
あざやかに逝ったひと 『僕の死に方』
闘病記というジャンルがある。もちろんノンフィクションである。そんなの読んだことがないという人が多いかもしれないが、大きな本屋さんでは、そのための棚まであるくらいだから、けっこう人気のある分野なのだ。たいへんな病気を明るく描いた大野更紗さんの『 困ってる人 』がベストセラーになったのも記憶に新しい。 かつて、医学生の時代から医師として働いていた3年の間、何かの
466記事

闘病記というジャンルがある。もちろんノンフィクションである。そんなの読んだことがないという人が多いかもしれないが、大きな本屋さんでは、そのための棚まであるくらいだから、けっこう人気のある分野なのだ。たいへんな病気を明るく描いた大野更紗さんの『 困ってる人 』がベストセラーになったのも記憶に新しい。 かつて、医学生の時代から医師として働いていた3年の間、何かの

フランス外人部隊。フランスの戦争で常に最前線に立ち、多くの犠牲を払ってきたフランス最強の部隊のひとつ。意外にも傭兵部隊ではなく、正規軍として位置づけられている。世界中から脛に傷を持つ、ひと癖もふた癖もある男達が集う部隊。なぜ、愛媛の山里出身の国立愛媛大学の学生だった22歳の若者が自ら進んで、荒くれ者の集う、他国の兵士になったのであろう。 雄一郎の父、森本喬(

いつの時代だってスーパースターは大変だ。一つの分野で傑出した能力を発揮すると、他の領域でも通用するものかと普遍性を問われる。 もしもイチローがピッチャーだったなら。もしもファインマンがマイクロソフトに入社していたら。もしもマイケル・ジョーダンが大リーガーだったなら... その中にはジョークで終わったものもあれば、果敢に挑戦したケースもある。 ならば、これはど
ビジョナリーであるということ 「ドクターV」ことゴヴィンダッパ・ヴェンカタスワミー博士が「アラヴィンド眼科医院」を開いたのは58歳の時だった。 インド南部のマドゥライ大学を定年退職したドクターは、自宅を抵当に入れ、父の代わりに世話をしてきた5人のきょうだいを集めた。彼らも、11床の小さな病院のために貯金をはたいた。それでも足りなくなると、代々受け継いできた宝

子どもの頃、家の近くに映画館がたくさんあった。そのひとつ、エロ映画ばかりを上映していた「千林劇場」の看板が駅のガードにあって、いけないと思いながらいつも見ていた。なかでも鮮烈な破壊力のあったのが谷ナオミ主演のSM映画の宣伝であった。縄で縛られた裸体とともに、なんともおそろしい原作者の名前「団鬼六」が私の脳裏に深く刻み込まれた。 結局のところ、解禁の18才にな

頁を開いた瞬間にひきこまれる―― そこに広がる異空間とは。 東京、千駄木の往来堂書店は、本好きには有名な「町の本屋さん」だ。偶然出かけた先週のこと、なにやら大きく展開している本がある。なんだろう。 吉野せい? 洟って、読み方は「はな」でよかったよね。 そんなことを思いながら手に取り、本の面構えを眺めてみる。本にはどうも「面構え」とでも呼びたくなるものがそれぞ

球史に残る昭和天皇のエピソードといえば、1959年に天覧試合として行われた巨人ー阪神戦を思い出される方も多いだろう。9回裏、先頭バッター長嶋のサヨナラホームランで幕を閉じたこの試合は、プロ野球人気を決定づけた出来事として、あまりにも有名である。 だが同じ球技でも、ゴルフと昭和天皇の関わりについてご存知の方は、あまり多くないだろう。しかも若かりし頃の趣味であっ

自由奔放・奇想天外な人生が好きな人には本書がオススメだ。 様々な著名物理学者の人生を紹介するのが本書。物理学者というと頭が固くて気難しい人をイメージする人もいるかと思うが、実は風変わりで冒険的な人が多い(もちろん本書で紹介されるような人たちはみな頭脳明晰)。 例えば旧ソビエトの異端児、レフ・ダヴィドヴィッチ・ランダウ。幼い頃から数学的才能を発揮し、わずか13
スターリンのジェノサイド こういう著作を、良書というのかなと思う。 名著や傑作ではないかもしれない。HONZで紹介される多くのノンフィクションのように、キャッチーでもない。みすず書房らしい至ってシンプルな装丁は、版を重ねることを戦略的に狙っているとも思えない。原文で176ページとテキストも短く、ハードカバーにしては物足りないと感じる向きもあるかもしれない。

ある意味、とびきりのリークだ。 「公開こそ正義」という強烈な信念を持った異端児の姿を、剥き出しにしたのだから。 この自伝が「本人非公認」、つまりリークとして刊行されることになったのは、運命の皮肉だろうか。 ジュリアン・アサンジ。言わずと知れたウィキリークスの創設者は今、ロンドンのエクアドル大使館に滞在している。2010年12月、スウェーデンでの婦女暴行容疑で

いまや、地球最大の書店であり、世界最大のオンライン通販業社となったアマゾン。その創業者であるベゾスにもこんな時代があった。あのベゾスが、街の書店を開業しようとしている人達に混じって、書店開業セミナーに参加している光景を思い浮かべてみてほしい。とても微笑ましい光景になんだか笑いがこみあげてくる。 この本はアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスの半生を数多くのエピソード

本書の著者である映画監督、園子温(その・しおん)の小学校時代の通知表には、教師からのこんな言葉が記されていた。 「落ち着きがない」、「教師の話を聞かない」であれば珍しくはないが、「性的異常」にはなかなかお目にかかれない。子温少年は一体何をしたというのか。 答えは驚くほどシンプル。彼は、全裸で教室に入っていったのだ。 教師から「全裸」であることをこっぴどく叱ら

本書を改めて読み返した時、冒頭の「内戦前の高校時代の話」が「夢のような思い出」であったことがよくわかった。1990年にリベリアで内戦が始まった頃、彼女は、入学したばかりの大学生だった。将来は、医者になりたかった。そこから14年に及ぶ戦争が始まる。 本書は、シングルマザーとして内戦を生き延び、非暴力の平和構築活動による貢献によって昨年度のノーベル平和賞が与えら

最近、歴史を意識させられることが多い。竹島でも尖閣でも、結局のところ歴史的経緯から紐解いていく必要が生じている。尖閣問題では中国国内で大規模な反日暴動が発生し、多くの日本人が心を痛めたのは記憶に新しいが、日本側が「領土問題など存在しない」と主張したところで、中国や台湾にとっては歴史問題であって、最後はどうしても同じ場所、つまり「日本の近現代史」に行き着いてし

Ask what you can do for your country. あなたが国のために何ができるか、問いかけてください。 ジョン・F・ケネディの有名な演説の一節である。ファーストリテーリングの代表取締役会長兼社長である柳井正氏が、この本で言いたかったことは、この言葉に集約されている。 このままではダメになる。そういった危機感を持っている人が世の中には

例えば、「HONZでレビューする本」が予め誰かに決められていたら、 このレビュー のような、本当に書き終わるのかとハラハラする文章が書かれることは、多分無かった。また、例えば、サッカーの審判がレッドカードを出しまくって選手の自由な動きを止めてしまったら、そのゲームは大変つまらないだろう。おもしろい結果を出す組織は、最低限のルールと、ルールに従って自由に考える

スタバ本にハズレなし、リッツ・カールトン本にハズレなし、というように、「〇〇にハズレなし」というのが自分の中では幾つかある。今日紹介する原田泳幸氏の書籍にもハズレなし。というのが自分の考えである。(ちなみにHONZの代表である成毛眞の著作にもハズレなしだと私は思っている)今回もその考えは間違っていなかった。 アップルの日本法人社長から日本マクドナルドの社長に

ここ最近のビジネス書のトレンドの一つに、名著を噛み砕いた本というのがある。きっかけは200万部を超えるヒットとなった『もしドラ』あたりにあるのだと思うが、おととし発売された『 プロフェッショナルマネジャー・ノート 』がヒットしたことなども要因の一つになっているのかもしれない。今年に入ってから出たものだけでも、『 「超」入門 失敗の本質 』、『 企業参謀ノート

家入一真をご存知だろうか?レンタルサーバーのロリポップ!などを手がけるpaperboy&co.(以下ペパボ)の創業者であり、JASDAQの史上最年少上場社長である。 その彼が高校中退、ひきこもりといった過去を赤裸々に告白し、『こんな僕でも社長になれた』と宣言する本著作は、暗い過去を持つたくさんの人に勇気と希望を与えるに違いない。 彼を救ったのは山田かまちの絵

インタビュアーの肩書きを持つ著者による、『文藝春秋』や『週刊文春』でのインタビュー連載をまとめたのが本書である。20人へのインタビューは5つの章から成っており、終章では著者本人が考える、「インタビュー」論が展開されている。 本書の目次にある20人のインタビューイーの名前を見ると、ノンフィクション好きは本書を購入しないわけにはいかなくなる。なにしろ、1人目から

シャネルNo.5。1921年に売り出されて以来90年以上、香水の代名詞である。現在でも「30秒に1本」売れ続けているのだそうだ。 貧しい行商人の子として生まれ孤児院で育ちながら、その美貌と才気で上流階級の男たちの心をつかみ、「フランスのエレガンス真髄」にまでのし上がったココ・シャネル。「自分で稼ぎ、自由に愛し、男の指図を受けずに望むままに生きたい、という女性

「リブセンス」という会社をご存知だろうか? 私は全く知らなかった。どうやらジョブセンスというアルバイト情報サイトなどを手がけているITベンチャーらしい。早稲田大学在学中にベンチャーコンテストで優勝。ベンチャー企業を立ち上げ、2011年12月には社長の村上太一が史上最年少の25歳1ヶ月で東証マザーズに上場している。現在では時価総額でSNSの雄mixiをも上回っ

想像してみてほしい。 産まれて間もない息子が眠るベビーベッドの上からテニスボールのモビールを吊るし、息子の右手に卓球のラケットをくくりつけて「ボールを打ってごらん」と語りかけたというテニス狂の父親に育てられ、テニスをしたいかと誰からも問われることのないままに、テニスが人生そのものとなっていった少年のことを。 わずか7歳にして、「ドラゴン」と名づけられた改造ボ

現代を代表する歌人の河野裕子が亡くなったのは2010年の夏だ。河野の死後、夫の永田和宏が妻の遺品の整理をしていて、ティッシュ箱を捨てようとしたときに目に入ってきたのが箱の上面の文字だった。横や裏にも文字は並んでいた。薄い文字で書かれていたが間違いなく歌の断片だった。ティッシュの箱だけでなく、薬袋や封筒にも文字は残されていた。死後、細胞学者であり歌人でもある永

アフリカで大草原を見たら、どんな気持ちになるのだろう。 視界一杯に広がるサバンナと、悠然と歩く4頭のキリンの親子。当たり前だが、家財道具を持つでもなく、バッグをぶら下げるでもない。それを車の屋根の上から眺める27歳の佐藤さん。そのまま2時間、目が離せなくなった。 本書は、アフリカで「ケニア・ナッツ・カンパニー」を創業し、マカダミアナッツ業界で世界第5位の企業

7月26日にプロ棋士歴代2位タイとなる通算1308勝を記録した加藤一二三九段の著作。「加藤一二三九段」と書いても将棋に一切興味がない人には何段か、わかりにくいかもしれないが九段である。「かとう・ひふみ・くだん」と区切る。本書は、「神武以来の天才」とかつて呼ばれた加藤氏がこれまで対戦してきた名人たちとの対決を振り返りながら、自らの将棋観を語る内容になっている。

本書は、2009年から2012年5月までの間に、ブログ『奈良美智の日々』に掲載された記事と、奈良さんがtwitterに投稿したコメントを元に加筆・修正した本だ。表紙になっている奈良さんの絵、ちょっとどこかで見覚えがあるのではないだろうか。 先週末から奈良さんの個展が横浜美術館で開催されている。テーマは、“ 君や 僕に ちょっと似ている ” だ。ビートルズの、
お宝発掘! ナンシー関 ナンシー関が亡くなって10年になるという。正直、もうそんなに経つのかと少し驚いた。人が本当に亡くなるのはその人のことを誰も思い出さなくなった時だ、と何かの本で読んだことがあるが、もしそうならナンシーは未だに現役で私の心に生きている。年に何回かは、ワイドショウや週刊誌のタイトルを見て「ナンシーならなんていうだろう?」と考えてみる。そう

2012年5月27日レスリング女子ワールドカップ国別対抗戦決勝、ロシア相手に初戦から4連勝した日本は、絶対王者吉田沙保里の登場を前に6年ぶり6度目の優勝を決めていた。優勝を手中に収めた気の緩みがあったのだろうか、はたまたオリンピックを目前に控えたこの時期コンディションが谷底を迎えていたのだろうか。4年以上ただの一度も負けることなく、連勝を58にまで伸ばした最

日々、喜怒哀楽の中で、笑ったり泣いたりしながら生きているが、泣き笑いすることはめったにない。そのためだろうか、私だけかもしれないが、落語や演劇を見て、泣き笑い状態に陥るのがものすごく好きである。しかし、なかなかそのような芸を見せてくれる芸人さんはいない。東の立川志の輔、西の藤山直美、というのが私的にはイチオシなのであるが、本を読んで泣き笑いということは、相当

こんなふうに言ったほうがいいな。『ご主人は1950年3月に亡くなられました』と。このほうがいくらか侘しくなく響く。春が近づいていて、『雪がほとんどとけていた』とも言えるだろう。 幸運を祈る… 1949年10月29日、4年近くに及ぶ強制労働の後の、3年2カ月に及ぶ脱出行の始まりだ。クレメンス・フォレル(仮名)は第二次大戦中、ソビエト連邦において捕虜となり、シベ

石原裕次郎 52 美空ひばり 52 向田邦子 53 有吉佐和子 53 越路吹雪 56。 これは、私が今でも見たいし聞きたい、読みたいと思っている人たちの享年である。並べるととても若くて自分が彼らの年を越したことが信じられない。彼らが居ないのは惜しい。しかし亡くなった人は仕方がないと諦めが付く。だけどふっと居なくなってしまった人への思いはどうやってけじめを付け

著者の職業は漫画家である。ドラマ化、映画化された著作、『ブラックジャックによろしく』、『海猿』の名前は、普段漫画を読まない人でも聞いたことがあるだろう。10万部に届けばドル箱と呼ばれるコミックス市場において、『ブラックジャックによろしく』は初版で100万部を超えることもあったそうだ。傍から見れば、大成功者、夢の印税生活、という姿を想像してしまうが、著者が感じ

知る人ぞ知る「文人」シリーズ第三作である。『文人悪食』、『文人暴食』で、多くの文人を「食」の観点から描き出すという斬新なアイデアですさまじいまでの能力を見せたあの嵐山光三郎氏、こんどはどうくるかと思ったら、なんと『文人悪妻』である。そして嵐山氏、期待通りに、まえがきの冒頭から早くも全開で暴走してくれる。 “人妻という言葉ほど男心をコトコトと煮込み、ムラムラと

著者からの献本である。小林祥一郎氏。1928年生まれ。海軍兵学校をへて名古屋大学卒業。1952年新日本文学会事務局に入る。1954年花田清輝編集長解任に抗議して辞職。同年平凡社入社。『世界大百科事典』編集部に配属。1959年『日本残酷物語』編集部。1964年雑誌『太陽』編集長。1966年『新文学』編集長。1980年平凡社取締役編集局長。1985年平凡社を退社

1997年1月、成田空港。ここに1人の28歳の男がいる。彼の名前は濃野 平(のうの たいら)。出発前の混み合うロビーで、大勢の行き交う旅行者を眺めている。彼も日本を発つ目的があったが、他人に話せる自信がなかった。誰一人として、まじめに受けとってくれるとは思えなかった。家族や友人たちにさえ、数ヵ月ほどヨーロッパ旅行に行って来ると告げていた。要は、笑われるのが怖

「おはようございます。今日はこれから久里洋二さんの『ボクのつぶやき自伝: @yojikuri 』について連ツイします。あっ、連ツイと聞いて、すっとばそうとしないでください。だって、リアルツイッターじゃないんですから。正しくは、バーチャル連ツイ+連リツイになりますけど、よろしく。」 「『ボクのつぶやき自伝: @yojikuri 』は、世界初の本でしょう。だって

塀の中の著者からの献本だ。副題は「ホリエモンの獄中日記195日」。出版社はなんと文藝春秋である。3月の文藝春秋からの新刊は『毛沢東 大躍進秘録』『藤原正彦、美子のぶらり歴史散歩』『グーグル、アップル、マイクロソフトに就職する方法』などダイナミックレンジ広すぎである。そのなかでも本書『刑務所なう』は実録マンガ付きだ。これは文藝春秋始まって以来の快挙なのかもしれ

日本将棋連盟会長の米長邦雄氏が、コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」に負けたということが話題になったのは、つい先月の1月14日のこと。それからまだ1ヶ月も経たないというのに、早くも対局した本人によって、その内幕の全貌が明かされた。それが本書『われ敗れたり コンピュータ棋戦のすべてを語る』である。 決戦の裏側に隠された興味深いエピソードが、いくつか挙げられて

しまった、と臍をかんだ。頻繁にメディアに登場しているとは思っていたが、先週のテレビ番組で「今年大ブレーク必至!」と謳われ特集まで組まれてしまった作家・岩下尚史。先にあのキャラクターが刷り込まれてしまうと、素直に本の世界に入り込めなくなってしまうかもしれない。『ヒタメン 三島由紀夫が女に逢う時…』は、数ある三島由紀夫の評伝の中でも、今後、研究者が必ず読まなけれ