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おすすめ本レビュー

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3,647記事

「地球は青かった」などとは言わず 『ガガーリン』 書影

教養・雑学 / 人物

「地球は青かった」などとは言わず 『ガガーリン』

偉人伝にも、はやりすたりがある。野口英世やシュバイツアーの凋落は著しい。ユーリ・ガガーリンも、世代によってずいぶんと知名度が違う偉人のひとりだろう。知っている人にはいうまでもないが、『地球は青かった』という名言とともに記憶されている世界最初の宇宙飛行士だ。 ソビエト社会主義共和国連邦の秘密主義というのはここまですごかったのかということがよくわかる本でもある。

黒い情念がゴッゴッゴッ! 『クマムシ博士の「最強生物」学』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

黒い情念がゴッゴッゴッ! 『クマムシ博士の「最強生物」学』

HONZの皆が大好きで、 ついにHONZのメンバーで「社会科見学」にまで行ってしまった 海洋研究開発機構(JAMSTEC)に在籍するスーパー研究者・高井研氏の著書 『微生物ハンター、深海を行く』 に印象的な下りがある。 そう。高井氏は、自身の研究する極限環境微生物こそが地球最強の生き物であると信じているのだが、そう主張すると必ずと言っていいほど「地球最強はク

『「世界最速の男」をとらえろ!』知られざるスポーツ計時の世界 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『「世界最速の男」をとらえろ!』知られざるスポーツ計時の世界

8月18日、世界陸上が閉幕した。TBSが中継した午後9時の平均視聴率は13%。前週同時間に放送された人気ドラマ「半沢直樹」の平均視聴率が29%だったから「半返し」である。それもそのはず日本が獲得したメダルは女子マラソンの福士加代子の銅メダル1個だけ。どのスポーツでも日本選手の活躍と視聴率は相関関係にあるのだ。 ところが国際陸上競技で常に日本が首位を争う分野が

コンセプトは”エロうま” - 『キレイゴトぬきの農業論』 書影

生物・自然 / 社会

コンセプトは”エロうま” - 『キレイゴトぬきの農業論』

農家が農業の話をしているだけなのに、まるでスタートアップ系企業のプレゼンテーションでも聞いているかのよう。本書の読書体験を一言で表すと、そんな風になる。 そこにはステレオタイプな農家像に見られるような、寡黙さも清貧なイメージもない。「日本一話のうまい農家」を自負する著者が作り出しているのは「安全」なだけの無農薬野菜でも、「環境にやさしい」だけの有機野菜でもな

『あの人と、「酒都」放浪』 日本一ぜいたくな酒場めぐり 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『あの人と、「酒都」放浪』 日本一ぜいたくな酒場めぐり

朝っぱらから「ハムカツ」や「ホッピー」などの文字が並ぶレビューは書かないと決めたのは先月だったか。レビューを書くのは深夜だが、掲載は午前7時半だからだ。深夜のアルコールの勢いに任せて「ホッピー飲んでべろべろ」と書いたレビューを読者は通勤電車で読むのである。想像力が及ばなかったのは恥ずかしい限りである。実際、「酒」本のレビューはページビューを見ても、一部の少し

『ウェブ社会のゆくえ』 地元とジモトと私とワタシ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ウェブ社会のゆくえ』 地元とジモトと私とワタシ

本書において、著者は、日常生活の様々な場面においてウェブへのアクセスが発生する現在の状況を「現実空間の多孔化」と呼び、そのような状況が、社会にどのような影響を及ぼしているかを考察する。 本書は、当初は AR(Augumented Reality) 等の「現実世界とネットの情報を紐づける技術」について社会学的に考察することを想定していた。しかし、その後、東日本

『行ってもイイ精神科、ダメな精神科』ETV特集「トラウマからの解放」も併せておススメ! 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『行ってもイイ精神科、ダメな精神科』ETV特集「トラウマからの解放」も併せておススメ!

うつのプロともいえる、現在60代の女性が都内23軒の精神科を尋ねたルポだ。著者は大学の演劇科を卒業した20代から今日までアングラ女優。新宿ゴールデン街でバーを経営している。40代に大学の心理学科を卒業し、精神保健福祉士の資格も取得して、精神科クリニックに長く勤務していた経験もある。2回の離婚で幼児期と思春期に辛い思いをさせた娘さんへの悔恨もあり、若いころには

『アウグストゥス』神の息子アウグストゥスと人間オクタウィアヌス 書影

人物 / 世界史

『アウグストゥス』神の息子アウグストゥスと人間オクタウィアヌス

漆黒の闇の中にたたずむ軍装の男は、右手を掲げ何かを指さしている。自信に満ちた視線は男が指さす先に向けられている。男が何を指さし見つめているのか、今となっては知るすべがない。本書の表紙に写るアウグストゥスは二千年以上老いることも朽ちることもなく、この男の威厳を今に伝えている。この大理石の彫像はローマにある バチカン美術館 に収蔵されている。彼の妻が隠居していた

『職業治験』治験だけで生活をするプロの生態 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『職業治験』治験だけで生活をするプロの生態

この本は治験だけで生活をする男の体験記である。初めての治験から、プロ治験者の第一人者「教授」との出会い、「教授」を介した裏ルートでの治験、海外での治験、プロ治験者の末路など、著者が経験した出来事をまとめた本だ。これがとてもおもしろく最後まで一気に読んでしまった。治験というある種グレーな世界が、こんな風になっているとは……という驚きとともに、きっと治験の世界に

『二万年の奇跡を生きた鳥 ライチョウ』 鳥本にハズレなし! 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『二万年の奇跡を生きた鳥 ライチョウ』 鳥本にハズレなし!

現在、お台場の科学未来館で サンダーバード博 が開かれている(9月23日まで)子供のころ、楽しみに見ていた番組が、今でも人気を誇っているというのは嬉しいものだ。 この本を紹介するのにちょうどいい、と喜んだのだが、“サンダーバード”はネイティブ・アメリカンの伝説の鳥のことだそうだ。全く違うけど、まあいいか。強引だがそのまま日本語にすれば雷鳥。日本の特別天然記念

そうだったのか 『生理用品の社会史 : タブーから一大ビジネスへ』 書影

教養・雑学 / 社会

そうだったのか 『生理用品の社会史 : タブーから一大ビジネスへ』

読んでよかった、という本がある。いろいろな場合があるけれど、そのうちのひとつは、その一冊を読んだら、この分野では、もう本を読む必要がないだろう、と思わせてくれる本である。『暗号本』はたいがい好きであったけれど、サイモン・シンの『 暗号解読 』を読んで、もうそれ以上は読む必要がなくなった。『野口英世本』は何冊読んだかわからないが、イザベル・プレセットによる『

『名誉の殺人 母、姉妹、娘を手にかけた男たち』 書影

社会 / 事件・事故

『名誉の殺人 母、姉妹、娘を手にかけた男たち』

「名誉の殺人」とは、結婚前に肉体関係を持った女性などをその家族が殺し、一族の「名誉を回復する」こと。中東や南アジアなどで行われている。 こう書けば、 『生きながら火に焼かれて』 という本を思い出すHONZ読者も多いかもしれない。ヨルダン川西岸地区の若い女性が恋人と肉体関係を持ったため、義兄が彼女にガソリンをかけ、火をつけて殺そうとするが、なんとか助けだされた

『自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』 分類学の進化 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』 分類学の進化

世界は名前であふれている。 街ゆく若者が凝視する手のひらサイズの四角い機械には「スマートフォン」、鋭い目つきでゴミをあさる黒い鳥には「カラス」、体毛がほとんどなく出歯のネズミには見たままの「 ハダカデバネズミ 」という名前がある。これらの名前はもちろん、自然に授けられたものではなく、ヒトによってつけられたものである。名前のないものを見つけることが難しいほどに

『戦士の休息』 - 映画を語る落合博満がスゴい! 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『戦士の休息』 - 映画を語る落合博満がスゴい!

落合博満が、映画を語る。これだけでも十分に意外性があるのだが、そこで紹介されている映画がさらに意外なものばかりであったから、二重の意味で驚いた。 現役時代はオレ流を謳い、監督時代は日本シリーズで完全試合目前のピッチャーを降板させた男。そんな数々のエピソードから、どんな極論で煙に巻くのかと思いきや、ベタとも思えるような超定番作品が相並ぶ。紹介されているのは、三

『生き心地の良い町』この自殺率の低さには理由がある 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『生き心地の良い町』この自殺率の低さには理由がある

2万7858人。 2012年の日本の自殺者数だ。15年ぶりに3万人を割り込んだが、依然高水準にとどまっている。自殺者数が発表されるたびに、自殺の原因や対策を巡る議論があちこちで起きるが、自殺が起きない要素は議論されない。起きてない事象について「なぜ起きないか」を探るのは素人ながら難しいと思ってしまうのだが、果敢に挑んだのが本書だ。 太平洋に面する総面積27

『ビルマ・ハイウェイ』 アジアの裏口 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『ビルマ・ハイウェイ』 アジアの裏口

本書は、ビルマ(ミャンマー)と、隣接する中国・インドの都市を歩き、リアルな現場を伝えると同時に、その都市に関連する歴史を振り返った本だ。著者はケンブリッジ大で歴史の博士号を取得し、国連や国際機関で勤務した後、現在はビルマで歴史的建造物の保存に取り組んでいる。テインセイン大統領の諮問評議員や、ミャンマー平和センターの特別顧問を務めるなど、現在進行中の自由化改革

『医師は最善を尽くしているか』何が改善に繋がるのか 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『医師は最善を尽くしているか』何が改善に繋がるのか

アフガニスタン・イラク戦争。治安は未だ改善せず相変わらず散々たる状況であるが、医療の面では歴史的とも言える偉業が成し遂げられている。戦闘で負傷した兵士の死亡率が、これまでの実例と比べて大幅に改善しているのだ。第二次世界大戦が30%、朝鮮戦争は25%、ベトナム戦争は24%、湾岸戦争は24%の兵士が死亡しているなか、今回はたったの10%である。 朝鮮戦争以降、半

『岐路に立つ精神医学』 明日はどうなる? 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『岐路に立つ精神医学』 明日はどうなる?

もう30年以上も前の話。医学生として、精神科の講義をうけていた。テーマは精神分裂病、いまでいう統合失調症である。先生の話す内容が支離滅裂でまったくわからない。いつもは階段教室の中腹に座るのを常にしていたのであるが、その日は最後列・出入り口近くのアホ捨て山(© 久坂部羊)に陣取っていた。 隣の席にいた年かさの同級生に、まったくわからん、と話しかけたら、物知り顔

JAMSTEC(海洋研究開発機構)を楽しむ8冊+α 書影

サイエンス / 生物・自然

JAMSTEC(海洋研究開発機構)を楽しむ8冊+α

♪じゃあむすてっく、じゃむすてっく、じゃむじゃむじゃむじゃむじゃーむすてーーっくっ♪ 自作のJAMSTECのテーマが頭のなかを流れ続けている。暑さでおかしくなったのではない(たぶん)。もうすぐ、HONZでは「大人の社会科見学」としてJAMSTECの横須賀本部に行くのである。これが浮かれずにいられようか。 JAMSTECって何? と思った方。そういう方のために

『ジェネンテック―遺伝子工学企業の先駆者』 科学で稼ぐ 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『ジェネンテック―遺伝子工学企業の先駆者』 科学で稼ぐ

株価の動きに注目していたのは、投資家たちだけではない。1980年10月、多くの科学者たちもまた、ジェネンテックという新興企業のIPO(新規株式公開)の行く末を見守っていた。IPO時点でこの創立4年目のベンチャーが販売していた製品数はゼロ。しかし、1つの製品すら持たないジェネンテックの株価は取引開始20分で35ドルから80ドルに急上昇した。このときジェネンテッ

『まるごとインドな男と結婚したら』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『まるごとインドな男と結婚したら』

著者は御年70歳になる普通の独身女性である。居住地はバンガロール。数年前にこの安住の地を見つけ、美術大学に通い始めたのだが、それでは刺激がないと、本書を書き終えてから、また冒険の旅に出るようだ。彼女は人生の冒険者なのだ。 著者がインドの地を踏んだのは1970年代前半。まさにヒッピー世代のインド詣でだ。その旅の途中に英文学修士を持つインド人男性に出会い結婚した

生命を生物学から解き放つ - 『流れとかたち』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

生命を生物学から解き放つ - 『流れとかたち』

デザインという言葉が、これほど広い意味で使われるようになったのはいつ頃からだろうか。僕が広告業界に足を踏み入れた時にはまだ、デザインとは特定の職群の人たちの美的関心事を指していたように思う。だが同じ頃、営業の仕事とは「絵を描くことである」と教わった記憶も残っているから、既に現在使われているような広義の意味は含まれていたのかもしれない。 この言葉がこれほど頻繁

『「ものづくり」の科学史』世界を変えた「標準」革命 書影

教養・雑学 / ビジネス

『「ものづくり」の科学史』世界を変えた「標準」革命

向かって左上からQWERTYと並ぶパソコンのキー配列だが、これは19世紀にタイプライター発明者が考案した配列そのままである。当時はタイピストが速く打つと印字がうまくできなかったり、故障したり、問題が起きていた。苦肉の策で、速く打てないように並べた「非合理的な配列」が市場を席巻、1世紀以上たった今も残っているのである。 不思議な話である。我々はパソコンを使用す

『風に吹かれて』 風が吹くから、おもしろい。 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『風に吹かれて』 風が吹くから、おもしろい。

本書は『rockin'on』『CUT』などを創刊してきた音楽評論家・編集者 渋谷陽一さんによる、スタジオジブリ プロデューサーの鈴木敏夫さんへのインタビュー集だ。もともとは、『CUT』誌に掲載されたインタビューをまとめた本になるはずだったが、ジブリの最初の頃の話を付け足したいという渋谷さんの提案で、半分以上のページがオリジナルのインタビューになっている。 「

『人魚たちのいた時代』消え去りし景色 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『人魚たちのいた時代』消え去りし景色

HONZの朝会で、本書を取り上げた。東えりかが、「 8月の今月読む本 」として記事にしたさい、この本に付けたコメントに「あまちゃんブーム」という言葉が書かれていた。実はそれがTVドラマのことだと知らなかった。かくのごとく、世情に疎い私が本書を手に取ったのは、無論ブームに乗ったからではない。そもそも、あまちゃんブームを知らなかったのだから乗りようがない。ではな

『アンティーク・ディーラー』世界の宝を扱うビジネス 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『アンティーク・ディーラー』世界の宝を扱うビジネス

「アンティーク・ディーラー」 なんと心地よい響きだろう。アンティークにディーラーである。この言葉の組み合わせに強く惹かれる。ただいきなり残念なことを申し上げると、アンティーク・ディーラーは世界で年々減少傾向にある。フェアの開催頻度・規模でいえば文句無しでイギリスが一位だが、一方で日本も1980年代にヨーロッパから大量に取り入れたお宝がワンサカある。のれん分け

泣いて笑って『サッカーデイズ』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

泣いて笑って『サッカーデイズ』

家族の理想は?と考えると、両親と子供二人、出来ればお姉ちゃんと弟という構成が頭に浮かぶ。多分、小さいころから刷り込まれた“一姫二太郎”が色濃く残っているのだろう。『サッカーデイズ』はまさに私の中では典型的な家族が、サッカーとともに笑って泣いた2年間の日常記だ。自分が子どもを持たなかったからか、少し羨ましくお伽噺を読むみたいな気持ちを味わいながら読み終わった。

『悪の引用句辞典』 三段活用のススメ 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『悪の引用句辞典』 三段活用のススメ

フランス文学の碩学・鹿島茂先生の手によるエスプリの利いた引用句辞典の登場だ。いざスピーチ原稿や文章をしたためようと思い立ったものの、なかなか筆が進まないという経験はないだろうか。そんなときも引用で万事解決。シェイクスピア曰く、ゲーテ曰く、と名著から一節をちょいとばかり失敬し、「そう、自分もそれが言いたかった」と思いの丈を後に続けて綴っていけばよい。引用とは、

知識より 読書が大事 『検証・学歴の効用』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

知識より 読書が大事 『検証・学歴の効用』

学歴が無用だとか、学歴なんか意味がない、と言われるとどきっとする。大学で禄を食んでいる者としては、『売り物』を否定されるようなものなのだから当然のことだ。しかし、本当のところはどうなのだろうか。どうも優勢な気がする学歴否定派は、学歴があってもこんなアホがおる、とか、学歴がなくてもこんなにすばらしい人がいる、とかいう少数のイメージで論じているようなところはない

『血盟団事件』 - 交わるはずのなかった二つの格差 書影

事件・事故 / 日本史

『血盟団事件』 - 交わるはずのなかった二つの格差

アルバイト店員が内輪向けのネタ画像をアップして炎上するなどの騒ぎが相次いでいる。この問題における一つの論点となっているのが、学歴の格差というものだ。「低学歴の世界」というセンセーショナルなフレーズとともに、多くの言葉が交わされているが、一昔前によく見かけた、都市と地方の格差という議論にもよく似た印象を受ける。 格差、就職難、ワーキングプア、社会からの孤立。こ

『まだまだ酔ってません』 酒呑みおじさんは今日も行く! 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『まだまだ酔ってません』 酒呑みおじさんは今日も行く!

個人的な話だが、昨日、夏休みが終わった。もちろん、ほとんど本も読まずに、旅行に出かけ、遊びほうけていた。休み明けにHONZのレビューの当番であることも、当然、すっかり忘れていた。「仕方が無い。今回は脱力系の本で軽くいくか」と書きたいところだが、お盆明けだろうがなかろうが、選書が軽い感じで変わらないのは気のせいだろうか。これはこれで少し悲しい。 今回取り上げる

『HIGH LINE』 みんなで夢を 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『HIGH LINE』 みんなで夢を

マンハッタンの地上9mにある、全長1.5マイルの高架鉄道跡。解体の危機にあった「ハイライン」を保持すべく活動を開始したのは、2人のゲイの青年だった。最後の列車が高架を通ってから19年後の、1999年のことだ。2人は、別々にハイラインに興味を持った。新聞記事を読んで興味を持ったロバート、雑誌の取材でウェスト・チェルシーを歩いていて高架の存在に気づいたジョッシュ

『国家はなぜ衰退するのか(上、下)』その僅かな差が何を変えたのか!? 書影

社会 / 世界史

『国家はなぜ衰退するのか(上、下)』その僅かな差が何を変えたのか!?

かつて梅棹忠夫は『文明の生態史観』の中で、世界を第一地域と第二地域に大別した。ユーラシアの中央部を占める専制的権力の発達した帝国が乱立した地域を第二地域、封建制を主体とした西ヨーロッパと日本を第一地域とし、その制度と文化の違いが近代の形成に大きな影響を与えたとする。繁栄と衰退とを巡る問題は梅棹忠夫に限らず多くの人々が答えを得ようと議論を重ねてきた。 貧富の格

『証言 陸軍中野学校 卒業生たちの追想』背広を着たスパイたち 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『証言 陸軍中野学校 卒業生たちの追想』背広を着たスパイたち

2008年(平成20年)5月、都内の病院のカフェテリアでのインタビューで、小野田寛郎が筆者にもらした一言である。しかし、その先は同伴者に遮られて聞くことが出来なかったという。 本書は日本陸軍において「諜報、謀略、宣伝、防諜」のノウハウを教えていた「 陸軍中野学校 」の卒業生たちの証言集である。存在したのは日中戦争期から太平洋終結までのわずか7年余り。当時は一

子ども靴業界のプロジェクトX。『開発チームは、なぜ最強ブランド「瞬足」を生み出せたのか?』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

子ども靴業界のプロジェクトX。『開発チームは、なぜ最強ブランド「瞬足」を生み出せたのか?』

イノベーションの必要性が叫ばれて久しい昨今の産業界だが、この言葉を耳にすると、ITのように最先端のテクノロジーを駆使した業界ばかりを思い浮かべてしまうものだ。でも実際には、思いもよらないほど身近なところにも、その種は眠っているらしい。なにせ、テクノロジーの匂いもしなければ、新たな潜在ニーズが喚起されることも一見なさそうな「子ども靴」というプロダクトに、業界地

『サイクル・サイエンス』で『ツール・ド・フランス』を十倍楽しむ 書影

サイエンス / アート・スポーツ

『サイクル・サイエンス』で『ツール・ド・フランス』を十倍楽しむ

今年、 第100回 を無事に終了したツール・ド・フランス。フランス全土、およそ3600キロを23日間(うち2日間は休息日)かけて自転車でかけめぐるレースである。ピレネーやアルプスといった山岳レースも含まれており、連日マラソンを走るほどの過酷さといわれている。そのツール・ド・フランスの歴史、ルール、しきたり、から、名勝負、そして日本人選手まで、すべてがわかるコ

涼やかに心を打たれる。『すてきな地球の果て』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

涼やかに心を打たれる。『すてきな地球の果て』

もはや異次元と言ってもよい暑さのなか、とびきり涼しそうな本が目に止まった。こちらである。 カバー表1には真っ青の澄んだ空と一面に広がる氷。ページをパラパラとめくれば、ところどころに写真が挟み込まれ、ペンギンや氷河、オーロラなど、極地のまことに涼しげな光景が映し出されている。 著者は、夏は北極、冬は南極、春と秋は東京で暮らしている、という。となれば、今は北極?

『藤森照信×山口晃 日本建築集中講義』を片手に旅に出る 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『藤森照信×山口晃 日本建築集中講義』を片手に旅に出る

建築に隠された謎を解き明かす“建築探偵”としてもお馴染み、建築史家・建築家の藤森照信センセイ。大和絵や浮世絵の様式を用いた緻密な画風で知られ、 『ヘンな日本美術史』 でその視点の鋭さをいかんなく発揮した山口晃画伯。この2人が13の日本の名建築を訪ねて、お互いの知識と感性をぶつけ合った対談が、面白くないはずがない。山口画伯によるエッセイ漫画まで添えられているの

『ほとんど人力』  - 達人 菅原文太 書影

人物 / 社会

『ほとんど人力』 - 達人 菅原文太

本書は、2010年から2013年にかけて、小学館『本の窓』に連載された17回の対談をまとめたものである。大きく5つの章に分類されており、それぞれ、「「のど元過ぎれば…」で、また戦争するのか?」、「「知らぬが仏」では、すまされない」、「アメリカよりアジアを向いた脱官僚の国へ」、「人間力をとりもどすために」、「人は「資源」ではない。型破りのススメ」と題されている

『世界の軍用犬の物語』戦場を駆ける犬 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『世界の軍用犬の物語』戦場を駆ける犬

さらに犬の優れた嗅覚は野営地の防御などにも役立つ。なんと犬たちは1キロ以上離れた敵の匂いをもかぎ分けるのだ。また9メートルも水に潜った敵の匂いをも嗅ぎ分けることが最近の研究で発見されている。この特性を生かし、2千年以上前から犬たちは人間の戦友として、そして兵器として、様々な時代の様々な戦場で、攻撃、防御、通信などの重要な任務に就いていたのである。 第一次世界