ノンフィクションはこれを読め!

2022年の記事

ARCHIVE

237記事

『家族』『旧皇族の宗家・伏見宮家に生まれて』あるふたつの《家族の形》 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『家族』『旧皇族の宗家・伏見宮家に生まれて』あるふたつの《家族の形》

標準家族(世帯)という概念は、1960年代、家族構成としていちばん多かった会社員の夫と専業主婦の妻、子どもが二人の四人家族をいい、それが国の統計や税金に使われるようになったという。だがいまは、周りを見渡しても標準家族はほとんどいない。家族も様変わりした。 翻訳家でエッセイストの村井理子は、不仲だった兄の死の連絡を受ける。東北の地で一人、父子家庭を築いていた兄

『さよなら、野口健』愛憎入り混じる人間ドラマ。新しい人物ノンフィクションの誕生 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『さよなら、野口健』愛憎入り混じる人間ドラマ。新しい人物ノンフィクションの誕生

本書の書き出しは穏やかではない。なにしろ京都で名高い縁切り神社の話から始まるのだ。そこは「悪縁」を切ることのできる最強の縁切り神社として知られる。訪れた人は、境内にある巨石が参拝者によって糊付けされた形代(白いお札)でびっしりと覆われているのに圧倒されるだろう。 著者は神社のすぐ近くまで足を運びながら、縁が本当に切れてしまうことにためらいを覚え、結局行くのを

今週のいただきもの:2022年3月27日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年3月27日週

昨日はお花見をしようと、 三溪園 の有料シートを買っていたのですが、あいにくの雨でした。三溪園は季節ごとに藤や蓮など、様々な花を楽しむことができ、人も多くないのでおすすめです。花見のお弁当の用意はしていたので、お重に詰めて気分だけでも味わいました(ベランダから1本だけ桜の木が見られます) お弁当にちなみ、できたてはもちろん、冷めてもおいしいスペアリブのバーベ

先月出た本 2022年4月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2022年4月

私事で恐縮ですが、先月末で日販を退職しました。現在お休みを満喫しながら、この先のことを考えています。そんなわけで、これまでのようにランキングを使った情報提供が出来なくなりましたが、ネット上の情報を駆使しつつ「先月出た本」「これから出る本」をお送りしていきたいと思います。 3月はウクライナ侵攻に揺れた月でした。ウクライナとはどんな国なのか、プーチンはどんな人な

「他人の価値」から自分を取り戻す『当事者は嘘をつく』 書影

人物 / 社会

「他人の価値」から自分を取り戻す『当事者は嘘をつく』

すごい本が出た。 いきなりであるが、この本の最後の文を紹介したい。 でも、その窮屈な型を破って、新しい型を生み出すサバイバーがきっと出てくる。私の語りの型は、誰かの生き延びるための道具となり、破壊され、新しい型の創造の糧になる日を待っている。(200ページ) この締めくくりの文に、この本の性格が表されている。性暴力のサバイバーである著者は、さまざまな本を読み

現代のがん治療は間違えているのか?『悪いがん治療:誤った政策とエビデンスはどのようにがん患者を痛めつけるか』は現役腫瘍内科医からの挑戦状だ! 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

現代のがん治療は間違えているのか?『悪いがん治療:誤った政策とエビデンスはどのようにがん患者を痛めつけるか』は現役腫瘍内科医からの挑戦状だ!

ある種の快感を抱きながら読んだ。漠然とそうではないかと勘ぐっていたことを、ものの見事に説明してもらえたからだ。がんの新薬が次々と登場している。もちろん画期的な薬剤もあるが、喧伝されているほどのことはないのではないか。腫瘍内科医がその真実をさまざまな角度から検証していく。 第1部「がんの薬の効果はどれくらいで、値段はどれくらいか」の冒頭では、いかに「がんの薬は

『最後の砦となれ』未知のウイルスとの闘いの記録 書影

医学・心理学 / 社会

『最後の砦となれ』未知のウイルスとの闘いの記録

「あなたはこの先、コロナ禍のことを忘れてしまうだろう」 もし面と向かってこんな予言をされたら、あなたはどんな反応を示すだろうか。「そんなのあり得ない」と反発するかもしれない。だがこれには先例がある。1918年から1920年にかけて猛威をふるったスペイン風邪である。 スペイン風邪は史上もっとも多くの人間を死に至らしめた感染症だ。にもかかわらず、同時代の表現者た

『武器としての教養』教養がある人が最後には勝つ 書影

教養・雑学 / 著者自画自賛

『武器としての教養』教養がある人が最後には勝つ

私と同じ1955年生まれの高校や大学の同級生たちが定年を迎えた。その彼らにあまり元気がなく、家で燻っていることが多い。国立大学の65歳定年制度で名誉教授になった友人たちも同様、みな手持ち無沙汰の様子なのだ。 加齢を恐れている友人も少なくないのであるが、私はそんなことないと思う。というのは、年を取るほど若い人たちにはない「教養」が増え、色々なことに新しい見方が

今週のいただきもの:2022年3月20日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年3月20日週

大岡川で船に乗り、お花見をしてきました。神奈川県外の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、大岡川は3.5kmのプロムナードに500本ほどのソメイヨシノが並びます。満開まであと少しといったところでしたので、次の週末も楽しめるでしょう。 川からの見どころはもちろん、両側からのびるソメイヨシノなのですが、他にも注目してほしいポイントがあります。道慶橋の近くにあ

爆笑につぐ爆笑!オモシロ論文集『すばらしきアカデミックワールド』を読まずに死ねるか! 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

爆笑につぐ爆笑!オモシロ論文集『すばらしきアカデミックワールド』を読まずに死ねるか!

『すばらしきアカデミックワールド オモシロ論文ではじめる心理学研究』という真面目なタイトルに騙されてはいけない。ひかえめに言って、驚きにつぐ驚き、爆笑につぐ爆笑の一冊だ。 総論文数、数え間違えていなければ84編が真面目に紹介されている。必ずしも心理学に限定されている訳ではないが、すべての論文が素晴らしくおもろい。怪しげな論文がない訳ではないが、きちんとそう注

地球人口が100億人に迫り、地球の負荷が激しくなっていく未来の危機にどう対抗すべきなのか──『魔術師と予言者――2050年の世界像をめぐる科学者たちの闘い』 書影

サイエンス / 生物・自然

地球人口が100億人に迫り、地球の負荷が激しくなっていく未来の危機にどう対抗すべきなのか──『魔術師と予言者――2050年の世界像をめぐる科学者たちの闘い』

この『魔術師と予言者』は書名だけみるとファンタジィ小説だが、その実態は2050年、人口が100億に達した時の地球環境の危機について考察する大著である(総ページ数は700を超える)。現在の地球人口は約77億人だが、すでに限界ぎりぎりの地球の資源状況が人口が増えればここからさらに厳しくなっていくのは火を見るより明らかだ。 このままだと、食料も、エネルギーも、水も

『逢える日まで 3.11遺族・行方不明者家族10年の思い』心はあの時から地続きなのだ 書影

社会 / 事件・事故

『逢える日まで 3.11遺族・行方不明者家族10年の思い』心はあの時から地続きなのだ

“十年ひと区切り”と人は言う。時間的な里程標として、十年は目安になりやすいのかもしれない。 2021年3月、「震災から十年」という文字があちこちで躍った。 “もう”なのか“まだ”なのか、個人の気持ちを慮ることより、未曽有の天災に対して区切りをつけようという世間の思惑が垣間見えた。 本書は、宮城県を中心に東北6県を発行区域とする河北新報社が東日本大震災10年特

「今月読む本」特別編。HONZ EXHIBITIONトークイベントで紹介した本、一挙公開! 書影

今月読む本 / おすすめ本レビュー

「今月読む本」特別編。HONZ EXHIBITIONトークイベントで紹介した本、一挙公開!

2022年3月10日から4月15日まで、日本橋浜町のHAMAHOUSEにてHONZ EXHIBITIONが開催中です。HONZでレビューした選りすぐりのノンフィクション500冊を壁いっぱいに展示し即売するという壮観な企画です。 2011年にHONZが誕生してから10年。昨年7月には10周年記念本を出版しましたが、折しも世の中は新型コロナの蔓延中で、イベントを

これから出る本 2022年4月 書影

併せて読まれたこの一冊

これから出る本 2022年4月

ウクライナへの軍事侵攻が始まり、書店店頭でも平和を祈る動きが広がっています。テレビでも活躍するロシア研究者の著作が重版され、ウクライナやロシアの歴史を考える本、また、地政学の本なども注目を集めています。私たちが小さい頃から慣れ親しんできた絵本『てぶくろ』はウクライナの民話であることで、平和について考えるきっかけになる絵本と話題になりました。 これから出る本に

『自分で始めた人たち』人を通して地域を知る面白さと、「民主主義」を自分の言葉で語ること 書影

教養・雑学 / 社会

『自分で始めた人たち』人を通して地域を知る面白さと、「民主主義」を自分の言葉で語ること

何かの入り口にいるような予感。芽吹く感じ。社会が、企業が、個人の生活がどんどん変わっていく。不確実な時代と呼ばれているが、芽吹きを肌で感じながら日々を生きている。 本書『自分で始めた人たち』にも、同じような空気感があった。政治に頼らず、市民が自治体と手を繋いで、地域を変える旅に出る。コロナ騒動の最中、また個人の尊厳が注目されている今、地域がどう動き出している

『二本の棘 兵庫県警捜査秘録』元捜査一課長が振り返る痛恨の未解決事件 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『二本の棘 兵庫県警捜査秘録』元捜査一課長が振り返る痛恨の未解決事件

「アマチュアは勝ちを語り、プロは負けを語る」という。 本書は、捜査のプロが負けについて語ったものだ。負けた記憶は、警察を辞めた今もなお、棘のように刺さったまま著者を苛んでいる。 刑事にとって事件は「解決して当然」のものであり、未解決はすなわち敗北を意味する。著者が捜査一課として深く関与した2つの事件は、いずれも未解決に終わった。その事件とは、警察庁広域重要指

エネルギー問題から読み解く『新しい世界の資源地図』 書影

世界史 / ビジネス

エネルギー問題から読み解く『新しい世界の資源地図』

2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにし、世界に激震が走った。そしてその傍ら、エネルギー市場も世界的なショックの渦中にある。 戦時においての戦略物資、石油・天然ガスの重要性に私たちは改めて直面している。第二次世界大戦から80年がたつが、エネルギーを巡る地政学のダイナミズムという本質は、21世紀も変わっていない。 そんな絶妙なタイミングで「ピ

『mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来』

新型コロナウィルスCOVID-19のパンデミックは多くの人たちに災厄をもたらした。どうやら定期的に訪れるこのコロナウィルスのパンデミックに有効な予防方法は伝統的な公衆衛生の手法以外には人類は用意できていなかった。COVID-19に先立って地域的な流行を発生させたSARSコロナウィルスやMARSコロナウィルスは流行が終息したこともあったが、ワクチン開発の試みは

『ヒトの壁』ミクロとマクロを行き来する柔軟な脳ミソでヒト社会を考察 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ヒトの壁』ミクロとマクロを行き来する柔軟な脳ミソでヒト社会を考察

ウィルスの大きさでヒトを見てみたら? こうきたか。これが、養老孟司の視点だ。新型コロナウィルスの顕微鏡写真がテレビ画面に映し出されるのを何度見たことだろう。だが、あの倍率でアナウンサーの顔を映したらどうなるか。ウィルスの倍率でヒトを見ることのズレに着目するのである。 養老孟司という人物への説明は不要であろう。当たり前だと思っている事象に物申す。ミクロとマクロ

今週のいただきもの:2022年3月6日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年3月6日週

横浜ハンマーヘッド には、やたらとビールの品揃えがいいセブンイレブンがあります。先日、そこでブラッドオレンジを使ったビールを見つけました。ブラッドオレンジジュースを飲んでいるような、ビールを飲んでいるような何とも不思議な気持ちになるのですが、これがとてもおいしいんです。 ブラッドオレンジが赤いのは、アントシアニンを含むからで、柑橘類としては珍しい特徴となって

もしも、あなたが『児童養護施設で暮らすということ  子どもたちと紡ぐ物語』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

もしも、あなたが『児童養護施設で暮らすということ 子どもたちと紡ぐ物語』

もしも、あなただったら、どのように書くだろうか? 児童養護施設で暮らす、その体験を、どうやってことばにするだろうか? 『児童養護施設で暮らすということ』の著者・楢原真也は、200ページにわたる文章で、いっかんして慎重さを失わず、「恥」や「闇」とされかねない部分に踏みこむ。 十数年前に、それまで深く知ることのなかった施設という現場に入ってから、思いもよらないよ

HONZ EXHIBITION 開催!                  3/10‐4/15@HAMAHOUSE 書影

NEWS

HONZ EXHIBITION 開催! 3/10‐4/15@HAMAHOUSE

昨年夏、HONZは10周年を迎えました。この10年で紹介した本は2000冊を超えます。その中から厳選した100冊のレビューを集めて『決定版‐HONZが選んだノンフィクション』を上梓しました。 今回、本書+さらなるオススメ本を加えてなんと500冊を揃え、普段から店内で本を販売している 東京都中央区日本橋浜町3丁目のカフェ「ハマハウス」 にて展示・販売いたします

今週のいただきもの:2022年2月27日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年2月27日週

都市デザイン横浜展 へ行ってきました。官民一体となって開発が進められている横浜ですが、始まりは1971年まで遡ります。全国に先駆け、市役所内に「都市デザイン」担当を設置し、都市に美しさを求めるだけではなく、歩いて楽しいまちづくりや歴史的資源の保全・活用などに取り組んできました。この展覧会では、横浜の50年の取り組みや魅力について知ることができるでしょう。 展

『おもちゃ』彼女が転落した理由 書影

人物 / 社会

『おもちゃ』彼女が転落した理由

この人をみるたびに、「アンバランス」という言葉が思い浮かぶ。元参議院議員の河井案里である。芸能人や文化人にもアンバランスな人は多いが、そうした人々特有の才能の過剰さからくるバランスのなさと、彼女から感じるそれはニュアンスが異なる。 人目をひく派手な外見ながら、どこか無理をしているような雰囲気があるところがバランスを欠いた印象を与えるのかもしれない。本書を読ん

『働かないアリに意義がある』集団に「働かないメンバー」がいることで「想定外」に対処できる 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『働かないアリに意義がある』集団に「働かないメンバー」がいることで「想定外」に対処できる

2020年に世界を襲った新型コロナウイルスは、人間という「コロニー(集団)」に何をもたらしたのだろうか?本書は進化生物学者がアリを対象として、マクロ生物学の観点から生物社会の本質をわかりやすく解説した秀逸な啓発書である。 アリ社会が持つ精妙な組織が、きわめて誠実で地道な観察によって明らかにされる。さらに自然界の正確な観察から炙り出されてくる、人間の持つ思い込

先月出た本 2022年3月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2022年3月

急転したウクライナ情勢により、世界中が混乱に陥っています。未だ収束に至らない新型コロナウイルス、世界的な物流危機など先が見えない事ばかりが続きます。2月の書店店頭も苦しい状況が続いています。ではノンフィクションではどんな本が売れていたのでしょうか。 日販オープンネットワークWINから2月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタ

『老いを育む』ために必要なこと 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『老いを育む』ために必要なこと

残念ながら一度しかお目にかかったことがないのだけれど、柏木哲夫先生は大阪大学医学部の大先輩である。いうまでもなくホスピスのパイオニアで、母校の人間科学部教授として「老いと死」を教えておられたこともある。その柏木先生が老いについての本を書かれた。 タイトルにあるように、老いは「育む」のがいいのではないかという考えが本全体にいきわたっている。「育む」=「大事に育

今週のいただきもの:2022年2月20日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年2月20日週

先日、いちご狩りへ行ってきました。いちごは石器時代から食べられていたようで、遺跡から種が出土しています。日本へは江戸時代末期にオランダから、観賞用としてもたらされたました。現代ではそのまま食べてもおいしいいちごですが、酒飲みのためのデザートを見つけたのでご紹介しましょう。 ヨーグルトをキッチンペーパーに包み、ザルとボールで水切りします。いちごをグラニュー糖大

感動!夢ってかなうものなんや『さばの缶詰、宇宙へいく』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

感動!夢ってかなうものなんや『さばの缶詰、宇宙へいく』

それやったら、ここで作ったさば缶を宇宙に飛ばせるんちゃう? 宇宙食、つくれるんちゃう? 小浜水産高校、失礼ながら地方の底辺職業高校だった、の生徒がつぶやいたひと言だ。それが17年間の歳月を経て実現した。こう書いているだけで、本の内容を思い出しながら涙がにじんできてしまう。 主人公は、福井県立小浜水産高校「浜水」-後に高校再編に伴って若狭高校海洋科学科になる-

『アンソロ・ビジョン 人類学的思考で視るビジネスと世界』好奇心の使い方で、大きなリスクを未然に防ぐ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『アンソロ・ビジョン 人類学的思考で視るビジネスと世界』好奇心の使い方で、大きなリスクを未然に防ぐ

ノンフィクション好き、とりわけ未開の地に住む部族の物語などが好きな人にとっては、実に役立つ一冊と言えるだろう。人類学的な思考法を獲得することが、ビジネスにおいて有効な知的ツールになりうるというのだ。 著者のジリアン・テットは、かつてフィナンシャル・タイムズの編集長も務めた人物。学生時代に文化人類学を専攻し、タジク人の婚姻儀礼を観察することで磨いたまなざしを、

『ソ連兵へ差し出された娘たち』“数え年で18歳以上、未婚” その慟哭は今も聞こえる 書影

社会 / 日本史

『ソ連兵へ差し出された娘たち』“数え年で18歳以上、未婚” その慟哭は今も聞こえる

1945年8月9日、ソ連の対日戦参戦によって満州開拓団の日本人移民は祖国に捨てられた。日本に引き揚げるまでの悲惨な生活は、さまざまな小説や手記によって明らかにされてきた。だが、女性たちの経験を語ることはタブーとされてきた。 著者は中国残留孤児の取材中、ソ連兵が日本人女性を襲うという蛮行の裏に、日本人集団内の支配関係によって強いられた犠牲があったことを知る。開

『ヘルシンキ 生活の練習』人生はスキルの練習 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ヘルシンキ 生活の練習』人生はスキルの練習

近所を散歩していて、なんだか最近お洒落な女の子が増えた気がするなぁと思っていたのだが、オープンまもない北欧カフェがお目当てらしいとわかり、なるほどと納得した。 世に北欧好きは多い。シンプルで温かみのあるデザインの家具、女性の社会進出が日本よりも進んでいること、子どもたちの高い学力などが好印象の理由だろうか。SpotifyやIKEA、H&M、LEGOといった企

人と出会う豊かさが集まった『送別の餃子』 書影

社会 / 民俗・風俗

人と出会う豊かさが集まった『送別の餃子』

遠い異国での出来事は、慣れている場所ではないからこそ記憶に残りやすいのだろうか。旅先で、そこに住む人の様々な親切や優しさ、悪意や意地の悪さなどが、子供の頃のような鮮烈な気持ちとともに、強く残った経験は多くの人にあるのではないだろうか。 この本は、そういった異国の地での強烈な経験とともに出会った、「忘れられない人」が書かれた本だ。作者の井口淳子さんは音楽学、民

これから出る本 2022年3月 書影

併せて読まれたこの一冊

これから出る本 2022年3月

今年は寒い日の多い冬になりました。コロナ感染者数が激増し、まん延防止措置がとられ始めてから他の小売りと同様に書店店頭も来客数が少ない日が続いているようです。一方で、テレビドラマで取りあげられたことをきっかけに古典名著の『自省録』が売れ始めるなど面白い現象も起きています。 これから出る本のリストはこれまでとうって変わって、日本人作家のノンフィクションやルポルタ

今週のいただきもの:2022年2月13日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年2月13日週

好きでも嫌いでもない食材って誰しもあると思うのですが、私はグリーンピースがそうです。先日、旬の食材ということで何となく買い、混ぜご飯にしたところ認識を改めました。とってもおいしかったです。 材料はグリンピース、バター、醤油、ご飯だけで、簡単に作れます。フライパンでバターを溶かし、房から出したグリーンピースを入れましょう。火が通ったら醤油で味を整え、ご飯を加え

『破綻の戦略 私のアフガニスタン現代史』日本人が現地で見つめたアフガニスタンの混迷 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『破綻の戦略 私のアフガニスタン現代史』日本人が現地で見つめたアフガニスタンの混迷

読み始めてすぐ意外な記述を目にした。イスラム主義組織、タリバンの創設者であるムハンマド・ウマルの演説、それも彼が国際テロ組織、アルカイダを率いたウサマ・ビンラディンに騙され大量殺戮に加担したことを懺悔する演説の録音があるというのだ。さらに意外なのは、ウマルがアフガニスタンの社会を正し平和を求めて立ち上がった人物だった、という評価だ。ウマルは日本では多くのテロ

『地方メディアの逆襲』共に生きて、共に歩む。これからのメディアのあり方 書影

社会 / 事件・事故

『地方メディアの逆襲』共に生きて、共に歩む。これからのメディアのあり方

記者の仕事は過程がそのまま表に出てくるのが魅力的だ。記者が何に問題意識を持ち、どう行動して、どんなメッセージを込めるのか。好きな報道や作品には、記者の怒りや悲しみ、執念さえも感じることが出来る。記者一人ひとりの存在自体が物語性を帯びていて面白い。 では、「地方紙」の記者はどうか。全国紙の記者と地方紙の記者の違いについて、私は本書を読むまで考えたことがなかった

『当事者は嘘をつく』性暴力被害の「新しい語り方」を切り拓く 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『当事者は嘘をつく』性暴力被害の「新しい語り方」を切り拓く

傷跡から血が滲み出ているような一冊だ。 読み終えた後もずっと「凄いものを読んだ」という余韻が消えない。早くも今年のベスト級の一冊に出会ってしまった。本書は当事者ノンフィクションの傑作である。 著者は「修復的司法」の研究者である。修復的司法というのは、1970年代に欧米を中心に広まった紛争解決のアプローチで、従来の刑事司法では、国家が犯罪者を処罰することで問題