
おすすめ本レビュー
CATEGORY3,647記事


スマイリーキクチ『突然、僕は殺人犯にされた』(竹書房)
冤罪、嫌な言葉である。 時によって人は間違うことがあるが、やってもいない罪をかぶせられ、挙句の果てに断罪されるという運命にだけはなりたくない。電車内での痴漢の冤罪を晴らすのに何年もかかかり、殺人事件ではDNA判定の科学的進歩を待たなくてはならなかった。それどころか、検察の目論見のために犯人が仕立てられるとは、なんたることだろうか。無辜の市民が犯人とされ、本人

『減速して生きる ダウンシフターズ』
こういう自己啓発臭がする本はほとんど読まないが、宮崎哲弥だか宮台真司がラジオで「これは勝ち組の本だ」と叫んでいたので少し前に気になって購入。現状よりダウンシフトできるってことは確かに「勝っている」人だろう。現代はダウンシフトできないひとをどうするかが問題なわけだし、ある意味、贅沢な話ともいえる。原発問題で「これからはダウンシフト」とか言っている人が増えている

『かぜの科学』 ジェニファー・アッカーマン 早川書房
本書は風邪の解明に挑んでいる専門家のユニークな研究の紹介や、サイエンスライターである著者自らが風邪実験に参加したりして、かぜ(普通感冒)を科学的に検証しようとしている。 くしゃみによるウイルスの拡散の秒速だとかおもしろいデータは満載だが、読み進める内に、途方に暮れるかもしれない。風邪は神経質にならない限りひくし、普通感冒にこれといった治療方法はないのだという

『トラブルなう』 久田将義 ミリオン出版
本書は月刊誌『実話ナックルズ』の発行人がこれまでの編集者人生で遭遇したトラブルの数々をまとめた本だ。 実話ナックルズと聞いてもピンとこない人もいるかもしれない。暴走族やら芸能界のスキャンダルが乗っているかと思いきや、非差別部落のルポや殺人事件の真相など硬派な記事も載っている。ゴシップ誌やイエロージャーナリズムといえばそれまでだが、良い意味で文字通り「雑誌」だ
アボガドロ定数を決めたのはアボガドロじゃない!? 『元素検定』 桜井弘編著
★★★☆☆ ニュースで聞いた元素に興味を持ち始めた人はもちろん、昔なんとなく習った化学・物理を思い出したい人におススメ これほど多くの人が、これほど多様な元素に関心を抱いたことはなかったのではないか。ニュースでヨウ素やセシウム、更にはプルトニウムのことを聞かない日はない。専門家の話を聞いて無闇に恐れたり、楽観しすぎたりすることのないように、本書で元素検定を取

『かぜの科学―もっとも身近な病の生態』ジェニファー アッカーマン (早川書房)
前回の本のキュレーター勉強会で、装丁がいかに重要かが証明された。可愛いカバーだが、とにかく色使いが良い。最近、色々な商品を見る度にデザインが「進化」しているな、と感じる。それとは逆に前は最先端と思ったデザインも時間がたてば古さを感じてしまう。 今年に入りNPOの活動として、都内ホテルから廃棄される石鹸を回収していた。これが今は震災の影響もあり被災地に送る作業

『かぜの科学—もっとも身近な病の生態』
残念ながら、風邪の特効薬は今もって存在しない。風邪はウイルスによって引き起こされる。しかし、それはウイルスのスーパーグループであって、風邪の原因には少なくとも200種の異なるウイルスが関与する。その代表格、風邪全体の半数の原因とされるライノウイルス属でさえも、異なる抗体に反応する少なくとも100種の遺伝学的に異なるウイルス株を含む。さらに風邪ウイルスへの免疫

『かぜの科学』 ジェニファー・アッカーマン
避難所では風邪が流行しているようだ。避難している方々は、国立感染症研究所等が情報提供をしているので正しい情報を入手して欲しい( http://bit.ly/e9Eim9 )。 風邪ウイルスの感染拡大の源は、風邪にかかった人の鼻からの分泌物に含まれるウイルス粒子。大半の風邪ウイルスの場合、鼻と眼が主たる侵入口となる。ウイルスが侵入口に辿りつく経路は未だ解明され
『岡本太郎と横尾忠則』
表現エナジー見直し ミュージシャン、ダンサー、建築家、映像から彫刻など他者に対し何かしらメッセージを伝える人達がいる。私は彼等を尊敬の念を含め表現者と呼んでいる。今回の震災に対して各々は自分なりの表現でライブやイベントを催し、チャリティ活動を行っている。新宿駅周辺に足を運べばストリートミュージシャンからお笑いタレントまで募金活動をする姿がみられるが、全員が同
『エンデュアランス号漂流』
3月25日、今日は本来であれば2年間通った早稲田ビジネススクールの卒業式であった。 式は震災を考慮して中止となったが、卒業という一区切りを記念して、 恩師の内田教授がおすすめの本 をベースに書こうと思う。絶版という噂もあるが、そんなの誰も気にしないだろう。 本書は、南極横断に挑戦した英国人探検家シャクルトンと28人の隊員の、1914年から17ヶ月以上にわたる
ブラジル67の秘密 『ブラジルの流儀』 和田昌親
★★★★☆ ブラジル好きの人はもちろん、沈んだ気分を吹き飛ばしてクスッと笑いたい人におススメ 佐々木俊尚氏によると、外食に行っただけで、「不謹慎だ」などと罵られるらしい (Togetter) 。近所のレストランに潰れてもらっては困るので、私もせっせと外食にでかけたが、西麻布近辺のレストランはこの連休中は大抵がらがら。被災地とは比べられるはずもないが、東京にも

『工学部ヒラノ教授』 プレジデント2月28日発売号 書評欄掲載
自身をビーラカンスと呼ぶベテラン工学部教授の長編エッセイである。20代の学生からみると60歳の教授はシーラカンス。70歳はその上をいくビーラカンスだというのだ。失礼だが、そもそもシーラカンスを持ち出してくるだけでも年代を感じる。 しかし、理工系の大学の内部について、これほど具体的に語りつくした本を読んだことがない。しかも、筆致は軽やかで、ユーモアも上等だ。一


『妄想かもしれない日本の歴史』
きっかけは、『信長革命』。 第一回本のキュレーター勉強会 で、 東えりか さんが「一押し」として紹介して下さって読むが、なるほど面白い。 桶狭間の戦いの奇襲や長篠の戦いでの鉄砲三段撃ちなどのいくさの天才ぶりや、エキセントリックな気性など、個人としての資質や性格が描かれてきたこれまでの信長のイメージとは違い、「まつりごと」の総合的な形を「安土幕府」として提示し
みうらじゅん『ムカエマの世界』(ちくま文庫)
私たちの世代は、全共闘から一回り下で、共通一時試験はまだなく国立大学が一期校、二期校と2度受験できた時代だ。思えば遠くに来たものだ、と感慨深いが、それといって特徴のない世代だとも言われてきた。「しらけ世代」だの「新人類」だのと呼ばれたが、人ごとのように聞いていた。校内暴力で学校の窓ガラスを全部割った世代を子供だなあ、と見ていたし、今ほどではないが就職難の時代

『ウィキリークス WikiLeaks アサンジの戦争』
史上最多の米機密文書がウィキリークスと欧米マスメディア連合によって2010年末に一斉公表された。世界180ヶ国にある約280の大使館・領事館で書かれた合計25万通に及ぶアメリカ国務省の内部文書だ。質の高い文書の中には、ウォッカに煽られたディナーや、独裁者の会合、サウジアラビアのセックス・パーティーの描写まであり、世界を震撼させた。チュニジアの米大使の文書(同


『閃け!棋士に挑むコンピュータ』
閃け!棋士に挑むコンピュータ 田中 徹,難波 美帆 梧桐書院 ブクログでレビューを見る» 本を開く前に、横からの眺めが真っ白ならば、写真や図が少ない文字ばかりの本だろうと想定する。横から眺めたときに、黒線や色線が見えると、その本に写真や図表を暗に期待する。本書は、一本、黒いラインが見えた書籍である。そこを開くと、研究者の不敵な笑みがある。彼の名は松原仁。35


『死刑執行人の日本史』
裁判員制度が施行された約2年前に、「死刑を求刑する場に立ち会いたくないから嫌だ」と叫ぶ人は多かったが、「死刑判決を出すことで、刑務官に死刑を執行させるのが嫌だ」という人はほとんどいなかっただろう。裁判官が死刑を言い渡し、いざ、死刑が執行されるとなると、当然だが、死刑を執行する人が必要になる。その人は「ひとを殺す」行為に荷担するわけだ。「仕事だから」という人が

『潜入ルポ ヤクザの修羅場』 週刊朝日3月11日号 「ビジネス成毛塾」掲載
文藝春秋のような出版社からの刊行物でなければ、手を伸ばさなかった本である。『潜入ルポ ヤクザの修羅場』は普通のノンフィクション作家が、暴力団に数か月ほども潜入して書き下ろした、というようなお気軽なものではないからだ。 著者は15年もの間、ヤクザとまさに寝食を共にしてきたヤクザ専門誌の編集者だ。マル暴の刑事がそうであるように、半分ヤクザだろうと疑われても仕方が
『わたしが芸術について語るなら』
わたしが芸術について語るなら わたしが芸術について語るならの他のレビューをみる» 千住博 ポプラ社 芸術についてやさしく語る 本書はもともと児童向けに出版されていた本だが、美術についてあまりにもわかり易く深い内容の為、そのままのわかり易さで大人版が出版された。その為、どうもアートは難しいと感じている人に特にオススメする。著者は日本画家として知られ京都造形芸術
あなたは何の一族? 『遺伝子医療革命』 フランシス・S・コリンズ著 矢野真千子翻訳
★★★★☆ 最新の遺伝子医療に興味のある人はもちろん、私たちの命に何が書いてあって何が書いてないのか興味のある人にオススメ 自分たちが何の一族かを知るための方法は色々あるが、最近はその選択肢が急速に増えているようだ。アメリカには個人向けの民間DNA検査サービス企業が多数あり、数百~数千ドル程度の金額で自分の遺伝子を読むことができる。遺伝学の権威である著者は偽

『閃け!棋士に挑むコンピューター』
『閃け!棋士に挑むコンピューター』 田中徹&難波美帆 梧桐書院 棋士の田丸昇八段のブログによれば、1996年の『将棋年鑑』のアンケートで後に永世名人になる森内俊之は「コンピューターがプロ棋士を負かす日は?」という質問に「2010年」と答えたという。森内の予言通り、2010年、コンピューター将棋システム「あから2010」が公式の場で初めて女流棋士を破った。それ


『閃け!棋士に挑むコンピュータ』
人間の知的活動はアルゴリズム(問題解決の手順)ですべて表現できるという仮説から生まれたのが人工知能(Artificial Intelligence=AI)だ。日本における人工知能研究では将棋が題材とされ、人間の知能が持つ機能の中でも最も分かりづらい「直感」「ひらめき」のメカニズムを解き明かそうと研究が行われている。そして、松原仁(公立はこだて未来大学教授)ら

『閃け!棋士に挑むコンピューター』田中徹,難波美帆
チェスの世界ではコンピューターは既に世界チャンピオンに勝っている。将棋の世界でもコンピューターが一流棋士に勝つのは時間の問題だと思っていたが、ついに2010年10月にコンピューター「あから2010」が清水女流王将に勝利した。本書評を書く数日前にもコンピューターが人間クイズ王2人を破ったニュースが飛び込んできた( http://bit.ly/gpo7wa )。

『閃け! 棋士に挑むコンピュータ』
昨年10月、清水市代女流王将(当時)とコンピュータ将棋「あから2010」が対戦した。誰もが指摘せずにはいられない「あからのキャラクターの(別の意味での)すごさ(こちらや こちら をご参考に。本書の表紙のとギャップが……)を含め、対戦当日は、twitterでも#vsComshogiのハッシュタグが大いに盛り上がり、TLに熱を帯びたtweetが次々と流れ込んでき

『フェイスブック』 5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた
トルストイは『アンナ・カレーニナ』の冒頭で「幸福な家庭は皆同じように似ているが、不幸な家庭はそれぞれにその不幸のさまを異にしているものだ。」だといった。 ザッカーバーグとフェイスブックは、古(いにしえ)の覇者、ビル・ゲイツとマイクロソフト、スティーブ・ジョブスとアップルの相似形である。中流以上の家庭に育ち、見てくれをまったく構わないプログラミングの天才。不遜
美しき山下清 『マリー・アントワネットの宮廷画家』 石井美樹子
★★★★☆ フランス革命前後の貴族生活に興味がある人はもちろん、逆境にも負けない強い女性の人生に触れたい人にもオススメ 表紙の絵は本書の主人公であるルイーズ・ヴィジェ・ルブランの自画像である。この絵を見ての通り、ルイーズはパステル画家の父ルイ・ヴィジェから絵の才能を受け継いだだけでなく、結髪師の母ジャンヌ・メサンから美貌も受け継いだ。マリーアントワネットの宮
『参謀は名を秘す―歴史に隠れた名補佐役たち』
参謀は名を秘す―歴史に隠れた名補佐役たち (日経ビジネス人文庫) 参謀は名を秘す―歴史に隠れた...の他のレビューをみる» 童門 冬二 日本経済新聞出版社 真の参謀とは何か いま軍師や兵法を仕事に生かそうとする本が溢れているが、実際の参謀はどうだったのか。本書では参謀や軍師達は、戦闘や外交において本当にどれだけの仕事をしたのかを色をつけずに検証している。この
『閃け!棋士に挑むコンピュータ』
人生で最初に将棋が流行ったのは小学校時代だった。その頃には生存本能をフルに発揮できるようになっており、自分が将棋できっと負けるであろう事が事前に察知できた。そこで「4八金」と「4九金」を交互に打つ「金上げ下げ」という新技を編み出したりしたが、そのような無駄の美は理解されず、私の将棋人生は現在に至るまで不遇なのである。最近の人はパソコンが相手してくれるからいい

『キュレーションの時代』 産経新聞 2月19日号 書評欄掲載
著者は冒頭で、本書のタイトルにもなっている「キュレーション」の定義をしている。すなわち「無数の情報の海の中から、自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新しい意味を与え、そして多くの人を共有すること。」だ。 この機能がツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディアに組み込まれることで、とりわけメディアや広告業界を取り巻く環境は大きく変わるのだ
種を蒔かなければ花は咲かない 『自分探しと楽しさについて』 森博嗣
★★★★★ 「最近楽しいことないなー」と思っている人はもちろん、人生をもっと楽しみたいと思う人にもオススメ この本に何が書いてあるかはタイトルを見れば一目瞭然。『なぜ××は○○なのか?』、『△△力』、更には『□□の品格』という目を引くためだけのタイトルが溢れている中、本書のタイトルは必要にして十分、端的にその内容を表している。本書は、昨年の自由三部作『 創る