
『迷いを断つためのストア哲学』現代人が共感しやすい「普通」の感覚の哲学
「ストア派」は、紀元前5世紀のソクラテスの思想から派生したヘレニズム哲学の一派で、紀元前3世紀初頭にキプロス島出身のゼノンが創始した。「ストア哲学」ともいう。 ストアという名は哲学者のゼノンが、古代ギリシャの都市アテナイの列柱廊(ストア・ポイキレ)で自らの思想を説いたことに因(ちな)んだもので、英語の「ストイック」はこれを語源としている。 ストア派はヘレニズ
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「ストア派」は、紀元前5世紀のソクラテスの思想から派生したヘレニズム哲学の一派で、紀元前3世紀初頭にキプロス島出身のゼノンが創始した。「ストア哲学」ともいう。 ストアという名は哲学者のゼノンが、古代ギリシャの都市アテナイの列柱廊(ストア・ポイキレ)で自らの思想を説いたことに因(ちな)んだもので、英語の「ストイック」はこれを語源としている。 ストア派はヘレニズ

趣味は昆虫採集。長年、遺体に取り組んできた解剖学の権威、と思っているせいだろうか、養老孟司先生というとついハエを連想してしまう。 目がとても大きく複眼のようで、どこをどう見ているのかよくわからない。静かに佇んでおられるが、下手に近づくと一瞬で姿をくらましてしまいそう。部屋中を探しても見当たらず、「いない」と思っていたら、私の目元に止まっていたということもあり

田中泰延をご存知だろうか?知らない人は知らないが、知っている人は知っている人物だろう。(当たり前だ)田中泰延と書いて「たなかひろのぶ」と読む。私はこの人の文章がとても好きで、本が発売されたら、必ず読みたいと思っていた。彼のことは「非常によくおモテになる先輩」のツイートで知った。 非常によくおモテになる先輩に昔言われた。「彼女とよく喧嘩するんです」「彼女の話を

交際8カ月で別れ話を切り出したら、スマートフォンの着信履歴が埋まり、LINEには恫喝のメッセージが届く。身の危険を感じ、警察に相談したら、交際相手は偽名で前科があることまで判明する。私が付き合っていたのは誰なのだろうか。もしかしたら凶悪犯なのか。これからどうなるのか──。 平成生まれの新たな犯罪の1つが「ストーカー」だ。昔からつきまといによる被害はあったもの

分かれ道に立ったとき、右か左かどちらに行こうか、立ち止まって考え、そして、悩む。最終的にはどちらかに決めて、歩を進め、また、次の分岐点にぶち当たる。人生とはそんな分かれ道の連続である。そして、その決断はときに物語を生み出す。もし、あのとき、左に行っていたら、AではなくBを選んでいれば、、、タラレバの妄想は物語の源泉である。 また、人生の重大な決断は、突然やっ

白人によって作り上げられた「ファストフード帝国」。画一化されていて正直面白みに欠ける反面、汎用性の高さゆえに世界中至るところへ浸透している。恥ずかしながら、本書を読む前に「アメリカの食文化」としてまず思い浮かぶのはこの印象だった。 しかしその原点にまで遡っていくと、まったく異なる景色が見えてくる。元をたどればそこには画一化とはほど遠い多様さがあり、また必ずし

これがノンフィクションであって、HONZの読者世代と重なっているのであろう重要な本である。ということは 吉村 博光の熱すぎる説明 (というか言い訳?)に譲りましょう。とにかく、発表されたときに「すごい本が出てくるな」と思った人は間違いなくジャンプ黄金期世代。その証拠に、書店店頭での予約も大盛り上がりで、当初想定を超える初版になったとか。 学研の図鑑シリーズに

著者キャスリーン・フリンと夫のマイクと待ち合わせをしたのは、読者ミーティングが開催された目黒セントラルスクエア内のスターバックスコーヒーだった。二人が私を見つけやすいように、私は窓際の席を選んで座っていた。 五分ほど経過した頃だろうか、ひときわ背の高い、恰幅の良いマイクの姿が見えた。マイクの少し後ろをキャスリーンが歩いていたが、気が急いているのか、それとも小

桜の開花のほんの数日前、「銀座吉兆」個室にて。 それぞれの席の前には卓上ミニ七輪。七輪の上には、出汁が張られた紙の鍋が置かれ、出汁はフツフツと煮えていい匂いを漂わせている。傍らの皿に盛られているのは、淡路の新玉ねぎと若布、そして、桜鯛のお造り。 「旬の出会いです」 と、店のご主人が説明した。 「さっとシャブシャブして、お召し上がりください」 小泉武夫センセイ

「もしもキン肉マン超人が実在したら・・・?」700体以上の超人を仲間ごとに分類し、美しいイラストで紹介した図鑑が発売になった。しかも、来年50周年を迎える「学研の図鑑」のラインナップとして。なつかしさバクハツ、激アツである。発売前から大反響で、多数の予約注文が入ったそうだ。ただし、購入者層には偏りがあったという。 それは、もしかしたらHONZ閲覧者層と年代・

小学校に通う子どもの通知表を見ていたときのことだ。教科ごとに4つの評価項目が設けられているが、「社会」のところに「おや?」と目が留まった。項目がすべて同じ文章になっている。「もしかして誤記?」と思ったのだ。 よくよく見ると同じ文章ではなかった。だが、勘違いするのも無理はない。「我が国の歴史や伝統、世界の国々に〜」「我が国の歴史や伝統の意味について考え〜」など

幼い頃、母は私に、しばしば長崎原爆の話をした。恐ろしい光、ヒイラギの葉の痛みに耐えながら姉が覆いかぶさって、爆風から身を守ってくれたこと。ガラスの割れる音。その後で道を歩いていたときに、石だと思い座って休もうとしたら、焼けた牛の死体だったこと。 それは、伝承というほど強い意志を含んだものではなく、もちろん石と牛を間違えたという笑い話でもない。母は、それを誰か

学びや教育を題材にした書籍に多いパターンは、起こっている問題を分析した後に、あるべき姿や改革案を提案する本である。しかし、本書はそのような種類の書籍とは一線を画し、理論的な背景とそれを具体化したアイデアとその実践で敷き詰められている。 クリエイティブ・ラーニングの前提は、時代の変化である。消費社会(Consumption)、情報社会(Communicatio

四条河原町から京都バスに延々と乗って20番目の停留所。そこが平八前になる。若狭街道、通称、鯖街道は交通量が多く、バスから降りたらすぐに道のわきに寄らないと危ない。 「平八茶屋」の暖簾がはためく大きな家があるのだけど、最初は入り口に戸惑う。向かって左側の鬱蒼とした木の下を通ると、そこから広く「山ばな平八茶屋」のお庭が見通せる。お部屋に通されると、外には高野川が

この本はブスの自虐エッセイではない。れっきとした実用書である。 という前書きから始まるこの本を私はビジネス書コーナーでみつけた。『ブスのマーケティング戦略』完全にタイトル買いだ。帯には入山章栄氏推薦との文字もあり興味を引いた。入山氏は2016年に『 ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学 』でベスト経営書を受賞している。ブスのマーケティングとはいっ

これまで隠していたが、ガイドブックを読むのがうまいと自負している。多くの人は、旅行に出かける前と旅行中に読むだけだろう。わたしの場合は違う。旅行から帰ってきて、再度、必ずガイドプックを熟読する。 そうすることによって、ガイドブックに書かれていた怪しげな情報がわかる。それ以上に、自分が発見した、ガイドブックに載っていなかったことが浮き彫りになる。この経験を繰り

今年に入って、新書売り場の調子が絶好調です。理由はなんといっても樹木希林の『一切なりゆき』の大ブレイク。樹木希林関連は新刊の発売も続々予定されており、さらにブームは盛り上がっていきそう。 今回注目したいのが同じく新書としてとても売れている、『妻のトリセツ』。妻の~と、あるので夫の方の購入率が高いとは思いますが、どういった年代の方が購入しているのか気になります

ホリエモンこと堀江貴文氏が、ツイッターで、寿司職人になるために何年も修業するのはバカだと発言して炎上したのが、今から3年前のことである。 ホリエモンは、2014年12月の「ホリエモンチャンネル」の中で、寿司職人になるには10年くらいかかると言われてきたが、今や半年でプロを育成する専門学校もあり、長い修業が必要なのは「1年間ずっと皿洗いをしていろ」などと言って

本書は、NHKの『ラジオ深夜便』の人気コーナーである、『絶望名言』を書籍化したものである。 著者の頭木弘樹氏は、大学3年の時に難病にかかり、その後13年間の入退院生活を余儀なくされ、宮古島に住むようになった今でも完治はしていない。ベッドに寝ているだけの状態になり、完璧に無能な存在になった時に出会った、「ぼくは人生に必要な能力を、なにひとつ備えておらず、ただ人

久しぶりに出会った、上品にして趣深いエッセイとして読んでいる最中だ。読み終えるのがもったいないのだ。 全35章。3章ほどをゆっくりと読むために、わざと場所と時間を変えている。早朝のカフェでクロックムッシュと、午後はおにぎりをほおばりながら公園のベンチ、夜はウイスキー片手にベッドの中という具合だ。 広重の「東海道五十三次」をモチーフにしながら、おもに江戸の諸制

2019年早々に、記憶にまつわる驚きのニュースが発表された。忘れてしまった記憶を回復させる薬の開発が成功したというのだ。HONZでもときおり著作が紹介される東京大学池谷教授の研究で、記憶回復のメカニズムが解明され、今後ますます効果の高い薬が開発されるかもしれない。仮に記憶が回復できる未来がやってくるとしたら、私たちは脳内の記憶と、どのように付き合っていくこと

昭和42、3年ごろ、文藝春秋社が文芸雑誌で使用した原稿を大量廃棄処分したことがあった。 社名入りの茶封筒に入れられた大量の原稿は、ある古紙問屋に持ち込まれた。その問屋へ毎日通い、本や雑誌を探す“建場廻り”(注:建場は業者がその日に集めた廃品を買い取る問屋。古本業界用語)のK書店が発見し買い取った。専門外のK書店は、近代文学などを得意とするU堂へ連絡。すぐに来

理系か文系か、この二分法は、日常に浸透し、まるで血液型のように、はじめて会う人同士の話題になることが多い。そして、文系であるか理系であるかでレッテルを貼り、個人を理解しようとする。Wikipediaの「文系と理系」というページで展開されている「文系と理系を巡る観念的な印象」は、その代表例である。 4.1数学のできない「普通の」文系、それ以外の「特殊な」理系

もうかれこれ30年くらい前になるだろうか、料理評論家の山本益博さんが食のコラムに、「日本一美味い焼肉屋を見つけた!」と、スタミナ苑のことを書いていた。 こう言われて行かない訳には行かないだろうということで、当時まだ大企業に勤めるサラリーマンだった私は、肉好きの後輩を連れ立って行ってみた。 その時の衝撃は今でも忘れられない。カルビ、ロースなどの特上の肉から、レ

今年、Yahoo!ニュース/本屋大賞ノンフィクション本大賞という新たなノンフィクションの賞が創設されました。相次ぐノンフィクション掲載誌の休刊なども重なりノンフィクションの危機が叫ばれている中、ネットメディアが創設したこの賞は大きな意味を持つものになるでしょう。 この賞の第1回の受賞作『極夜行』は、受賞をきっかけとして大きく部数を伸ばし世の中に広がりました。

ここ数年、リカレント教育や「社会人の学び直し」という言葉を聞くことが増えてきた。文部科学省や厚生労働省が予算を付けはじめたことで、大学の公開講座や社会人向けの大学院も増えている。スキルアップや転職に備えて、最新のビジネス知識やテクノロジーを学び直すのが目的だろう。一方で、総合的な教養を学び直したいというニーズもあるようだ。 フェイスブックの投稿を見て、己の教

まだ肌寒い3月、成田空港から11時間のフライトを経て、あなたはオランダ・アムステルダムに降り立った。隣には写真家の植本一子さんがいる。ここからあなたの旅が始まる。オランダ・ドイツ・オーストリア・アイルランド・イギリス・フランス・アメリカー7カ国14都市、17の美術館を巡る旅。全部で35作品、あなたはフェルメールに会いに行く。 あなたはフェルメールについて、ど

人類が発明した50のモノを、洗練された筆致で書き綴った、気軽な読み物だ。取り上げられているのは「コンクリート」や「紙」など手で触れられるものから、「経営コンサルティング」や「不動産登記」など目には見えない社会制度までと幅広い。 それぞれの章は独立していて読み切りだ。たとえば「電池」の章では、19世紀ロンドンで絞首刑にあった罪人の逸話から、電池が発明された18

米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問で戦略家のエドワード・ルトワックの新刊である。前著『戦争にチャンスを与えよ』は紛争が長引く原因として、人道的支援という美名の下で国際社会が紛争に早期介入するためだという、口にしがたい現実を鋭く指摘して話題になったので、記憶している方も多いのではないだろうか。 前著の内容を知らず「それはどういうことだ?」と疑問に感じた人

英語で最も頻出する名詞は「time」である。 いっぽう、時間をどう定義するかについての見解は一致していない。 時間という単語にはさまざまな意味が含まれているが、文章の中や日常の会話で、異なる意味を意識して使い分けることはほとんどない。下記の文章には「時間」という単語が3つ登場する。 時間の性質についてのミンコフスキーの講演は時間どおりに終わったが、長い時間が

日本初の酒場ライター、バッキー井上が、いっとかなあかん店について書いた本である。京都の店の本か、関係ねえよ、と思ったあなた。考えをあらためたほうがいい。この本を読まなければ、酒場人生の楽しみの8割7分くらいを捨て去ることになる。 だいたい、この本、店の紹介らしい紹介があまり書かれていないのだから、店のありかが京都であろうがどこであろうが、たいした問題ではない

この秋、出口治明さんと古典を学ぶ講座に参加している。毎月1冊、光文社古典新訳文庫のラインナップの中から出口さんがおすすめの作品を取り上げ、当日はその本にまつわるお話と(しばしば脱線するがこれが楽しい)活発な質疑応答とで、あっという間に2時間が経ってしまう。実に中身の濃い贅沢なひとときだ。 講座は全5回で、初回はダーウィンの『種の起源』、2回目はプラトンの『ソ

人生に迷ったり、不安になったりしたときに先人の、特に女性作家のエッセイには助けられてきた。中山千夏さん、佐藤愛子さん、林真理子さん、西原理恵子さんと名前を挙げればきりがないが、最も影響を受けてきたのが詩人の伊藤比呂美さんだ。 初エッセイ 『良いおっぱい悪いおっぱい』 が出版されたのが1985年。私は結婚したばかりだった。妊娠出産、そして子育てを「がさつ、ぐう

見開きの右頁全面には、歌川広重の名所江戸百景から選んだ一枚の浮世絵。左頁には広重がその浮世絵を描いた場所の地図と、浮世絵に描かれている文物の絵解き。さらに時代背景や鑑賞のポイントも解説されている。つや消しの上質紙を使って、119枚もの浮世絵を取り上げているのだから、重量感のある小体な美術解説書という趣きだ。 たとえば、ゴッホが模写したことで有名な「大はしあた

ムンクといえば《叫び》というほど、この絵はあまりにも有名です。 ただ、絵の中の男は叫んではいません。実は耳を塞いでいるのをご存知でしょうか? 実はムンクの《叫び》は、作家自身の精神的変化とともに、手法を変え4種類が描かれてます。ムンク展にも登場する《叫び》は、テンペラと油絵を組み合わせであり、これら素材はふつう色が褪せず永続的に良い発色をするのが特徴です。た

注意して欲しいのは、食事中に読まないこと。 中には強烈な刺激を伴うものもある。 冒頭のことばがすべてを物語っている。 サルの脳味噌の燻製、イモムシのピリ辛煮、ラクダ丼、羊の金玉と脳味噌のたたき、水牛の生肉と脊髄ちゅるりん炒め、タランチュラの素揚げ、虫イタリアン、田んぼフーズ、ニシキヘビの唐揚げ、ヤギの糞のスープ、ヒトの胎盤餃子、ヒキガエルジュース、巨大ネズミ

建築は誰でも楽しめる。特に住宅は、衣食住の根幹をなすものだから、住宅建築に全く関心がないという人はまずいない。 加えて、日本人は世界的に見ても、建築がかなり好きな国民だと思う。美術館で建築展をやると、他のジャンルに比べて圧倒的な集客力がある。昨年、国立新美術館で開催された「安藤忠雄展―挑戦―」や、今年、森美術館で開催された「建築の日本展:その遺伝子のもたらす

辞書によると、「薀蓄」とは深く研究して身につけた知識のことである。しかし、小粋なバーの隣席に下手な薀蓄を傾ける御仁がいると、面倒くさいこと、この上ない。その話題が京都やパリであれば尚更だ。 老舗カバン店のお家騒動だの、ルーブル美術館のスマホアプリだの、煩わしいと思いながらも、つい聞き耳を立ててしまう。薀蓄とは高度な噂話でもある。 本書はまさにその二都の薀蓄だ

「幸福とは何か」と思い耽ったときに、まっさきに読みたい本である。幸せの数値化にこだわる社会科学や幸せのメカニズムを科学するポジティブ心理学は、どういうときに幸福になるか、何が幸せの実例かは説明してくれるが、幸福の概念を過不足なく解明してくれるわけではない。本書の特徴は幸福の概略、そもそも論に取り組んでいることだ。そう、哲学しているのである。 幸福は、古今東西

タベアルキストのマッキー牧元さんは、食レポの天才です。日本のグルメ界を代表するマッキーさんの文章には、食している光景が目の前に一気に立ち現れてくるような臨場感があり、思わず唾液がこみ上げてきます。 文才はもちろんですが、多分、それ以上に、マッキーさんが心から食を愛しているから、その気持ちが読者の心に素直に伝わるのだと思います。 昨年末、そんなマッキーさんたち