
『愛を科学で測った男』 愛情と孤独のあいだ
本書は、サルによる実験を通じて「愛情」の研究を行ったハリー・ハーロウ教授の伝記である。 著者は、「霊長類を動物実験として用いることについての倫理問題」を論じた連載でピュリッツアー賞を受賞し、当初はハーロウ教授が行った実験について批判的であった人だ。しかし、その後、「育児放棄」の破壊的な影響について連載した際に考え直す。 結局のところ、これはハリー・ハーロウの
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本書は、サルによる実験を通じて「愛情」の研究を行ったハリー・ハーロウ教授の伝記である。 著者は、「霊長類を動物実験として用いることについての倫理問題」を論じた連載でピュリッツアー賞を受賞し、当初はハーロウ教授が行った実験について批判的であった人だ。しかし、その後、「育児放棄」の破壊的な影響について連載した際に考え直す。 結局のところ、これはハリー・ハーロウの

洋書の写真集が好きな私は、大型書店を訪れた際には必ず洋書コーナーで様々な写真集を眺める。必ず手に取るのは、ファッション写真と報道写真だ。ファッション写真は人間の美しさを私に教えてくれる。そして報道写真は広い世界に渦巻く人間の業と悲しみを教えてくれる。同じ時代を生きつつ、決して出会う事の無い人々の悲しみや欲望や生のエネルギーを私に突きつける。 そのような写真を

芸術家にも色々なタイプがいて、ミケランジェロのようにルネサンスのギルドでその腕を発揮する人もいれば、ゴッホのように耳を裂き苦悩しながらも純朴に内面美を追求する人もいる。またピカソのように頭脳と腕を駆使し、王座に君臨する人間もいる。ジャクソン・ポロックはというと、若い頃は病的なまでのシャイであり、何よりも生涯アルコール依存症だった。 こちらはDVDでポロックの

東日本大震災がもたらした甚大な被害は、この国の物作りの基盤を揺るがした。東日本が支えていたサプライチェーンが混乱、自動車・半導体をはじめとして、さまざまな製造現場では操業停止という事態も起こった。「納豆の容器が無い」「ペットボトルの蓋が無い」など、身近な品々にも影響は及んだ。「あのときは部品調達にひどく苦労した」という記憶をお持ちの方も多いだろう。 「紙」も


現実として受け容れ難いほどの大惨事は、誰の身にも起こりうる。東日本大震災、阪神淡路大震災、JR福知山線脱線事故――。しかし、突然の喪失にどう向き合えばよいのか、どうすれば悲嘆の渦中にいる人たちに寄り添うことができるのか?多くの人はあらかじめ、答えを持たない。 その時の道標として読んでおきたい本に出会ったので、紹介したい。1992年に単行本として出版され、この

世界タイトルまで行くには、テレビ局がついてくれなあかん。そのためには注目されることが大事や。おまえがプロデビューしたら、オレが適当な相手を見つけてきたる。おまえはとりあえず倒しまくったらええ。プロは倒してなんぼや。連続KOの日本記録を狙うんや

今ここに、数冊の文庫本がある。角川グループパブリッシング発行、どれも2011年3月以降に印刷されたものだ。私の目には、他の文庫本とそれほど違いはないように見える。軽く、柔らかい文庫本。しかし、印刷された物語とはまた別の、ある物語を秘めた本。今ここにあるこの本は、もしかしたら未曾有の大震災を奇跡のように生き残った紙で作られたものかもしれないのだ。 2011年3

医師や救命士をはじめとした世界中の医療関係者による甚大な努力にもかかわらず、人類の死亡率は100%に留まっている 誰にとっても死は他人ごとでもあるかのように振り払いたくなるが、避けられない死。本書は、人が意識を失った後のできごと、「弔い方」を世界各地で探求した旅日誌である。 自分の葬儀を自分で計画することも突飛な時代ではなくなった。過去にはウィンストン・チャ

ページをめくるたびに、心が強く突き動かされる本がある。少し時間が経つと、そのときの興奮や気づきが薄れてしまうものだから、何回も何回も読み直す。忘れた気持ちを拾い集めるために。 都築響一さんが2006年から2014年の間に書いた書評を編んだ『ROADSIDE BOOKS』は、私にとってまさにそういう本だった。 都築さんには、一貫して変わらないスタンスがある。

「この工場が死んだら、日本の出版は終わる・・・」 こんな帯が巻かれた本を書店で見て、手に取らずに店頭を通り過ぎることができる本好きは少ないであろう。その工場とは一体どこにあるのか。なぜ日本の出版は終わってしまうのか。そしていまだに日本の出版は終わっていない理由とは。表紙には巨大なマシンと誇らしげな人々と千羽鶴。 ひさしぶりに読みはじめる前から身が引き締まる思

成毛眞 :本書は、おそらく世界中を見ても類書がまったくない、唯一無二の本。そのテーマからして他の追随を許さない、まさに「独走」状態の一冊だよね。であるからして、この本の最後に誰かがしたり顔して何か付け加えたって、蛇足もいいところで、むしろ本書の価値を落とすばかりだと思うんだ。そこで、われわれHONZが愛するこの世にも稀なる作品をせめて応援させてもらうため、代

本をプレゼントする、という文化はもっと定着してほしいなと思っています。でも、どんな本を贈ったものか、けっこう悩んでしまいますよね。今回紹介する『20世紀エディトリアル・オデッセイ』は、文化系の後輩にプレゼントするには最適な1冊です。 太鼓判ガンガンおします!! 20世紀に刊行された様々な文化系の雑誌がどのように時代を作ってきたのか、生粋の雑誌マニアである2人

MJといえば昔はマイケル・ジョーダン、今やみうらじゅん。マイブーム、ゆるキャラと世に送り出してきたMJだが、真骨頂はエロについて語ったときであろう。

2億年前は「1000年に1種」の頻度だった生物の絶滅は、人間の歴史とともに飛躍的に増加し、今や「1年に4万種」という絶望的な領域に達してしまった。実は、ここ3000年に関して言えば、その大半は「島」で起きているという。 もちろん、多様な種の大量絶滅の原因は人間だ。しかし、島々で直接手を下しているのは、ねずみやねこなど、人間とともにやって来た動物たちである。船


料理研究家・ 土屋敦が編み出すレシピ は、どれもとてもシンプルで美味しい。だから、ひょっとしたら横着な男なのではないかと思っていた。実物を見ても、なんとなくそういう印象がしないでもない。しかし現実は真逆、オタク的執着心の権化だ。 そうでなければ、豚の角煮のレシピだけを27も集めた本『 なんたって豚の角煮 』など出版するはずがない。世界中のどこに、豚の角煮でそ



中央アジアのキルギスという国は、北はカザフスタン、東は新疆ウイグル自治区、南はタジキスタン、西はウズベキスタンに囲まれた場所に位置しており、国土の面積は日本の約半分という小さな国である。 山や湖に囲まれたこの美しい国には、今なお続く信じ難い現実がある。それは仲間を連れた若い男が、嫌がる女性を自宅に連れていき、一族総出で説得し、無理やり結婚させるというもの。キ

今週末に開幕するサッカーW杯。日本代表は辛くも前哨戦を勝ち、15日に初戦を迎える。ただ、W杯を迎えるたびに私のようなニワカは思ってしまうことがある。 「サッカー海外組」を何故か目指してドイツに渡った著者。ドイツ10部リーグでプレーして受けたカルチャーショックが『メッシと滅私』につながった。

本書は読者に多くの視点を与えてくれる本だ。 歩くこと、織ること、観察すること、歌うこと、物語ること、描くこと、書くこと。これらに共通しているのは何か? それは、こうしたすべてが何らかのラインに沿って進行するということである。 “ライン”には色々な意味がある。時間的なライン(物語・生命)があり、空間的なライン(線・境界)があり、両方が混ざり合ったライン(軌跡)

学校の中の事件は、なぜかいつも心が痛くなる。小学生のころ、今のイジメのようなものではなかったが、つまはじきにされた記憶が蘇るからだろう。原因はわからず、誰にも相談できず、私は悩んだ末、親玉になっている子に直談判に出かけた。私が何かしたのか、という問いの答えがあまりにも的外れで、簡単に誤解が解けたことでこの事件は集結した。半世紀近い昔のことなのに、心臓が破裂し

先日、六本木で食事をしたときに、約束の時間よりだいぶ早くついてしまったので、時間を潰そうと青山ブックセンターに立ちよった。するとこの本がレジのすぐ近くに平積みされているのをみて、タイトルに惹かれて即購入してしまった。さすがは外国人の多い街、六本木。 『正しいFUCKの使い方』って!タイトルが最高だ。今年No.1のタイトルではないだろうか。しかも正しい発音CD

ヒトはどこから来て、どこへ行くのか。いつの時代も人を惹きつけ、現代でも問われ続けている問いである。ダーウィンの『 種の起源 』をきっかけに、生命の進化にはより一層の関心が払われ、科学の発展とともに多くのことが明らかにされてきた。 それでは、生命を生み出した地球は、そして地球を構成する鉱物は、どのように進化してきたのか。これは、これまで十分に注意を払われてこな

2014年、 ヤンキーがマイルドと認定された この年、メタルはもっとワイルドになった。 ポエムではなく叫びを、イオンタウンではなくイアンギランを、仲間との絆ではなく仲間割れをこよなく愛す。そんなメタラー達の魂を熱く揺さぶる新ジャンル、それが メタル×めし 。 はたしてメタルスライム、はぐれメタルに次ぐ、メタルの新機軸を打ち出せるのだろうか。 著者は料理研究家

立ち食い蕎麦といえば「安い、早い」で駅チカにあり、都市圏で働くサラリーマンの強い味方。ただ、立ち食い蕎麦と一括りにしてしまうには、近年はあまりにも店の雰囲気も提供される蕎麦も違うのが実情だ。「早飯」を嫌う女性からは「立ち食い蕎麦は立ち食い蕎麦じゃないの」という声も聞こえてきそうな中、女性の著者が首都圏の立ち食い蕎麦に潜入取材したのが本書。 日経ビジネスオンラ

下のビデオは、本書でも紹介されている御茶ノ水女子大学の郡宏さんの実験である。 複数の振り子時計を並べると、“振り子”同士が申し合わせたかの様に歩調を合わせるようになる。「ホイヘンスの原理」だ。1665年の冬、ホイヘンスが体調が悪く自宅に引きこもっていた時に発見されたというのが心強い。振り子はいいなあ仲間がいてなんて思っていたら、あらびっくり、という話か。 他

まず、ここ数年の間に読んだなかで、いちばん感銘をうけた本といっておこう。憲法改正に、在日差別に、いろいろなバッシングに、新しい視点を与えてくれた。人間の『複数性』が重要であると。そして、『思考欠如』は罪悪であると。 ハンナ・アーレント 。どれくらいの知名度なのだろう。恥ずかしながら、昨年、 この名を冠した映画 を見るまで、その業績はおろか名前すら知らなかった

どうも、書店員として、書店業界に関わる本をレビューするのは気まずい。ゆえにHONZに所属してから何冊も出版されてきたその手の本を読んで深く感じ入ったとしても、決してレビューは書かなかった。しかしながら今回は、読み物としてあまりに面白く、もしもこの本をご存知ないとしたらもったいないという思いを抑えかねてしまった。 『本の雑誌』という月刊誌がある。その名の通り、

訳者がこんなに「ウンコ」を連発したのは小学生のとき以来かもしれない ウンコが溢れているのは本書の中だけではない、世界中で溢れはじめている。約70億の人類は約4億トン近いウンコを、家畜(ニワトリ約190億、ブタ約10億、ウシ約14億、ヒツジとヤギ約18億)は控えめに見積もって、141億3645万トンの畜糞を算出する。畜糞だけで、地球上すべての人に一日1ℓ以上を

時代がいくら変わっても、新聞には変わらない役割があります。その重要な 一つが権力監視、権力チェックではないでしょうか。権力監視の力は弱くなってきたと言われていますが、読者のためにも権力監視の役割を放棄するわけにはいきません。北海道警察の裏金問題の報道は、まさにそうした、新聞本来の役割を取り戻すための作業でした。 2004年10月、本書の著者・高田昌幸氏が北

HONZ内で「これを読んでいないと、まるで話についていけない本」というのが存在する。中でも特に話題に上るのが、岩波科学ライブラリー『 ハダカデバネズミ 』『 クマムシ?! 』『 フジツボ 』の3冊。これらの本が、同じ編集者によって手がけられていたことをご存知であっただろうか。それが今回寄稿いただいた伝説の編集者・塩田春香さんである。 ちなみに上記の3冊は変わ

この10年間の最大の過ちは教育にありました。ことにイデオロギー的、政治的教育です。単に学生たちに対してのみならず、人民一般に対する教育です。 1989年に世界を震撼させた 天安門事件 を振り返り、鄧小平はこう語った。彼は、民主化を求める抗議行動の拡大を目の当たりにして、1980年代における共産党の最大の過ちは、人民に銃をつきつけたことではなく、イデオロギー教

OL、モデル、アスリートにイラストレーター... 本書に登場する11人の女性には、一つの共通点がある。 それは、全員が義肢装具士・臼井二美男さんによって手がけられた義足を身につけているということである。一人ひとりの思いを実現するため、何度も対話を重ねながら生み出された「夢見る義足」。足の切断というアクシデントに見舞われた女性たちが、今、新たな一歩を踏み出した

「死ぬ時まであなたと一緒!」などというかつてどこかで聞いたせりふはもはや昼メロでしか見当たらないのかもしれない。死は最後の最後は誰もがひとりで直面するものだが「自宅で誰にも看取られずに亡くなり、その死が数日後に発見され、自殺や犯罪性を除く遺体」(孤独死)は年間3万体にも達すると言われれば穏やかではない。死ぬ時まであなたと一緒どころか、死ぬ時もひとりで、死んで

感動を飛び越してショックだ。こんな面白い講義をリアルタイムで受けている京大生には、同じ大学生として嫉妬全開である。まあ、受験生時代のセンター試験の点数を聞かれたらぐうの音もでない訳だが、学校が違えばこんなに違うものかとつい思ってしまう。 そんな悩ましい程面白い講義とは、京都大学屈指の人気を誇る、「生命の化学」。その中から生徒に好評だった部分を選りすぐり、実際

夕方の5時に市立図書館に本を借りに行った市長に対して 「市長、もう、閉館です。市長であっても特別扱いはできません。」 「それと明日は休館日です。平日でも休館日なんです。昔からそういう決まりですから」 閉架に所蔵されている資料を頼むと10−20分待たされる。そこで市長が市立図書館の内部を見せてくれいうと 「市長といえども、部外者ですから、お見せできません」 こ

犬ぞりと聞いて思い出すのは「タロとジロ」の物語だ。第一次南極観測隊に同行した犬ぞり用の15頭は、帰還の際、天候の悪化のため現地に取り残された。しかし1年後、第3次越冬隊が2頭を発見した。『南極物語』として映画にもなり、今でもジロのはく製を国立科学博物館で見ることができる。 もともと、極地や寒冷な高緯度地域で車輪が使えず、馬なども耐えられないために使役として犬

浮かれた雰囲気の場所にはかならずといっていいほど露店が立ち並んでおり、焼きそばを焼くソースの匂いや派手な色彩の店構えがその場の雰囲気を盛りあげている。特に縁日や祭りにとって露店は欠かせない存在であり、露店の賑やかな存在が私たちにハレの気分を味あわせてくれている。 東京下町では、これら伝統的な露天商のことを「テキヤさん」と親しみを込めて呼んでいるが、一般的には