ノンフィクションはこれを読め!

2022年の記事

ARCHIVE

237記事

『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』文庫解説 by 今井 むつみ 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』文庫解説 by 今井 むつみ

「ヒュッゲ」ということばをこのごろよく耳にする。ウィキペディアでは、「ウェルネスかつ満足な感情がもたらされ、居心地がよく快適で陽気な気分であることを表現するデンマーク語およびノルウェー語である」と解説している。家族や友人とおいしい飲み物やおつまみを囲みながら居心地の良いひと時をゆっくりすごす時間を「ヒュッゲな時間」と言うようである。『翻訳できない世界のことば

『アダム・スミス 共感の経済学』「見えざる手」の前提条件としての「共感」 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『アダム・スミス 共感の経済学』「見えざる手」の前提条件としての「共感」

アダム・スミスと言えば、「見えざる手」の『国富論』(1776年)で有名な、「近代経済学の父」である。『国富論』は、貿易による貴金属と貨幣の蓄積が国富だと考えられていた当時の重商主義に反対して、国民にとっての富の源泉は労働だと説いた、今日まで読み継がれている古典的名著である。 それにも関わらず、スミスは歴史上最も誤解された経済学者だと言われている。その理由は、

エネルギー問題の道標『エネルギーをめぐる旅』 書影

教養・雑学 / 世界史

エネルギー問題の道標『エネルギーをめぐる旅』

帯には赤字で「驚嘆必至の教養書」「エネルギーがわかると世界がわかる」、これは面白そうだ。しかもAmazon Audibleで聴けるとあって、移動中や家でくつろいでいる時に読みすすめられるのもうれしい。 著者はJX石油開発でオイル事業に長年携わってきた古館恒介さん。帯文にもあるとおり、エネルギーを軸にこれからの世界を理解するための必読の書だ。 正直、日本人でエ

誰知るや。書店員の凄み 『千年の読書』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

誰知るや。書店員の凄み 『千年の読書』

本書は、梅田蔦屋書店で人文コンシェルジュを務める書店員・三砂慶明氏が200冊を超える古今東西の本を縦横無尽に紹介した本だ。「幸福」「生きづらさ」「働き方」「お金」「食」「死」といったテーマについて、まるで本棚の本を開陳するように自らの体験を交えながら血の通った論考を綴っている。 この本を読むと、自分が抱えている悩みは人類史上で必ず誰かが経験している、という事

『AI監獄ウイグル』史上最悪の「AI監獄」は誰によってつくられたか 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『AI監獄ウイグル』史上最悪の「AI監獄」は誰によってつくられたか

「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」とは、ドイツの哲学者、テオドール・アドルノの言葉だ。アウシュヴィッツを生んだ文明の野蛮さを乗り越えることなしには、人間の存在も野蛮なままだと彼は考えた。 だが残念ながら21世紀も事態は変わっていない。それどころか「より洗練された野蛮」とでも呼ぶべき事態が出来している。本書は中国の新疆ウイグル自治区で進行中の恐

『問題の女 本荘幽蘭伝』その名を知らぬ者はなし。明治から大正に咲いた仇花 書影

人物 / 社会

『問題の女 本荘幽蘭伝』その名を知らぬ者はなし。明治から大正に咲いた仇花

2019年NHK大河ドラマ『いだてん』に登場する「本庄」という男っぽい女性記者のモデルは本荘幽蘭ではないかと推測される。挿話収集家の平山亜佐子は当時の新聞記事を渉猟し、彼女の一生を克明に辿るスリリングな一冊を著した。 明治12年、幽蘭は元久留米藩士で実業家の本荘一行(かずつら)の二女として誕生した。本名は久代。元芸者の妾と暮らしていた父のもとで幼少期を過ごし

『休息の科学』科学的な「オフ」のススメ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『休息の科学』科学的な「オフ」のススメ

良い仕事をするには、頭をフルに使わなければならない。そのためには合間に効果的な休みを入れる工夫も必要だ。ポカンとして頭の活動を完全に休止するような時間である。仕事をしているのが「オン」とすれば、スイッチを切った「オフ」の状態だ。 人間は動物の中でも特に大きな脳を所有している生き物である。動物だから、頭だけでなく体の動きにも大いに制約される。頭ではオーケーを出

マッチョ系(?)医師の正しき患者道『ぼくとがんの7年』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

マッチョ系(?)医師の正しき患者道『ぼくとがんの7年』

闘病記というものは,どのような人がどのような気持ちで読むのだろう。自分が,あるいは親戚や友人が病気になったときに参考にする,あるいは共感を得たいがためにといったところだろうか。しかし,『ぼくとがんの7年』はよくある闘病記とは少し違う。より幅広い人たちにとって読む価値のある<闘病記>に仕上がっている。 数年前に上梓した『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社,

『NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来』 書影

アート・スポーツ / 社会

『NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来』

本書はNFT(Non-Fungible Token)の特性についてアート・法律・会計・税務など各ジャンルのスペシャリストが解説し、これから拡大するビジネスと社会を提示した一冊だ。 NFTアート購入のニュースが相次いで報道されている。2021年3月、Twitter創業者ジャック・ドーシーの初ツイート画像が291万ドル(約3億円)で落札。2022年1月にはジャス

今週のいただきもの:2022年1月30日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年1月30日週

最近はいただきものの蟹が冷凍庫にたくさんあるので、贅沢に使っています。蟹玉にしたり、白菜と一緒に中華風旨煮にしたりしましたが(手前味噌ながらどちらもおいしい)、ベストヒットは蟹とじゃがいものグラタンでした。材料は蟹、じゃがいも、バター。薄力粉、牛乳、コンソメ、チーズです。 まず、バター20gを溶かして、薄力粉大さじ3を炒めます。馴染んだら牛乳300ccを加え

先月出た本 2022年2月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2022年2月

正月休みが好調だったことで好転の期待が持たれた1月でしたが、オミクロン株の拡大によるコロナ患者の再拡大は止められず大きくブレーキがかかりました。1月後半になると緊急事態宣言下のような巣ごもり需要も見えてきています。1月はどんな本が発売され、売れていたのでしょう。 日販オープンネットワークWINから1月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクショ

『Invent & Wander ジェフ・ベゾス Collected Writings』はるか彼方を見据える力 ベゾスの思考の本質に迫る 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『Invent & Wander ジェフ・ベゾス Collected Writings』はるか彼方を見据える力 ベゾスの思考の本質に迫る

本書は、ジェフ・ベゾス自らの言葉による初めての本として発売された。 ベゾスといえば、米アマゾンの創業者であり、世界一の資産家としても有名だ(『フォーブス』「世界長者番付」2021年版)。最近は、自身が保有する宇宙開発企業ブルーオリジンの初の有人飛行に参加したことでも話題となった。 本書は、パート1に、1997年のアマゾンのNASDAQ(米店頭株式市場)上場以

『誉田哲也が訊く!警察監修プロフェッショナルの横顔』知られざるプロ集団「チーム五社」とは 書影

事件・事故 / TV・動画

『誉田哲也が訊く!警察監修プロフェッショナルの横顔』知られざるプロ集団「チーム五社」とは

他人にホラ話を信じさせるコツは、9割の嘘に1割の真実を混ぜることだという。これが刑事ドラマとなると、そうはいかない。合言葉は「3割のリアル」。7割の嘘に3割の本当が求められるのが刑事ドラマなのだ。そんな刑事ドラマのリアリティを支える知られざる職人集団。それが「チーム五社」である。 五社英雄といえば、時代劇におけるリアリティを追究した監督として知られる。肉を斬

『怪異猟奇ミステリー全史』老後の楽しみ、永久保存版ブックガイド 書影

教養・雑学 / 世界史

『怪異猟奇ミステリー全史』老後の楽しみ、永久保存版ブックガイド

私が小学生のとき、と言えば半世紀も前の話になるが、教室には必ず学級文庫があった。本の裏表紙には貸出カードが付いていて、借りた人の名前を書いて、誰がどの本を読んだかが分かるようになっていた。同じ本を読んだ友だちと内容を話し合うのがとても楽しかったのをよく覚えている。学級文庫をコンプリートすることが自分の課題だった。 その時代、本を読むことが好きな子は、みんな同

『ばらまき 河井夫妻大規模買収事件 全記録』前代未聞の買収事件を総力を挙げて追う! 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『ばらまき 河井夫妻大規模買収事件 全記録』前代未聞の買収事件を総力を挙げて追う!

発覚は文春砲だった。2019年10月末、週刊文春は7月の参院選広島選挙区を舞台にした公職選挙法違反の記事を掲載した。 初当選した河井案里議員がウグイス嬢に対し法定上限額の倍を渡しており、選挙を実質仕切っていたのは夫で現職の法務大臣、河井克行衆議院議員だと報じたのだ。発売日の翌日、克行は安倍晋三総理大臣へ法相の辞表を提出する。 『ばらまき 河井夫妻大規模買収事

『メルケル 世界一の宰相』『聖子 新宿の文壇BAR「風紋」の女主人』『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』ー彼女たちがいなかったら 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『メルケル 世界一の宰相』『聖子 新宿の文壇BAR「風紋」の女主人』『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』ー彼女たちがいなかったら

世界経済フォーラムが昨年出した男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数で、日本は156カ国中120位。政治に関してはなんと147位だ。 だが世界には素晴らしい女性政治家がいる。『メルケル 世界一の宰相』は様々な危機からドイツを救った首相の評伝だ。昨秋、16年続いたアンゲラ・メルケルの政権は終わりを迎えた。最後の仕事が新型コロナ対策だったのは印象的だ。素早いロッ

あの ”THE わきまえない女” 谷口真由美の大問題作!『おっさんの掟:「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』 書影

社会 / 新刊超速レビュー

あの ”THE わきまえない女” 谷口真由美の大問題作!『おっさんの掟:「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』

ヒョウ柄の似合うおばちゃん、 谷口真由美 さんをご存じだろうか。日曜の朝に放映されている「サンデーモーニング」(TBS系)でコメンテーターをしておられるのをご覧になった方もおられるだろう。厳しい意見をバシッと述べられるので、恐ろしい人だと感じている人が多いかもしれない。無理もない。じつは、私もお目にかかる前まではそう思っていた。しかし、その実態はまったく違う

『大人のいじめ』それはリベラル競争社会の裏の顔 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『大人のいじめ』それはリベラル競争社会の裏の顔

激辛カレーを無理矢理食べさせる。校内の物置小屋に閉じ込める。プール清掃時に石を投げつけたり泥水をかけたりする。殴る、蹴るは日常茶飯事……。2019年、神戸市立東須磨小学校で起きていたいじめの一部だ。子供同士ではない。教員のあいだで発生した大人のいじめである。記憶に新しい方も多いのではないか。 この不祥事の紹介を皮切りに、増加の一途をたどる職場いじめのメカニズ

『「切り札」山下泰裕は日本柔道界を変革できるか』暴力、隠ぺい、男尊女卑、反面教師の組織論 書影

アート・スポーツ / 社会

『「切り札」山下泰裕は日本柔道界を変革できるか』暴力、隠ぺい、男尊女卑、反面教師の組織論

書名をみて「ん?」と思った。 「切り札?変革できるか?答えはもう出ているのでは……」 首をひねりながら手に取ったのだが、はたせるかなこのタイトルは反語だった。 書名の脇に添えられた、しかめ面のイラストがそのことを物語っている。 著者は月刊誌『近代柔道』を主な舞台に、30年以上にわたり柔道界を見続けてきたジャーナリスト。本書は日本柔道界への渾身の提言である。

今週のいただきもの:2022年1月23日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年1月23日週

先日、おいしいパンチェッタをいただき、少しずつ大事に食べていました。無くなりかけた時にふと思ったのは、自分でも作れるのではないかということ。家庭で作るものなので生食はさすがに避けますが、加熱して食べるのならいけると思ったのです。 まず、フォークで数カ所刺した豚の塊肉(バラや肩ロースなど)に、塩(肉の重さの10%)、好みのハーブをまぶします。肉をのせたトレイを

『最後の角川春樹』角川文化を生み出した “メチャクチャ”な出版人 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『最後の角川春樹』角川文化を生み出した “メチャクチャ”な出版人

「あんなに有名な会社の社長がコカインを密輸して捕まるなんて。日本の大人は薬物まみれなのかもしれない」。1993年夏、世間知らずの12歳の私は角川春樹の「コカイン密輸事件」に衝撃を覚え、妄想を膨らませ続けていた。その1週間ほど前に角川が監督した映画『REX 恐竜物語』を見たばかりだった。一緒に見た友人は「社長だけど映画監督でもあるから薬物くらいやっていてもおか

『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』絶滅の鳥、最後の一羽は江戸を旅した? 書影

世界史 / 日本史

『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』絶滅の鳥、最後の一羽は江戸を旅した?

ドードーという鳥を知っているだろうか。『アリスの不思議な旅』に出てきた変な鳥を思い浮かべる人、あるいは「ドラえもん」で絶滅鳥類として知った人もいると思う。鳥とは思えない太って滑稽な姿は一度見たら忘れられない。17世紀半ばにインド洋モーリシャス島で絶滅した飛べないハトの仲間である。 ある日著者はロンドン自然史博物館のサイトで「ドードーが日本に旅をしていた」とい

ここまで来ている脳とAIの関係『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線』と『生命知能と人工知能 AI時代の脳の使い方』をあわせ読み 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

ここまで来ている脳とAIの関係『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線』と『生命知能と人工知能 AI時代の脳の使い方』をあわせ読み

脳科学はおもしろい。なにしろ新しい知見がどんどん発表されるし、それを紹介する本も目白押しだ。今回はそんな中から脳と人工知能について書かれた本を二冊まとめて紹介したい。 一冊は、『新・情報7DAYSニュースキャスター』(TBS系)のコメンテーターとしても活躍する東大薬学部教授・池谷裕二と、その共同研究者である東大附属病院の医師・紺野大地による『脳と人工知能をつ

今週のいただきもの:2022年1月16日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2022年1月16日週

先日ガッツリ風邪を引き(PCRは陰性)、寝込んでおりました。家族に看病してもらっていたのですが、私が治ったと思ったらその家族へ伝染すという始末。風邪の時はスープをひたすら飲んでいました。特に元気が出たのは牛テールのスープです。 材料は牛テール、にんにく、ネギ、大根、ぜんまいの水煮だけ。まず、牛テールを茹でこぼして表面をきれいにします。次に、牛テール、にんにく

『スノーボードを生んだ男 ジェイク・バートンの一生』一枚のおもちゃを世界的なスポーツに 書影

アート・スポーツ / 人物

『スノーボードを生んだ男 ジェイク・バートンの一生』一枚のおもちゃを世界的なスポーツに

雪の上を遊ぶおもちゃの板を、一つのスポーツ、一つのビジネス、一つのカルチャーに育てあげたアメリカ人の自伝である。泥臭く地べたを這いつくばりながら0から1を作り上げたThis is Americaとも言えるストーリーである。その男の名は、ジェイク・バートン、スノーボードのメーカーとしてもっとも有名で巨大なブランドを立ち上げた男である。 はじめに断っておくが、評

保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020-2021 書影

医学・心理学 / 社会

保健所の「コロナ戦記」TOKYO2020-2021

混乱の記録である。同時にきわめて貴重な記録でもある。人類の歴史に残る新型コロナウイルスとの闘い。その最前線で何が起きていたのかが本書で初めて明らかになった。 著者は保健所と東京都庁の感染症対策部門の課長として、新型コロナ対策の第一線で指揮をとった公衆衛生医師である。メモ魔を自認する著者の記録は詳細をきわめる。保健所の苦境は報道などを通じ多少は知っているつもり

これから出る本 2022年2月 書影

併せて読まれたこの一冊

これから出る本 2022年2月

2022年がスタートし、芥川賞・直木賞が発表されるなど出版業界も賑やかなニュースが続いています。ノンフィクションに絡んだニュースとしては、アンネ・フランクの隠れ家の密告者が特定された事が世界的な話題になりました。この模様を描いたノンフィクション、『THE BETRAYAL OF ANNE FRANK』は原著発売に続き、邦訳版が2月に発売になることが発表されて

『古代中国の24時間』英雄たちの歴史の陰に民衆の変わらぬ日常があった 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『古代中国の24時間』英雄たちの歴史の陰に民衆の変わらぬ日常があった

「昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか」という言葉がある。暗い場所から明るい場所はハッキリ見えるが、明るい場所から暗い場所は見えないだろうという意味だ。この言葉は、歴史の捉え方という観点から見ても、非常に示唆に富む。 中国古代史、中でも秦や漢の時代について語るとき、真っ先に脳裡に浮かぶのは、始皇帝、項羽と劉邦、三国志の武将など、その時代の太陽ともいえる人たち

批判、嘲笑、挫折。底をつく資金 『ディズニーランド 世界最強のエンターテインメントが生まれるまで』 書影

人物 / ビジネス

批判、嘲笑、挫折。底をつく資金 『ディズニーランド 世界最強のエンターテインメントが生まれるまで』

よくできた物語は、幸せな家庭の食卓のようなものだ。誰かの意図によらず会話が転がって、やがては笑顔でつつまれる。破格の大事業を成し遂げた人の生涯も同じように、自力だけでなく何かに導かれるものなのかもしれない。世にも稀なる遊園地、ディズニーランドについて書かれたこの本を読んで私はそう感じた。 スティーブジョブズの本を読んだときにも、同じようなことを感じた記憶があ

『SS将校のアームチェア』ユダヤ系歴史家の調査が 「一般のナチ」の姿に迫る 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『SS将校のアームチェア』ユダヤ系歴史家の調査が 「一般のナチ」の姿に迫る

本書の著者、ダニエル・リーは第2次世界大戦を専門とする歴史家で、ユダヤ系英国人でもある。あるとき彼に依頼が舞い込んだ。依頼主はヴェロニカという女性だ。彼女の母が故郷のチェコで購入したアームチェアを修理に出した際、座面の中からナチスに関する書類が出てきたという。依頼は、なぜそんな物が椅子の中に隠されていたのかを調査してほしいというものだった。 書類は1933〜

『イントゥ・ザ・プラネット』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『イントゥ・ザ・プラネット』

本書は洞窟ダイバーで水中探検家、作家、写真家、映画監督であるジル・ハイナースの生涯を描いた一冊である。 1965年、カナダのトロントで生まれたジルは、幼少期から探検が好きだったという。彼女の記憶に鮮烈に残るのは、家族旅行で出かけたコテージでのできごとだ。二歳だった彼女は、コテージ前の桟橋から足を滑らせ、湖に落ちてしまう。水中に落ちたジルは、本能的に呼吸を止め

『言葉を失ったあとで』耳を傾け言葉を引き出す 「聞く」ことのプロの対話 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『言葉を失ったあとで』耳を傾け言葉を引き出す 「聞く」ことのプロの対話

最高の聞き手同士が対話をするとどうなるか。本書はその希有な例である。他人から話を聞くプロである2人が、「聞く」ことの実際を語り合った。 著者の1人である信田さよ子は、カウンセリングの第一人者。原宿に開業したカウンセリングセンターを訪れる人々の話に耳を傾け、依存症やDV(ドメスティックバイオレンス)、児童虐待などの問題にいち早く取り組んできた。 もう1人の著者

「大地変動の時代を生き延びるために知ってほしい岩石の世界『岩石と文明』 書影

サイエンス / 生物・自然

「大地変動の時代を生き延びるために知ってほしい岩石の世界『岩石と文明』

地面には土と岩があり、少し掘ってみると硬い岩石がある。こうした土や岩を研究するのが地質学で、既に300年近い歴史をもつ。地質学者にとって岩石は、地球のなりたちや未来まで予測できる魅力溢れる物質なのだ。 本書は地質学の第一人者が、岩石の不思議を古今東西にわたる人類の文明に引き付けて雄弁に語る。実は、人間は地球上のあらゆる岩石から文明を創ってきた、と言っても過言

過激主義組織はどのように人を勧誘し、虜にするのか?──『ゴーイング・ダーク 12の過激主義組織潜入ルポ』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

過激主義組織はどのように人を勧誘し、虜にするのか?──『ゴーイング・ダーク 12の過激主義組織潜入ルポ』

この『ゴーイング・ダーク』は、イスラム聖戦主義者やキリスト教原理主義者、白人のナショナリストや極右の陰謀論者、過激なミソジニストたちの組織など、12の過激な主義主張をかかげる組織に著者が潜入したさまをつづるルポタージュである。 潜入が実施された期間はおおむね2017年から18年にかけての2年間で、その間に著者はオンライン活動への参画を中心としながら、そうした

今週のいただきもの:2021年12月26日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2021年12月26日週

あけましておめでとうございます!本年もよろしくお願いいたします。 年末年始は地元横浜で過ごしました。今回、横浜生まれ横浜育ちの私でも初めての経験だったのが、中華街で子豚の丸焼きを食べたことです。8人以上集まらないと注文できず、親戚たちと久しぶりに会うため、ここぞとばかり予約しました。 この子豚のコースは中華街の 大珍楼 で味わえます。バルコニー付きの個室で、

先月出た本 2022年1月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2022年1月

久しぶりに各地の人出が話題になった年末年始となりました。出版業界は前年がコミック特需という状態だったので前年比では苦戦しそうですが、これからの動きが楽しみなところです。12月はどんな本が出て、売れていたのでしょう。 日販オープンネットワークWINから12月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成し

いまを生きる、すべての人に『東京の古本屋』 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

いまを生きる、すべての人に『東京の古本屋』

「不要不急か――不要不急です」。 得体のしれないことばに、わたしたちは振りまわされてきた。そんなことばを2年間使いつづけている日本医師会、その建物そばの書店「BOOKS青いカバ」の店長・小国貴司さんは、2020年3月、つぶやいていた。 それからおよそ2年、東京の古本屋では何が起きていたのか。 ライターの橋本倫史(はしもとともふみ)は、10軒の古本屋に3日間ず