
学生メンバー応募レビュー『なぜ意志の力はあてにならないのか』
昨日に続いて、HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビュー。今日は、塚越啓樹さんです。 著者は米国のジャーナリストであり、エッセイスト。読みやすさ抜群、且つ贅沢な内容、この一冊で脳科学、神経科学、生物学、文学、宗教、政治、社会、心理などひと通りの学問の世界を旅することができる。 私たちは誰しもが皆、(悪いと頭でわかっていても)自身の内部にある欲望に忠
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昨日に続いて、HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビュー。今日は、塚越啓樹さんです。 著者は米国のジャーナリストであり、エッセイスト。読みやすさ抜群、且つ贅沢な内容、この一冊で脳科学、神経科学、生物学、文学、宗教、政治、社会、心理などひと通りの学問の世界を旅することができる。 私たちは誰しもが皆、(悪いと頭でわかっていても)自身の内部にある欲望に忠

今週と来週の週末、HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビューを掲載します。 まず最初は、井上卓磨さんのレビューです。 本書の著者、神坂次郎氏は、徹底した資料収集と丹念な現地取材によって歴史の中に埋もれた無名の人間に光を当て、その自由闊達な生き様を紹介してくれる、さながら歴史のキュレーターのような存在である。氏の著作によってキュレーションされた人物と

大英図書館が「 British Newspaper Archive 」というサービスを開始した。このサービス何がすごいかというと、アーカイブしている情報量とその古さだ。なんと、1800年以降にイギリスで発行された新聞のほとんど全てをカバーしており、そのデータに自宅のPCから容易にアクセスできる(1700年代のデータもあるようだ)。1800年といえば日本は寛政

おどろおどろしいタイトルがついているが、語り口は軽妙。しかし書かれている内容は、やはり恐ろしい。オビにも書かれている通り、命懸けのノンフィクションだ。 本書は、福島第一原子力発電所に作業員として潜入し、その内部の実態を明らかにしたルポルタージュである。メインは福島第一原発への潜入取材なのだが、その入口と出口の取材相手として暴力団が鎮座する。表社会と裏社会は、
出版社/メーカー: 岩波書店 今年も残り10日ばかりだ。学生時代、文系一直線だったからか、30歳を過ぎても変身願望がまだ潰えないのか、今年も「気が進まないが読めたらいいなと思う理系の臭いがプンプンする本」に性懲りもなく手を出してみた。私のレビューは、HONZ副代表の東曰く「色物」が中心だが、一応、「それっぽい本」も買ってはいるのだ。 忘れもしないのは9月。H

フランク・キャプラが大陸横断鉄道で両親と共にロサンゼルス駅に到着したのは6歳の時だった。両親は、足下の地にキスをした。フランク少年はひどい旅に疲れ果て、迎えに来た兄に「アメリカなんか大嫌いだ!」と毒づいた。時は1903年、ロスアンゼルスは人口10万人、T型フォード車が登場する5年前であり、ライト兄弟が飛行実験に成功した年であり、エジソンが活動写真を発明した1

21世紀に入ってから静かな江戸ブームが続いている。2002年は江戸開府400年で盛り上がったし、江戸の面影をのこす歌舞伎座は2009年1月から2010年4月まで「さよなら公演」を行い、連日の大入り満員だった。2010年には江戸東京博物館が15周年を迎え、来場者数は1000万人をはるかに超えた。 しかし、その江戸ブームのなかにあっても、日本人全体として「和本」

あなたの家には仏壇があるだろうか?神棚は?お正月のお飾りや鏡餅はどうしてる?初詣はきまったところに行く?お札やお守りは毎年買うだろうか。 私は普通のサラリーマンの家に育ったが、あたりまえのように仏壇のとなりに神棚があった。そこには毎年どこからか頂いてくるお札が置かれ、仏壇のお供物と神棚への水は毎日祖母が上げ下げしていた。正月には注連縄を新しくし、御幣を飾った

問題です!(SE:ジャジャン!) かつて「ロス・ジャルディン諸島」「イキマ島」「グランパス島」「中ノ鳥島」などが位置した海域はどこでしょう? さてさて。クイズ番組にこんな問題が出る日は来るだろうか。たぶん来ない。難問過ぎる! 解答解説もややこしくなりそうだし……。えっ? そんな島あったっけ、聞いたことない。地図にもない……。クイズマニアの方々からお問い合わせ

パスカル、ニーチェ、ガルフレイズ、モリス…名前を耳にしたことがある思想家・活動家を暇と退屈の間を走り抜ける中で出会いを演出してくれる本書。哲学書だからといって身構え、準備し過ぎることはない。その道のりは含蓄溢れ、順序よく進んでいけばすんなりゴールにたどり着ける。今年読んだ本の中で、一番印象に残った一冊である。 「人が旅するのは到着するためではなく、旅行するた

先日「新刊ちょい読み」で 成毛眞が紹介 し、在オーストラリアの久保洋介も 「今月読む本」 で紹介していた一冊。決してメジャーとは言えないテーマの本だがどこか本好きを惹きつけるものがある。 牡蠣がニューヨークの湾内に生息するようになったのは 紀元前1万年であり、1609年にイギリスの探検家・ヘンリー・ハドソンがニューヨークにたどり着くずっとずっとず〜っと以前の

久々にジャケ買いした一冊。勝新太郎と言われても、子供のころに記者会見で見たキテレツなイメージしか残っていなかったのだが、表紙の写真に「おいっ」と呼び止められた気がして思わず購入した。読み進めて素顔を知るにつれ、そのイメージは驚きへと変わっていく。 著者は、勝新太郎の最後の「弟子」と称される人物。かつて、勝新太郎が週刊誌で人生相談をしていた時の編集者だ。勝新太

1990年に東海村で発生した臨界事故の被曝治療を記録した一冊だ。この事故はずさんな作業管理のため、瞬間的に極小の原子炉が出現し、3人の作業者が至近距離で被ばくしたというものだ。亡くなった方の被曝線量は20シーベルトと推定され、これは一般人が1年間に浴びる限度の2万倍にあたるという。 3人が被曝したのは中性子線だ。体内被曝をするアルファ線とちがい、中性子線は外

だだっぴろい風景を見るとなんだかスーッとするのは、きっと私だけじゃないだろう。空の写真を撮るのが趣味、という人もけっこういる。山登りが趣味とか、夜景が好きとか海が好きとか、そういうものにも同じテイストが含まれているに違いない。空を飛びたいというのは究極だ。この大空に、翼を広げ、飛んでいきたいよ。今では当たりまえに乗っている飛行機だけど、そこに至るまでに多くの

今年も気がつけばもう師走。ムードある電飾のイルミネーションや精緻なCGアニメーションも良いが、素朴な手作りおもちゃも温もりがあって飽きが来ないものだ。 Eテレの番組 でもおなじみのピタゴラ装置は昔から私の大のお気に入りで、ボールが転がり始めるとついつい見入ってしまう。 本日はちょっと気分を変えて右脳系ブックレビュー。目に楽しく斜め読みでもくつろげる、こちらの

アイ・ウェイウェイの名前はそこまで日本では浸透していないだろう。艾未未、日本語読み(がい びび)中国読みで(アイ・ウェイウェイ)という彼は現代美術家・キュレーター・建築家・詩人・都市計画家であり、父であるアイ・チンは1930年代のパリでアートを学んだ詩人である。父アイ・チンはランボーやボードレールといった詩人の影響を受け、中国に帰国した後は最高の現代詩人と称

チベット医学と言われてもピンとくる人は少ないだろう。中国医学、アーユルヴェーダ(インド伝統医学)ユナニ医学(イスラム伝統医学)とともに東洋四大医学に数えれらている。薬師如来によって説かれたとされ、その教えは8世紀に『四部医典』(チベット語せギューシ)として編纂された。その名のとおり、根本部、論説部、秘訣部、結尾部の全156章からなる大部である。 『四部経典』

今後も地球温暖化が進んだ場合、自分たちが住んでいる地域は具体的にどう変わるのか。最先端の科学技術を駆使してその疑問に答えるのが、本書『ウェザー・オブ・ザ・フューチャー』である。 本書は、地球温暖化の影響を受ける代表的な地域を取り上げ、温暖化によって近い将来そこで何が起こりえるのか、最新の気候シミュレーションモデルを用いて予想する。地球温暖化の原理や経緯を解説
昨年の夏、伊勢神宮へ参拝したときのことだ。神宮のホームページに書かれているように、五十鈴川の清流にかかる宇治橋を渡ると参道は深い森につつまれ、静かで神々しい空気に包まれるはずだった。日本人はもちろん、欧米人も厳かな面持ちで歩いているそのど真ん中をかきわけて、大勢で腕を組み、わめきながらのし歩く中国人観光客たちがあらわれた。久しぶりに頭に血がのぼった一瞬だった

著者は、アメリカではベストセラー連発のサイエンス・ライター。サイエンスといっても真面目で骨太な作品をものすのではなく、センス溢れる文章に笑えるコネタを挟み込み、実にアメリカっぽいレトリックで軽快に語る楽しい作品を生み出してきた。取り上げてきたテーマも変わっていて、まずは 死体 をめぐるルポを書き、続いて 霊魂 そして セックス ときて、今度は「宇宙開発」であ

それでは、化学の本はどうだろうか。Amazonのカテゴリー別登録冊数を見ると、化学の7,051冊は物理学(5,971)、数学(7,051)よりも多いのだが、専門書が多く、幅広い人が楽しめる読み物は少ないように感じる。HONZでも化学がメインテーマの本は取り上げられていない。 そんな逆風の中、本書は真正面から化学(特に有機化学)の面白さを伝えてくれる稀有な一冊

昨年のプロ野球日本シリーズのことだったと思う。開幕前の監督会議で中日・落合監督(当時)の審判団に投げかけた質問が、今でも印象に残っている。それは、「第7戦までのすべての試合が引き分けになったら、どうするのか?」というものであった。 日本シリーズは7試合制で、先に4勝したチームが日本一となる。第7戦を終えて7引き分けなら、最低でもあと4試合、最大で7試合を追加
出版社/メーカー: 河出書房新社 メディア: 単行本 学生時代を思い出すと、「なぜあいつが」という思いをした経験は誰もがあるはずだ。成績は学年でも一桁の順位だったのに入試に失敗したり、部活動で練習試合では抜群の動きを見せるのに公式戦ではいまいちだった友人や知人が周りにいただろう。今でも周囲を見渡せが、「なぜあいつが」はいるに違いない。万全の準備をして問題ない

前々回、 『生物のなかの時間』 を紹介したあと、“ このまま終わってしまっていいのか、自分? 「スデモン」とか「カバさん」とか言っておわり、って、それはさすがにイカガナモノなのではないか?” という、そこはかとない秋の風情を感じたのだった。いや、季節のせいではない。もし万が一、私が安穏とした老後をむかえることになり、縁側でお茶なんぞ飲んで秋を迎えるようなこと

HONZが発足してから11ヶ月、メンバー間で本代とともに右肩上がりで増え続けているのは酒量であろう。毎月の定例会、新刊本を持ち寄る 朝会 に加え、気付けば本を肴の夜会も恒例となり、こちらも今後ますます盛況となる気配。 さらに一同相当の飲み手だ。(甘党・下戸の内藤順は唯一の例外。) 私自身は晩酌の習慣もなく今まで付き合いでたしなむ程度、「このままではマズイ、何

そうか、とうとう…そう思った。 ここ数年の高座では、まず最初に「死ぬ」ことの小咄から始まっていた。あまりにも死ぬ死ぬといいながら復活するので、もしかしたら死なないのじゃないかとも思っていた。 本書は今年6月に出た立川志らくの新刊を新潮社のPR誌「波」で書評したものを再掲。 立川流の弟子たちは総じて筆が立つのだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2009年、ニュースで寺田学衆議院議員が日本のサイバー関連予算の削減を要求している姿を観て、我が目を疑った。明らかにサイバー・テロ及び犯罪が頻発している時代に逆行する行為だったからだ。 アメリカではサイバー犯罪に対抗する為に「サイバーコマンド」が創設されているし、NATO、韓国、中国もサイバー・テロに備える組織をそれぞれ創設している。サイバー犯罪及びその対策

「幸せなら手をたたこう」という歌があった。故坂本九が偶然耳にし、1964年にレコード化したものだ。2011年現在、なかなか自信を持って、手をたたきにくい時代になった。その反動なのか、「幸せ」や「幸福」が頻繁にニュースの話題に取り上げられている。金銭的・物質的豊かさを目指すのではなく、精神的な豊かさ、つまり幸福を目指すべきだとする考えから生まれたGNH(国民総

どちらもHONZ随一の武闘派、鈴木葉月の言葉である。HONZメンバーは常にもっと面白い本はないかと日々新刊情報に目を光らせている。毎月第一水曜日に行われる朝会の前日に都内の大型書店に出かければ、“ハンターの目“をしたメンバーを見つけることはそれ程難しいことではないだろう。朝会の前日でなくたって本屋には出かけるのだが、どんな本を見落としているかも分からない。妥

オーストラリア、メルボルン出身の著者マーク・カーゼムは、オックスフォード大学で人類学を研究していた。大学の帰りに馴染みの書店で大量に買い込んだ本を抱えて下宿先に帰宅したマークの目に一枚の紙切れが飛び込む。 この特徴ある文字の書き方は父に違いない。東ヨーロッパ出身でありながら、オーストラリア移住後はヨーロッパを訪れることを嫌っていた父がなぜ急に?母親との間に何

「英語ができても、バカはバカ」とは、 どこかで聞いたようなセリフ だが、「数学ができても、バカはバカ」という命題は、はたして真なのか、偽なのか。英語と同じように、数学を道具や媒介物と位置づけるなら、この命題は真となる。それなら話は簡単だ。結論は「数学を勉強せずに、本を読め!」である。 しかし数学は、道具と位置づけるには、あまりにも上手く出来過ぎているようにも

「よく壊れないでいてくれた。津波と火事に耐え、みんなの命を守ってくれた」 気仙沼に急行した丹野さんは、泥が流れ込んだ総局ビルの前で涙した。 「何やってんだ、俺。最低…」 ヘリからシャッターを切ることしかできない門田さんは、自分を呪った。 「奥さん落ち着いて。とにかく落ち着いて。」 販売部長の荒さんは、自分も取り乱しそうになるのを抑えて呼びかけた。 「ならこの

社会人の皆様は今、仕事に燃えているだろうか? 学生の皆様は、将来への希望に満ち溢れているだろうか? ビジネス書を手に取ってフレームワークを学んだり、自分探し・自己啓発で異業種交流・外部セミナーに参加する前に、なすべきことがあるはずだ。それは、今この瞬間を生きること。与えられた仕事をトコトンまでやり切ってみろ。目の前の仕事に全身全霊ぶつかっていけ! ― ページ

私事で恐縮だが、順調であれば来年の春に父親になる予定だ。最近は子供の名前を考えたり、将来どういった人間になってほしいか人並みに考えたりもしてしまう。それでも、最終的にはなるようにしかならないと思いつつ、キラリと何か1つでも輝けるもの持ってもらえたらと密かに期待したりもする。本書はそういった私の子育て哲学を後押ししてくれる一冊だ。 今、20~30代の多くは自分

著者は探検家である。ご自身のブログでそう宣言しているのだから疑う余地はない。じっさい、第8回開高健ノンフィクション賞を受賞した著者の前作『空白の五マイル』では、チベットの奥地にあるツアンポー峡谷を命からがら探検している。峡谷とはいえ全長5百キロメートル、最大深度が6千メートルもある巨大峡谷だ。 今回の探検はそのような人類未踏の地ではなくヒマラヤに雪男を探しに

科学本なのに、まるで小説を読んでいるかのようである。物語が壮大でロマンに溢れ、本書を読んでいると、不思議とやる気と力がみなぎってくる。ロマン溢れる仕事をしたいと思っている若手ビジネスマンにはぜひ読んで欲しい一冊だ。 本書は、地質学者を目指していた学生がボストンマラソンに挑戦し、見事9位入賞を果たした場面から物語が始まる。完走後、この学生は将来の進路について考

「より少ないボタンを持つ洗濯機により多くの金を払う」複雑さを避けるために簡単さを選ぶ、そういった選択は取られるのだろうか?否、そんな理想的なことは起こりそうにない。人々は複雑さを取り除きたいと考えている一方で、商品購入時には機能の一つも失いたくない。高機能の製品に高い値段がついていることに納得し、機能を削いだ製品は低価格であるべきだと考えてしまう。そうして、

ある冬、軍事演習を行っていたハンガリー軍の少尉は偵察隊をアルプス山脈に送り込んだ。その直後降り始めた雪は2日間にわたって止むことはなく、少尉は「彼らを殺してしまったのでは?」という不安に苛まれていた。しかし、3日目に奇跡が起こる。彼らは全員無事に帰ってきたのだ。驚く少尉に調査隊のメンバーがその経緯を話し始めた。 「地図もコンパスもなく自分がどこにいるかも分か

いわゆる多読というものを初めてから、それほど年月を重ねていないのだが、多読以前と以後で全く変わらないものがある。それは全体に占める、未読本の割合だ。年間50冊程度しか本を買っていなかった時も、年間500冊近く買うようになった今も、およそ30%が本の山に積んだまま、もしくはパラパラとめくっただけなのである。 未読が発生するメカニズムについても、自分なりに、かな
出版社/メーカー: 筑摩書房 「それは書いてほしいな」。HONZ副代表の東えりかは11月の定例会で私の隣で、そう、つぶやいたのである。小声だったが確かに。本書『ポルノ雑誌の昭和史』を紹介した時だ。私はやはり「セクハラの人」なのである。 HONZサイトがオープンした7月。私は困惑した。「HONZ」の面々はレビュアープロフィールを読む限り私を含め一見普通の社会人