
『その科学があなたを変える』を ”ちゃうんちゃうか精神” で読んでみた
好むと好まざるとにかかわらず、職業はその人の考え方に大きな影響をおよぼすものだ。私が生業とする科学者とて例外ではない。 まず、科学者は考え方が厳密である。悪いことではないが、一般の人から見ると、融通が利かない感があるに違いない。しかし、この厳密性のイメージがあるからこそ『科学』という名がタイトルにつけば、その本に正しそうな雰囲気をもたらしてくれる。 もうひと
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好むと好まざるとにかかわらず、職業はその人の考え方に大きな影響をおよぼすものだ。私が生業とする科学者とて例外ではない。 まず、科学者は考え方が厳密である。悪いことではないが、一般の人から見ると、融通が利かない感があるに違いない。しかし、この厳密性のイメージがあるからこそ『科学』という名がタイトルにつけば、その本に正しそうな雰囲気をもたらしてくれる。 もうひと
とびきり居心地よい場所(The Great Good Place)。家、仕事場に次ぐ、ふらりと立ち寄ることが出来る第3の場所(The Third Place)。本書が取り上げるのは、そのような場所だ。 著者のレイ・オルデンバーグは1932年生まれ、西フロリダ大学社会学部の名誉教授である。本書の刊行は、初版が1989年、第2版が1996年と、少し前のことだ。し
『世界ナンバー2列伝』これが、本書のタイトルだ。ナンバー1ではない。あくまでナンバー2である。人間という存在が組織的な活動をするためには、どうしても序列が必要になる。大きな組織の場合、ナンバー1になるということ自体が並大抵のことではない。著者も本書で似たことを述べているが、ナンバー1になるためにはある種の正当性が問われることになる。特に社会の機構が複雑になれ
先日、帰郷した際に美術展「ジパング展」を観てきた。展示内容は、会田誠や山口晃など現代美術作家30名以上が参加した豪華ラインナップであり、500円という入場料金にもかかわらずほぼ貸し切り状態でとても堪能できた。 その中のラインナップに、異色の作品があった。一見すると絵画だが、よく見るとゆっくりと雪が降りつもり、枝には雀がとまってくる。そのフレームの中は動画だっ
あけましておめでとうございます。2014年もHONZをよろしくお願いいたします。 さて、今回ご紹介するのはMOOKです。HONZのルール上、MOOKはアリなんだったかどうだか忘れましたが、コンビニのワンコインBOOKSがオーケーなんだからMOOKだっていいだろうということです、はい。なにしろ年末年始、わたくしはこの本でたっぷり楽しみました。実に「使える」本だ
あけましておめでとうございます。お正月の三箇日はいかがすごされましたでしょうか。私儀、元旦の朝から、大阪は天満天神繁昌亭へ行き、贔屓の 笑福亭福笑師匠 に大笑いさせてもらってきました。 そこから復興できたのは、後に四天王と呼ばれるようになる四人の落語家、 六代目笑福亭松鶴 、 桂米朝 、 三代目桂春団治 、桂小文枝(後の 五代目文枝 、いまの 文枝 =以前の

昨年くらいから急速に話題に上ることの多くなってきた「ウェアラブル」というテーマ。概念自体は、アニメやSFの世界を通して昔から見られたものの、グーグル・グラスやスマートウォッチなどの動きを通じて日を追うごとにリアリティを増してきた。 だが本書『ウェアラブルは何を変えるのか』は、リアリティ溢れるウェアラブルの「今」を描いたというよりは、現在表面化してきている出来
新年早々、なかなか刺激的なタイトルだが、陰謀論めいた話でもなければ、悲観論のみに終始した内容でもない。 新しい年を迎えると、人は「おめでとう」と言う。友人や知人に赤ちゃんが誕生しても「おめでとう」と言うだろう。だが、そんな身の回りの「おめでとう」の集積が、社会や世界全体で見た時にも、本当に「おめでたい」状況になっているのか。そこには、直視しなければならない現

爆発物処理班(EOD)が爆弾の処理をする際、ロボットの故障や使用不可能な状況に陥るときがある。すると彼らは、ひとり 対爆スーツ を身に着け爆弾解除に向かう。そんな状況の事をEODの連中はロングウォークという。群衆が取り囲むなか、いつ爆発するわからない爆弾に30キロを超えるスーツを着込みひとり対峙する。死の影が常に足元からにじり寄り彼らの魂をつかみ去る瞬間を狙

『スラムダンク』でお馴染みの漫画家、井上雄彦氏が日本の伝統行事である「遷宮」行事を通じて人々が体験した、先祖または神から受け継いできた歴史を、筆絵とエッセイで解き明かした一冊だ。 また本書には、神宮司庁の河合真如広報室長、出雲大社の千家和比古権宮司、式年遷宮で総棟梁を務めた宮間熊男棟梁、建築家の藤森照信教授との対談も収められている。 絵描き(職人)だからか、

2011年3月11日、東日本大震災が東北地方を襲い、巨大な津波が沿岸に押し寄せた。ビルも電車も、家も車も、大人も子どもも、犬も猫も、逃げ遅れたものは津波に浚われた。飼育されていた牛も豚も、そして馬も流された。 本書はその流されながら生き残った馬を通して、ヒトとその土地に残る行事と、解決策が見えない原発問題を追ったドキュメンタリーである。 大震災から3週間たっ

まるで歴史ドキュメンタリー番組を観ていたかのような読後感を味わえる一冊だ。 本書は、歴史上、ロシア・カナダ・アメリカなど極寒の世界に人々が「何」を求めて遠征していき、「何」を売り買いすることで世界経済と繋がっていったのかをおう歴史書である。歴史書といってももちろん学校で習うような事実の羅列とは全く違う。本書を読んでいると、学校で暗記した地域や年代別の世界史が

いまでは永遠のライバルと目されているアップルとグーグル。新製品の開発競争や販売の主導権争いだけでなく、世界各国の法廷でもモトローラやサムソン電子などの第三者も巻き込みながら、熾烈な闘争を続けている。もはや伝統的な企業競争から、両陣営の感情的な果たし合いに推移しているように見える。 しかし、この両社はつい5年前まで「世界をマイクロソフトから守る企業連合」だった

ノンフィクションファンの人たちにとってHONZが恐ろしいのと同じ意味において、私は恵文社一乗寺店が怖い。 関西地区では、そのイメージキャラおねえさん『 おけいはん 』で知られる京阪電鉄。その終点の出町柳は、比叡山方面へ向かう叡山電鉄、いまだにICカードを導入していない奥ゆかしき小さな私鉄、の始発駅でもある。 ワンマン電車にとことこ揺られて三つ目の駅が一乗寺。

戦後日本は格差の少ない中流社会だった、小泉改革が格差を拡大させた、日本はいまだに苛烈な学歴社会だ。日本の「格差」を象徴するようなこれらの言説は、マスメディアでも繰り返し喧伝され、広く浸透してきた。しかし、「格差が少ない」とは具体的にどのような状態なのか、格差が拡大するとは何が大きくなることを意味するのか。そもそも、「格差」とは何で、どのように分析されるべきも

「次の所長候補」の選考において、MITメディアラボは、 伊藤さん に辿り着くまでに300人の面接を行ったそうだ。アメリカ人の学者や研究者から検討を始め、MITは最終的に「ドバイに住んでいる、大学を出ていない日本人」を選んだ。 本書は、伊藤さんの就任後にメディアラボで始まった授業「 カンバセーション・シリーズ 」から、4回の対談を本にしたものだ。英語の題名は"

黒地に髑髏とクロスボーンをあしらった海賊旗(ジョリー・ロジャー)を高らかに掲げ、木造帆船を駆使して大海原を闊歩する海賊。最近では漫画『ONE PIECE』や映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』が世界的なヒットを飛ばしている。体制に反抗しながら、お宝を追い求める男たちの物語に多くの人々が何かしかのロマンを感じているのだろう。その一方ソマリアなどで繰り返される海

アルフレッド・アドラーという人物を知っているだろうか?私はこの本を読むまでまったく知らなかった。どうやらフロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称されている人物らしい。個人心理学(アドラー心理学)というものを創始した人だという。ただフロイトやユングに比べるとアドラーというのはマイナーな感が否めない。試しにグーグルで検索をしてみたらアドラーが約27万件に対

久しぶりに面白いキーワードを目にした。 標題の『グロースハッカー』とは、シリコンバレー発による「事業の成長請負人」のことを指す。 Dropbox 、 Mailbox 、 Twitter 、 Instagram 、 Pinterest 。今では華々しく活躍しているこれらの企業にも、苦境にあえいだスタート時期があった。人もいない、予算もない、顧客もいない、知名度

辞書を引く、という言葉はすでに死語なのかもしれない。なんといっても電子辞書やコンピューターでの検索が速くて便利である。辞書をひいたついでに、まわりの単語をチラ見しながら、ふむふむそうか、というようなという楽しみがなくなってしまった。紙の辞書を捨てたわけではないのだから、いつでもできるのであるが、わざわざするようなことでもない。 かつては、ジャポニカ百科事典の

コータリンこと神足裕司といえば、ラジオ番組「キラ☆キラ」での、小島慶子とのオープニングトーク、週刊アスキーの連載、そして私の世代には忘れられない、西原理恵子とのコンビによる週刊朝日の「恨ミシュラン」などが印象深い。そして執筆やテレビ出演など超多忙な日々を送るなか、毎週毎週、事件記者としてさまざまな事件の現場を実際に取材してレポートした週刊SPA!の連載「これ

「 理論の終焉:データの洪水が科学的手法を時代遅れにする 」 2008年にワイアード誌編集長(当時)の クリス・アンダーソン が、ビッグデータ時代の到来を謳った記事のタイトルである。彼が予見したように、この5年で我々を取り巻くデータは爆発的に増加し、ビッグデータをマーケティングなどに利用した 成功例 も聞かれ始めた。 本当に、大きなデータと強力なコンピュータ

先日、ある私的な席でご迷惑をかけた知人にお詫びをしようと酒席を設けた。 もちろん、支払いはこちらが持つ前提だが、待ち合わせの前から日本酒をがばがば呑んでいたら、ぐでんぐでんになってしまい、記憶が無くなり、気づいたら家の寝室の天井を眺めている自分がいた。翌日知ったが、おごるどころかお金を一切払わず仕舞い。「おわびします」と呼び出しておきながら、おごらせる。鶯谷

人間の欲望が丸出しになる政治のゴシップは東西を問わず人を惹きつける。権力闘争、飛び交う札束、そして、男女関係。本書には、金欲と情欲が渦巻く世界を泳いだ現代中国を代表する10人の悪女が登場する。 元重慶市党委員会書記の薄熙来の妻で、夫の力を背景に蓄財をしながら、英国人の愛人を殺害した谷開来。枕営業で国民的人気歌手になりながら、政財界の秘密を知り過ぎてしまったか

思い返せば、自然の音を一番聴いていたのは、たぶん小学生の時だった。だからだろうか、本書を読むと懐かしい気持ちになる。そして旅に出たい気持ちになる。 目で観るのが風景ならば、耳で聴くのは「 サウンドスケープ (音風景)」だ。サウンドスケープは「ある瞬間にわたしたちの耳に届くすべての音」という意味で、1960年代後半にカナダの作曲家マリー・シェーファーが作った言

わくわくサイエンス本だ。 2012年11月13日早朝、インド沖合のスリランカに突如として「赤い雨」が降り注いだ。砂漠の微粒子を含む「黄色い雨」や火山灰・石炭を含む「黒い雨」はよく確認されているが、「赤い雨」というのは神話などで紹介されているものの事例が少なく、本格的な科学的研究はあまり進んでいない未知の現象である。本書は久しぶりに確認された謎の「赤い雨」の正

エンターテインメントノンフィクション、縮めてエンタメノンフの姉御格、内澤旬子さんの『捨てる女』。売れているらしい。ならばレビューを書くこともないかという気もする。しかし、書きたい。それくらいおもしろかった。こんなに小気味よくポンポンと書かれていて、笑えて、その上、どん引きさせられ、最後にディープに考えさせられる本など読んだことがない。 子供のころから何でもか

この春、息子の通う学校の学習発表会で印象的な発表を見た。テーマは「日本列島」。子どもたちはまず、日本の形といくつかの脊梁山脈について説明し、そのあとこんなふう続けた。 「雨が降り、川となります。たくさんの川が張り巡らされ、それが日本列島を活き活きとさせています」 そして子どもたちの説明は、農耕や各地の習俗や文化の話へと続いていったのだが、それらは、凹凸で構成
これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。 イギリス首相として、第二次世界大戦を勝利に導いた ウィンストン・チャーチルの言葉 だ。たしかに、民主的選挙で選ばれた日本の政治家の醜態を見るにつけ、民主主義は最悪の形態だと言いたくもなる。しかし、独裁政治体制下の貧困や拘禁の恐怖におびえる生活を想像すると、民主主義国家以外で暮らしたいと思

一口に本好きと言っても、大きく分けると二つのタイプが存在する。それは本の中身にしか興味がないか、それとも外側にも興味を持つかということである。僕などは本好きを自称していても典型的な前者のタイプなので、フェティッシュに外側のことを熱く語られると、敵わんなという思いを常に抱いてしまう。 後者のタイプの際たるものが、稀覯(きこう)本と呼ばれるコレクターの世界である

今年の5月14日、女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がん予防のために乳房を2つとも切除したことをニューヨークタイムズに告白した。なぜ、まだ健康なうちから、切除という決断をするに至ったのか。 手術は、遺伝子検査の結果に基づく決定であった。そして、この乳がん遺伝子「BRCA1」は、米国のベンチャー企業ミリアド社が特許による独占権を主張している遺伝子である。 本

彼女の運命はあまりにも過酷だ。いや、発展途上国などでは日常的に起きている出来事なのかもしれない。たとえそうであっても、それは彼女の身に起きたことへの慰めにはならないだろう。本書は著者自身が体験した悪夢のような出来事を綴ったノンフィクション作品である。先進国という環境で生きる私たちにとって、この出来事はあまりにも遠くの世界に感じる。むろんイギリスの中産階級とい

あるチームに異分子を投入することで、そのチーム全体がゆさぶられ成長するのであれば、はみでた人間は強力なカンフル剤と言えるだろう。 映画『スティーブ・ジョブズ』の主演男優アシュトン・カッチャーが、 技術企業Lenovoのエンジニアになった。 もちろんアシュトンを招いたLenovoが期待するのは、技術的なスキルや専門知識というよりも、画期的イノベーションに必要な

プロローグに出てくるのは小指のない老門番である。2009年秋まで、太秦の東映京都撮影所を訪ねると、正門脇のベンチには眼光鋭い老人がいた。名前は並河正夫という。1950年代の東映時代劇映画黄金期から現場の最前線で予算やスケジュール管理をする制作進行として活躍し、晩年も駐車場の配車係として撮影所に雇われていた。 小指がないだけではない。並河の身体には手首から足首

「こんど6次元で(イベントを)やるんで、来てくださいよ。」というような感じで、ここ最近、なんだかやたらと6次元という言葉を耳にしている気がする。「6次元でやる」っていったいなんだ?と頭のなかは???でいっぱい。2次元は平面で、3次元は立体。4次元は時空を超えて、ドラえもん的なことだよね。5次元ってのはスピリチュアルの関係でよくみかけるけど、じゃあ6次元ってい

かの歴史家アーノルド・トインビーは、単独で通史を書くことの意義を語っている。というか、語っている、という話を聞いたことがある。通史となると、膨大な資料からなるのであるから、詳しさや正しさにおいて、一人で書くと不十分にならざるをえないかもしれない。それでも、通史にはおもしろさがある。 この本ほど、そのおもしろさが抜きんでている本はそうないだろう。まず、登場人物

世界は多様性に満ちている。 ITの普及とともに急速に平準化されていく世界を描いた『 The World Is Flat 』(邦題『 フラット化する世界 』)の発売から8年以上が経過し、スポーツから経済まで“グローバル化”が合言葉になっている。それでも、世界はまだまだデコボコなままではないか。インターネットの力で世界はより繋がりあったかもしれないが、今もわれわ

最も強い者が生き残るのではない。最も賢い者が残るのでもない。 唯一生き残るのは変化する者である。 ビジネスの現場において、これまで何度この言葉を聞かされたことだろうか。人類の生存戦略を簡潔に表したこの言葉は、言わば企業の生き残りをかけて戦う姿勢を鼓舞するワードとして、数多の局面で使われてきた。 この言葉は裏を返せば、滅んだもの達は変化に適応できなかったと言う

最近、NHKの経営委員に選ばれたことでも話題の売れっ子作家の百田尚樹が帯に言葉を寄せる。 「ホラー小説も逃げ出すくらいの気味の悪い本だった!」 尼崎連続殺人死体遺棄事件。兵庫県尼崎市、香川県、岡山県で次々と明るみになった犯罪史上稀に見る凶悪事件。複数の家族がバラバラにされ、分かっているだけでも死者行方不明者は10人以上とされる。首謀者とみなされた角田美代子の
本書は、ジョン・F・ケネディ大統領の会話記録を歴史家のテッド・ウィドマーが編集した本だ。 大統領執務室や閣議室での会話が録音されていた、と初めて明らかにされたのは、大統領が暗殺された10年後の1973年であった。それまでは録音システムの存在そのものが極秘扱いにされ、知らされていたのはごく一部の人間であった。側近のスピーチライターだったテッド・ソレンソンは「唖