
『世界の特殊部隊作戦史1970-2011』エリート兵と非対称戦争
日本が最後に経験した戦争は第二次世界大戦だ。召集兵が大規模に集結し、いく度かの大会戦を経て雌雄を決する。日本人が経験し、あるていど皮膚感でわかることのできる戦争は、この当時のままで止まっているように思う。むろんそれは素晴らしいことだ。しかし、時代は移り現代では非対称戦争の時代といわれて久しい。ゲリラ、テロなど目に見えない敵と、何時どこで戦闘になるのかわからな
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日本が最後に経験した戦争は第二次世界大戦だ。召集兵が大規模に集結し、いく度かの大会戦を経て雌雄を決する。日本人が経験し、あるていど皮膚感でわかることのできる戦争は、この当時のままで止まっているように思う。むろんそれは素晴らしいことだ。しかし、時代は移り現代では非対称戦争の時代といわれて久しい。ゲリラ、テロなど目に見えない敵と、何時どこで戦闘になるのかわからな

突如として起こる、システムを崩壊させる極端な出来事。著者はこれを「Xイベント」と呼ぶ。そして世界が複雑化すればするほど、予測不能なXイベントは起こりやすくなる。すなわち、現在、人類はXイベントに対して極めて脆弱な状態にあるというのだ。 ハリケーン・カトリーナの被害、9.11テロ、サブプライム住宅ローン危機、2003年の東海岸大停電などが、著者が挙げるXイベン
三重スパイ――CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」 2009年12月30日、アフガニスタン北東部にあるホースト基地のCIA局員達は、ある男の到着を心待ちにしていた。その男とは、フアム・アル‐バラウィ。このヨルダン人医師は、CIAから大きな注目を集めていた。それは彼が、最強国家アメリカをもってしても長年近づくことのできなかったアル・カイダの中枢に入り込み、
東電OL事件 - DNAが暴いた闇 HONZのメンバーがとりあげる本は多種多様である。しかし、成毛はメカ系、麻木はナショナリスト系、栗下はアレ系、といったように、好みの分野があって、仲野には、伝記系、生命系に加え、殺人事件系がけっこう多いのである。とりわけ殺人事件が好きというわけではないが、佐木隆三が言うように、殺人事件には人間の業とでもいうものが詰まってい
韓国窃盗ビジネスを追え: 狙われる日本の「国宝」 日本の重要文化財が各地の寺院から盗まれ、その一部が韓国で流通している。そんな話を聞いたことがある人もいると思う。本書は主に兵庫県、鶴林寺の「絹本著色弥陀三尊像」(以下、阿弥陀三尊像)と長崎県壱岐島、安国寺の「高麗版大般若経」の行方を主に追っている。 阿弥陀三尊像を盗んだ主犯は金国鎮という男。彼は2004年に韓

2月6日、前代未聞の事件が起きた。中国重慶市の副市長の王立軍がアメリカ領事館に逃げ込んだ。地方政府とはいえ共産党幹部がアメリカに助けを求めたのだ。それも、女装姿で他人に借りたジープを駆って。 「薄熙来に殺される」。 ハリウッド映画もびっくりの展開だが、これは当時の重慶市のトップだった薄熙来とそのファミリーが世界を震撼させる序章に過ぎなかった。王立軍が薄熙来の
アルゴ (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) (ハヤカワノンフィクション文庫) 1979年11月4日、イランの過激派学生がテヘランのアメリカ大使館に乱入・占拠し、66人を超えるアメリカ人を人質にして立てこもった。当初、女子学生を先頭にして侵入してきたデモ隊は“怖がらないで。我々はセットイン(はまりこみ)したいだけ”と書かれたプラカードを掲げ(のちにこれはシット

1891年5月11日、2週間前に長崎港から来日したロシア皇太子のニコライは、鹿児島、神戸、京都を経て大津にやって来た。昼食をすませた彼は心地よく人力車に揺られながら、今夜の芸妓との楽しい時間に想いをめぐらしていた。少しずつ、だが確実に、死の危険に近づいていることも知らずに。 異国の皇太子目当てに詰めかけた人の群れの中に、鬼の形相でニコライを睨みつける男がいた

私が東京で暮らし始めたのは予備校の寮に入った時で、服が詰まった大きなバッグ1つでやってきて、机とベッドが置かれた小さい部屋に入った(本は郵送だ)。あれから何年も、いや何十年も経ったけれど、この前あの建物がなくなったと聞いた時、やっぱりちょっと寂しかったのだ。当たり前だけれど、過ごした場所は思い出の一部になる。自宅はもちろん、学生時代のアパートとか、旅行先で泊

街中で少しでも時間があると本屋さんに入ってみる。出張で札幌に行った時、地元ならではの本はないかと入った書店で偶然に見つけたのがこの本である。そんな状況で掘り出した本なので、「新刊超速」というには恥ずかしいタイミングになっていることはお許しいただきたい。しかし、出版後一ヶ月で版を重ねているから、この本、地元では結構売れたようだ。 次から次へと「どこどこ(地名)

著者は誘拐犯や人質立てこもりの犯罪者との交渉を担当するプロフェッショナル、通称「交渉人」(ネゴシエイター)。本書は、彼がこれまでに担当してきた事件の中身を綴ったノンフィクションである。事実は小説より奇なり、とはこのことのだろう。これまで交渉人を扱った小説や映画は沢山あるが(ジェフリー・ディーヴァ―の出世作『静寂の叫び』、ブルース・ウィルス主演の『ホステージ』

昨日、 ビジネスHONZの合格者 、すなわち新しく迎える仲間へのオリエンテーションがあった。鰐部祥平さんは残念ながら都合がつかなかったが、深津晋一郎さんと田中大輔さんが参加。オリエンテーションといっても、要するに飲み会で、結局本の話題を中心に、昔からの知り合いと話しているような、実に心地よい時間が流れた。というか、成毛眞がわれわれを新しいメンバーに紹介した言

驚愕の一冊である。老スナイパーの名は中村泰(ひろし)。1930年生まれのこの男、岐阜刑務所に服役中。しかし、この本のタイトルになっている1995年の国松警察庁長官狙撃事件による服役ではない。その罪状で訴追され、「救国」のために狙撃したことを世に知らしめたいという中村。しかし、自らの「救国」の行動により「チェ・ゲバラ」になりたかったというその夢はかなえらてはい
コモディティ戦争 〔ニクソン・ショックから40年〕 私たちの生活基盤となる食料やエネルギーなどのコモディティ価格はどこで決められているか? 答えは米国のニューヨークやシカゴ。 大豆などの穀物は、世界最大の取引が米国を通じて行われるので、シカゴで価格が決められるのは当然だ。しかし、金の世界最大の現物取引場は英国であるし、原油の世界最大の現物取引は中東であるにも

非常に書評しにくい本である。編集者はHONZの身内とも言って良いハマザキカクだ。本人からの献本でもある。テーマがテーマだ。しかも「まえがき」では「本書の目的」は「本書では自殺について『問題』として『現象』としてとらえている」と宣言しているように、日本のおける自殺年表人名データベースなのである。 2473件の自殺を1880年以降10年毎に分章して収録してある。

二日連続で、殺人者本のレビューである。しかし、この本、すこしも「超速」レビューになっていないのである。すみません。遅れたのにはいささかの理由がある。以前、沢木耕太郎訳、というのにつられて、『 殺人者たちの午後 』という本を買った。英国での殺人者たちへのインタビュー集である。怖かった。最後まで読み切れなかった。そんな経験があったので、この本、出版されてすぐに購

「これは、私の書いた『東電OL殺人事件』を超える事件だ」と帯に書く佐野眞一、怒りに燃えた渾身の一冊である。その怒りが読む側にもひしひしと伝わってくる、死刑判決も記憶に新しい「首都圏連続不審死事件」、毒婦・木嶋佳苗についての本である。ワイドショー的事件はけっして嫌いではない。しかし、この事件だけは、何故か見聞きするのが忌まわしいような気がして避けていた。しかし

先日、好評を博したHONZ内藤の活動期をぼけーと読んでいたら「栗下直也が真面目な本ばかり取り上げていたら、病気の可能性も否定はできない」と書かれていた。考えてみれば、最近、変な意味でなく、びんびんに元気なので直近の自分のレビューを振り返ってみたら「家のみ」、「ゴキブリ」である。そして今回も、びんびんは続くのかもしれない。「毒婦」である。 「えっ、この本、どこ

Facebookなどを眺めていると、定期的にスパムアプリらしきものを見かけることがある。今でこそ簡単に引っかかる人も少なくなってきたが、最初のころは友人達が軒並み引っかかっているのを見て戦慄に近いものを覚えた。人間関係を利用した手法がいかに強力であるか、視覚的に確認することが出来たからである。 そんな人間関係を悪用したソーシャル型犯罪、そのはしりとなったのが

あれからもう1年たってしまった。日本各所で犠牲者に対する鎮魂とともに、政府や東電の責任、原発の再稼働問題、復興の実態などについての議論が延々とつづいている。しかし、その多くの議論は賛否それぞれの立場に分かれ、議論することを目的としてしまっているような印象だ。いまこそそれぞれの現場で何が起こっていたのかをあらためて掘り起し、そこから議論を始めるべきなのである。

<福島・双葉病院 患者だけ残される 原発10キロ圏内 医師らに避難指示で> そんなショッキングなニュースが配信されたのは、東北と北関東を襲った大震災から数えて6日目の3月17日のことである。病院にはたちまち非難が殺到、またたくまに「悪徳病院」のレッテルが貼られることとなった。 しかし、実態は報道されたものとは大きく異なるものであったのだという。はたしてこの時

HONZは概ね3つの世代で構成されている。代表・成毛や私、麻木久仁子、今後ちょくちょく登場するだろう阪大・仲野先生などの50代。サラリーマンメンバーはだいたい30代。そして20歳前後の学生メンバーたちである。定例会でも、それぞれの世代でしか通用しない本が紹介されることがある。先日のちょい読みで内藤順が紹介した 『ガリ版ものがたり』 がいい例だ。内藤がそのとき

タイトルが何ともすごい。「原発」と「アウトロー」と「青春白書」をつなげてしまったのである。ピーコのファッションチェックなら「あなた、ちょっと」と激怒されそうな組み合わせだが、内容は良い意味で期待を裏切らた。 本書は福島県の原発がある街で育ち、震災前から原発で働く3人の若者に焦点を当てている。当事者中の当事者である彼らが原発が日常にある街でどのように育ち、なぜ

あれから1年が経った。3.11、あの日あなたはどこにいましたか?多分、この問いは何度も聞かれただろうし、尋ねもした。私は確定申告の帰り道、道路を歩いているときに激しい揺れに座り込んだ。電柱が撓み、電線が大縄跳びのようにぐるりぐるりと回っていた。 彩瀬まる『暗い夜、星を数えて 3.11被災鉄道からの脱出』は、25歳の新人女性作家が一人旅の途中であの震災に遭遇し

本書は「グーグルの72時間」という巻頭ドキュメントから始まる。Googleは、3月11日、地震発生からわずか1時間46分という驚くべき早さで日本語使用の安否情報確認ツール「パーソンファインダー」を公開した。まだほとんどの人たちが避難していたり動揺していたりした中、六本木ヒルズ森タワー26階ではGoogle日本法人の川島優志氏(34歳)や三浦健氏(38歳)が、

今日のHONZ本編は栗下直也のマニアックな3冊だ。そのうちの一冊は『反社会的勢力』。たしかに最近、新刊新書コーナーで暴力団関係の本を目にする。とりわけ溝口敦は池上彰風の「です・ます調」で書かれた『暴力団』を2011年9月に出版して版を重ねている。さらに紳助事件を書き加えて新書化した『山口組動乱!!2008-2011』を2011年12月に、そして今月『抗争』を

局のアナウンサーから転身して社会派キャスターになった女性はそれほど多くはない。その中でも長野智子は確固とした地位を築いたひとりである。『踏みにじられた未来』は担当した番組が関わってきた、冤罪事件ではないかと思われる事件を検証したものである。 2001年、強姦未遂容疑で10人の高校生が逮捕された。後に「御殿場事件」と呼ばれるこの案件を「ザ・スクープ」という番組
出版社/メーカー: 筑摩書房 メディア: 新書 著者は惜しまれながら04年に廃刊した『噂の真相』(ウワシン)の元副編集長だ。「ウワシン」といえば、首相の買春検挙歴疑惑のスクープなどタブー知らずの中身が売りだったが、本書ではメディアと皇室、右翼、企業、芸能界との関係に踏み込み、「メディアが書けない」タブーはなぜタブーなのか、その内側に迫っている。 正直、ぱらぱ

原題は『 THE MURDER ROOM The Heirs of Sherlock Holmes Gather to Solve the World’s Most Perplexing Cold Cases』(殺人の部屋 世界で最も難解な未解決事件を解くために集まる、シャーロック・ホームズの後継者たち)。 『未解決事件(コールドケース)』は、フィラデルフィ

人工知能によるチェスプレイヤーと言えば、1997年に世界王者カスパロフを破ったIBMのディープブルーが有名であるが、本書の主役であるチェス指し人形「ターク」はディープブルーより機能が豊富だ。なにしろ、“チェス指人形”とある通り、人形自らが物理的にチェスの駒を動かすことができる。しかも、一度対局が始まってしまえば、数十手対局が進む間、人間がその人形に触れる必要

おどろおどろしいタイトルがついているが、語り口は軽妙。しかし書かれている内容は、やはり恐ろしい。オビにも書かれている通り、命懸けのノンフィクションだ。 本書は、福島第一原子力発電所に作業員として潜入し、その内部の実態を明らかにしたルポルタージュである。メインは福島第一原発への潜入取材なのだが、その入口と出口の取材相手として暴力団が鎮座する。表社会と裏社会は、

きっとすぐに誰かが きちんとしたレビュー を書くと思うが、その前に露払いを勤めさせてもらう。著者の鈴木智彦はヤクザ専門のライターで、 こんな本 や こんな本 、そしてHONZ代表・成毛眞絶賛の こんな本 も書いている。 そんなヤクザの専門家がなぜ福島第一原発へ潜入しなければならなかったのか。やはりそこにもヤクザの存在が絡んでいた。 暴排条例は地方公共団体が行

2009年、ニュースで寺田学衆議院議員が日本のサイバー関連予算の削減を要求している姿を観て、我が目を疑った。明らかにサイバー・テロ及び犯罪が頻発している時代に逆行する行為だったからだ。 アメリカではサイバー犯罪に対抗する為に「サイバーコマンド」が創設されているし、NATO、韓国、中国もサイバー・テロに備える組織をそれぞれ創設している。サイバー犯罪及びその対策

オーストラリア、メルボルン出身の著者マーク・カーゼムは、オックスフォード大学で人類学を研究していた。大学の帰りに馴染みの書店で大量に買い込んだ本を抱えて下宿先に帰宅したマークの目に一枚の紙切れが飛び込む。 この特徴ある文字の書き方は父に違いない。東ヨーロッパ出身でありながら、オーストラリア移住後はヨーロッパを訪れることを嫌っていた父がなぜ急に?母親との間に何

「よく壊れないでいてくれた。津波と火事に耐え、みんなの命を守ってくれた」 気仙沼に急行した丹野さんは、泥が流れ込んだ総局ビルの前で涙した。 「何やってんだ、俺。最低…」 ヘリからシャッターを切ることしかできない門田さんは、自分を呪った。 「奥さん落ち着いて。とにかく落ち着いて。」 販売部長の荒さんは、自分も取り乱しそうになるのを抑えて呼びかけた。 「ならこの

オリンパス、大王製紙、島田紳助。 今年も残り2カ月を切ったが、東日本大震災以外にもショッキングなニュースが例年以上に多い。しかし、いきなりそんな前段を覆すようだが、そのどのニュースよりも強いショックを受けた本がこれ。事件が起こった当時、僕は大学生として、その現場である札幌に住んでいたにも関わらず、この本を読むまで知らなかった。先日の朝会で東えりかに聞いたのだ

今年の夏祭りは鎮魂の気持ちを込めた、とても厳粛なものだった。もちろん、跳ね、踊り、歌って楽しく過ごしたのだが、心の底には災害で命を落としたしたり、行方のわからない方、そのご家族への哀悼が込められていたように思う。これを区切りと考える人も多かっただろう。 大震災の後、瓦礫の中から思い出の品物を見つけようとしていたり、自衛隊やボランティアが片付けの途中でアルバム

「「ケアをする」というと何か具体的な処置を施すものと思われがちですが、心のケアとは、あれこれ世話を焼くことではありません。必要なのは言葉や行為ではなく、相手の方と時間と空間を共有することです。」 著者の高木さんは、神戸の修道院の修道女さんで、上智大学グリーフケア研究所の代表でもある。ターミナルケア(終末期ケア)・グリーフケア(悲しみのケア)に携わって23年、
ムバラク大統領が辞任した日は、日本もツイッターが騒がしかった。最初の一報は、New York Timesの記者のつぶやきで知った。もちろんアルジャジーラは数日前からお祭り騒ぎだ。タハリール広場は群衆で埋め尽くされていた。ネット生中継を見ながら、よくわからないけどすごいことになった、と思った。「まるでワールドカップで優勝したかのようだった」と書かれているが、画
※ この書評は時事通信社の依頼で書かれた文章に、現在の状況を加筆してあります。 3月11日の東日本大震災の被害は被災者の数、被害総額ともにかつてない膨大なものとなった。あれから2ヶ月以上経って、ようやく検証がされ始め、対策が練られ始めているが、何もかも失ったところからどうやって回復していけるのか、まだ先が見えない。 その上、未だ先の見えない原発事故は、実はぎ