
僕の『コミュニケイションのレッスン』
会社の近くの本屋さんで、この本が「演劇」の棚に置かれていたのを見つけた。「 第三舞台 」の、鴻上尚史さんの本だ。手にとったのは、とある事情で、コミュニケーション能力にちょっと自信を無くしていたからだ。 おお。あの、第三舞台の鴻上さんが、ずっと実践してきたことが書いてあるのか。 そうなのか。サッカーや野球みたいに、練習すればするだけ上達するのか。僕にも、「僕に
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会社の近くの本屋さんで、この本が「演劇」の棚に置かれていたのを見つけた。「 第三舞台 」の、鴻上尚史さんの本だ。手にとったのは、とある事情で、コミュニケーション能力にちょっと自信を無くしていたからだ。 おお。あの、第三舞台の鴻上さんが、ずっと実践してきたことが書いてあるのか。 そうなのか。サッカーや野球みたいに、練習すればするだけ上達するのか。僕にも、「僕に

世界中の人々に無料で質の高い教育を。そんな理想を掲げたNPOが存在する。その名は カーンアカデミー 。グーグルやビル・ゲイツなどから支援を受け、2012年時点で利用者数は月間6000万人にも達している。You Tubeで一コマ10分ほどの講義を公開し、無料で行える練習問題、学校の先生などが生徒の進捗具合を確認できるフィードバックソフトなど様々な機能がすべて無

太平洋戦争における日本軍の失敗を研究した『失敗の本質』は文庫版だけでも発行部数56万部を超える経営学(組織論)の名著だ。カバーされている戦闘はノモンハン事件、ミッドウェイ海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦の6つ。太平洋戦争以前に発生し停戦協定をもって終結したノモンハン事件を除けば、すべてミッドウェイ以降の負け戦(いくさ)である。逆に

表紙を見た時の衝撃は、どう表現したらよいだろうか?紫色した髪の忍者のインパクトは凄まじいものであった。 今どき忍者ごっこをしている子供たちなんて見かけもしないし、私と同世代の人でも戦国時代に活躍した忍者は、小説や漫画の世界だけだと思っているに違いない。 だが現代においても生きた忍法を継承している一人の忍者がいた。戸隠流忍法34代宗家、初見良昭が著者である。

日本人の多くはツール・ド・フランスをはじめとする自転車ロードレースになじみがないが、ここ数年、日本人選手の 新城幸也 の活躍などで、注目する人が増えてきているように思う。ツール・ド・フランスは今年、記念すべき第100回大会である。フランスのみならず、自転車競技を愛する者にとっては特別な大会であるのだ。6月29日にスタートし7月21日まで、全21ステージを男た

我が国における生後一ヶ月以内の赤ちゃん1000人あたりの死亡数(新生児死亡率)をご存じだろうか?わずか“1”である。お産における赤ちゃんの死亡(周産期死亡率)は、これより多いが、それでも1000人あたりおおよそ4人。もちろん 世界の最高水準 。先天性の異常など防ぎえない場合もあるので、すでに医療の限界とされている。 フィリピンでの新生児死亡率はどれくらいかと

HONZの読者にこの本を紹介するのは「釈迦に説法、孔子に悟道」のような気がしている。本はいますぐ役に立たないものの宝庫だとか、本屋にいくのはムダなものに会いにいくというスタンスなど、この本で述べられていることは、HONZの考え方にとても近く、代表の成毛眞が『 本は10冊同時に読め! 』などで言っていることにも似ている。そう思っていたら、併読のススメという部分

善次郎は、力の限り走っていた。 右胸と顔を刺されてなお、生きることを諦めてはいなかった。 迫り来る死の恐怖を振り払いながら、彼はどこへ向かおうとしたのだろう。 薄れ行く意識に抗って、彼は何を考えていたのだろう。 80歳を超えた老体とは思えない懸命の走りも、暴漢の追撃を振り切ることはできず、背後から咽頭部を切りつけられた銀行王・安田善次郎は、82年の人生に幕を

バスに乗ってまわると、京都はいいよ。 友人にそう教えてもらったことがある。歩くには広すぎる。地下鉄では、景色も見えないし、寄り道もしにくい。タクシーでは、お財布具合もあるけれど、運転手さんに気を遣ってしまうしね。バスだと、勝手に動いてくれる割には、自由でしょう? 友人はそんなことを言っていたが、本数も多い京都の市バスは確かに便利だ。そんな背景もあるのか、本書

テレビはほとんど見ないのだが、NHKで日曜夜7時30分から放送中の「ダーウィンが来た!」だけは見てしまう。そのために受信料を払っているようなものかもしれない。ほのぼのとした気持ちになりたいなど老化のあらわれだろうが、ほぼ毎週見ている。昨日(9日)のタイトルは「アザラシ母さん、愛の猛特訓」。タイトルだけで涙腺が刺激されまくりである。テレビでこのような状態なのだ

2013年の上半期は絵にまつわる読み物が充実していた。ちょっと目に入っただけでも4点あり、それぞれ1,900円、1,600円、2,000円、2,300円。4冊まとめて7,800円の買い物だった。それでも絵画好きにとっては良い選択だと思う。著者は4冊とも日本人。この分野の人材が厚いことがよく分かる。 5月15日発売の最新刊『巨匠に学ぶ風景画』のサブタイトルは「

サイコパスと呼ばれる特異な人格を形成した人々が存在する。これらの特異な人格を持つ人々が、いつ私たち人類のジーン・プールに紛れ込んだのかはよくわからない。しかし、その存在は古くから知られていた。たとえば、北欧の歴史や神話に登場するベルセルクたち。彼らは軍神オーディーンの神通力で恐怖を克服し、猛り狂いながら敵を殺す。彼らを擁する共同体にとって、それは守護天使であ

これまで買った本のなかでもっとも重かったのは、一昨年に出版された『Modernist Cuisine : The Art and Science of Cooking』だった。我が家で実測してみると重量はなんと19.3キログラムもあった。著者本人に聞いてみたところ、フルカラーのこの本に使われているインクの乾燥重量は4ポンドを超えているという。約2キログラムだ

佐々木俊尚さんの著書には、いつも打ち出されるキーワードに注目している。漠然と無意識に感じていたような空気感が上手く言語化されており、僕にとっては自分と時代との距離を測るモノサシのような存在だ。 ノマド、キューレション、当事者。そして今回はレイヤー。ノマドの時には、そのキーワードをずいぶん遠い世界のことのように受け取っていたのだが、キュレーションの時には「きっ

仮説力を磨きたい人にはおススメの本。 いわゆる一流の人間とは、真理に近い仮説を立て、それをいち早く検証・実践した人間と言われている。確かにこのことは学問・政治・ビジネスなどあらゆる分野において普遍的であり、仮説力ある人が世の中をリードしていると言っても過言ではない、と言うと少し言い過ぎか。いずれにせよ、一朝一夕に仮説力を磨くのは難しく、よほどの才能がない限り

1970年代後半、遺伝子工学という1つの巨大産業が生まれた。 本書はその誕生の場面を切り取った、良質なサイエンスドキュメント。そして、1つの産業をリードするベンチャーの誕生から成功を駆け抜けるストーリーでもある。 サイエンスとビジネス、叡智と欲望が交差する間で、2つの大学と資本金たった1,000ドルのベンチャーが、インスリンという1つの物質の生産を賭け、競い

犯罪者を反省させればさせるほど、累犯者が増える。それどころか、ちょっと悪いことをした人を反省させることを繰り返していけば、その家系からいずれ犯罪者が生まれるかもしれない、と著者は主張する。 うそだろ? とまず思う。しかし本書を読み進めれば、多くの人が「体感」として腑に落ちるはずだ。 ポイントは「反省すると犯罪者になる」ではなく、「反省 させる と……」だとい

自分にとって未知となる領域へ踏み出すためには、背中を押してくれる良いメッセージに巡りあえることが重要である。美術のことなど全く門外漢な僕にとっても、本書の冒頭に書かれた「美術館は常設展を見よ!」という主張にはピンとくるものがあった。 多くの人にとって興味を惹かれるであろう期間限定の企画展に比べると、一見マイナーな存在にも思える常設展。この一風変わったスコープ

この本のなにがいいって、まずタイトルがいい。そして装丁も素晴らしい。おもしろそうな匂いがぷんぷんしてくる。こういった本に出会ったときは、中身を確かめる必要などない。おもしろいに決まってるのだから。私はこういう買い方をしたときには、ハズレを引いたことがない。今回も間違いなく大当たり。めちゃくちゃおもしろい食エッセイの本だったので紹介したい。 イギリス人の著者が

朝日新聞の土曜別刷り版「be」の人気連載である人生相談「悩みのるつぼ」。相談内容も幅広く、週替わりの回答者も多彩だが、その中で、なぜか下ネタ系の質問に重点的に答えてくれるのが社会学者で東大名誉教授の上野千鶴子先生だ。 「なぜか」と書いたが、ある意味必然かもしれない。最近は『おひとりさまの老後』でヒットを飛ばしたが、出世作は四半世紀前の著書『スカートの下の劇場

「オープンテクノロジー」と言ったらやはり、 Linux に代表されるオープンソース・ソフトウェアが思い浮かぶ方が多いのではないだろうか。Google、Facebook、Twitter等の大規模サーバーからAndroidスマートフォンまで様々なレベルのシステムで採用され、本書においても誕生の経緯が描かれるLinuxは、「オープンであること」を条件にしてプログラ

あらためて、「侘び」とは何かと問われると難しい。裏千家十五代の千玄室は、侘びの英語訳として「imperfect beauty」「beauty of imperfection」という表現を用いている。ふつうは完全なものと考えられているヨーロッパ的な美とは対照的に、「不完全であるところに宿る美というものがあるのだ」というのが日本文化の偉大な発見、かつ偉大な創造で

修復家という職業がある。58億円で落札されたゴッホの「ひまわり」は、今も鮮明な色彩を放っており、モネの「睡蓮の池」も、完成当時の風合いを留めている。それは全て修復家のおかげなのだ。 これらゴッホやモネの絵は、著者の修復家である岩井希久子さんの仕事によるものだ。本書では世界でも有数の腕を持つ岩井さんが、見事な医術により名画を再生し、真摯に仕事に向き合う姿を開示

浜村淳には感謝している。いまこうしてHONZでレビューを書けるのも彼のおかげかもしれない。もう40年も前のことになるが、ノンフィクションの本がこんなに面白いものだということを最初に教えてくれたのだから。柳田邦夫の『 マッハの恐怖 』を紹介することによって。 もうひとつ、 浜村淳 は映画を見ることの楽しみを教えてくれた。『おいおい、浜村淳っていったい誰なんだよ

その男は今、エルサレムの墓地に眠っている。 日本人として初めて審問を受けて正統派ユダヤ教に改宗し、74歳で永眠すると、彼を慕う多くのユダヤ人たちの手によって、その遺体はイスラエルに埋葬された。 彼こそが「命のビザを繋いだ男」、小辻節三だ。 「命のビザ」といえば、杉原千畝だ。1940年、ナチスの迫害に追われてリトアニア日本領事館に逃げ込んだ多くのユダヤ難民たち

プライドが邪魔をすることもあれば、プライドがなくて動き出せないこともある。 プライドが逆境を支えるときもあれば、人を狂わせることもある。 自分がつくったプライドの檻の中から、いつの間にか抜け出せなくなることもある。 それでも、人間はプライドを持たざるを得ない存在である。 それが本書の出発点である。 人間は理想の自分を思い描く。それと同時に、理想の自己で現実の

ずんぐりとした体型に山高帽を目深にかぶり、葉巻をくわえながら鋭い眼光を投げかけている彼の写真を眺めていると、まるでピットブルのような闘争心旺盛な性格を連想させる。あるいは、往年のギャングを連想する人もいるかもしれない。そうかと思えば、Vサインを高らかに掲げ、満面の笑顔を見せている写真を見ると、キラキラと輝く瞳に自然と目が行く。それは大物政治家というより、どこ

書店でひときわ目立っていた一冊である。とはいっても派手なカバーであったり、強烈な惹句が踊っているというわけではない。むしろ地味である。白地の余白が多く、ちょっと懐かしいような装丁、帯も、ツヤもない地味な色の紙に、こちらも懐かしいような書体で、抑制の効いた、シンプルな言葉が書かれているだけ。 しかし、梶井基次郎のレモンじゃないが、派手な色と感嘆符だらけの扇情的

存在するかどうかも分からないお宝を求めて、未開のジャングルを突き進む。失敗に次ぐ失敗にも諦めることなく、新たな仲間と新たな航海へと旅立つ。本書で追い求められるお宝はゴムの樹であり、お宝の在り処はブラジルのジャングル奥深くである。携帯やGPSはもとより、正確な地図すらない19世紀の冒険が容易なはずがない。地球のあらゆる土地を調べつくし、宇宙や深海にまで行けるよ

今となっては笑い話のようにも聞こえるが、太古から現代まで、数多くの迷信が科学的知識として信じられてきた。何でも金に変えられるという賢者の石を探し求めた錬金術師たち、不老不死を願って水銀を飲み続けた人たち、地球平面説や地球空洞説を信じていた人たち。 古代ギリシア時代から19世紀半ばまで信じられていた「四体液説」も、その一つと言えるだろう。これは人体が血液、粘液

この本は俳句集であり、いじめを受けている子どもを持つ家族の手記である。まさしく文芸書だ。HONZが得意とするノンフィクションではない。しかし、この本がより多くの人に読まれるよう、僅かばかりでも役に立たなければ、書評を書くものとしての矜持が保てないのだ。すこしだけお付き合い願いたい。いや、無理やりにでももう少しだけ読んでもらいたいのだ。 著者の凛くんはこの6月

近年、どうも「シュール」という言葉自体がひとり歩きしている。 日本語でシュールと聞くと、多くの人が「虚しい」とか「説明し難い」とか「空しい」という感想を持つ。それに伴い、シュルレアリスムは超現実主義などと訳されるので、よけい小難しいものに感じてしまう。 本書では、シュルレアリスムにおける本来の意味を代表的な作品とともに理解できる。登場作家はシュルレアリスムを

夜の帳が下りるころ、この街には欲望が渦巻く。新宿歌舞伎町のコマ劇場。その前にあるコマ広場を定点観測地として著者は取材を始める。取材は1999年からスタートする。1999年といえば、私はまだ不良の世界に片足を突っ込んでいた時期だ。場所は違えども、ここに登場する若者たちが無軌道に漂流する姿は決して他人事で済まされる話ではないのである。 この街には様々な若者が集う

アルド・マヌーツィオ。出版界が生んだ天才で、革命家、そして本の歴史を変えた男である。彼の存在なくして、出版界は今日ほど大きな発展を遂げることはなかっただろう。 いつも鞄に本を一冊忍ばせている人は多いはず。私もそんな一人で、電車やトイレの中など少しでも時間が出来れば、鞄から文庫本を取り出す。私にとってはとても日常的な動作であるが、こんなことができるのも500年

日本のプロ野球を題材にした現在進行形の秀逸なビジネス・ケーススタディだ。身近なプロ野球を題材に小難しくなく、まとめられており、目からウロコがぽろぽろと出てくる。 「日本プロ野球は、日本産業の縮図である」とサブタイトルで銘打っており、ビジネスとして頭打ちになっている日本のプロ野球を改革するだけでなく、そこから日本の産業再生の道まで見出そうとする、かなり大胆な狙

16歳の少年ガレットは、高名な魔術師に弟子入りし、古代ルル語を学んでいる。あるとき、とある村の長老から、人喰い岩と呼ばれる奇妙な古代遺跡を調べてほしいと頼まれ、ガレットは現地に向かう。その遺跡の中に入った者の多くが姿を消し、無事に生還できたのは、長老とその兄だけだったのだ。 ファンタジー? RPG? なぜそんな本がHONZに? そう思うのも無理もないが、もう

鳥を知らない人に、鳥がどんな生き物であるかを簡潔に伝えるには、どうすればよいだろう? 「卵を産む動物」では、カエルやワニも鳥の仲間になってしまう。「クチバシを持つ動物」はいい所を突いているが、イカにもクチバシはある。当然、「空を飛ぶ動物」でもうまくはいかない。コウモリや蚊だって、空を飛べるのだから。 答えは、本書のタイトルでもある「羽」にある。羽こそ、鳥だけ

「指揮権」。政治経済の教科書に出てくる「あれ」である。検察は独立性を保障されているが、法務大臣は個々の事案では検事総長を指揮できると検察庁法14条は規定している。過去に発動されたのは戦後一度のみ。1954年、世に言う「造船疑獄事件」で後の首相である佐藤栄作氏に対する逮捕状請求を当時の法務大臣が無期限に延期するように指揮した。その指揮権が実は50年以上の時を経

インターネットを検索していたら、驚くべき事実を知ってしまった。と言っても、たいした話ではないのだが、昨年末あたりから、本書の著者で将棋棋士の加藤一二三九段がテレビによく出ているらしいのである。将棋番組かと思えば、マツコデラックスやビートたけしと共演しているというから腰を抜かした。70歳を超えたけど大丈夫かと思いながらも、youtubeで「加藤一二三 マツコ」

シンディー・ローパーは、家族や、一緒にプレイするミュージシャンが、みんな魔法を持っていると言う。 そんな本人の魔法は、日本に渡って来て中学生の私にかかった。というか、みんなかかった。ヒットチャート1位だ。1980年代を代表するミュージシャンだ。夜中のMTVを見たり、ラジオを聞いたり、テープにとったりした。 本書の原題は "A Memoir"、シンプルに、「自