ノンフィクションはこれを読め!

東 えりか

HONZ副代表

書評家。千葉県生まれ。信州大学農学部卒。幼い頃から本が友だちで、片っ端から読み漁っていた。動物用医療器具関連会社の開発部に勤務の後1985年より小説家・北方謙三氏の秘書を務める。
2008年に書評家として独立。「週刊新潮」と「ミステリーマガジン」などでノンフィクションの書評担当のほか、「信濃毎日新聞」の書評委員。現在は小説の書評の仕事と半々。「NEWS本の雑誌」の記者でもある。好んで読むのは科学もの、歴史、古典芸能、冒険譚など。

(2024年当時)

東 えりかの記事

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466記事

『語学の天才まで1億光年』混沌と放浪の中での語学学習術 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『語学の天才まで1億光年』混沌と放浪の中での語学学習術

高野秀行さんの著作を最初に読んだのは30年以上前のことだ。『幻の怪獣・ムベンベを追え』という怪しげな本を書店で見つけ、この「早稲田大学探検部」という命知らずの若者たちに熱狂し周囲の人に勧めまくった記憶がある。 しかしその本が出てから著者の行方は杳として知れず、記憶も薄れたころ(正確には9年後だ)これまた書店で高野さんの著作『ビルマ・アヘン王国潜入記』を見つけ

『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』『カーザ・ヴェルディ 世界一ユニークな音楽家のための高齢者施設』終の棲家は自分で選ぶ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』『カーザ・ヴェルディ 世界一ユニークな音楽家のための高齢者施設』終の棲家は自分で選ぶ

人が死ぬということは世の中から消えることなんだ、と本当に納得できるようになったのはここ最近のことだ。自分の人生の先が見えてきたからだろうか、誰かの死が身に染みて哀しい。 山本文緒さんが膵臓がんで亡くなったことを知ったのは2021年10月のこと。享年58。その直前に新刊の 『ばにらさま』 を楽しく読んでいたから、にわかには信じられなかった。 『無人島のふたり 

『シンクロと自由』ホームで暮らすひとりひとりの「わたし」たち 書影

医学・心理学 / 社会

『シンクロと自由』ホームで暮らすひとりひとりの「わたし」たち

著者は「こんな老人ホームなら入りたい」と全国から熱い視線を浴びる、NHKの番組でも紹介された特別養護老人ホーム「よりあいの森」「宅老所よりあい」「第2宅老所よりあい」の統括所長。本書はホームで出会った老人との交流で得た知見をまとめたものだ。 老人たちはゆっくり動く。食事も排泄も思考も移動も彼らのペースで行われる。繰り返しも多いし、すぐに忘れてしまう。 でも、

『「アマゾンおケイ」の肖像』2022年No.1評伝!20世紀を駆け抜けた痛快な女傑の物語 書影

人物 / 社会

『「アマゾンおケイ」の肖像』2022年No.1評伝!20世紀を駆け抜けた痛快な女傑の物語

自らを「アマゾンおケイ」と呼んだ小川フサノは、軍事アナリストの 小川和久 氏の母親ではある。二十世紀を駆け抜けた母の豪快で痛快な一生を息子は全力で書き上げた。 1903年、熊本県八代の山林地主の家に生まれたが、ほどなくして実家は没落。13歳で叔父夫婦とともにブラジル移民となった。 叔父の妻と仲違いし、四十男との結婚を嫌い、ピストルを懐に出奔後、サンパウロで邦

『年寄りは本気だ はみだし日本論』日本の将来は、なぜこんなにも不安なのだろう 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『年寄りは本気だ はみだし日本論』日本の将来は、なぜこんなにも不安なのだろう

本書は、年寄りが二人、本気で日本の将来を心配して行った真摯な対談である。 まあ、そんじょそこらの年寄りではなく、ひとりは東京大学の名誉教授で解剖学者、『バカの壁』(新潮新書)などのベストセラーを持つ84歳の養老孟司さん。もうひとりは山梨大学や早稲田大学で教鞭をとり名誉教授に。現在では「ホンマでっか⁉TV」で人気を博す75歳の生物学者、池田清彦さんだ。彼らの共

『遠い声をさがして 学校事故をめぐる〈同行者〉たちの記録』痛ましい事故はなぜ起こったのか? 書影

社会 / 事件・事故

『遠い声をさがして 学校事故をめぐる〈同行者〉たちの記録』痛ましい事故はなぜ起こったのか?

ときどき、書店で本に呼び止められることがある。棚ざしになっていても、手に取ってくれとアピールするのだ。本書『遠い声をさがして』は久しぶりにそんなふうにして出会った本だ。 2012年の夏休み、小学一年生の浅田羽菜ちゃんは彼女の通う京都市立叡成小学校で、低学年児童69人と一緒のプール学習中に溺死した。水を怖がらず、むしろプール学習を楽しみにしていた羽菜ちゃんに何

『LISTEN.』山口智子さんと世界の民族を巡る旅をQRコードで体験する! 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『LISTEN.』山口智子さんと世界の民族を巡る旅をQRコードで体験する!

俳優の山口智子が世界中を巡り、後世に残る音楽ドキュメンタリーを10年もかけて撮っていた…。 いま、この地上のどこかで民衆が歌う声を残したいという決意。それを彼女はほんの数人の仲間たちと成し遂げようとしている。本書を読み終わって心の底から驚き、感動した。 『LISTEN.』のイントロダクション映像 2011年9月、ハンガリーのブタペストで夜の帳から聞こえた音楽

『老警』事件とは多面体 書影

小説 / 「解説」から読む本

『老警』事件とは多面体

2022年7月8日の昼頃、本書『老警』の文庫解説を書き始めたちょうどその時、ニュース速報がスマホに届いた。 「安倍晋三元首相、奈良市で応援演説中に銃で撃たれ、心肺停止」 テレビを付けると、すでに臨時ニュースでその瞬間の映像が流されていた。 参議院選挙を二日後に控え、自民党候補の応援演説を行っている最中、安倍元総理は背後から狙撃されその場に倒れ込んだ。容疑者は

『暴れ川と生きる 筑後川流域の生活史』川と人間の共生を実現させるために 書影

生物・自然 / 社会

『暴れ川と生きる 筑後川流域の生活史』川と人間の共生を実現させるために

筑後川は「筑紫次郎」の異名のとおり「坂東太郎」の利根川「四国三郎」の吉野川とともに日本の暴れ川と言われている。さらにここ10年あまり、九州に打ち続く豪雨は毎年のように筑後川とその支流に大水害を起こす。 著者は2009年から九州北部を流れる広大な筑後川流域の全域で、川と人間の共生の歴史を調査してきた。 本書の冒頭に掲げられた筑後川全域の地図を見ると、その広さに

(宿題に使えるかもしれない)親子で読んで考える新刊ノンフィクション5冊! 書影

サイエンス / 社会

(宿題に使えるかもしれない)親子で読んで考える新刊ノンフィクション5冊!

著者は2015年の「世界コピーライターランキング1位」を獲得したクリエーティブ・ディレクター。レニングラード生まれ、両親の仕事の関係で小学1年から中学3年の間にロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダの6カ国で9回の転校を経験している。4つの言語で教育を受け、学制がちがうため小学校は3回卒業した。 国によって教育方針も方法も、文房具も科目も全部違う

『朝日新聞政治部』ある新聞記者のセルフドキュメント 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『朝日新聞政治部』ある新聞記者のセルフドキュメント

冒頭、著者の鮫島浩は横浜中華街の料理店に妻と二人で入る。2014年当時、朝日新聞の特別報道部デスクを解任され、ある記事の責任を問われて蟄居謹慎の身だった。そこで演奏される二胡の音に涙した鮫島に妻の放った言葉は強烈だった。 あなたはね、会社という閉ざされた世界で『王国』を築いていたの。(中略)あなたがこれから問われる罪、それは『傲慢罪』よ! 『朝日新聞政治部』

『母親になって後悔してる』『87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし』ワタシの生き方、どう思う? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『母親になって後悔してる』『87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし』ワタシの生き方、どう思う?

米連邦最高裁判所は2022年6月24日、約半世紀ぶりに人工妊娠中絶の禁止を認めない判断を下した。全米50州のうち約半数で中絶が規制される見通しという。アメリカでは「母になるかどうか」を自分で決められなくなったのだ。 『母親になって後悔してる』 はイスラエルの社会学者が、平均三人の子をもつイスラエル人女性の中から、母になったことを後悔している人を厳選し、聞き取

『復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる』74歳、APU学長 完全復職! 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる』74歳、APU学長 完全復職!

2022年4月1日、大分県別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)で入学式が行われた。そこに学長である出口治明さんが登壇され祝辞を述べた。 2021年1月9日、出口さんは脳出血で倒れた。一命はとりとめたが、右半身麻痺と失語症が残った。失語症は「聞く」「話す」「読む」「書く」という言葉を使った働きが上手く出来なくなる状態で、出口さんは相手の話している内容は

ただただ、そばにいたい……『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

ただただ、そばにいたい……『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』

本書には冒頭から最後までアザラシへの愛が詰まっている。 小学生で出会い恋い焦がれ、現在は日本で唯一のアザラシ保護施設 「オホーツクとっかりセンター」 の飼育員として働く著者のアザラシ愛は飼育員仲間でさえ「ちょっと理解できません……(笑)」というほどのものらしい。 アザラシ科、アシカ科、セイウチ科に分かれる海棲哺乳類 鰭 脚 類はヒレ状の脚を持つ。耳たぶがあっ

『新型コロナはどこから来たのか 国際情勢と科学的見地から探るウイルスの起源』”ウイルス流出説”は陰謀なのか? 書影

サイエンス / 社会

『新型コロナはどこから来たのか 国際情勢と科学的見地から探るウイルスの起源』”ウイルス流出説”は陰謀なのか?

一時的なのか、それとも集団免疫を獲得したからか、新型コロナの発症数は減少している。世の中は、おそるおそるだがコロナ前の生活に戻ろうとしている。 果たしてこの「新型コロナウイルス」はどこからきたのか?2019年末に中国の武漢市から始まり、世界中を席捲し、感染者5億人以上、死者600万人以上(2022年6月1日現在)というパンデミックの最初のひとりは誰で、どうし

『ハイドロサルファイト・コンク』痛みに耐えろ!”実録・花村萬月骨髄移植譚” 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『ハイドロサルファイト・コンク』痛みに耐えろ!”実録・花村萬月骨髄移植譚”

顰蹙を買うのを恐れずに言えば、生死の境で闘う人の闘病記が好きだ。 花村萬月さんが厄介な病気に罹っていると知ったのは三年ほど前のことか。本書は花村さんの〈骨髄異形成症候群〉の発症から現在までを克明に綴った記録である。『くすぶり型白血病』、『前白血病状態』と称され放置すれば数年後には白血病になり間違いなく死ぬと宣告を受ける。 彼の小説には両親との軋轢や不良時代の

『難民に希望の光を 真の国際人 緒方貞子の生き方』緒方貞子を知るための「入門書」 書影

人物 / 社会

『難民に希望の光を 真の国際人 緒方貞子の生き方』緒方貞子を知るための「入門書」

2022年2月24日、ロシアが隣国のウクライナに全面的な侵攻を開始した。ウクライナ国民の多くは国境を越え難民となっている。この現実を目の当たりにして、もし緒方貞子だったらという思いが頭を駆け巡る。 UNHCRとは国連難民高等弁務官事務所の略称。紛争などで難民となった人々を国際的に保護・支援し問題解決を図る国連機関だ。緒方貞子は1991年から10年間、第八代国

『妻はサバイバー』貴重な当事者たちの声 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『妻はサバイバー』貴重な当事者たちの声

川崎市の自宅で長男(当時37)を4カ月にわたって監禁したとして、両親と妹の3人が逮捕監禁容疑で逮捕された。長男には精神疾患があったとみられるが、医療機関は受診していなかったという。父親は容疑を認め「外に出して迷惑をかけたくないと思った」と供述しているという。(2022年2月1日朝日新聞) 世間は精神障害者に優しくない。世間体や迷惑をかけたくないと家族だけで精

『「ちがい」のある子とその親の物語』世界23か国で読まれる当事者とその家族の声 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『「ちがい」のある子とその親の物語』世界23か国で読まれる当事者とその家族の声

本書は欧米で活躍するノンフィクション作家・アンドリュー・ソロモンが10年間に300組以上の親子を取材した壮大な記録だ。2012年に出版されると数々の賞を受賞し、世界23カ国で刊行。日本でも3巻目がいよいよ発売となり、完結した。 「ちがい」のある子とは、Ⅰでは「聴覚障害」「低身長症」「ダウン症」、Ⅱは「自閉症」「統合失調症」「重度障がい」「神童」、そしてⅢは「

『道徳教室 いい人じゃなきゃダメですか』これっ学ぶものですか? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『道徳教室 いい人じゃなきゃダメですか』これっ学ぶものですか?

私の小学校時代、「道徳」の授業はあったろうか。本書を前にして思い出してみる。あった。確かにあった。だが2018年度から始まった(中学校は19年から)「特別の教科 道徳」は教科化され、通知表で評価が下されもするらしい。一体、何を学ぶのか。 誰もが疑問を持つ「道徳とは何か」を、著者は愚直なほどまっすぐに突き止めようと果敢に挑む。 最初が肝心。まずは小学一年生の教

『鷹と生きる 鷹使い・松原英俊の半生』ー「Game Hawker/鷹匠」試写会を観て 書影

生物・自然 / プレミアム・レビュー

『鷹と生きる 鷹使い・松原英俊の半生』ー「Game Hawker/鷹匠」試写会を観て

《鳥ものノンフィクションに外れなし》 予てから私が提唱している法則だ。鳥に関する、あるいは鳥に関わる人物を取材した本はほぼ100%面白い。鳥を愛する人は熱意にあふれ、少しだけ常人とは違っている。世間に染まらず、かといって拒むわけでもない。 本書は3年ほど前に出版された、日本最後、唯一無二の鷹使い、松原英俊に密着取材したルポルタージュだ。松原は大型の猛禽類クマ

『家族』『旧皇族の宗家・伏見宮家に生まれて』あるふたつの《家族の形》 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『家族』『旧皇族の宗家・伏見宮家に生まれて』あるふたつの《家族の形》

標準家族(世帯)という概念は、1960年代、家族構成としていちばん多かった会社員の夫と専業主婦の妻、子どもが二人の四人家族をいい、それが国の統計や税金に使われるようになったという。だがいまは、周りを見渡しても標準家族はほとんどいない。家族も様変わりした。 翻訳家でエッセイストの村井理子は、不仲だった兄の死の連絡を受ける。東北の地で一人、父子家庭を築いていた兄

『逢える日まで 3.11遺族・行方不明者家族10年の思い』心はあの時から地続きなのだ 書影

社会 / 事件・事故

『逢える日まで 3.11遺族・行方不明者家族10年の思い』心はあの時から地続きなのだ

“十年ひと区切り”と人は言う。時間的な里程標として、十年は目安になりやすいのかもしれない。 2021年3月、「震災から十年」という文字があちこちで躍った。 “もう”なのか“まだ”なのか、個人の気持ちを慮ることより、未曽有の天災に対して区切りをつけようという世間の思惑が垣間見えた。 本書は、宮城県を中心に東北6県を発行区域とする河北新報社が東日本大震災10年特

「今月読む本」特別編。HONZ EXHIBITIONトークイベントで紹介した本、一挙公開! 書影

今月読む本 / おすすめ本レビュー

「今月読む本」特別編。HONZ EXHIBITIONトークイベントで紹介した本、一挙公開!

2022年3月10日から4月15日まで、日本橋浜町のHAMAHOUSEにてHONZ EXHIBITIONが開催中です。HONZでレビューした選りすぐりのノンフィクション500冊を壁いっぱいに展示し即売するという壮観な企画です。 2011年にHONZが誕生してから10年。昨年7月には10周年記念本を出版しましたが、折しも世の中は新型コロナの蔓延中で、イベントを

HONZ EXHIBITION 開催!                  3/10‐4/15@HAMAHOUSE 書影

NEWS

HONZ EXHIBITION 開催! 3/10‐4/15@HAMAHOUSE

昨年夏、HONZは10周年を迎えました。この10年で紹介した本は2000冊を超えます。その中から厳選した100冊のレビューを集めて『決定版‐HONZが選んだノンフィクション』を上梓しました。 今回、本書+さらなるオススメ本を加えてなんと500冊を揃え、普段から店内で本を販売している 東京都中央区日本橋浜町3丁目のカフェ「ハマハウス」 にて展示・販売いたします

『ソ連兵へ差し出された娘たち』“数え年で18歳以上、未婚” その慟哭は今も聞こえる 書影

社会 / 日本史

『ソ連兵へ差し出された娘たち』“数え年で18歳以上、未婚” その慟哭は今も聞こえる

1945年8月9日、ソ連の対日戦参戦によって満州開拓団の日本人移民は祖国に捨てられた。日本に引き揚げるまでの悲惨な生活は、さまざまな小説や手記によって明らかにされてきた。だが、女性たちの経験を語ることはタブーとされてきた。 著者は中国残留孤児の取材中、ソ連兵が日本人女性を襲うという蛮行の裏に、日本人集団内の支配関係によって強いられた犠牲があったことを知る。開

『問題の女 本荘幽蘭伝』その名を知らぬ者はなし。明治から大正に咲いた仇花 書影

人物 / 社会

『問題の女 本荘幽蘭伝』その名を知らぬ者はなし。明治から大正に咲いた仇花

2019年NHK大河ドラマ『いだてん』に登場する「本庄」という男っぽい女性記者のモデルは本荘幽蘭ではないかと推測される。挿話収集家の平山亜佐子は当時の新聞記事を渉猟し、彼女の一生を克明に辿るスリリングな一冊を著した。 明治12年、幽蘭は元久留米藩士で実業家の本荘一行(かずつら)の二女として誕生した。本名は久代。元芸者の妾と暮らしていた父のもとで幼少期を過ごし

『怪異猟奇ミステリー全史』老後の楽しみ、永久保存版ブックガイド 書影

教養・雑学 / 世界史

『怪異猟奇ミステリー全史』老後の楽しみ、永久保存版ブックガイド

私が小学生のとき、と言えば半世紀も前の話になるが、教室には必ず学級文庫があった。本の裏表紙には貸出カードが付いていて、借りた人の名前を書いて、誰がどの本を読んだかが分かるようになっていた。同じ本を読んだ友だちと内容を話し合うのがとても楽しかったのをよく覚えている。学級文庫をコンプリートすることが自分の課題だった。 その時代、本を読むことが好きな子は、みんな同

『ばらまき 河井夫妻大規模買収事件 全記録』前代未聞の買収事件を総力を挙げて追う! 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『ばらまき 河井夫妻大規模買収事件 全記録』前代未聞の買収事件を総力を挙げて追う!

発覚は文春砲だった。2019年10月末、週刊文春は7月の参院選広島選挙区を舞台にした公職選挙法違反の記事を掲載した。 初当選した河井案里議員がウグイス嬢に対し法定上限額の倍を渡しており、選挙を実質仕切っていたのは夫で現職の法務大臣、河井克行衆議院議員だと報じたのだ。発売日の翌日、克行は安倍晋三総理大臣へ法相の辞表を提出する。 『ばらまき 河井夫妻大規模買収事

『メルケル 世界一の宰相』『聖子 新宿の文壇BAR「風紋」の女主人』『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』ー彼女たちがいなかったら 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『メルケル 世界一の宰相』『聖子 新宿の文壇BAR「風紋」の女主人』『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』ー彼女たちがいなかったら

世界経済フォーラムが昨年出した男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数で、日本は156カ国中120位。政治に関してはなんと147位だ。 だが世界には素晴らしい女性政治家がいる。『メルケル 世界一の宰相』は様々な危機からドイツを救った首相の評伝だ。昨秋、16年続いたアンゲラ・メルケルの政権は終わりを迎えた。最後の仕事が新型コロナ対策だったのは印象的だ。素早いロッ

『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』絶滅の鳥、最後の一羽は江戸を旅した? 書影

世界史 / 日本史

『ドードーをめぐる堂々めぐり 正保四年に消えた絶滅鳥を追って』絶滅の鳥、最後の一羽は江戸を旅した?

ドードーという鳥を知っているだろうか。『アリスの不思議な旅』に出てきた変な鳥を思い浮かべる人、あるいは「ドラえもん」で絶滅鳥類として知った人もいると思う。鳥とは思えない太って滑稽な姿は一度見たら忘れられない。17世紀半ばにインド洋モーリシャス島で絶滅した飛べないハトの仲間である。 ある日著者はロンドン自然史博物館のサイトで「ドードーが日本に旅をしていた」とい

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』、『学校!高校生と考えるコロナ禍の365日』今を生きる若者の確かな「希望」を感じる2冊 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』、『学校!高校生と考えるコロナ禍の365日』今を生きる若者の確かな「希望」を感じる2冊

90万部の大ベストセラーとなった 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 は、英国地方都市に住む、母が日本人で父がアイルランド人の、中学校に上がったばかりの少年の成長を、母親の ブレイディみかこ さんが冷静に綴った成長譚だ。 続編である 『ぼくは~2』 (新潮社)では「ぼく」は13歳になった。このころの成長は著しい。背も伸び、大人の視点で世の中を見ら

『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』新型コロナワクチン開発秘話! 書影

サイエンス / 人物

『世界を救うmRNAワクチンの開発者カタリン・カリコ』新型コロナワクチン開発秘話!

2021年8月半ば、日本では新型コロナウイルスの感染者が5000人を超えた。その後ピークアウトして減少を続け、2021年11月15日現在、全国で感染者が100人余りという日が続いている。重症者も少なくなり、ひとまず第5波のパンデミックは落ち着きを見せている。この感染者が急減している原因は特定されてないが、ワクチン接種の普及が大きな要因であることは間違いないだ

『東京の生活史』『都会の異界 東京23区の島に暮らす』『東京23区×格差と階級』暮らす人にとっての東京 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『東京の生活史』『都会の異界 東京23区の島に暮らす』『東京23区×格差と階級』暮らす人にとっての東京

五輪の話題もようやく落ち着いた。会場となった大都市「東京」の実像について、考えてみるのも良いだろう。 150人の聞き手が150人の「東京にいる人、いた人、いたことのある人」に聞いた人生が1216ページの『東京の生活史』になった。聞き手は公募、語り手は誰だかわからない場合も多く、読み手は何の情報もないまま読み始める。年齢も性別も2人の関係性もわからないが、何か

『アメリカンビレッジの夜 基地の町・沖縄に生きる女たち』相反と親和、葛藤の物語 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『アメリカンビレッジの夜 基地の町・沖縄に生きる女たち』相反と親和、葛藤の物語

日本にある米軍基地の約70%が沖縄本島に集中している。1945年から存在の賛否は続いているがアメリカ人と地元民との間では独特の生活と文化が育まれてきた。 母方に日系、父方にイギリス移民の血を引く著者は、京都に在学中沖縄に旅行に出かけ、終戦間際の悲劇の歴史と<アメリカンビレッジ>で兵士と楽しむ沖縄女性の姿のギャップに興味を抱く。 辛うじて生きのびた女学生たちが

『月夜の森の梟』“かたわれ”を喪って 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『月夜の森の梟』“かたわれ”を喪って

2020年の正月があけてしばらくしてから、藤田宜永さん逝去の報が届いた。私が「初めまして」の挨拶してからほぼ30年が経っているが、いつもスタイリッシュで若々しい姿しか記憶になかったので享年69という年齢に少し驚いた。ガンを患っていたが、少し前に薬が劇的に効いて寛解したと久しぶりのパーティ会場で本人から聞いていたのに、やはりダメだったのかと残念でたまらなかった

海外ノンフィクション全集を作ろう!@本の雑誌2021・9月号 書影

HONZ活動記

海外ノンフィクション全集を作ろう!@本の雑誌2021・9月号

本屋大賞ノンフィクション賞はじめ、ここ数年ノンフィクションを読む人が増えてきた。でもよくわからないのが海外ノンフィクション。いったいどんな作品があって、どんな風に面白いの?というわけで本の雑誌のノンフィクション好き代表の杉江由次が、HONZの東えりかと本誌でノンフィクション新刊レビュー担当の冬木糸一に声をかけた。無謀にもジャンル別50冊を語りつくすという。は

『東京の生活史』重さ1425g 150人がそれぞれの東京を語った前代未聞の試み! 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『東京の生活史』重さ1425g 150人がそれぞれの東京を語った前代未聞の試み!

150人の聞き手が「東京にいる人、いた人、いたことのある人」150人の語り手から話を聞き、それぞれ一万字にまとめて本を作る。上下二段組、1216ページ、重さ1425グラム。前代未聞の試みだ。 聞き手が誰かはクレジットされているが語り手の多くは不明。読み進めていくと性別、年齢、聞き手との関係性が少しずつ判明していく。家族、親族、友人、仕事場の同僚など間柄が分か

『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』歴史に翻弄された夫婦愛の物語 書影

人物 / 社会

『愛を描いたひと イ・ジュンソプと山本方子の百年』歴史に翻弄された夫婦愛の物語

日本ではあまり知られていないが李仲燮(イ・ジュンソプ)は韓国の国民的画家で「韓国のゴッホ」とも呼ばれている。39歳で夭折した天才画家の妻は日本人の山本方子(まさこ)。今年100歳になるがお元気だ。 新聞記者である著者はソウル特派員時代に李仲燮の存在を知る。彼の絵に惹かれ、日本で方子とのインタビューを重ねた。 李仲燮は1916年に日本統治下にあった朝鮮半島の平