ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

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3,647記事

『英国二重スパイ・システム』ヒトラーの頭の中に入り込め!! 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『英国二重スパイ・システム』ヒトラーの頭の中に入り込め!!

アプヴェーア という組織がかつて存在した。ドイツ軍により1921年から1944年まで運営されていた諜報機関である。にわかには信じられないのだが、このアプヴェーアが第二次世界大戦中、イギリスに潜入させたスパイの全てが、イギリスの防諜機関MI5の手に落ちていたという。しかも、刑務所に拘禁されるか処刑されたもの以外は、二重スパイとして活動していたというのだ。つまり

『産後クライシス』夫への愛情なんかもうないよねー 書影

教養・雑学 / 社会

『産後クライシス』夫への愛情なんかもうないよねー

子どもが産まれたあと妻の態度が激変した ー そんな経験ある世の男性(夫)は多いのではないか。とある民間研究機関の調査によると、妊娠した段階では7割が相手に愛情を抱いているが、子どもが2歳になる頃には、女性の夫への愛情はなんと半数以下の3割にまで低下するという(男性も低下するが、女性の下げ幅の方が圧倒的)。「え、そんなに俺たち愛されてなかったの?」「やっぱりそ

人生に迷ったらバーテンダーに訊け 『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』 書影

教養・雑学 / 社会

人生に迷ったらバーテンダーに訊け 『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』

長らく思い込んでいたことが、記憶ちがいであったりする経験はないだろうか。タイトルに使った『人生に迷ったらバーテンダーに訊け』というのは、誰もが知る格言の一つだと思っていた。しかし、まわりに尋ねても知らない。『人生、バーテンダー、迷う』でググってもひっかからない。 自分で思いついたにしてはしぶすぎるフレーズだ。しかし、いつか人生に迷う時があったら相談してみたい

うちは絶対かつお出汁! 『かつお節と日本人』 書影

教養・雑学 / 社会

うちは絶対かつお出汁! 『かつお節と日本人』

みなさんのお宅には「かつお節削り器」はありますか? 木製の箱型で、蓋を開けると鉋の歯があり、削ったかつお節は下の引き出しに溜まるという、あれです。 わたしが子供の頃は、毎日のようにかつお節を削らされたものだ。どうも滑らかに削るには向きがあるらしく、粉々になってしまうのを何度も持ち替えてみたり、消しゴムくらいに小さくなったやつを削っていて、指まで削りそうになっ

『インダス文明の謎』 大河文明ではないインダス 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『インダス文明の謎』 大河文明ではないインダス

世界四大文明といえば? 義務教育時代の記憶を掘り起こせば、センター試験で地理を選択した理系の私でも、エジプト文明、メソポタミア文明、黄河文明、そしてインダス文明の名を辛うじてあげられる。この“四大”文明というくくり方には様々な異論もあるようだが(2009年出版の『 もういちど読む山川世界史 』にも「四大文明」という表現はみられない)、大河に支えられて発達した

『あくびはどうして伝染するのか』 - 人体という驚異のデバイス 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『あくびはどうして伝染するのか』 - 人体という驚異のデバイス

科学の本というより科学的思考に関する一冊。 あくび、くしゃみ、せき、しゃっくり、わらい、くすぐりなど、これまであまりにも当たり前すぎて、きちんとした科学による検証がなされてこなかった人間の不可思議な行動たち。その深い一般認識と乏しい科学的存在のギャップを埋めるべく、著者は数々の実験を試み、科学の範疇にプロットしていく。 各々が独立した章としての読み物になって

『歌舞伎は恋』山川静夫の芝居話 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

『歌舞伎は恋』山川静夫の芝居話

歌舞伎役者の坂東三津五郎さんの膵臓に腫瘍が見つかり、9月の歌舞伎公演を休演することになった。歌舞伎界は昨年12月に中村勘三郎、今年2月に市川團十郎という看板役者を失い、千辛万苦の時期だったから梨園とご贔屓筋の心労は計り知れない。 じつは歌舞伎界は2011年1月に中村富十郎、同年10月に中村芝翫、昨年2月に中村雀右衛門という3人の人間国宝も失っている。「新歌舞

2013年のビジネス書No.1はこれに決まり!たくさんの人に届け!『ゼロ』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

2013年のビジネス書No.1はこれに決まり!たくさんの人に届け!『ゼロ』

今年のビジネス書No.1はこれで決まり!読み終わった瞬間にそう確信した。この本はぜひともたくさんの人に読んでほしい。いやたくさんの人に届けなくてはいけない。書店員である私は勝手にそういう使命に燃えている。 むかし、とある人に「あなたが売ったその1冊の本が、その人の人生を変えるかもしれない。あなたたちはそういうものを売っているのです。」と言われ、私はそれを胸に

『ハートフルなさき編み 東北の地から届いた』 書影

アート・スポーツ / 社会

『ハートフルなさき編み 東北の地から届いた』

最近、無心の力についてよく考える。人が没頭して作られた作品から、すごいエナジーを感じるようになったからだ。作品の完成度の解釈は人それぞれだが、私はその対象物にどれくらいのエネルギーと時間をかけ、没頭して創ったかによると考えている。無心状態で創られた作品は高い完成度に直結し、作品に対する思いは見る人へとダイレクトに伝わっていくだろう。 本書には宮城県の被災地、

『包丁侍 舟木伝内 加賀百万石のお抱え料理人』  グルメな殿さま、満足す。 書影

民俗・風俗 / 日本史

『包丁侍 舟木伝内 加賀百万石のお抱え料理人』  グルメな殿さま、満足す。

石川県金沢市。ここは加賀百万石の御膝元で、代々前田家が藩主となり、江戸時代から文化的に栄えた町である。冬の風物詩、 フードピア金沢 は1985年から毎年2月に開催され、日本中から多くの観光客を集めている。2014年の情報はまだないが、きっと企画中だろう。 名前が示すように、このイベントは食を中心にしており、老舗料亭に各方面から著名人を呼び、伝統的な加賀料理を

『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた』大人たちの壮大な実験物語 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『宇宙へ行きたくて液体燃料ロケットをDIYしてみた』大人たちの壮大な実験物語

「おおー!」「うわっっ」 インジャクターの少し先で、轟音をあげて炎が上がった。火炎放射器のようにオレンジ色の炎が4mほど前方に伸びる。時間にして数秒。 「燃えた‥‥‥」 インジェクターから噴出されたエタノールと液体酸素はみごとに混合し、乗用車のプラグが放つ火花を大きな火炎にした。 歓声があがった。 野田が笑い出す。止まらない。自然にみんなで拍手をしていた。

科学予測なんてあたらない - 『21世紀への階段』 - 半世紀前の “あのころの未来” 書影

サイエンス / 社会

科学予測なんてあたらない - 『21世紀への階段』 - 半世紀前の “あのころの未来”

ここまであたらないものか。かつて、フランスのノーベル賞学者 フランソワ・ジャコブ はその著書『 ハエ、マウス、ヒト 』で、『予測不可能性は科学の性質に含まれている』と喝破した。もっとはっきり、科学予測は基本的に不可能である、と考えておいた方がよさそうだ。 1960年に出版された本の復刻版である。今はなき 科学技術庁 が『識者』に依頼し、来たるべき21世紀、4

『大戦前夜のベーブ・ルース』 - 果たせなかった昭和の夢 書影

アート・スポーツ / 日本史

『大戦前夜のベーブ・ルース』 - 果たせなかった昭和の夢

日本プロ野球界において、その年の最高の投手に与えられる「沢村賞」という栄誉。今年、満場一致で田中将大投手(楽天)に贈られたことは記憶に新しいが、この「沢村賞」という言葉の持つ響きには、今なお神聖なものがある。 選考基準は、登板試合数・完投試合数・勝利数・勝率・投球回数・奪三振・防御率など。これだけ分業制が確立された現代においても、完投試合数、投球回数などの項

『遣唐使 阿倍仲麻呂の夢』 ー 男はなぜ帝国の重臣になれたのか 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『遣唐使 阿倍仲麻呂の夢』 ー 男はなぜ帝国の重臣になれたのか

「白紙(894年)に戻す遣唐使」と遣唐使廃止の年号をランドセルを背負って覚えていたあの頃は何だったのか。895年でも893年でも良い気がするが語呂が悪くなるか。確かに894年は意味と語呂がぴったりくる。893年だと「ヤクザ(893)もびびる遣唐使」か。意味分かりません。、「やくみ(893)つるも大好き遣唐使」ってのもある。もはや支離滅裂。895年に至っては、

『異端の統計学 ベイズ』 "信念"を数字に 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『異端の統計学 ベイズ』 "信念"を数字に

本書は、「ベイズ統計」の歴史について述べた本だ。「ベイズの法則」は、迷惑メールの振り分けや商品のおすすめ表示などの様々な分野に応用されている手法である。本書はそれを、このように説明する。 いわく、「何かに関する最初の考えを、新たに得られた客観的情報に基づいて更新すると、それまでとは異なった、より質の高い意見が得られる」 この定理を支持する人からすれば、これは

『ブリングリング こうして僕たちはハリウッドセレブから300万ドルを盗んだ』セレブとヴァリーガール 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『ブリングリング こうして僕たちはハリウッドセレブから300万ドルを盗んだ』セレブとヴァリーガール

ソフィア・コッポラ監督の最新映画『ブリングリング』の原作が本書である。この映画はカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門のオープニングを飾り、話題を呼んだという。ちなみにソフィア・コッポラ監督は、映画『ゴッドファーザー』などの監督を務めたフランシス・フォード・コッポラの娘だ。映画『ブリングリング』は2013年12月に、日本でも公開予定である。本書は2008年から2

『命がけで南極に住んでみた』科学者たちの楽園、南極大陸 書影

サイエンス / 生物・自然

『命がけで南極に住んでみた』科学者たちの楽園、南極大陸

地球最後のフロンティアを綴る最高のサイエンス・ルポだ。 本書を書店で見かけたとき、「南極はそんなに興味ないし」と平積みされている本の前を一旦通り過ぎたが、著者名が目に入った瞬間に引き返した。ゲイブリエル・ウォーカーといえば、サイモン・シンが絶賛し日本では毎日出版文化賞受賞した『スノーボールアース』の著者である。帯には「人を拒み続ける醜寒の大陸に長期滞在」とい

全地球人、備えよ! 『人類が絶滅する6のシナリオ』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

全地球人、備えよ! 『人類が絶滅する6のシナリオ』

ぎりぎりのタイトルである。帯には『明日、人類はこうして絶滅する!』とまである。下手をすれば「とんでも」系の本になりかねない。こういう時、まずチェックするのは、著者の経歴である。これまでの著作に『UFOは真実だった』とかいうのがあったら、HONZの対象外、とんでもフィクションである可能性が高い。 しかし、著者のフレッド・グテルの経歴を見ると、『ニューズ・ウィー

蝶13万頭との対話。『謎の蝶アサギマダラはなぜ海を渡るのか?』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

蝶13万頭との対話。『謎の蝶アサギマダラはなぜ海を渡るのか?』

アサギマダラは定期的に国境と海を渡ることが証明されている唯一の蝶だ。毎年、秋と冬に1000〜2000kmもの旅をするのだが、実はそれが発見されたのは80年代初頭のこと。私が子どもの頃に読んだ図鑑にはそんなことは一言も載っていなかった。 その発見を受けて、アサギマダラはどこからどこへ、どのようなルートで旅をするのかを解き明かす方法として、「マーキング調査」が始

『にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語』 ホッキョクグマの肝臓を食べてはいけない 書影

サイエンス / 生物・自然

『にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語』 ホッキョクグマの肝臓を食べてはいけない

ワトソンとクリックにより DNAの二重らせん 構造が明らかにされて60年以上が経過し、私企業のサービスを利用すれば個人でも気軽に遺伝子解析が行える時代となった。アンジェリーナ・ジョリーが自らの遺伝子検査結果をもとに乳房切除を決断したように、遺伝子分析の結果が私たちの意思決定に影響を与える事例もみられる。しかし、わたしたちは自分の未来を委ねられるほどに、遺伝子

『実録 ドイツで決闘した日本人』 - 高貴なる野蛮 書影

民俗・風俗 / 世界史

『実録 ドイツで決闘した日本人』 - 高貴なる野蛮

そんな書き出しで本書は始まるのだが、驚くのはこちらの方だ。隣のページに目を移すと、いきなり著者が身長2メートル近いドイツ人の大男と決闘しているシーンの記述に出くわす。それも著者が留学していた当時の話だから、わずか30年くらい前の出来事なのだ。 ドイツ語で「メンズーア」と呼ばれるこの「決闘」は、刃渡り88センチ、柄の部分が15センチもある鋭利な真剣を用いて、顔

『テロリズムの歴史』テロとはメッセージである。 書影

社会 / 事件・事故

『テロリズムの歴史』テロとはメッセージである。

要人暗殺というテロ行為は歴史上、いく度も繰り返されてきた。時にそれは革命の大きなうねりとなり、多くの人々の血を飲み込みながら、国家や社会の形態を変化させることに成功した。または未曾有の戦争を引き起こし、民衆、権力者を問わず、その財産と生命と涙を喰らいつくした。ただ、多くの場合は、それほどの成果もないまま、いつ果てるともわからない、不安定な状況と小規模な流血が

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医学・心理学 / アート・スポーツ

命の支え『生きていく絵』

今から30年前、都内郊外の精神病院の保護室にマリアの絵を描く患者がいたそうだ。 保護室とは、東京足立病院の閉鎖病棟は最奥に位置し、簡単な台座と布団だけが置かれ、コンクリートの床に穴が空いただけの便器が備え付けられている構造だった。実際に入った患者によると、当時この場所を「牢獄よりもひどい」と伝えていた。保護室という鉄格子の威圧感がもつ物理的かつ象徴的な閉鎖性

『流星ひとつ』 そして夢は夜ひらく…… 書影

人物 / 民俗・風俗

『流星ひとつ』 そして夢は夜ひらく……

沢木耕太郎31歳、藤圭子28歳。 男は新進気鋭のノンフィクションライター。女は昭和の歌姫と呼ばれながら引退を発表した演歌歌手。 1979年秋、東京紀尾井町のホテルニューオータニ40階にあるバー・バルゴーでふたりは語り始める。 「うん」 「何にします?」 「ウォッカ、あるかな?」 「それはあるんじゃないかな。とりあえず、ここはホテルのバーなんですから」 「それ

文化財に異変!?出動!『草魚バスターズ』! 書影

生物・自然 / 社会

文化財に異変!?出動!『草魚バスターズ』!

京都。女友達と湯葉を食べに行ったことが1回、書店員仲間と抹茶パフェを食べに行ったことが1回。えーと、修学旅行で京都に行ったかもしれない。そんな近くて遠い古都は今頃紅葉見物の観光客で賑わっているのだろうか。嵐山、大覚寺に照るモミジを思う。キンモクセイの香りが漂う中を、散策できるように道がつけられているのだろう。夜は湖面に鮮やかな月が映り込んでいるのだろう。魚の

京都の対極?  『冷泉家八〇〇年の「守る力」』vs『人生、行きがかりじょう』 書影

教養・雑学 / 人物

京都の対極? 『冷泉家八〇〇年の「守る力」』vs『人生、行きがかりじょう』

面白いだろうと思って買った本が面白かったらうれしい。しかし、まぁ教養のために読んどこかぁ程度に思って買った本が面白かったら、もっとうれしい。すこし失礼かもしれないけれど、わたしにとって、『冷泉家八〇〇年の「守る力」』は、そんな本だった。 藤原定家の息子、初代の冷泉為家まで800年を遡ることができる、天皇家に仕えた和歌の家系。日本でも屈指の名家の話である。タイ

『糖尿病とウジ虫治療』 ウジ虫が人類を救う!? 書影

サイエンス / 生物・自然

『糖尿病とウジ虫治療』 ウジ虫が人類を救う!?

本書の主役はウジ虫。虫嫌いの方はこの時点で、読み進めるのをやめようと思われたかもしれない。確かにウジ虫は、ぶにょぶにょしていて、バイ菌だらけで、気持ちが悪い。これまで、「ウジ虫が大好きだ」という人にはお目にかかったことがない(HONZ虫班の野坂美帆、土屋敦などはもしかしたら好きなのかもしれないが)。しかし、本書にはウジ虫や生々しい傷口の写真は掲載されていない

『緊縛の文化史』 - ニッポンのSM 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

『緊縛の文化史』 - ニッポンのSM

趣味性が高く、マニアックな世界の話を外向けにコミュニケーションしているケースというのは、そうそうお目にかかれない。その手の会話の醍醐味はハイコンテキストなやりとりが交わされるという点にあり、前提となる知識が省かれることによって拍車もかかる。ましてや秘匿性の高い話題となれば、なおさらのことだ。しかし水面下では、地下水脈のように文化的な基盤が共有されており、その

『夜の経済学』-数字が照らすアタリマエの裏側 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『夜の経済学』-数字が照らすアタリマエの裏側

著者の一人である明治大学准教授の飯田泰之氏は本書の刊行によって講演がキャンセルになったという。 「『夜の経済学』なんてタイトルの本を書く奴の話なんて聞く気にならない!」 といきなりのキャンセルを喰らったとか。講演の依頼先までは明らかにしてないが、確かに、眉をひそめてしまう人もいるかもしれない。帯には「セックスから政治まで」とあるが、タイトルからわかるように、

『フラクタリスト ―マンデルブロ自伝―』 "ラフネス"と共に 書影

サイエンス / 人物

『フラクタリスト ―マンデルブロ自伝―』 "ラフネス"と共に

部分と全体の相似が特徴的な ロマネスコ 。「フラクタル」と呼ばれるこのような繰り返し形状は、シダや雲、海岸線、北斎の浮世絵、銀河の密度、さらには金融市場の価格変動等にも見られる。これらを対象とする数学を見出したのが、著者のベノワ・マンデルブロだ。「フラクタル次元」という「ラフさ」を表す数値は、次元であるが、整数ではない値になり得る。例えば、下記の繰り返し手順

『レックス』人と犬の絆 書影

人物 / 社会

『レックス』人と犬の絆

以前に『世界の軍用犬の物語』という本の レビュー を書いた。この本を読んでいて気づいたのだが、現代の軍用犬は地雷探知犬や爆発物探知犬、または捜索犬などが中心であり、軍用犬と軍犬兵(ハンドラー)は軍隊という殺戮を主目的にした組織において、人命を救うことに主眼が置かれた兵科だということだ。特にイラク戦争のように無統制な武装勢力やテロリストが暗躍する戦場では、軍用

カラス♫ なぜ来るの? 『カラスの教科書』 書影

おすすめ本レビュー

カラス♫ なぜ来るの? 『カラスの教科書』

窓を開けてベランダに降りる。と、どこからか熱い視線が刺してくる。振り向くと、部屋から漏れる細い光の輪の外に、真っ黒なヤツらが――カラスである。 数日前のとある夜、突然の雨は、日付が変わるころには大降りになっていた。ベランダにおいてあるペットボトルを取りに行こうとしたのは、そんなときだ。 雨か、あしたのHONZの朝会は六本木で7時から。早く寝なくちゃ。と思いつ

『おっぱいの科学』にクラクラっ… 書影

医学・心理学 / 教養・雑学

『おっぱいの科学』にクラクラっ…

HONZメルマガ が熱い。編集長が月替わりから栗下直也専任になって、面白さが激増である。その栗下に『「今月読む本」に『おっぱいの科学』、直近のレビューが『生理用品の社会史』です。「どこに行くんだ!大先生」って感じです。』と 誉められた 。けど、どっこも行きません。毎日、ちゃんと大学に来て仕事してますから。 『いずれの本も密かに私が狙っていたからです。ディスプ

『犯罪は予測できる』 防犯ブザーは役立たず 書影

社会 / 事件・事故

『犯罪は予測できる』 防犯ブザーは役立たず

書店でタイトルを眺めつつ、犯罪の予測といえば、フィリップ・K・ディックの「少数報告」だよな、などと思いながら手に取ると、まえがき1ページ目でそのことに触れており、一気に著者に対する親近感が増してそのまま購入してしまった。 もちろん、本書には予知能力者のプレコグたちを使った犯罪予知法が書かれているわけではない。著者は、日本人として初めて英ケンブリッジ大学で犯罪

『マッキンゼー』 世界を動かす黒幕の正体 書影

おすすめ本レビュー

『マッキンゼー』 世界を動かす黒幕の正体

DeNA創業者の南場智子、IBMを再建させたルイス・ガースナー、フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグ。偉大な経営者として知られる彼、彼女らは、アメリカ発祥のコンサルティングファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニーの出身者である。「CEO製造工場」と呼ばれるほど多くの元マッキンゼーが、経営者として大企業の舵を取っている。事実、2008年の『USAトゥ

『アノスミア』 - 失われた”匂い”を求めて 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『アノスミア』 - 失われた”匂い”を求めて

アノスミアとは嗅覚脱失の症状を指し、匂いを感じる能力がないことを意味する。かつてシェフを目指していた著者も、交通事故をきっかけに嗅覚を失ってしまった経験を持つ人物だ。本書は、その喪失から回復までの日々を、当事者としての立場から綴った一冊である。 嗅覚は身体の中で最も直接的な感覚であるという。どんな匂いもはじまりは一個の分子に過ぎず、体内に入り込まなければ始ま

『真珠の世界史』珠からみた世界 書影

社会 / 世界史

『真珠の世界史』珠からみた世界

私はダイヤモンドが好きだ。20代の頃はHIPHOP系の服を扱うショップの店員をしていたこともあり、指にはダイヤの指輪を常に複数はめていた。ダイヤの冷たい輝きは、私の自己顕示欲や虚栄心を満たしてくれる存在だった。ダイヤこそ宝石の王者だと思っていた。しかし、本書で古代から近年にいたるまで、最も高い評価をされていた宝石が真珠であるということを知った。養殖真珠が登場

『金魚のことば 君のきもちと飼い方がわかる73の質問』これで以心伝心 書影

生物・自然 / 教養・雑学

『金魚のことば 君のきもちと飼い方がわかる73の質問』これで以心伝心

本日はHONZ金魚奨励デーである。「金魚なんか興味ないし、今後も好きにならなそう」という人にとっては全く価値のない話かもしれない。かくいう私も金魚といえばアートアクアリウム展に足を運んだものの、可愛いな~程度しか感じない人だった。 すっかり夏も終わり中秋の名月も訪れたが、個人的な話では、8月の終わりに地域の夏祭りに家族で参加してきた。出店の屋台に金魚すくいが

『東洋の至宝を世界に売った美術商: ハウス・オブ・ヤマナカ』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『東洋の至宝を世界に売った美術商: ハウス・オブ・ヤマナカ』

「美術品の世界へようこそ!」と両手を広げて迎え入れてくれるのは、本書の著者、朽木ゆり子さんだ。朽木さんが描く、美術品の背後に渦巻く歴史の数々に、読者は息をつく暇もない。ノンフィクション特有の、頭の中に次々とわき起こる知的興奮で四六時中頭がいっぱいになる。そんな著者の代表作、『ハウス・オブ・ヤマナカ』が文庫版として再登場した。 本書の序章だけ紹介したい。タイト

『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』奇跡の教育モデル 書影

アート・スポーツ / 人物

『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』奇跡の教育モデル

南米ベネズエラといえば、反米主義のウゴ・チャベス元大統領、石油、野球などが思いつく程度で、あまり日本人には馴染みのない国だろう。もしかするとミスユニバースを何人も輩出する美女大国として知っている人の方が多いかもしれない。 そんなベネズエラでは、ここ数年『エル・システマ』という音楽育成プログラム発祥地として世界中の注目を浴びている。注目を浴びるきっかけとなった