
『オペラと歌舞伎』 美の道楽
いきなり度胆を抜かれる文章から本書ははじまる。すこし引用してみよう。 さらに続けて もちろん、自嘲的な皮肉を込めたジョークである。しかし、たしかにオペラと歌舞伎をもつ日独伊は、英仏と異なり近代にいたるまで植民地をもたなかった。著者はその理由として という。たしかにその通りかもしれない。とりわけ日本人は江戸時代の長き平和のなかで芝居や色事にうつつをぬかし、黒船
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いきなり度胆を抜かれる文章から本書ははじまる。すこし引用してみよう。 さらに続けて もちろん、自嘲的な皮肉を込めたジョークである。しかし、たしかにオペラと歌舞伎をもつ日独伊は、英仏と異なり近代にいたるまで植民地をもたなかった。著者はその理由として という。たしかにその通りかもしれない。とりわけ日本人は江戸時代の長き平和のなかで芝居や色事にうつつをぬかし、黒船

学生時代にバックパッカーで世界各地を回ったが、西ヨーロッパは手つかずのままだ。西ヨーロッパはもう少し歳とってからでもいいや、と後回しにしてきた。社会人の今でも旅行先候補の中に西ヨーロッパはないが、興味は大有りだ。特に最近興味あるのはスペインのサン・セバスチャンである。英「restaurant」誌による「世界のベストレストラン」トップ10のうちの2軒ものレスト

30年以上前の大阪の料亭、「君」はパナソニック創業者松下幸之助、一喝したのは立花大亀、名経営者に遅れること5年、商人の街である堺に生まれた。大徳寺の住職として1899年から2005年まで3つの世紀にまたがって生きた、数少ない人物である。大徳寺は一休さんのモデル一休宗純が応仁の乱の後、寺の再興のため住職を務めたことでも有名で、利休の自刃する原因となった事件が起

コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授の著書、『選択の科学』は、おそらくHONZの読者にはおなじみに一冊だろう。この 成毛代表のレビュー を参照にしてほしいが、シーク教徒のインド系移民で、盲目の女性であるアイエンガー教授が、「選択」によって困難を乗り越えてきた自身の生立ちを語りつつ、「選択」にまつわる常識をくつがえすような研究事例をさまざま

本書は水文学の第一人者である著者による、何とも意外な水のほんとうの姿を教えてくれる、水文学の入門書である。水文学の研究対象は水にまつわる森羅万象であり、本書の範囲も経済、気候、災害等と多岐に渡る。これほど身近な水にこれほど知らないことが多いとは知らなかった。どうやら世の中には、水に関する“ほんとうではない話”が溢れているようだ。 石油、天然ガスやレアメタルは

たしかに”言ったもの勝ち”の世界ではあると思う。これまでにもHONZの朝会では、 こんな本 や こんな本 だって話題になってきた。しかし、そこで競い合うように示されてきた数字とは、桁が一つ違うのである。 誰だって長生きはしたいと思うのが、世の常であるだろう。そんな我々の寿命を2倍にも3倍にも、あるいは好きなだけ延ばせると確信している男 ― それが本書の主人公

著者は酒飲みの間では有名なあの大竹聡氏である。「ああ~」という声が聞こえてきそうなのは私だけだろうか。そんなことはない。居酒屋のオヤジたちは今の文部科学大臣を知らなくても大竹氏は知っているはずだ。JR中央線の各駅のホッピーを提供する店をマラソンと称して巡った名著『中央線で行く東京横断ホッピーマラソン』で酒飲み達の注目を集めたあの大竹氏である。酒飲みなら誰もが

本書は、2009年から2012年5月までの間に、ブログ『奈良美智の日々』に掲載された記事と、奈良さんがtwitterに投稿したコメントを元に加筆・修正した本だ。表紙になっている奈良さんの絵、ちょっとどこかで見覚えがあるのではないだろうか。 先週末から奈良さんの個展が横浜美術館で開催されている。テーマは、“ 君や 僕に ちょっと似ている ” だ。ビートルズの、

暗記科目の歴史が苦手というアナタに朗報。とにかく、東京大学の日本史の入試問題がたまらなく面白いのだ。 そこで問われるのは詰め込みで得られた知識でも、通り一遍の模範解答でもなく、ズバリ"考える力"。「選りに選りすぐったこの問題に、真っ向からかかってこい。」 「自分の頭で考え、自分の言葉で見事論破してみろ。」 どの設問からも、そんな出題者の声が聞こえてきそうな良

住居空間は生きる上でかなりの時間を費やす非常に重要なスペースだ。普段の生活も環境さえ整えば、住んでいる当人はとても豊かになっていく。デザインも日々進化しているのと同様に、住居もそれに伴い住んでいる人の用途に合わせて生き物のように変化していいはずだ。 2012年現在では単純に新しい空間がよいと思える時代は終わったのではないだろうか。これからは、すでにある空間や
惜櫟荘だより HONZでは小説の話題はほとんど出ないが、 佐伯泰英 という作家の名前は聞いたことがあるだろう。時代小説文庫書下ろしというスタイルを確立した大人気作家である。1999年から現在まで、著作数180冊あまり、累計部数4000万部という途方もない売り上げを誇っている。 本書は、佐伯が熱海に仕事場を構えたところから話は始まる。東京から車でも新幹線でも1

iPhoneにAndroid端末、モバイルwifiルータ、PCにタブレットと、大量の電子機器を持ち歩くことが多い。そのため、カフェや打ち合わせ先でしょっちゅう充電するはめに陥り、なんだか自分自身が充電式のロボットになったような気がしてくる。 そんなわけで、ちったぁ電池について知っておこうと思って手にとったのが本書。しかし、まあざっくり今の電池事情がわかればい

絶望的な困難にも挫けることのない現場、ぶれることのない決断を下すリーダー、プロジェクトを土壇場で成功に導くこととなる意外なきっかけ。「プロジェクトX」のような奇跡の物語には、こんなテンションの上がるプロセスが欠かせない。確かに、本書で描かれる奇跡にもそんな胸が熱くなる場面は登場する。しかし、本書で最も“奇跡的”なのは、過程ではなく、なによりもその結果である。

つい先日、話題になったヒッグス粒子発見の報。それを伝える紙面上で紹介されていた、物理学者・中谷宇吉郎のエッセイがずいぶんと印象的であった。 科学研究のやり方には警視庁型とアマゾン型の2種類がある。結果の目星がついていてその結果を得るための研究が警視庁型、研究対象の何たるかも分からぬまま秘境に分け入るのがアマゾン型――というものである。 1964年に存在が予言

「あれ?同じ本が立て続けにHONZに紹介されてる。なにかのミスか、はたまたHONZメンバーの共食いか。」と、思われた方もおられるやもしれませぬ。しかし、じつはどちらでもないのでございます。不肖、巻末に解説を書かせていただいたご縁から、文藝春秋(平成24年8月号)の『本の話』に、この面白本の紹介をさせていただくこととなりました。せっかくのことでもあり、その紹介

HONZサイトが開設してもうすぐ1年。仕事や家庭や髪型が劇的に変わったHONZメンバーは少なくないが、本の購入代金はともかく、本の趣味は各人、大きくは変わっていないのではないだろうか。本日紹介するのは、日本各地の被差別部落を追った『日本の路地を旅する』で一昨年の大宅賞を受賞した上原善広氏の新刊。私がHONZのレビュアー(正確には前身の「本のキュレーター勉強会

『日経サイエンス』8月号の特集は「太陽異変」である。黒点数が減りはじめていることは2010年あたりから ネット上でも話題 になっていた。この太陽の静かさは少なくとも百数十年ぶりだ。もちろん黒点数は太陽活動の結果であり、太陽の中では壮大な変化が起こりつつある。結論を急ぐとこれまで太陽は地球と同様、南極がS極と北極がN極に分かれているのだが、現在は南極・北極とも

本書によれば、誘拐事件は世界で毎年2万件以上報告されている。発生件数は過去12ヵ月で倍増した。今この時間にも、監禁されている人質が世界中に何百人もいる。そのうち当局に通報があるものは10分の1に満たない。70%は身代金の支払いによって解決する。力ずくで救出される割合は、わずか10%だ。身代金の要求額は5000ドルから1億ドルまで(1ドル80円換算で、40万円
2011年1月にスタートした「本のキュレーター勉強会」は、2011年7月19日から「HONZ」として本格的に活動しはじめました。本日現在HONZに掲載されているレビュー数は1011本。おかげさまで月間PV15万・UU5万のサイトに成長いたしました。レビューは紀伊國屋書店サイト、月刊『読楽』などにも定期的に掲載されています。 HONZとはメンバーが独自の視点で
仕事が忙しいと体調管理も難しい。朝会を誰よりも楽しみにしているはずの鈴木葉月が欠席したのは、ひどく体調を崩したからだったようだ。みなさんも健康にはご留意を。 さて2周目は学生諸君からのオススメ本から。 レポート地獄で欠席の 一色麻衣 。 図説 死因百科 この本は仲野をはじめ栗下、多分他のメンバーも触手が動いただろう。考えられない原因で人は死ぬ。笑ってばかりは

そもそもファシズムとは何か、というのは結構むずかしい。手法が強引な政治家あらばやたらファシスト呼ばわりもされたりするが、安易な使われ方は矮小化につながりかねないという気もする。どのような条件下でどういう状況が完成すれば「ファシズム」なんだろう。 本書においてファシズムとは「資本主義体制における一元的な全体主義のひとつの形態」だとして、「強力政治や総力戦・総動

ヤンキーをWikipediaで引くとこうなる。 確かに私も、なんとなくチンピラっぽい人のことをヤンキーと呼んでいる。今までの人生で、自分がなったことも付き合ったこともなく遠巻きで見ているにすぎなかった。しかし『世界が土曜の夜の夢ならーヤンキーと精神分析―』を夢中になって読むうちに、自分の中に眠っている「ヤンキー的日本人」(これも相当変な日本語だ)に否応なく気

驚愕の一冊である。老スナイパーの名は中村泰(ひろし)。1930年生まれのこの男、岐阜刑務所に服役中。しかし、この本のタイトルになっている1995年の国松警察庁長官狙撃事件による服役ではない。その罪状で訴追され、「救国」のために狙撃したことを世に知らしめたいという中村。しかし、自らの「救国」の行動により「チェ・ゲバラ」になりたかったというその夢はかなえらてはい
コモディティ戦争 〔ニクソン・ショックから40年〕 私たちの生活基盤となる食料やエネルギーなどのコモディティ価格はどこで決められているか? 答えは米国のニューヨークやシカゴ。 大豆などの穀物は、世界最大の取引が米国を通じて行われるので、シカゴで価格が決められるのは当然だ。しかし、金の世界最大の現物取引場は英国であるし、原油の世界最大の現物取引は中東であるにも
昨年7月15日にオープンしたHONZが、なんと1年持ちました。 それどころか読んでくださる方が増え、書き手のメンバーの気合も入りまくり。実は次に書く本をカレンダーに記入していくのが、常に2週間先まで満杯。 仕事が忙しくて書けないメンバーが代打を頼むと、すごい勢いで取り合いになっている状態だ。 ようやく出版業界や書店さんにも存在が認知されてきたようでうれしい限

「はじめに」で「ぼくがこの本でやりたかったのは、歴史の魅力を少しでもとらえて伝えることだ」そして「もっと多くの(そしてもっと良質の)歴史の本を読んでみたいという(読者の)好奇心に火をつけることだ」と著者は言う。その目論見通り、本書を読みながらネットや蔵書の間とウロウロしてしまい、読み終わるまでにやたら時間がかかってしまった。好奇心の対象が増えてしまったようだ

探検昆虫学者ーーなんと心惹かれる響きだろう。もう今すぐにでも仕事を辞し、自分もなりたいぐらいだ。 このかっこよすぎる肩書きは、別に著者が勝手に自分でつけたわけではない。英語で、Exploratory Entomologistといい、「生物的防除」(生き物を使って増えすぎた他の生き物を制御する)のために天敵となる昆虫を探す昆虫学者を、そう呼ぶのだそうだ。 著者

幼い頃にカブトムシやクワガタを捕まえてワクワクした経験なら、誰しも持っているものだろう。そんな昆虫界ではメジャーな両雄も、研究対象としては非常にマイナーな存在であるそうだ。理由は海外(特に西欧)で、全くと言っていいほど生息していないからである。 本書は、そんな知っているようで知らない昆虫たちの生態を、進化論的な見地から解き明かした一冊だ。 カブトムシが角をぶ

この数字は、100人の女子に対してどれだけの男子が生まれるかを表した出生性比と呼ばれる数値である。この数字が何を意味するかは、自然な状態での出生性比105と比べる必要がある。上記の中国の出生性比113と自然な出生性比の差はたった8であり、大きな問題ではないと思えるかもしれない。しかし、この比の差を具体的な人数に置き換えると問題の大きさが見えてくる。 本書で紹

2012年7月1日、じつに3年半ぶりに”うるう秒”が挿入された。朝8時59分59秒と9時00分00秒、この間に「8時59分60秒」という1秒が差し込まれたのである。 これは海流や季節風の影響で、世界の標準時として使われている原子時計の時間と、地球の自転に基づいて決められる天文時との間に生じるズレを調整するために行われているそうだ。 ズレると言っても、この53

よくぞここまでたどりついたものだ。 これは、本書の「あとがき」の最初の一文だ。読者はここで叫ぶ。「その通り!」。 もちろん読むのが大変なのではない。簡単に本の説明をしてしまえば、「コラムとは何か」から、書き出しや会話の入れ方、落ちや推敲、文体と主語にまつわることまで、コラムについてのもろもろがまとまっている。 版元であるミシマ社のホームページなどでオダジマさ

本書は、2001年から2007年にかけて『コンティニュー』誌に掲載された、ゲームクリエイターたちへのインタビュー集だ。全16回、1回のインタビューにつき2万文字を費やし、2段組み432ページで2200円、非常に読み応えがある内容となっている「永久保存版」だ。 ゲームへの熱い想いが語られる本、であり、インタビューする人も、される人も、根っからのゲーム好きだ。ゲ

非常に書評しにくい本である。編集者はHONZの身内とも言って良いハマザキカクだ。本人からの献本でもある。テーマがテーマだ。しかも「まえがき」では「本書の目的」は「本書では自殺について『問題』として『現象』としてとらえている」と宣言しているように、日本のおける自殺年表人名データベースなのである。 2473件の自殺を1880年以降10年毎に分章して収録してある。

先日何気なくつけたテレビで目にしたNHK番組「 仕事ハッケン伝 」には心底参った。職場体験者である芸人ザブングル加藤のミッションは、女子中学生向けのファッション誌「ニコラ」の編集を担当するというものだった。 加藤はいつにも増してカッチカチの険しい表情で、不慣れな仕事に懸命に取り組む。企画のネタだし、少女モデルへ流行の話題の聞き込み、写真撮影に誌面の割り付け検

マイブームではないが、いつも本を探す時に気になるワードがある。それを一度意識しだすと、不思議なことにその言葉を何度も目にするようになるのは私だけだろうか。 最近は「至福」という言葉だった。意味を調べると、単純に「幸せ」という言葉にも段階があり、中でも至福は最上位における愛で満たされている状態らしい。偶然にも本書を購入した後にそのキーワードは各所に入っていた。
最近ではちょっと下火になったが、一時期「自分探し」という言葉が流行った。「いまここにある私はあるべき姿ではなく、もっと素敵で知的で世の中に認められる自分がいるはずだ」という身勝手な主張を読むたび、いつも「ふふん」と鼻で笑ってきた。 しかし本当に自分が何者かわからない、ということはどんなに心細いものか想像がつかない。それも国家レベルの政策によって身分を剥奪され

二日連続で、殺人者本のレビューである。しかし、この本、すこしも「超速」レビューになっていないのである。すみません。遅れたのにはいささかの理由がある。以前、沢木耕太郎訳、というのにつられて、『 殺人者たちの午後 』という本を買った。英国での殺人者たちへのインタビュー集である。怖かった。最後まで読み切れなかった。そんな経験があったので、この本、出版されてすぐに購
冥王星を殺したのは私です (飛鳥新社ポピュラーサイエンス) カルフォルニア工科大学に、冥王星キラーの異名を持つ、マイケル(マイク)・ブラウンという天文学教授がいる。世界で初めて冥王星よりも大きな海王星以遠天体を発見し、「冥王星は惑星ではない」と天文学界で大論争を生んだ男である。2006年8月24日、遂に国際天文学連盟は、マイク・ブラウンの主張を受け入れ、冥王

「これは、私の書いた『東電OL殺人事件』を超える事件だ」と帯に書く佐野眞一、怒りに燃えた渾身の一冊である。その怒りが読む側にもひしひしと伝わってくる、死刑判決も記憶に新しい「首都圏連続不審死事件」、毒婦・木嶋佳苗についての本である。ワイドショー的事件はけっして嫌いではない。しかし、この事件だけは、何故か見聞きするのが忌まわしいような気がして避けていた。しかし

6月のHONZ朝会で高村和久が「今月読む本」の一冊として取り上げていたが先手必勝。超速レビューしてみよう。表紙を一目見て、論語を無理やりツイッター風味にし、現代日本の四方山を皮肉る、お手軽な風刺本であろうと思っていたのだが、意外にも違っていた。たしかにツイッター言語は生きている現代語だから、本書は正統な論語の現代語訳になっているのだ。 こういうやつって、なん