
『我が足を信じて』 -荒野の囚人
こんなふうに言ったほうがいいな。『ご主人は1950年3月に亡くなられました』と。このほうがいくらか侘しくなく響く。春が近づいていて、『雪がほとんどとけていた』とも言えるだろう。 幸運を祈る… 1949年10月29日、4年近くに及ぶ強制労働の後の、3年2カ月に及ぶ脱出行の始まりだ。クレメンス・フォレル(仮名)は第二次大戦中、ソビエト連邦において捕虜となり、シベ
361記事

こんなふうに言ったほうがいいな。『ご主人は1950年3月に亡くなられました』と。このほうがいくらか侘しくなく響く。春が近づいていて、『雪がほとんどとけていた』とも言えるだろう。 幸運を祈る… 1949年10月29日、4年近くに及ぶ強制労働の後の、3年2カ月に及ぶ脱出行の始まりだ。クレメンス・フォレル(仮名)は第二次大戦中、ソビエト連邦において捕虜となり、シベ

2012年上半期No.1の社会派ノンフィクションだ。一度読み始めると、ストーリーにグイグイ引き込まれ、更に目から鱗の新事実が次々と登場し、しまいにはUFO・エイリアンに関する著者のあっと驚く新仮説も飛び出してくるので、ページをめくる手を止めるのに一苦労である。さすが「NYタイムズ・ベストセラー・リスト」に11週連続でランクインしただけはある。日々忙しく働いて

世界で最初の壺は日本でつくられた。1万4千年以上前、縄文人たちがつくりはじめたのである。地中海世界などでみつかる最古の壺は早期縄文時代から数千年後につくられたものだ。これらの地域では農耕が定着してから、穀物の保存などの目的でつくられはじめた。農耕以前の移動する狩猟生活では壺は持ち運びにくいため、つくられることはなかった。 いっぽう縄文人たちは定住型だが狩猟採

タイトルの如く武術に特化した本だ。武器甲冑系の図説本はストライクすぎて購入するとキリがないのだが、本書は必読に値する。ロングソードやダガー、スピアなど武器毎の戦闘方法を豊富なイラストつき(師匠と弟子が戦闘する設定)で解説されている。それも甲冑同士の格闘戦、転倒した場合の床技からトーナメントでの効果的なランス突撃法まで紹介しており、日本語で西洋武術をここまで網

1939年に始まったソ連との冬戦争で活躍したフィンランド軍の狙撃手シモ・ヘイヘは、一部ネット上では有名だ。しかし、これまで日本では、ヘイへその人をテーマとした本は、これまで一冊も出ていなかった。本書は、1998年に60年間にわたって沈黙を続けてきたヘイへのインタビューを成功させた著者によるノンフィクションであり、一部マニアにとっては待望の書と言える。 ここで

“1万年”をひとつの区切りとしたノンフィクションは数多い。『 1万年の進化爆発 』や『 パンドラの種 』、『 加速する肥満 』などはこの1万年間における人類の変化をエキサイティングに教えてくれる。この“1万年”には、数字としての区切りが良いと言う以上の意味がある。およそ1万年前に農耕が始まり、その農耕は人類を根本から変えてしまうほどのものだったのだ。 本書は

実に全591ページ、しかも二段組である。重さは865ℊ。手で持って読もうとするとやがて本(とその内容)の重さに手が震えてくる。それでも本書は短縮版なのだ。日本版は14章だが、原書は24章まであるという。 この膨大なボリュームで書かれた本のテーマは、中国の「大躍進」である。昨年大いに話題になり、成毛眞もレビューを書いている、フランク・ディケーター著 『毛沢東の

「トイレにおいておく本」というジャンルがある。ある、というか、手前味噌になるが、おそらくHONZ代表・ 成毛眞が考案した 本のジャンルではないか。代表の言葉を引用すれば、「トリビア系や辞典系の本」、「場所柄『へーー、なるほどねぇ』とうなづける本」ということになる。実際に代表宅で、トイレに並んだ本たちを見たときはちょっと感動し、用もないの便座に座り込みたくなる

2年前、与党の議員が911陰謀論を公言し、ニューヨーク・タイムズから厳しく批判された。外交感覚が疑われると同時に、なぜそのような公の場で発言するほど、胡散臭い陰謀説を信じてしまうのか?国会議員でなくとも、秘密結社のうわさ話を聞くと、裏取りの探求への道へ誘われ、いつの間にか頭が混乱して、何が真実かわからなくなることがあるはずだ。 本書では具体的な3つの事例(ユ
物語 近現代ギリシャの歴史 - 独立戦争からユーロ危機まで (中公新書) 昨今世界を騒がせているユーロ危機が解決するか否かはPIIGS諸国が無事に財政を再建できるかどうかにかかっている。その結果次第では第二のリーマンショックが勃発するなんてことも十分ありうる話である。しかし! こんな危機的状況にもかかわらず激しい暴動によって国民が頑なに緊縮政策を拒否する国が

電車が好きである。どの乗り物が好きかと問われれば、迷わず電車と答える。 車を運転していては本が読めない。飛行機は酔ってしまうのでよほど体調が良い時でなければ本が読めない。船は体調が良かろうが悪かろうが酔ってしまうので本は読めない。タクシーの後部座席で本を読むなど考えるだけで恐ろしい。三半規管の発達が未熟な本読みの移動は電車と決まっているのだ。なので、電車が好

エジソン、ヘミングウェイ、ゴーギャン、ロックフェラー、チャーチルなど11人の偉人たちの業績や人柄の「おさらい」と、その不肖の息子たちについての歴史エッセイだ。小見出しを少し抜き出してみよう。雰囲気がお判りになるだろう。「酒と女に溺れるケネディ家最後の息子」「エジソンの名を使って詐欺」「たった3ドル50セントの万引きで逮捕(アル・カポネの息子)」「鬱病、麻薬常

1848年、イギリス東インド会社は、とある男を当時外国人の出入りが禁止されていた中国内陸部へ送り込んだ。会社が彼に与えたミッションは、世界一経済的価値ある植物を中国から盗み出し、枯らしたり腐らせたりせずに元気な状態で別の大陸に無事移植できるよう手配すること。彼が狙った植物こそが、イギリスで大量に消費されていた「茶」である。本書の主人公、ロバート・フォーチュン

ありふれた食べ物でありながら、地球上のどんな果物よりも多くの人に消費され、何億という人々を飢えから救っているバナナ。本書は、そんなつつましやかな果物の壮大な歴史物語だ。この本を紹介するにあたって、「そんなバナナ!」とだけは言いたくないのだが、驚きの連続である。 19世紀後半のアメリカにおける需要拡大を背景に巨大化するバナナ複合企業と、中央アメリカにおけるバナ

HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビュー。最後は刀根明日香さんのレビューです。 政治家ってどんな人? 日本の政治家みたいにどうせ国家議員の息子が国家議員になるのでしょ? その中から首相が生まれるのでしょ? だから日本なんて変わりっこないのね。私が高校まで持っていた政治のイメージは、ニュースを観るようになった今でも変わらない。いくらCHANGEを叫

今週末も、HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビューを掲載します。 一色麻衣さんのレビューです。 たった五分でも遅刻したら、待ち合わせの相手はあまりよい顔をしない。ビジネスの場面ではありえない醜態だし、友人相手でも失礼に当たる行為だ。現代の私たちにとって、時間を区切って行動することは自明の理だが、それはいつ頃からの習慣なのだろうか。この本では、あま

「ウチは無宗教です」と言う人がいるが、日本は八百万の神達が集まる国であり、初詣は神道、葬式は仏教、結婚式はキリスト教といった調子で宗教のフィールドをうまく住み分けているのが現状だ。 ペンブックスシリーズは茶の湯、神社仏閣、戦国武将など知的好奇心をくすぐられる特集が多いが今回はキリスト教。現在の世界人口は約70億人であるが、その内キリスト教徒の数はローマ・カト

たかが数十年と言われるインターネットの歴史であるが、先祖を遡れば19世紀まで行き着くという。いわゆるモールス符号などでおなじみの通信手段「電信(テレグラフ)」のことだ。本書はヴィクトリア朝時代のインターネットとも言われる「電信」の歴史を、ダイナミズムたっぷりに描いた一冊。 歴史は繰り返すとはよく言ったものだが、その模様が生き生きとしたエピソードとともに伝えら

大英図書館が「 British Newspaper Archive 」というサービスを開始した。このサービス何がすごいかというと、アーカイブしている情報量とその古さだ。なんと、1800年以降にイギリスで発行された新聞のほとんど全てをカバーしており、そのデータに自宅のPCから容易にアクセスできる(1700年代のデータもあるようだ)。1800年といえば日本は寛政

先日「新刊ちょい読み」で 成毛眞が紹介 し、在オーストラリアの久保洋介も 「今月読む本」 で紹介していた一冊。決してメジャーとは言えないテーマの本だがどこか本好きを惹きつけるものがある。 牡蠣がニューヨークの湾内に生息するようになったのは 紀元前1万年であり、1609年にイギリスの探検家・ヘンリー・ハドソンがニューヨークにたどり着くずっとずっとず〜っと以前の
朝日新聞公式ブログ「ベルばらKidsぷらざ」に連載している「世界史レッスン」をまとめた本だ。これではなんのことだか判らない人が多いだろうが、『怖い絵』の著者だといえばお判りになるだろう。80編ほどの歴史エピソード集なのだが、取り扱っているテーマはフランス革命をはさんで前後100年と狭くて濃い。マリー・アントワネットはもちろん、エカテリーナもピョートル大帝もナ

ときは第二次世界大戦、ところは北アフリカ戦線。イギリス軍の前に立ちはだかったのは、「砂漠の狐」の異名を持つ ロンメル将軍 率いる屈強のナチス・ドイツ軍であった。 そして、ここに愛国心に燃え上がる1人のイギリス紳士が立ち上がった。彼の名はジャスパー・マスケリン。名門奇術一家の出自にして、マジックの名手である。そう、566ページにも及ぶこの長編は、泣く子も黙るロ

日本の財政が逼迫しているのはご存知の通りである。日本はGDP対比で200%もの国債残高を抱えている。それも日本国債は、今まで国内消化率が95%を越えていたものの、最近の欧米通貨信任失墜によってだんだん外国人保有率が増えてきている。海外の投資家に今後も頼らざるを得ないのであれば、外国人投資家の要求を満たす為にはこのままでは金利を引き上げるしかない。あー、日本は

9・11から10年が経った。テレビに繰り返し映し出されるシーンはあまりに現実味に乏しく、ただただ呆然として画面を眺めていたことを思い出す。今年の5月2日にはアメリカによってウサマ・ビン・ラーディンが殺害され、ホワイトハウス前に集まり歓声を挙げるアメリカ人の姿が映し出されていた。彼が率いたアルカーイダはもちろんイスラームを代表する存在ではないだろうが、イスラー


ヌードルと言えばやっぱりラーメンだ。学生時代、研究室で煮詰まった時には皆でラーメンを食べに行った。時には先輩におごってもらった。自分が先輩になった時には、一緒にゲームをやってあげた。リラックスと言う意味では同じだ。それにしてもラーメンは随分とブランドになった。1000円くらいしても全然驚かない。ちょっとした贅沢っていうやつでしょうか。 著者のナイハードさんは

地震後に刊行されたエネルギー関連本で一番のオススメ。本書のタイトルに騙されてはいけない、本書の凄みはエネルギー論争の盲点を突くことではなく、人類とエネルギーの歴史を100ページ程にまとめていることだ。これだけ質の高い情報を得るのに777円は安すぎる。 本書の後半に書かれている政策提言の詳細は他のブログにお任せする( http://goo.gl/OTUhe )

冷戦が終わり共産主義・社会主義のイデオロギーが廃れる中、なぜ中国は現体制を維持できているのかとても不思議だったが、本書を読んで合点がいった。とても古典的ではあるが人事権の掌握が鍵だったのだ。 本書はこれまで秘密にされてきた中国の統治形態を暴く本であり、おそらく今後の中国研究論は本書をネタ本として議論がされていくだろう。中国に関心ある人や、今流行りの国家資本主
歴史はあまり詳しくない。高校の頃、授業中は寝ているか、図書室でアルバムを見ていた。おばちゃんがいつもピーナッツをくれた。もしくは部室でトランプなどをしていた。冬になり“近現代”まで来た頃には仲間も増えた。先生には当然見つかった。確か 『To-y』 を読んでいた時だったか、体育の先生が巡回にきて、気付かずにいた私から本をとり上げ、数ページ読み、「接吻ですか」と

歴史上の偉人の死は謎に包まれていることが多い。毒殺など人の手によって殺されたケースは言うまでもなく、病死したケースですら、複数の病気が候補に挙がり、他殺説も飛び交っているのが実情だ。これらの背景にあるのは、死までも偉人を偉人として扱いたい周囲の人間の思惑だろう。 本書は、アレクサンドロス大王からコロンブス、モーツァルト、エドガー・アラン・ポーなど歴史上の12

日本人は世界一の美術展好きである。2009年世界の美術展の入場者数ランキングでは、日本の施設が開催した特別展が、 上位4位までを独占 した。海外の有名美術館でも日本人観光客と遭遇するのはうなずけるが、なぜ欧米に日本・中国をはじめ東洋美術の名品が展示されているのか。メトロポリタン美術館、ボストン美術館をはじめ、そのコレクションはかなりの充実ぶりである。 そこで

黒船の圧力で日本が開港したのが1859年。当時の日本人貿易商は、外国銀行にたっぷりマージンをとられ、また外国海運会社に運賃を決められと甘い汁はほとんど外国に吸い取られていた。それではいかんと、大隈重信や松方正義たち明治政府が国策として日本人による貿易業務・金融業務・海運業務を推進。それに呼応するかたちで日本人の直貿易商が誕生し、生糸・茶・雑貨・陶器・古美術な
3月25日、今日は本来であれば2年間通った早稲田ビジネススクールの卒業式であった。 式は震災を考慮して中止となったが、卒業という一区切りを記念して、 恩師の内田教授がおすすめの本 をベースに書こうと思う。絶版という噂もあるが、そんなの誰も気にしないだろう。 本書は、南極横断に挑戦した英国人探検家シャクルトンと28人の隊員の、1914年から17ヶ月以上にわたる


近代以前、国家運営のコストは極めて抑えられていた。もちろん警察も例外ではなく、末端警察官は薄給にあえぎ、膨大な仕事に翻弄されていたという。 本書は、和洋を問わず、まずはそんな警察官たちの実態が語られる。江戸時代、薄給の下級官吏たる同心は、膨大な業務をこなすため、時代劇でおなじみの「目明し」や「岡っ引き」を雇う。薄給の同心が払える額はたかが知れているので、「目
