
『こわいもの知らずの病理学講座』情報の洪水に溺れる前に
うちは多分、がん家系だ。父は珍しい腎臓がんに始まり、胃がん、皮膚がんの果てに88歳で末期の肺がんが見つかりこの世を去った。最近、弟に初期の胃がんが見つかり内視鏡で切除した。かなりまずい。 医師の告知が普通になり、インターネットで情報が簡単に手に入るようになった。命に関わるだけでなく生活の質(QOL)を向上させるためにも、正しい病気の知識を解説した本が欲しいと
HONZ副代表
(2024年当時)
466記事

うちは多分、がん家系だ。父は珍しい腎臓がんに始まり、胃がん、皮膚がんの果てに88歳で末期の肺がんが見つかりこの世を去った。最近、弟に初期の胃がんが見つかり内視鏡で切除した。かなりまずい。 医師の告知が普通になり、インターネットで情報が簡単に手に入るようになった。命に関わるだけでなく生活の質(QOL)を向上させるためにも、正しい病気の知識を解説した本が欲しいと

男の料理の王様といえばカレーだ。市販のルーで簡単に作るところから始まり、ニンニクやショウガ、チョコレートやコーヒーを入れ始め、果てはスパイスの調合に凝り始める。 病膏肓に入ってしまった男がいる。“東京カリ~番長”というカレーの出張料理ユニットの料理主任で研究家として何冊も本を上梓している水野仁輔だ。彼は日本で普通に食べられているカレーのルーツを知りたいという

2017年8月28日、反捕鯨団体のシー・シェパードは今年の捕鯨シーズンは 日本の南極調査捕鯨船の妨害を行わないと発表 した。日本の監視技術に太刀打ちできないのが中止の理由だという。まるで本書の発売と映画の封切りを見計らったような時期の発表だ。だがこの問題は解決したわけではない。 本書は9月9日から全国で順次公開されるドキュメンタリ映画 『おクジラさま~ふたつ

8月の半ば、夏たけなわだというのに雨続きで肌寒い。どうやら今年の盆休みは家のなかでゲームか読書、という人が多いらしい。書店に行けば子供連れの家族で混雑し、レジは長蛇の列で驚かされた。 8月3日に行われたHONZ朝会に来られなかったメンバーも(前夜の夜会の二日酔いも含め)オススメの3冊は用意していてくれたようだ。 面白そうな本ばかりなので、これから夏休みの方は

「春の研修会」からはや5ヶ月。新しくメンバーになる人あれば退会する人ありで、久しぶりに顔を合わせましょうと言う話になったのが7月の初頭。仲野徹の上京にあわせて日程は決まったのだが、その仲野から「前日は夜会にしよう」という爆弾発言があった。 じゃあ会場はここで、と成毛が決めたのはメキシコレストラン。酒はビールとテキーラしかない、ですって!! はい、予想通り、時

昭和14年1月の深夜、霞が関の海軍省の地下の一角では、なにやら怪しげな実験が進行していた。「水からガソリン」をつくるというこの実証実験は、山本五十六海軍次官や「特攻の生みの親」ともいわれる大西瀧治郎大佐などの立会いのもと、三日三晩行われ、最終日に成功を収めた。 実験を行っていたのは「街の科学者」として名を馳せていた本多維富という初老の男だ。彼は稀代の詐欺師で

1967年、銀座にひとつのクラブが誕生した。「数寄屋橋」という、銀座の象徴のような名のクラブを仕切るのは弱冠二十歳のママ、園田静香。熊本から上京し、奇跡のようにわずか3カ月で店を立ち上げた。思い込んだらひとすじなのは、熊本生まれで、女ながら肥後もっこすの血かもしれない。 月日は流れ「クラブ数寄屋橋」はこの春50周年を迎えた。今も変わらない美貌と人気の静香ママ

ラフカディオ・ハーンと聞いてピンと来なくても、『怪談』を書いた小泉八雲という外国人だと言えば分かる人は多いだろう。 1890年(明治23年)に来日し、日本の文化に魅入られ亡くなるまでの14年間、英語教師をしながら日本の物語を欧米に紹介し続け、晩年には帰化して日本人となった。 来日する以前、ハーンはアメリカで新聞記者として活躍する傍ら、物語やエッセイなども精力

凄い本を読んでしまった。信じていた司法への信頼がガラガラと崩れていく。私はなんという国に暮らしているのだろう。 本書は「文庫X」として大ヒットとなった 『殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』 (新潮文庫)の著者、清水潔が、元裁判官で 『絶望の裁判所』 『ニッポンの裁判』 (ともに講談社現代新書)の著者、瀬木比呂志との対談を希望したことで

子どものいない者、あるいは遠い昔に子育てを終えた人からすると、PTAは秘密結社のように見える。子を人質にとられた親が、学校と教育委員会に労働力を捧げるようなものだ、と思っていた。 杉江松恋はフリーランスのライターで主にミステリ小説の評論を書いている。身の丈は180センチを超し、体重は100キロオーバー。トレードマークは金髪に髭にサングラス。それなのに話し方は

大げさな話でなく「本の雑誌」が無かったら、今の私も無かっただろう。 本の虫だった高校時代、何人かの本好き友人はいたものの新しい情報に飢えていた時、週に数回通っていた書店で新しい雑誌を見つけた。「本の雑誌」というシンプルなネーミングで中を開いてみると、新しい本の情報や本にまつわるモロモロの話が書かれているではないか。とりあえずと買い求め、読んですぐファンになっ

「紺屋高尾」という落語がある。紺屋に勤めている染物職人、久蔵が最高位の花魁の高尾太夫に岡惚れする話だが、金を溜めて花魁に会えるというその日、案内をしてくれる人から、決して手を見せるなときつく言い渡される。紺屋の職人は藍の中に手を浸すので、手首から下は真っ青なのだ。だが、花魁はその律義さに惚れて…。いや、いい噺である。 『色という奇跡』の口絵の最初は、その藍の

よその家の生活は気になるものだ。スーパーマーケットの買い物かごの中身や捨てたゴミの種類など、芭蕉ではないけれど「隣は何をする人ぞ」という興味は誰もが持っている。ましてや性生活ともなれば、口には出せないが興味のあるところだ。 その思いが嵩じて、アメリカのデンヴァー近郊に住むジャラルド・フースはモーテル自体を買ってしまった。屋根裏に細工し通風孔と見せかけた穴から

本が好きだ。物心ついてから、ずっと身近に本があり、気が付けば本に関する仕事をしていた。だが、私はどれだけ「本をつくる」という仕事に従事している人について知っていたのだろう。 まずは作家が原稿を書く。小説でもノンフィクションでも実用書もそれは変わらない。編集者の手に渡り、その作品が商品としての本になるかどうかが決定する。ここが始まりだ。 次には活字だ。本を開け

春の合宿を行った際、今までで一番影響を受けた本を紹介せよ!という命令が成毛眞より下った。下は大学生から上は還暦オーバー組まで、「本が好き」なのは変わらないが、幼いころから好きだった人、大人になって目覚めた人など、ひとそれぞれ。 ♬育ってきた環境が違うから~♪というわけで、かなり個性的で興味深いラインナップになった。絶版本も多いけど、今の時代、図書館や古本屋さ

スーパーマーケットの他人の買い物かごが気になる。レジで前に並んだ人のかごの中身が冷凍食品だけだと「仕事が忙しいのかな」とか、野菜や肉の種類で「今晩は餃子か」なんて考えるのは楽しい。 さて本書の著者、キャスリーンも私と同じ性分らしい。ある日、ある女性のスーパーのカートの中が気になった。インスタント食品と出来合いのソース、冷凍食品が詰め込まれ、まともな食品が何も

諸般の事情で新年会ができずに、新メンバーの顔合わせもまだだったので、思い切って一泊泊まりの研修にしようと、3月4日・5日、箱根に集まってもらいました。参加者は事務方の 仲尾夏樹 を入れて25名と大所帯。下は大学生から上は還暦過ぎまで、わいわいと会議室に集合しました。 13時に集合でしたが、当日は高速道路が事故のため大渋滞で車のメンバーは少々遅れ気味。待ち合わ

待望の『ギリシア人の物語Ⅱ』が上梓された。急速に隆盛し急速に衰退したギリシア人の歴史を著者は三巻にまとめると最初に語っている。ならば第二巻は物語のピークだ。 民主政治の創始者であるギリシア人、それもとくにアテネで活躍した政治家たちは現代を映す鏡となっている。民主主義はどうあるべきか、リーダーはどのような人が好ましいか、民衆は政治にどこまで関与すべきか、など昨

約二年前、長期間ひきこもり、家族に暴力をふるう子供を説得し、精神病院へ移送するという仕事について記した『「子供を殺してください」という親たち』(新潮文庫)が上梓された後、大きな反響があったそうだ。「子育てのノウハウを教えてほしい」という相談に対し著者の押川剛は言う。 私が得意とするのは、壊れてしまった家族への危機介入であり、子供を立派な人間に育てるためのプロ

2017年2月15日の朝、 「考える人」休刊 のニュースをネットで見つけた。つい5日前にメルマガの最新号のコラム 『「鈴木伸子『シブいビル――高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトルモア)」』 を読んだばかりだったので驚いた。出版不況が長く叫ばれている中、休刊の報には慣れてしまったが、いよいよ「考える人」までそうなったか、と心底がっかりしてしまった。 週

昨年の初夏、父が亡くなった。ある日、突然動けなくなり末期の肺がんだと診断された。担当医師は「夏を越えるくらいまで」という。告知をどうするか、私たち家族は悩んだ。 本書は日赤医療センターで、進行がん、特に肺がんの治療を専門とする國頭英夫医師が、日本赤十字看護大学の1年生に行ったコミュニケーション論の講義録である。 看護師を目指してこの大学に入ったとはいえ、つい

2007年8月24日、名古屋市内に在住の31歳の女性会社員、磯谷利恵さんが帰宅途中に男三人に拉致されて殺害され、岐阜県の山中に捨てられるという事件が起きた。犯人の一人が直後に警察に電話をかけて自首し、女性の遺体が発見されたことで事件が発覚した。 後に「名古屋闇サイト殺人事件」と名付けられたこの事件の犯人たちは、犯罪を行う仲間を募集するインターネットサイト「闇

大きな声では言えないけれど、誰もがみんな疵を持つ。ああ、こんなエピソード、こんな記憶。 もしこの体験が無い人は幸いである。できればこの先、一生、味わうことの無からんことを。 だが、人間の尊厳をかけた戦いに敗れた時、人はまた一つ大きくなるのか。いや、一皮むけて違う人生に踏み出すきっかけになるかもしれない。 私の場合、更年期障害のひとつだったのではないか、と推測

2015年、地方寺院の困窮を詳細に調査した『寺院消滅』(日経BP)が大いに話題となった。その著者の次のテーマは「多死(大量死)時代の到来と葬送の変化」。社会の高齢化に伴い、今後25年ほど死亡者の数は増え続けると予想されている。 現在でも都会の火葬場は満杯の状態が続いている。待機期間は1週間から10日にもなり、遺体を保存するホテルのような施設もでき始めている。

ある日、実家の母の家で夕食を食べていると、母の友人が、熱い串カツをハフハフしながら、こう言った。 「もうすぐネパールへ行くんだ。旦那の骨を撒きに! 度肝を抜かれた著者が事情を聞くと、8年前に亡くなった旦那さんの遺骨をクッキーの缶に保存し、少しずつ出張や旅行に持っていき、何年もかけて世界の川や海、例えばセーヌ川や万里の長城などに撒いているのだという。 だって、

島尾敏雄『死の棘』を読んだのは、大学生のときだ。当時、虚実入り混じったスキャンダラスな私小説として評判になっており、興味本位で手に取ったのだと思う。濃密な描写に引きずられるように読みふけり、この作品から「男女の愛」について一つの定見を得たように思ったのだ。 ただ、そのときは“私”とはいえ、小説だと思っていた。事実は事実のままに、かなりの創作が入った美化された

ボブ・ディランがノーベル文学賞!いやはや、びっくりいたしました。 今月読む本 その3は欠席者から届いたラインナップをご紹介します。読みたい理由は本人からのコメントです。 ◆ まずは、忙しくてなかなか上京できない 鰐部祥平 日本と国境を接し、領土問題を抱えているロシア。だが私たちはあまりにもロシアの歴史や宗教観、世界観に無知ではないか?と常々考えていたので選ん

いやはやびっくり!HONZの客員レビューに、ビル・ゲイツが登場した。(レビューは こちら )まさに世界最強の食客。すごい! いつか、朝会にもきてくれるだろうか? ◆ さて、10月4日の朝会の後半は少し遅刻してきた 新井文月 。最近は 体操教室 も始めたみたいだ。 礼服を「らいふく」と読むのは天皇など特別な人が正式な儀式に着る特別な衣装だから。この本、非常に美

気が付けば夏も過ぎ、金木犀の花も終わりに近づいている。前回の朝会が5月で、3か月に1回は集まろうね、と言っていたのも記憶はおぼろ。しかし新刊レビューは途切れることなく続いているのは奇跡のようだ。 この間でも何回かの「HONZ砲」が放たれ、話題の本を取り上げてきた。今ホットなのは 『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』 だろう。そろそろ増刷分が入荷す

日本人の記憶から、らい病(ハンセン病)の記憶は薄らぎつつある。50歳を超えた私でも実際の患者さんを直接見ることはなく、小泉内閣のときに 国家賠償が行われるというニュースで初めてその歴史をかいま見たぐらいだ。それは遠い物語のようだった。 1873(明治6)年、ノルウェーのハンセンがらい菌を発見し、1907(明治40)年、日本に「癩予防に関する件」が制定された。

私は堤清二が作り上げたセゾン文化の恩恵にあずかった世代だ。音楽、ファッション、美術と、清二のおかげで知ったことは数知れない。だが同時にビジネス上での異母弟、義明との相克も報道で知ってはいた。 著者の児玉博は2000年の“セゾングル―プ”解体の折の記者会見で、淡々と答える清二に対峙していた。財界を退いて9年、清二は小説家、辻井喬として生きてきた。だがその5年後

伊藤祐靖。1964年生まれ。日本体育大学を特待生で入学。体育教師への道を断ち、海上自衛隊に最下級兵士として入隊。幹部候補生学校に合格し20年間勤務する。前半10年は、防衛大学校指導教官としての2年を除けば戦闘艦艇、いわゆる“いくさぶね”に乗船。後半は特別警備隊の創隊と、この隊の先任隊長となって鍛え上げる。42歳で自衛隊を退職。その後、ミンダナオ島に拠点を移し

「ディストピア」とはユートピアの反対語。理想郷じゃない場所のことだ。「日本スゴイ」ならユートピアなんじゃないの?と思いながら読みはじめると、戦時下に行われたプロパガンダによって洗脳された日本人の姿に戦慄させられる。言葉の力は強大だ、プラスに働いてもマイナスでも。 本書には昭和初期から終戦までに出版された、当時の「日本スゴイ」本の中から「日本主義」「礼儀」「勤

健康診断を怠っている。フリーランスになってからというもの、よっぽど具合が悪くなければ医者に行くということもない。しかし、自分の健康を過信しているわけでもない。物忘れがひどければ「若年性の認知症?」と怯えるし、動悸が激しければ「心筋梗塞?」と脈を計る。手足が痺れると「脳梗塞」を疑い、しばらく様子を見たりする。 一般的には60歳以上に多いという脳梗塞。しかし鈴木

2012年9月9日。晴れ渡ったロンドンの朝7時50分ごろ、スコットランド・ヤード(警視庁)に緊急電話が入る。ロンドン西部のモートレイクという街のポートマン通りに死体のようなものがあるという通報だった、電話してきたのは日曜日の朝に教会に向かっている男性で、血も見えるという。 5分後には警察が到着し遺体が確認され、周辺の聞き込みが始まる。電話があった直前、「ドン

HONZが始まって5年が経とうとしている。メンバーも20人以上となり、地方在住者も増えた。結婚し、子どもが生まれ、生活形態が変わり、転勤や転職もある。でも本に対する異常な愛情だけはどこにいても変わらない。 朝会に出席できなかったメンバーからも今月読む本が送られてきている。Part.3は彼ら自身の推薦の弁とともに紹介しよう。 ◆パパ業最優先の 新井文月 。ダン

さて、前半が終わったところで内藤編集長から「このままでいくと200分かかっちゃいますよ~」と冷静な指摘をもらい、少しスピードアップを図る。しかし、まだまだ伏兵はいっぱい隠れていたのだ。 ◆何やら大きな封筒を出した 塩田春香 。期待どおりの本を出す。 悪魔の鳥、カッコー。この段階で仲野徹がすでに レビューを書いていた 。写真を検索していたら「え、英語でもカッコ

気が付けばもう5月。薫風がそよぎ春の陽射しがさんさんと降り注ぐ、とても気持ちのいい季節である。ゴールデンウィークも過ぎた頃、HONZ代表の成毛眞から「そろそろ朝会をやらない?」とメールが入った。 前回はなんと11月。忘年会も新年会もせず、みんな淡々とレビューを投稿していたのだが、そろそろまた朝会を復活させようという話になった。さすがに毎月は無理だけど、年4回

プロ野球にはNPB(日本野球機構)の12球団、いわゆるパリーグとセリーグのほかに、独立リーグという存在がある。2004年のプロ野球再編問題以降、地域密着型の野球チームが設立され、その中の一つ、四国アイランドリーグプラス〈四国IL〉のひとつ 「高知ファイティングドッグス」 が本書の舞台である。 四国アイランドリーグプラス は2005年に設立された。高知は、 香

日本の民間警備会社は、長嶋茂雄の「セコムしてますか?」でお馴染みになったセコム株式会社(創業当時は日本警備保障)と、オリンピックの金メダリストを起用したCMが印象的な綜合警備保障(ALSOK)が勢力をほぼ二分している。 だがその成り立ちは対照的だ。 セコムは1962年に飯田亮と戸田寿一という青年ふたりがベンチャー企業として興した会社である。水と安全はタダ、と