を端緒にして誕生することになる。その事件とは1999年に起きた、 能登半島沖不審船事件 である。 この事件は覚えている人も多いだろう。イージス艦「 みょうこう 」が北朝鮮のものと思われる工作船を追跡し自衛隊史上初の 海上警備行動 が発令され

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』来るべき未来に備えて正しい理解を 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『ゲノム編集の衝撃 「神の領域」に迫るテクノロジー』来るべき未来に備えて正しい理解を

「今、もっともエキサイティングなバイオテクノロジーは何か」。この質問に対し、多くの生命科学者は次のように答えるだろう。「それはゲノム編集だ」、と。本書は、ゲノム編集がどのような技術で、この技術がいかに未来を変えうるかについて解説した良書である。 ゲノム編集とは、遺伝子の本体であるDNAの狙った位置を切り貼りするなどして「編集」し、その生物のすべての遺伝情報、

『自然が答えを持っている』大村智をもっと知りたい! 書影

サイエンス / 人物

『自然が答えを持っている』大村智をもっと知りたい!

本書は、ノーベル賞受賞講演「自然が答えを持っている」を含めた、大村智先生のエッセイ集である。研究以外のいろんな側面、例えば絵画との出会いや、ふるさとへの想い、夢を追いかけることなどがメインとなっていて、大村先生を多方面から知ることが出来る魅力的な一冊だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞した先生は信じられないほどたくさんのことをやってのけている。 まず、大村先生の

『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』肥満も腸内細菌のせい!? 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』肥満も腸内細菌のせい!?

ここ数十年で劇的に増加している慢性的な疾患(あるいは不健康な状態)が存在する。たとえば肥満。アメリカでは1950年代から体重の増加が顕著となり、1960年代の初めての全国調査では、成人の13%が肥満(BMI値が30以上)、30%が過体重(BMI値が25~30)とされた。そして1999年の調査では、その傾向に拍車がかかり、肥満率は倍増の30%、過体重の人も34

『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』生まれた国だから守りたい。 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動』生まれた国だから守りたい。

伊藤祐靖。1964年生まれ。日本体育大学を特待生で入学。体育教師への道を断ち、海上自衛隊に最下級兵士として入隊。幹部候補生学校に合格し20年間勤務する。前半10年は、防衛大学校指導教官としての2年を除けば戦闘艦艇、いわゆる“いくさぶね”に乗船。後半は特別警備隊の創隊と、この隊の先任隊長となって鍛え上げる。42歳で自衛隊を退職。その後、ミンダナオ島に拠点を移し

「とと姉ちゃん」のモチーフ 『「暮しの手帖」とわたし』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

「とと姉ちゃん」のモチーフ 『「暮しの手帖」とわたし』

毎朝ご覧の方も多い、NHK朝の連続ドラマ小説『とと姉ちゃん』。そのヒロイン、小橋常子のモチーフになったのが、戦後の暮らしを明るくし、70年代には100万部を超え国民的雑誌となる『暮しの手帖』を創刊した大橋鎭子(しずこ)さんという女性だ。この「しずこさん」の唯一の自伝がとっても面白いので、ご紹介しておきたい。 この「しずこさん」。 本にあるプロフィールはこんな

人生観が、そして人生が変わる 『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

人生観が、そして人生が変わる 『死すべき定め 死にゆく人に何ができるか』

人間にとってただ一つ確実なことは、いずれ死ぬということだけだ。しかし、いつ死ぬのか、どのように死ぬのかはわからない。年老いて不自由になった時、不治の病にかかった時、あなたはどのような人生を望むつもりだろう。医学が発達しているからなんとかしてもらえると思っている人がほとんどではないか。しかし、その考えは、この本の冒頭にある文章を読んだだけで打ち砕かれる。 わず

『上野アンダーグラウンド』昭和の怪しさを訪ね歩く 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『上野アンダーグラウンド』昭和の怪しさを訪ね歩く

戦後、上野に葵部落と呼ばれる最貧スラム街があった。世帯数は143。住民数は750人。住民の4割が路上やゴミ箱に捨てられている廃棄物を集める「バタヤ」と呼ばれる職業に従事していた。現在、その地は我々にとって非常に身近な存在だ。7月に世界文化遺産登録が決まった国立西洋美術館本館が建っている。 タイトルから想起されるように歴史を辿りながら、上野の表と裏を描いた一冊

『サイボーグ化する動物たち』 生命の操作は人類に何をもたらすか? 書影

サイエンス / 生物・自然

『サイボーグ化する動物たち』 生命の操作は人類に何をもたらすか?

科学の進歩は、地球に生命が誕生して以来の数十億年どこにも見られなかった奇妙な生き物を生み出している。バイオテクノロジーによる遺伝子操作だけでなく、電子工学とコンピューター技術の進歩も生命に新たなカタチを与え始めているのだ。キラキラと光る魚、薬の入ったミルクを出すヤギ、遠隔操作が可能なロボット昆虫。SFの世界でしか見られいと思ってい生き物は、既にこの世に存在し

『「ユマニチュード」という革命』 笑うたら、やっぱり嬉しかとばい 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『「ユマニチュード」という革命』 笑うたら、やっぱり嬉しかとばい

この本には本当に驚かされた。介護の技法書だと思って読み始めたら、これからの時代を生き抜く哲学の本だったのである。ユマニチュードとは、認知症高齢者ら介護される側の人間性を取り戻すケア技法であり、それを支える哲学のことである。本書のオビには「ケアを受ける人に愛情が伝わるから、ケアをする人も愛と誇りを受け取れる」とある。だから、テクニカル一点張りではないことは、読

『神経ハイジャック もしも「注意力」が奪われたら』常識が認識によって書き換えられるまで 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『神経ハイジャック もしも「注意力」が奪われたら』常識が認識によって書き換えられるまで

マルチタスクが注意力の欠如を招き、人々のパフォーマンスを低下させることの危険性は近年度々指摘されている。だが、そうは言われても「ながら作業」が既に習慣となってしまい、なかなかやめられない方も多いことだろう。 本書は19歳の若者が「ながら運転」の末に起こした事件の真相を追うと同時に、現代の高度情報化社会の危険性を主に神経科学の立場から明らかにしている。だが、こ

『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中 書影

民俗・風俗 / 日本史

『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中

「ディストピア」とはユートピアの反対語。理想郷じゃない場所のことだ。「日本スゴイ」ならユートピアなんじゃないの?と思いながら読みはじめると、戦時下に行われたプロパガンダによって洗脳された日本人の姿に戦慄させられる。言葉の力は強大だ、プラスに働いてもマイナスでも。 本書には昭和初期から終戦までに出版された、当時の「日本スゴイ」本の中から「日本主義」「礼儀」「勤

家にピッチピチの伊勢エビがやって来た! さあどうする? 『その道のプロに聞く 生きものの飼いかた』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

家にピッチピチの伊勢エビがやって来た! さあどうする? 『その道のプロに聞く 生きものの飼いかた』

宅急便で届いた箱の中から、カサコソと音がする。そっと蓋を開けると、おがくずの中から現れたのは……エビの王様、伊勢エビだあー!! 「かっちょいい甲冑姿を毎日飽くことなく眺めたい!」という欲望に抗える人は、多くはあるまい。当然、飼うでしょ! 本書は偶然出会った生きものを楽しく飼う方法を伝授してくれる、ものすごく実用的な本である。昨年紹介した 『その道のプロに聞く

虫だらけの惑星──『昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略』 書影

サイエンス / 生物・自然

虫だらけの惑星──『昆虫は最強の生物である: 4億年の進化がもたらした驚異の生存戦略』

昆虫は最強の生物である──と断言されると、人類じゃなくて? と疑問が湧いてくるが、まあ「最強」の定義次第といったところだろう。たとえば、人類はこの地球上に種そのものを脅かす天敵はいないわけで、その観点からいえば「人類は地球最強の生物」といってもいいだろう。 しかし、別の観点からすると、これまでに発見され、命名された昆虫は100万種、名前もついていないものも含

『<インターネット>の次に来るもの―未来を決める12の法則』存在することは、変化し続けること 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『<インターネット>の次に来るもの―未来を決める12の法則』存在することは、変化し続けること

「未来を予測する最善の方法は、それを発明してしまうことだ」とは、かの有名なアラン・ケイの言葉である。確かにそれは正しいかもしれない。しかし、この言葉が本当に説得力を持つのは、偉大な発明を成し遂げた人物によって語られた時だけである。 本書の著者ケヴィン・ケリーなら、このように言うだろう。「未来を予測する最善の方法は、それを発見してしまうことだ」と。ならば、未来

『さかなクンの一魚一会』 さかなクンの夢中になる力 書影

生物・自然 / 人物

『さかなクンの一魚一会』 さかなクンの夢中になる力

ハコフグ帽子と白衣のいでたちに、甲高い声と大きなジェスチャーで魚の素晴らしさを伝え続けるさかなクンの自叙伝だ。絶滅したと思われていたクニマス発見の偉業は天皇陛下にも言及され、東京海洋大学の客員准教授を務めるまでになったさかなクンの人生が、さかなクンの手によるかわいい魚のイラストとともに語られる。本文の漢字にはルビがついており、小さな子供でも楽しみながら読み通

メディア関係者の必読書『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

メディア関係者の必読書『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか』

新聞社やテレビ局はもちろん、広告代理店や印刷会社にいたるまで、すべてのメディアに関わる人が読んでおくべき本である。 それどころか、企業の宣伝部員や官公庁の広報担当者も、最先端を走るアメリカのメディア界で何が起きつつあるかを知っておくことは不可欠であろう。 著者はニューヨーク市立大学で起業ジャーナリズムを教えている教授だ。ニューヨークといえば世界のジャーナリズ

歩きスマホ、ダメ、ゼッタイ!『神経ハイジャック』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

歩きスマホ、ダメ、ゼッタイ!『神経ハイジャック』

ポケモンGOが社会現象化している。街中を歩いていても、スマホを見ながら歩いていて、急に立ち止まっては、スマホの画面を上のほうにスワイプする動き(ポケモンボールを投げるときのしぐさ)をしている人をよく見かける。ポケモンGOのアプリが配信されてからというもの、連日のようにポケモンGOをやりながら車や自転車を運転して事故を起こしたというニュースが流れている。駅など

『「イスラム国」の内部へ 悪夢の10日間』ISとは何者なのか? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『「イスラム国」の内部へ 悪夢の10日間』ISとは何者なのか?

イラクとシリアに跨るISの支配地域の内情がどの様なものであるのかは多くの謎に包まれている。メディアなどで語られる情報は反IS側の陣営によるプロパガンダ的な要素を含んだ物が多く、その内容のどこまでが真実であるのか釈然としない点も多い。IS側もこれまでジャーナリストを支配地域に入れる事を拒んできた。多くのジャーナリストがIS の戦闘員に拘束され殺されている。本書

ダウントン・アビーよりすごい? 波瀾万丈の群像劇『評伝 ウィリアム・モリス』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

ダウントン・アビーよりすごい? 波瀾万丈の群像劇『評伝 ウィリアム・モリス』

彼女に出会ったのは13年前、ロンドンの美術館だった。エキゾティックな顔立ち、豊かな黒髪、挑発するような強い瞳。その絵がひときわ目を引いたのは、画家とモデルの間に横たわる張りつめた雰囲気が、初めて見る私にも感じられたためだった 画家の名は、D.G.ロセッティ。ラファエル前派を代表する画家にして詩人である。モデルは、ジェイン・モリス。全ヨーロッパへと広がるアーツ

『箸はすごい』身近すぎて知られていない二本の魅力 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『箸はすごい』身近すぎて知られていない二本の魅力

14億人もの人が箸をつかっている。しかも、ほぼ毎日である。一度ではない、2、3回は使う。ここまで頻繁に利用する道具はそう多くはない。 だいたい物心がつく前後から箸に慣れ親しみはじめるが、主に教わるのは正しい箸の持ち方としつけである。矯正用の箸を使って、持ち方を叩き込まれる。「指し箸」「迷い箸」「刺し箸」などやってはいけないマナーを厳しく教えこまれる。 そうし

『医師の感情』医師たちは現場で何を感じているのか 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『医師の感情』医師たちは現場で何を感じているのか

どんなときでも冷静で、感情的になることはけっしてない――医師に対してそうしたイメージを抱いている人は少なくないだろう。だがもちろん、彼らも人の子であり、そうしたイメージそのままであるわけがない。ふだんはどんなに冷静な医師であっても、ときとして強力な感情に圧倒されてしまうことがあるはずだ。それならば、医師は現場で実際にどんな感情を抱いているのか。そして、そうし

『ザ・パーフェクト 日本初の恐竜全身骨格発掘記』 完璧な化石をめぐる完璧な物語 書影

サイエンス / 生物・自然

『ザ・パーフェクト 日本初の恐竜全身骨格発掘記』 完璧な化石をめぐる完璧な物語

北海道むかわ町穂別で日本古生物学史上最大級の発見があったのは2003年4月。それから10年以上が経過した2013年7月17日、日本初の恐竜全身骨格発見が北海道大学のプレスリリースで世間に伝えられた。誰がどのようにしてこの化石を発見したのか、公表までの10年間研究者たちは何をしていたのか、このハドロサウルス科の新種と思われる恐竜は7000万年以上前どのように日

個性派が勢揃い 『すごいぞ! 私鉄王国・関西』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

個性派が勢揃い 『すごいぞ! 私鉄王国・関西』

阪急、南海、阪神、近鉄、京阪。この5つの私鉄の存在は、関西を「私鉄王国」と言わしめてきた。歴史から技術、列車デザイン、沿線文化に至るまで、なぜこんなに個性派揃いになったのか。なんで? そのミステリーを解き明かしつつ、個性ぶりをカラーの写真と図版満載で、各電車びっちりとまとめてある。「知らなかった〜」と何度もうめきながら読める、熱のこもった一冊だ。さて、出発進

『ジハーディ・ジョンの生涯』テロへの恐怖が、新たなテロリストを生み出す 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ジハーディ・ジョンの生涯』テロへの恐怖が、新たなテロリストを生み出す

鋭利な刃物を手にした黒装束の男と、オレンジ色のジャンプスーツで手を縛られた人質。ネットを通して瞬く間に拡散した、あまりにも残忍な光景を多くの人は忘れることなどできないだろう。 その後、凄惨な行為はフランスを始めとする世界各地へと飛び火し、さらに多くの犠牲者を出すことにもなった。まさにテロの連鎖というべき状況を断ち切っていくためには、我々は何をするべきなのか?

エネルギー界の池上彰が『原油暴落の謎を解く』 書影

社会 / ビジネス

エネルギー界の池上彰が『原油暴落の謎を解く』

ガソリン、ジェット燃料、ペットボトル、プラスチック、アスファルト、化粧品、チューインガム、レジ袋。一見、何の関わりも無さそうだが、これら全て石油を原料としている。様々な場面で活用され、私たちの生活の基盤となっている原料はどのように価格づけされているのか。 2014年後半から下落し始めた原油価格。高値で推移していた頃の1/3以下までに一時価格は下落した。今回の

マーシュ先生ありがとう『脳外科医マーシュの告白』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

マーシュ先生ありがとう『脳外科医マーシュの告白』

脳外科医のやり甲斐と厳しさ、イギリスの医療制度のひどさ、マーシュ先生の清々しい生きざま、そして、こういった内容が流れるように綴られる美しい文章。読みながら、さまざまな感慨を込めた溜め息をなんどもついた。素晴らしい本だ。 タイトルどおり、イギリスの有名脳外科医・マーシュ先生のエッセイ集である。25のエピソード、それぞれにマーシュ先生の思い出がつまっている。タイ

『国際秩序』 キッシンジャーが語る世界史 書影

社会 / 世界史

『国際秩序』 キッシンジャーが語る世界史

イギリスが国民投票でEU離脱を決め、アメリカでは銃の乱射事件が頻発し、南シナ海の緊張は高まり続け、イスラム過激派は世界のあらゆる都市でテロにより多くの命を奪っている。当たり前だと思っていた秩序は、失われてしまうのだろうか。 不確実性がいやましている未来へより確実な一歩を踏み出すために、本書『国際秩序』は歴史という名の道標を与えてくれる。昨日までの世界はどのよ

『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』常識を嗤い続けた男 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』常識を嗤い続けた男

1989年、日本人がやり投げで「幻の世界記録」である87メートル68センチを投げたことを覚えている人はいるだろうか。「疑惑の再計測」の結果、87メートル60センチに記録は改められたが、当時の世界記録に6センチ差にせまる大記録であった。その後はWGP(ワールドグランプリ)シリーズを日本人で初めて転戦し、総合2位の成績を収めた。 男の名は溝口和洋。世界記録更新も

『和の国富論』 神の見えざる手の前に 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『和の国富論』 神の見えざる手の前に

いまあえて、国富論。ただ本書は、“神の見えざる手”ではなく、アダムスミスがその前提とした「他者への同感」「自己規制」にフォーカスされている。いままさに限界に達しつつある薄っぺらな自由競争信仰を、乗り越えるためのヒントを提供した本だ。今回のイギリス国民投票は、他者に同感する能力の欠如によって、自由競争の勝者が敗者から手痛いしっぺ返しを食らったようにもみえる。そ

『秘録 CIAの対テロ戦争 アルカイダからイスラム国まで』元CIA副長官の回想 書影

人物 / 事件・事故

『秘録 CIAの対テロ戦争 アルカイダからイスラム国まで』元CIA副長官の回想

本書はCIAの元副長官、長官代理を歴任したマイケル・モレルの回想録だ。ページ数はざっと300ページほどで軽いタッチで書かれた作品に思える。政府高官の回想録では日本の元外交官、 東郷和彦 が書いた『北方領土交渉秘録』や ライス元国務長官 の『ライス回想禄』などの方が重厚感がある。書かれていることが今一つ核心からそれているような、ぼやけた印象を受けるのだ。 しか