
全米が泣きそう『紋切型社会』
「若い人は、本当の貧しさを知らない」「会うといい人だよ」「うちの会社としては」「誤解を恐れずに言えば」……う、言っちゃってるよ。使っちゃってるよ。そう自らを反省してしまうあなたこそ読むべき一冊。さて、「言葉で固まる現代を解きほぐす」とはどういうこと? 決まりきったフレーズがいかに思考を硬直化させているか。よくあるフレーズを例に挙げて、それぞれの言葉の背景にあ
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「若い人は、本当の貧しさを知らない」「会うといい人だよ」「うちの会社としては」「誤解を恐れずに言えば」……う、言っちゃってるよ。使っちゃってるよ。そう自らを反省してしまうあなたこそ読むべき一冊。さて、「言葉で固まる現代を解きほぐす」とはどういうこと? 決まりきったフレーズがいかに思考を硬直化させているか。よくあるフレーズを例に挙げて、それぞれの言葉の背景にあ

言わずもがな、DNAの構造を明らかにした、いや、より正確には、DNAの二重らせんモデルを考えついた二人のうちの一人、 ジェームズ・D・ワトソン の著書『The Double Helix』の新訳である。初版は1968年、DNAの構造発見から15年後のことで、以来、20カ国もの言葉に翻訳されている。 日本でも原著と同じ年に翻訳が出ているので、読んだことがある人も

世界最貧国の一つ、コンゴ共和国。ここにサプールと呼ばれ、人々の羨望と尊敬を集る集団がいる。平日は普通に働いているのだが収入のほとんどを洋服に費やし、週末になるとハイブランドのスーツを着こなし街を闊歩するという。 本書は、そんな彼らの”NO FASION,NO LIFE.”な日々を記録した写真集である。写真家のダニエーレ・タマーニが長い時間かけて築いた親密な距

姓を手がかりに、歴史に埋もれたビッグデータを掘り起こした著者は、残酷な現実を突きつける。 基盤的な、または相対的な社会的流動性は、社会学者や経済学者が一般的に考えている水準よりはるかに低い。 つまり、従来考えられていたよりも、わたしたちの人生はその生まれによって決定されており、本人の努力や意志で階級の階段を昇るのは従来考えられていたよりも困難だというのだ。時

著者はお笑いコンビ「米粒写経」のツッコミ役、サンキュータツオさん。なぜお笑いの人が論文?と思われそうだが、じつはサンキュータツオさん、一橋大学の非常勤講師もつとめる学者芸人。国語辞典に関する著書も出している。珍論文コレクターとしても知られ、ラジオで紹介するコーナーも持っていた。 本書では選りすぐりの珍論文が登場する。その一部をあげると、たとえばこんな感じ。

「変態!」 「目立ちたがり屋!」 突然のカミングアウトに、著者の妻は罵る。罵りまくる。驚きは隠せないだろう。楽しい外食中に夫から「ガーターフリーのストッキングを履いている」と告げられたら。若くしてテレビ業界で成功して名声と富を得た夫がいきなりストッキングを履いて興奮している姿は、地獄絵図である。 だが、ストッキングを履くことは著者の壮大な実験の序章に過ぎない


「意識のハードプロブレム」とは何かご存知だろうか。端的に言うと「物質である脳が、どのようにして非物質である意識体験を生み出しているのか」という脳科学の未解決問題のことだ。哲学者のデイヴィッド・チャルマーズによって1994年に提唱され、それまで神経科学的な分析によって意識に関する謎はすべて解けたと考えていた研究者たちに大きな衝撃を与えた。 彼らが解決済みだと考

現代は、家庭で一番料理が作られる時代ではないか、と思っている。外食は当たり前だし、コンビニで弁当だろうが惣菜だろうがなんでも手に入るようになったから、かえって料理に興味を持つ人が増えたのではないか。手軽に作れるように、レトルトなどの調味料の種類も豊富である。 クックパッドの普及のすごさを思い知るのは、夕方のスーパーでのことだ。タイムセールの野菜と魚と肉を手に

編集者が書いた本や、編集者が受けているインタビューが好きだ。 それはやっぱり「表にはあんまり出てこない部分」だからオモシロイのだろうと思う。本書も含めて我々読者は、最終的にパッケージとして提出されたものを完成品として受け取る。そうした本には大抵謝辞として編集者の名前が挙げられていたり、あるいは雑誌ならば最後に名前がクレジットされていたりするだけで、そこでどの

「スタバ本にハズレなし。」と、ビジネス書界隈では昔からよく言われている。スターバックスの実質的な創業者であるハワード・シュルツが書いた『 スターバックス成功物語 』、『 スターバックス再生物語 』はどちらも名著と呼んでいいものだし、文庫化されたハワード・ビーハー(元スターバックスインターナショナル社長)の『 スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大

著者ジェームズ・R・フリンは1980年代に発表した論文で、アメリカをはじめとする工業国で、時代とともにIQ(Intelligence Quotient)が上がり続けていることを確かな証拠で示した。人類が過去100年にわたって賢くなり続けているという研究結果は大きな反響を呼び、このIQ上昇は著者の名前から“ フリン効果 ”と呼ばれるている。 フリン効果は、更な

今、日本全国には77,000にも及ぶ寺院が存在するという。コンビニの数が52,380店というから、その多さに驚かれる方も多いだろう。だがもっと驚くのは77,000のうち、住職がいない無従寺院の数が20,000を上回るという現実である。 昨年「地方消滅」という言葉が、世間を賑わせた。2040年までに人口が急減し、896もの自治体に消滅の可能性があると報じられて

HONZが送り出す期待の新メンバー第3弾! 柴藤 亮介は、学術系クラウドファンディングサイト academist を運営する若き起業家である。先日も『 裏山の奇人 』で知られる小松貴氏が、このサイトで資金を集め、アフリカでの研究へと旅立ったことは記憶に新しい。そんな彼が最初に選んだのは、起業家スピリッツあふれる研究者・堀川大樹氏の一冊であった。今後の彼の活躍

保育園くらいの子どもが、1個のマシュマロと2個のマシュマロがそれぞれ置かれたテーブルに着く。脇の卓上ベルを鳴らして研究者を呼び出せば、すぐに1個のマシュマロを食べられる。しかし、席に着いて研究者が戻るまで待つことができれば、2個のマシュマロにありつける。 今すぐに報酬を得る方を選ぶか、少し我慢してより多くの報酬を得る方を選ぶか。欲求の先延ばしに関する有名な実

イギリスの上流階級に生まれた二人の男にはいくつもの共通点があったという。抑圧的で、権威主義的で偏屈、そして変人である父を持ち、確執を抱えていた。幼少期は虐待に近い躾を行う、寄宿舎学校でスパルタ式の教育を受け、権威に反感を抱き、長じてはケンブリッジ大学で学ぶ。イギリス紳士らしく、人を結び付けも、隔てもする礼儀正しさを常に失わない。自信に満ちた立ち振る舞いは、い

チベットから富士山、北極までもっと行けるんじゃないか 極地における死の不安、水虫疑惑、性欲の不思議…極限の青春ノンフィクション この帯文だけで買ってしまった。やめてほしい。心惹かれる帯文で読者を釣るのは。だがしかし、本書に関しては、もっと煽っても文句はない。ノンフィクションの裏側を覗くことのできるこのエッセイ、とんでもなく面白い。もっと早く読めばよかった。い

その根底にあるのは、「分かりそうで、分からないもの」、という独自のコンテンツの定義かもしれない。なぜ「分かりそうで、分からないもの」に人は惹かれるのだろうか。それを語りだすときに、生物の「進化」や「順応」にまで話は飛び、分からないものを分かろうとする機能は生存競争の中で人間が獲得した特性ではないかと仮説立てる。理解の限度を超えたものは関係がなくなるが、微妙な

本書は、ミリオンセラー絵本『ぐりとぐら』の作者、中川李枝子さんが書いた教育エッセイだ。著者は、17年間保母として勤務したのち、絵本作家になった。ここには、主にその17年間に著者が感じたことがまとめられている。子を持つ親たちにとって、子供たちが保育園でどのように過ごしているのかを思い浮かべるのは、文句なしに楽しいことだ。私も読みながら、思わずニヤニヤしてしまっ

普段、線をぐりぐりと引きながら本を読む。あとで引用しようと思うぐっときた部分に、結論部分に、問題提起の部分に。概ねあとから読み返した時に、そこを起点として他の細部をずるずると思い出せるように引いている。というわけで、本書もいつもと同じように愛用のボールペンを片手に読み始めた。冒頭の畳み掛けるような問いかけから思っても見なかった都市観を提示され線を引き始めてみ

キム・フィルビーはすべてを手にしていた。英国上流階級出身、ケンブリッジ大学卒業、愛する妻子と多くの気が置けない友人。仕事においても、上流階級出身の特別なコネクションを持つ者だけが所属できる英国スパイ組織MI6の出世の階段を誰よりも早く駆け上っていたのだから、足りないものを探すほうが難しい。1940年に28歳でMI6入りした彼は、イスタンブール勤務などを経て、

たとえるなら、巨大掲示板サイトに「IS幹部だけど、何か質問ある?」といった書き込みがされていたとする。それが本物かどうかは分からない。だが仮にそれがネタであったとしても一体どのようなリアクションを返してくるのか、試したくなっても無理はない。それがジャーナリストなら尚更のことだろう。 本書の著者アンナ・エレル(仮名)も、初めはそんな軽い気持ちに過ぎなかったのだ

これは凄い本だ。大手新聞紙の発行部数が下落し始めて久しいが、本書で描かれるような記者の情報収集能力の高さを目の当たりにすると、新聞社というシステムが持つリソースの潤沢さを思い知らされる。 著者は朝日新聞の北京特派員として、6年弱にわたって中国報道の最前線に立ち、共産党内部の権力闘争を追い続けた。体を張って共産党員とのパイプを築き上げ、 当局による幾度のもの取

18世紀、有色人種とりわけ黒人がその肌の色のみで差別され、奴隷として働かされていた時代に、ヨーロッパで一兵卒から将軍にまで上り詰めた有色人の男がいた。180センチを超える体躯(当時としてはかなり大きい)とハンサムな容貌の持ち主であったという。そして、その美しい肉体の中には常人では及ぶことの出来ない勇敢さと情熱を、また公正で高潔な精神を宿していた。男は自らを

2005年8月末、巨大ハリケーンのカトリーナがアメリカ南東部を襲い、1800名以上の命が失われた。中でも被害の大きかったルイジアナ州最大の都市ニューオーリンズは、堤防の決壊により市中の8割が水没する壊滅的打撃を受け、死者の大半を出している。 そのニューオーリンズにあるメモリアル病院で、安楽死の疑いがある患者の大量死が発覚し、医師と看護師3人が殺人罪で逮捕され

500ページ二段組み。ひさびさにガッツリ読み応えのある自伝である。2001年から8年間、第43代アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュと共に歩んだファーストレディ、ローラ・ブッシュ。原題は『 Spoken from the Heart 』。直訳すれば「心の中を正直に吐露する」とでもなろうか。堅実な人柄から「アメリカでもっとも愛されたファーストレディ」と評される

「ハチ公」「センター街」「109」「スクランブル交差点」といったランドマークが多く、ファッション誌のストリートスナップや情報番組の街頭インタビューの名所である若者の街、渋谷。 衣類・書籍・楽器の販売額が都内でダントツの一位でもあり、 街全体が流行を発信する国内でもユニークなエリアだ。 そんな「若者の街」渋谷は、本書のタイトル通り「セレブ区」としても有名。区内

学会の書籍売り場で愕然とした。私としたことが完全に見落としていた。HONZの医学担当(そんなのないけど)として失格である。こんなおもろい本があったんや。それも、昨年11月発売以来、3ヶ月で三刷りと、専門書にしては爆発的な売れ行きだ。 発刊から半年なので、HONZで紹介するには時間がたちすぎているしなぁ、と思ってふと横を見ると、『前作「本当にあった医学論文」大

『舟を編む』 (三浦しをん著)が本屋大賞を受賞したのが2012年。そのころだろうか、「辞書ブーム」が来たのは。本書は、その立役者のひとり、 三省堂国語辞典 (「三国」[さんこく]とも呼ぶ)の編纂者が語る、人間関係をスムーズにすることばの作法集。ちょっとした一言で伝わり方が違う。絶妙だ。 NHKの「 どうも!にほんご講座です。 」や Twitter でもおなじ

1962年10月15日から10月28日は、史上もっとも人類滅亡の危機が高まった13日間だった。なにしろ、アメリカとソ連という超大国同士の全面核戦争が、ハリウッド映画のストーリーとしてではなく、現実的なオプションとして両国首脳に議論されていたのだ。アメリカ大統領ジョン・F・ケネディもソ連第一書記ニキータ・フルシチョフも、決して望んではいなかったはずの破滅的な結

黒川紀章という建築家には、過小な評価と過剰な評価が共存する。ある特定の世代には、2007年の都知事選へ出馬した際の泡沫ぶりが印象深いことだろう。またある世代においては、日本初の建築運動「メタボリズム」を颯爽と牽引した先進性が記憶に残っているかもしれない。いずれにしても彼には、毀誉褒貶という言葉がよく似合う。 だが彼が打ち出した「共生」という概念を今一度振り返

まともに読んだことがない、未開拓のジャンルに手を出してみる。それはワクワクすると同時に、危険なことでもあると思う。選書を大きく間違えれば、その経験がトラウマになってしまうかもしれないからだ。無理矢理背伸びをして買ってはみたものの、結局面白さが分からず積読行き、という本が重なると、期待を膨らませていたぶん反動がきて、むしろそのジャンルを避けるようになることさえ

文部科学省が道徳の教科化を決定したことで、喧々諤々の議論が巻き起こった事は記憶に新しい。マスコミなどで繰り返される道徳の教科化を巡る議論を聞いていると、賛成、反対派を問わず、どこか紋切り型な話が多い。 日本社会の根幹にどのようなシステムが存在し、それが日本社会の道徳形成にどう影響したかという、もっとも重要な思考的考察がこれらの議論には抜け落ちているのではない


我々は今では飛行機に乗る時に厳重な持ち物の検査を受ける。長い列ができて、それなりに時間がかかることも珍しくない。持ち込みは制限されるし、見られたくないものであってもガサガサとチェックを入れられてしまう。そうした状況への抗議はあれど、多くの人はそれを「仕方がないもの」として受け入れていることだろう。何しろ我々がいるのは9.11以後の世界であり、自分たちの乗った

ルーシー・ブラックマン事件は、2000年7月に元英国航空の客室乗務員 ルーシー・ブラックマンさんが失踪し、神奈川県三浦市の海岸近くにある洞窟でバラバラ遺体で発見された事件である。 この事件については、これまでにも様々な報道がなされてきた。だが、それら一つ一つを時系列で丁寧につなぎあわせていっても、決して全貌は見えてこない。この事件に関わる実に奇妙な人物たちの

HONZが送り出す期待の新メンバー第二弾。佐藤 瑛人(あきと)はアドテクノロジー企業に勤め、シリコンバレーと日本を行き来する外資系ビジネスマン。ある日HONZへセールス目的で訪れたところ、うっかり本の話をしてしまったばかりに捕獲され、メンバー入りへと至った次第。最初のレビューで選んだのは、世界中を飛び回る彼にふさわしく「気候変動」をテーマとする一冊であった。

第2次世界大戦期、その獅子奮迅の働きぶりから「奇跡の戦闘機」と称賛された、零戦。数々のノンフィクション、小説、さらには映画の題材にもなり、活躍から70年以上がたった今なお広くその名をとどろかせている。 一方、おなじく大戦期に開発され、その驚くべき性能の高さから一時は「奇跡のエンジン」と呼ばれながらも、後に零戦とは真逆の運命を辿ることになる悲劇の発動機があった

「シャープペンシルを使って文字を書くためにはどんな力が必要ですか?」と質問されたら、あなたはどのように答えるだろうか。 シャープペンシルを持って動かすための筋力、芯が紙を滑ることで作られた黒鉛の粉を紙の繊維のなかに残すのだから摩擦力、文字を書くのだから思考力も必要だ、などと答えるのではなかろうか。 しかし、世界中の物理学者に同じ質問をすると全員から同じ答えが

TwitterやFacebookは常に何らかの更新が発生し続けている。その為ちょっとでも時間が空くと、ついつい「何か新しい更新はないか」と気になって必要以上に何度も確認を行い、そのままだらだらと時間を使ってしまう。そんな情報中毒ともいえる行動を日常的に経験している人も多いのではないだろうか。それはこらえ性がないから──などではなく、そもそも人間の脳は断続的な