
『震災ビジネスの闇』 新刊ちょい読み
本を読んでいて気持ちが悪くなったのは、久しぶりだ。東日本震災では直後に強盗や暴動を起こさない日本人の行儀の良さが世界のメディアに取り上げられ、評価された。しかし、その裏側では隙を狙ったブローカーたちが獲物を狙っていたのだ。3月中旬、とあるリフォーム会社が求人広告を出していた、それは東北で震災被害を受けた住宅へのリフォーム営業の求人であった。家はリフォームする
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本を読んでいて気持ちが悪くなったのは、久しぶりだ。東日本震災では直後に強盗や暴動を起こさない日本人の行儀の良さが世界のメディアに取り上げられ、評価された。しかし、その裏側では隙を狙ったブローカーたちが獲物を狙っていたのだ。3月中旬、とあるリフォーム会社が求人広告を出していた、それは東北で震災被害を受けた住宅へのリフォーム営業の求人であった。家はリフォームする

以前、ツイッターで「クラシック音楽は三味線音楽と比べて粋ではない」と呟いたら、えらい勢いで反論されたことがある。クラシック音楽だって粋な楽曲があるというのだ。ボクにとって粋というのは真面目でも重厚でも芸術的でもない、むしろその逆の諧謔性・外連味のある・戯画化した何者かである。クラシック音楽は粋ではないと言ったのは、むしろ褒め言葉でもあったのだ。九鬼周造の名著

日本将棋連盟会長の米長邦雄氏が、コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」に負けたということが話題になったのは、つい先月の1月14日のこと。それからまだ1ヶ月も経たないというのに、早くも対局した本人によって、その内幕の全貌が明かされた。それが本書『われ敗れたり コンピュータ棋戦のすべてを語る』である。 決戦の裏側に隠された興味深いエピソードが、いくつか挙げられて

文字通り「山はどうしてできるのか」を説明した本だ。副題の「ダイナミックな地球科学入門」もまさにそのとおり。事象はダイナミックであり、本書はあくまでも入門書である。プレートテクトニクス、プルーム、溶岩ドーム、大地溝帯などの用語を自力で説明できる人にとっては物足りない内容であろう。しかし、そうでない人にとっては格好の入門書だ。とりわけ、中高生にとってはワクワクす

今日のHONZ本編は栗下直也のマニアックな3冊だ。そのうちの一冊は『反社会的勢力』。たしかに最近、新刊新書コーナーで暴力団関係の本を目にする。とりわけ溝口敦は池上彰風の「です・ます調」で書かれた『暴力団』を2011年9月に出版して版を重ねている。さらに紳助事件を書き加えて新書化した『山口組動乱!!2008-2011』を2011年12月に、そして今月『抗争』を

画期的なフレームワークを軸にビジネスモデルを生み出すために創られた本書、1年半前越しで日本語版が出版された。オープンイノベーションだったり、本好きにはおなじみのロングテール、フリーミアムなど、ちょっと昔に話題になったビジネスモデルをイラストとフレームワークをうまく使って描かれている。動画を見てもらえば、よくわかる。 (フレームワークをダウンロードしたい方は

民藝とは、いまから1世紀ほど前に、思想家の柳宗悦らがつくった言葉である。日本が近代化し、機械生産に巻き込まれようとしていた時代に一石を投じたもので、時代に対するアンチテーゼのようなものが始まりであったという。 地域の素材や特性をいかし、昔ながらの手法で作られた日常の生活道具 ― 焼物、染織、漆器、木竹工などに光をあてる。そんな民藝の精神に、今ふたたび関心が集

都内及び首都圏で引っ越しを検討しているなら、住宅情報紙を読むよりも、まずは本書を読むといいんじゃないか!? 20代か30代の女性に聞いたところ、今郊外に住んでいる人が10年後にもあんまり郊外に住みたいと考えていないようだ。傾向として、地方に住みたいという割合が多い。郊外では若者の定住意識が弱い。多額のローンを組んで、念願のマイホームを建てたお父さんとしては、

本書の物語はサブプライムローンの裏で大儲けした人々に迫った傑作『 世紀の空売り 』のために行ったインタビューを振り返るところから始まる。「物語」とは言っても、本書は当然ノンフィクションだ。統計だらけのスカウト戦略だろうが、CDS、CDO等の金融用語が飛び交うサブプライムローンだろうが、ヨーロッパの国家財政危機だろうが、この男の手に掛かれば目の離せない一級の物

しまった。完全に食わず嫌いだった。この言葉について、もっと早く知っておくべきだった・・・ 本書は今、注目を集めつつある「ゲーミフィケーション」の何たるかを説明した一冊。ちなみに、ゲーミフィケーションとは「ゲームの要素をゲーム以外のものに使う」ということ。ゲーム以外のことに使うのだから、ゲームの話ではない。僕はそこを大きく見誤っていた。 いったいゲームのどのよ

新潮社には「波」、岩波書店には「図書」、吉川弘文館には「本郷」など、老舗の出版社は月刊PR誌を発行している。たとえば「波」の場合、自社の新刊書評だけでなく、海堂尊や高橋秀実などによる連載を10本掲載している。A5版128ページ。電車の中で読むのには最適の重さと体裁だ。3年間で2500円。1冊70円。これで送料込みなのだ。もちろん、本屋の店頭で無料で手に入れる

エジソン、ヘミングウェイ、ゴーギャン、ロックフェラー、チャーチルなど11人の偉人たちの業績や人柄の「おさらい」と、その不肖の息子たちについての歴史エッセイだ。小見出しを少し抜き出してみよう。雰囲気がお判りになるだろう。「酒と女に溺れるケネディ家最後の息子」「エジソンの名を使って詐欺」「たった3ドル50セントの万引きで逮捕(アル・カポネの息子)」「鬱病、麻薬常

著者は元自衛隊、武器補給処技術課研究班勤務。Wikipediaによると、陸上自衛隊は1998年までだが、武器補給処は霞ケ浦、需品補給処は松戸、施設補給処は古河・通信補給処は大宮・衛生補給処は用賀という具合に5つの駐屯地に機能分散をしていたのだという。そこでは調達や補給だけでなく、調査研究も行っているのだという。だから補給所じゃなくて補給処なんだと妙に納得。

世界で初めて電卓が登場したのが1962年。各桁ごとに1から9のボタンが並んだフルキーボード方式で、重さは14Kgほどあったそうだ。それから50年。最近ではすっかり姿を見ることも少なくなってしまったが、その歴史には驚くべきほどの技術革新があったという。 本書はそんな電卓の50年を、写真で振り返る一冊。著者は電卓の蒐集家。これまでに国内外あわせて1000以上の電

一見、ビジネス書っぽいタイトルが付いているのだが、いわゆるマイクロビジネスをテーマとした本ではなく、これからの時代を生き抜くための思考の原理原則が描かれている一冊。問われているのは、わたしたちの生活、社会がこれまでの延長線上でやっていけるのか、否かということだ。 著者はいわゆる小商いの事例として、昭和30年に商店街によく見られた帽子屋の例を取り上げる。当時、

ありふれた食べ物でありながら、地球上のどんな果物よりも多くの人に消費され、何億という人々を飢えから救っているバナナ。本書は、そんなつつましやかな果物の壮大な歴史物語だ。この本を紹介するにあたって、「そんなバナナ!」とだけは言いたくないのだが、驚きの連続である。 19世紀後半のアメリカにおける需要拡大を背景に巨大化するバナナ複合企業と、中央アメリカにおけるバナ

局のアナウンサーから転身して社会派キャスターになった女性はそれほど多くはない。その中でも長野智子は確固とした地位を築いたひとりである。『踏みにじられた未来』は担当した番組が関わってきた、冤罪事件ではないかと思われる事件を検証したものである。 2001年、強姦未遂容疑で10人の高校生が逮捕された。後に「御殿場事件」と呼ばれるこの案件を「ザ・スクープ」という番組

今日の「新刊ちょい読み」は、芥川賞でも直木賞でもなく、小学館ノンフィクション大賞の受賞作品をご紹介。 時を遡ること40年前の1972年、アジアで初めての冬季オリンピックが札幌の街で開催された。このオリンピックには、台湾という国が宿命のように背負い続けてきた苦難と、激しい政治的抗争の爪痕が刻まれていたのだという。 オリンピック開催の前年、台湾が国連を脱退した。
出版社/メーカー: 筑摩書房 メディア: 新書 著者は惜しまれながら04年に廃刊した『噂の真相』(ウワシン)の元副編集長だ。「ウワシン」といえば、首相の買春検挙歴疑惑のスクープなどタブー知らずの中身が売りだったが、本書ではメディアと皇室、右翼、企業、芸能界との関係に踏み込み、「メディアが書けない」タブーはなぜタブーなのか、その内側に迫っている。 正直、ぱらぱ

一年くらい前からシェアハウスなどの新感覚な動きには注目していたのだが、本書は日本全国31の様々な事例が一望できる一冊だ。住居としてのシェアのみならず、自宅を核としてテーマ特化型のサロンの役割を持たせるもの、協働でソリューションを行うものまであるという。これらが、日常編集家なる著者の手によって「住み開き」と命名されている。 日常/非日常の境界線を意図的に編集す

平野太呂の写真集である。平野太呂を知っているひとは雑誌「フイナム」を読んでいるような鋭角なひとであろう。鋭角と聞いて、もしかすると父上は平野甲賀ではないかと思ったひとは重度の本マニアである。ともあれ、この写真集に登場するのは細野晴臣、横尾忠則、フードディレクター野村友里、DJクボタタケシ、マスタークラフツマン西條賢など14人のクリエータたちだ。クリエーターは

先日、都内で久々に緊急地震速報が鳴った。その後、大事には至っていない模様であるが、ヒヤリとした瞬間でもあった。この緊急地震速報、NHKから流れてくるチャイム音の方なのだが、ゴジラのテーマを元に作られたのではないかという噂があったそうだ。震災直後の時期には、Twitterなどでも随分と話題にのぼっていたらしい。 本書に、その真相が書かれている。チャイム音を製作

書名に「いちばんやさしい」とある。「一番優しい」でも「一番易しい」でもない。「いちばんやさしい」とあるところがいかにも「やさしそう」ではないか。なにしろこの本は“地球の中にはドロドロに溶けたマグマがつまっている”と考えている人に地球の本当の姿を理解して貰うために書かれた本なのだ。「文系だから」とサイエンス本を敬遠しがちな人も楽しめるはずだ。 日本に住む我々が
さすがにこの雑誌を買ったのは今月号が始めてだ。目次を転記するので、その理由がお判りになるであろう。これで1890円。ちなみにデジタル版も1890円。 巻頭言 世界一のタワーに使われた基礎 桑原 文夫 総 説 業平橋押上地区開発事業「ライジングイーストプロジェクト」の概要 各 論 世界一の観光・電波塔としての設計ポテンシャル 〃 「東京スカイツリータウン」にお

このような文章が「東大話法」の典型であると、いきなり切り捨てられている。まず、「世界は」と言うことによって責任関係を曖昧にしていること、そして「我が国は・・・しなければなりません」という一文に見られるような、自分たちが「国」を代表しているいう意識。この話法こそ間違いの元凶であるというのが、著者の主張だ。しかも、切り捨てているのが現役の東大教授であるというから

有名な報道写真がまとめて見られ、文章で時代背景も解説されている。20〜21世紀を概観するのに手頃な一冊と思い、気軽にページを眺めるつもりで読み始めたが、思わずじっくりと読み込んでしまった。 写真自体があまりに力強いのだ。写真の持つ物語が深く、ずっしりと重い。添えられた解説も適度に詳しく、写真を見ながら、いちいちもの思いに耽ってしまう。人の憎しみと苦しみ、たく

「ウチは無宗教です」と言う人がいるが、日本は八百万の神達が集まる国であり、初詣は神道、葬式は仏教、結婚式はキリスト教といった調子で宗教のフィールドをうまく住み分けているのが現状だ。 ペンブックスシリーズは茶の湯、神社仏閣、戦国武将など知的好奇心をくすぐられる特集が多いが今回はキリスト教。現在の世界人口は約70億人であるが、その内キリスト教徒の数はローマ・カト

人工知能によるチェスプレイヤーと言えば、1997年に世界王者カスパロフを破ったIBMのディープブルーが有名であるが、本書の主役であるチェス指し人形「ターク」はディープブルーより機能が豊富だ。なにしろ、“チェス指人形”とある通り、人形自らが物理的にチェスの駒を動かすことができる。しかも、一度対局が始まってしまえば、数十手対局が進む間、人間がその人形に触れる必要

ああ、肉が食いたい。しかも飛びきり上等なヤツ。飽きるほどお節を食べたわけではないのだが、そろそろ禁断症状が出ている。本書によると、こういう状況に陥ることをミートハンガーと呼ぶらしい。 しかし本書の著者こそが、真のミートハンガー・キングだ。人はなぜステーキを食べる時に牛について熱く語らないのか ― ワインを飲む時には、ぶどうの話を存分にするのに。そんな疑問を感

年末恒例の"来年こそはシリーズ"の中で買ったものなのだが、年が変わると気も変わるもので、すっかり放り出しそうになっていた一冊。まあ人間には、向き不向きというものがありますからね。 しかし本書を少し読み始めると、自分の走る走らないはさておき、十分に楽しめる一冊であるということが分かった。古今東西の「走り」の歴史が一望できる、壮大な文化人類史となっている。 なぜ

今年最後のちょい読みは、うん、この話題で。いかん、間違えた。ウンコの話題で!本書は寄生虫博士・藤田 紘一郎氏の自叙伝的な一冊。その人生の節目節目に、大きくウンコが関与する。 子供の頃は、芋や野菜の肥料に使うためのウンコ運びをしながら、すくすく育った藤田少年。医学部時代に、トイレでばったり出会った教授に声を掛けられ、熱帯病の調査に帯同したのがウンのつき。整形外

猟奇的という文脈のもとに、古今東西の異貌のオブジェを博物館さながらに紹介している一冊。キュレーションのお手本のような構成だ。 本書には解剖学ヴィーナス、デカルトの頭蓋骨、腐敗屍体像にカタコンベ、奇形標本などのグロテスクな写真がふんだんに登場する。それでいて上品さが損なわれていないのは、対象人物や、その思想へのリスペクトを欠いていない著者の語り口によるものであ

たかが数十年と言われるインターネットの歴史であるが、先祖を遡れば19世紀まで行き着くという。いわゆるモールス符号などでおなじみの通信手段「電信(テレグラフ)」のことだ。本書はヴィクトリア朝時代のインターネットとも言われる「電信」の歴史を、ダイナミズムたっぷりに描いた一冊。 歴史は繰り返すとはよく言ったものだが、その模様が生き生きとしたエピソードとともに伝えら

フィリップ・ボールが、完全に量産体制に入っている。「自然が作り出す美しいパターン」三部作の『 かたち 』『 流れ 』、年明けに発売される『枝分かれ』。その合間をぬって『音楽の科学』ときた。それにしても1年間に4冊の本は、なかなか出せるもんじゃない。 それはさておき、本書『音楽の科学』は、心して掛かった方が良い一冊だ。なにしろ全620頁による圧巻のボリューム。

本書を「ちょい読み」で紹介するには気が引けるのだが、まだ丸ごと一冊読み終わっていないので、年末年始用に速報しておきたい。本書は今年最後のおススメ本になるかもしれない。それも飛び切りのおススメ本なのだ。山内・横井・宮本・荒川など魅力的な登場人物、それぞれのゲームタイトルとゲーム機のビジネス・ディテール、セレンディピティと戦略。素晴らしいビジネスケース・スタディ

本書は『 パラサイト・イブ 』などでお馴染みの小説家、瀬名秀明氏によるサイエンス本の書評集だ。「朝日中学生ウィークリー」紙に連載されていたものが中心とのことで、非常に読みやすい。 一口にサイエンス本といっても様々なわけなのだが、脳科学、生命科学から宇宙、評伝本までが幅広くカバーされている。その中でも本書の特徴は、選書の確かさにあるだろう。ためしに生き物のパー

「緒言」冒頭の一行目は「アメリカの読者にはC・J・Sトンプソン教授(本書の著者)を紹介する必要はあるまい」だ。しかし、ほとんどのアメリカ人はこの人を知らないであろう。「Nature」のデータベースを調べると、つい最近亡くなったという記事があるのだが、そもそもこの「Nature」の記事は1943年8月28日付けである。本書とは関係ないが驚くのは「Nature」

きっとすぐに誰かが きちんとしたレビュー を書くと思うが、その前に露払いを勤めさせてもらう。著者の鈴木智彦はヤクザ専門のライターで、 こんな本 や こんな本 、そしてHONZ代表・成毛眞絶賛の こんな本 も書いている。 そんなヤクザの専門家がなぜ福島第一原発へ潜入しなければならなかったのか。やはりそこにもヤクザの存在が絡んでいた。 暴排条例は地方公共団体が行

編集部から献本いただいた。著者は村木事件で証拠改ざんをした前田特捜検事とともに逮捕・起訴され、懲戒免職となった大阪特捜部長だ。じつは村木事件にはいささか思い入れがある。「村木厚子さんを支援する会」による声明文の末席に加わったこともある。人は見かけによらないといわれるが、村木さんだけは別だ。あらゆる犯罪からもっとも遠くにいる人だ。取調べでその人柄を見抜けなかっ

じつは「ちょい読み」どころではなく、最後まで興味深く読んだ。正規の書評にしない理由は本書がかなり専門的だからだ。難読本ではないのだが、大量に最新情報が詰め込まれていて、対象となる読者は一般人というよりは、分子生物学を目指す学生のための入門書という感じなのだ。逆にいうと非常に丁寧に、一切の手抜きなくオートファジー研究の最前線について記述している。 オートファジ