ノンフィクションはこれを読め!

アート・スポーツ

CATEGORY

326記事

『仏像: 日本仏像史講義』 日本彫刻史研究40年、渾身のライフワーク 書影

アート・スポーツ / 日本史

『仏像: 日本仏像史講義』 日本彫刻史研究40年、渾身のライフワーク

「概説を書くことが、学者の最大の義務である」という、著者があとがきで掲げた日本建築史の泰斗・太田博太郎先生の言葉がかなえられた、すばらしい一冊だ。日本彫刻史の研究に携わることおよそ40年という著者の山本氏。長年にわたる仏像研究の成果がまとめられている。説明も平易な記述で読みやすく、長年培われた仏教芸術や日本美術史への深い考察も随所にうかがえる。 ぜひ一度、本

『10・8』 - 日本プロ野球史上最高の一戦。 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『10・8』 - 日本プロ野球史上最高の一戦。

プロ野球が、本当の意味で国民的スポーツだった頃の記録だ。 1994年10月8日。セ・リーグのペナントレース最終戦、巨人vs中日。この日までに129試合を消化した両軍の戦績は、共に69勝60敗。勝敗数が全く一緒の同率首位でピタリと並んでいた。そして、残された最終戦。リーグ優勝の行方を決める運命のカードは、ナゴヤ球場での直接対決となったのだ。最終戦で、同率首位の

『アルプスを越えろ! 激走100マイル』新刊超速レビュー 書影

アート・スポーツ / 人物

『アルプスを越えろ! 激走100マイル』新刊超速レビュー

ツール・ド・モンブランという、山好きにはよく知られたトレッキングルートがある。シャモニーからシャモニーまで、約100マイル(168キロ)、累積標高差9400メートルという、いささか厳しいが、すばらしい景色のコースである。通常なら一週間ほどかけて一周するルートであるが、なんと、それを一気に駆け抜ける『 ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB) 』という、

『ロベルト・デュラン "石の拳" 一代記』 Born to Fight 書影

アート・スポーツ / 人物

『ロベルト・デュラン "石の拳" 一代記』 Born to Fight

この男ほど、長く闘い続けたボクサーは他にはいない。 この男ほど、多くの国民に愛されたボクサーは他にはいない。 そして、この男ほど、罵声を浴びせられたボクサーは他にはいない。 WBCウェルター級王座を賭けた シュガー・レイ・レナード との闘いを終え、祖国に帰ってきたロベルト・デュランに向けられた感情は、ねぎらいや感謝ではなく、怒りと憎しみだった。人々は彼を「弱

2035年、新ビジネスが生まれる場所『余剰ゴルフ場』 書影

生物・自然 / アート・スポーツ

2035年、新ビジネスが生まれる場所『余剰ゴルフ場』

ゴルフ場と持続可能性、この意外な組み合わせにそそられて、本書を手にすることになった。アリにも、野球にも、これっぽっちも興味を示さない成毛眞が、3月の朝会で、がっつり食いついた。 そして、本を読み漁っているHONZメンバーの、誰も聞いたことがないビジネスモデルを話し始めたのだ。その折に、ゴルフ場の墓地への転用という、これまたそそられる組み合わせが話題にあがった

『最後のロッカールーム』 に込められた明日への思い。 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『最後のロッカールーム』 に込められた明日への思い。

ロッカールームには、本当にあらゆるものがある。 夢。希望。挫折。苦悩。汗。涙。友情。信頼。時に怒号。そして感謝。 青春を彩るものたちは、いつだってそこに。 本書は、全国高校サッカー選手権で惜しくも敗れ去っていったチームの監督が、試合終了後のロッカールームで選手たちに語りかけたメッセージを集めたものだ。1971年(第41回大会)から中継を行っている日本テレビの

『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』 クイーンを犠牲にした世界チャンピオン 書影

アート・スポーツ / 人物

『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』 クイーンを犠牲にした世界チャンピオン

すべからく、天才は類まれなる努力の結果、生まれるものだと思っている。天才が天才であるのは、あることが好きで好きでたまらず、その好きなことだったらどれだけ練習しても、勉強しても飽き足らずに、身体の一部になるまで反復しなければ気が済まない、そういう精神力を持っていることだろう。天才の伝記は、凡人にとっては神話のようだ。どれだけ奇矯な人間であっても、どこか神々しい

至福の読書体験 『幻の楽器ヴィオラ・アルタ物語』 書影

アート・スポーツ / 世界史

至福の読書体験 『幻の楽器ヴィオラ・アルタ物語』

突然、「この本めちゃくちゃ面白かったです。ジャケ買いして一気読みしました」というメールがHONZ宛てに届いた。送付元は、以前にもメールのやりとりをしたことのある、大変な読書家でHONZを応援して下さっている心臓血管外科医の望月先生である。確かにソソるカバー。面白い本ならではの「匂い」が、表紙からすでに漂っている。しかも望月先生のご推薦とあらば、読まねばなるま

『ヒップホップの詩人たち』 地方からのリアルな言葉 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『ヒップホップの詩人たち』 地方からのリアルな言葉

音楽ソフト(CD、DVDなど)の売り上げ低下、アイドルたちに独占されるヒットチャート、若者の音楽離れ。音楽業界には悲観的なニュースが飛び交っている。日本ではもう新たな音楽は生まれていないのか、ぶつける先のない思いを音に託す若者はいなくなったのか。もちろん、そんなはずはない。 著者である都築響一は、今いちばん刺激的な音楽は地方から発信されているという。大手レコ

『IDOL DANCE!!! 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい』 書影

アート・スポーツ / 社会

『IDOL DANCE!!! 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい』

AKB48、ももいろクローバー、KARA、少女時代…2013年現時点でのエンタテイメント業界はその役者の揃いぶりからアイドル戦国時代とも呼ばれる。確かにPerfumeのライブは完成度も高く「アイドル=見習い」というイメージから逸脱している。単純に可愛く歌って踊るだけのプロトタイプのユニットは終焉し、これからは視覚的パフォーマンス、とりわけダンス部分がもっと重

ゆるり漫遊 万城目学『ぼくらの近代建築デラックス!』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

ゆるり漫遊 万城目学『ぼくらの近代建築デラックス!』

いままで隠していたが、じつは建築ファンである。たぶんノンフィクションと同じくらい好きである。であるから、もちろん建築系ノンフィクションもよく読むのであるが、なぜかこれまで紹介する機会がなかった。今回、満を持して-というほどのことはないけれど-紹介するのは、『 鴨川ホルモー 』や『 プリンセストヨトミ 』でおなじみの万城目学が、作家・門井慶喜といっしょに近代建

特殊撮影『ワンダー・フォトグラフィー』 書影

サイエンス / アート・スポーツ

特殊撮影『ワンダー・フォトグラフィー』

本書には2013年現在、最も高度な最新技術で撮影された画像が掲載されている。月刊 コマーシャル・フォト に連載された人気連載「特殊撮影見聞録」の4年間分をまとめて1冊に再編集したものだけあって、内容が濃密だ。 撮影ジャンルは最先端技術による宇宙撮影から限界ギリギリの深海、超望遠から超マクロ、X線や赤外線撮影に至るまで多岐にわたり紹介しており、超最先端画像のこ

名画にはワケがある 『構図がわかれば絵画がわかる』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

名画にはワケがある 『構図がわかれば絵画がわかる』

美術館で目にする名画はどれも個性的だ。セザンヌならリンゴ、ピカソなら女性(美女?)とお決まりのモチーフが複数の作品に繰り返し登場する。単に写実的かという観点から見ると、素人目には必ずしも上手いとは言いがたいものも見受けられる。 言わば「ヘタウマ」の彼らの作品だが、決して他人は真似できない。そして、じっと見ているとなぜか感銘を受けてしまう。一体その感動の源泉は

手づくり印刷『レトロ印刷の本』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

手づくり印刷『レトロ印刷の本』

オフセットなど印刷技術が発達したおかげで、今ではポスター・チラシ・名刺など業者に発注すれば美しく仕上がる。ところが、この流れとは全く逆に進むやり方があった。 大阪にある印刷会社「レトロ印刷JAM」が提案するレトロな風合いを可能とする「レトロ印刷」。この印刷方式だと色落ちはする、裏面には透ける、精密な写真の描写もできないなど多くの制限があるのだが、その代わり一

勝負を制する「反撃」のセオリー 『カウンターアタック』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

勝負を制する「反撃」のセオリー 『カウンターアタック』

大相撲の白鵬関が真の横綱相撲の理想を示すものとして語った「後の先」(ごのせん)が、ひと頃メディアでも話題になった。一見、相手の攻撃を許しているかのように見えて、実はその攻撃を受ける中で巧みに相手を制する形に持っていくという、高度な技の体系だ。 相手にどんな仕掛けを打たれてもいつの間にか自分の型に持ち込み、当たり前のように勝つ。常勝の秘訣はカウンターアタックに

著者インタビュー『父と息子のフィルム・クラブ』デヴィッド・ギルモア “映画は最高の先生だった”≪新潮45 2012 12月号掲載≫ 書影

アート・スポーツ / 社会

著者インタビュー『父と息子のフィルム・クラブ』デヴィッド・ギルモア “映画は最高の先生だった”≪新潮45 2012 12月号掲載≫

世界中が中二病に悩んでいる。思春期の少年を持て余し、どうしたらいいか途方に暮れている親御さんも多いだろう。同じ悩みを共有し、多くの同感を得て24か国語に翻訳された『父と息子のフィルム・クラブ』の著者にインタビューの機会をいただいた。HONZ 内藤順のレビュー とミステリマガジン12月号に書いた 私のレビュー を先に読んでいただくと解りやすいだろう。

『少女系きのこ図鑑』新刊超速レビュー 書影

アート・スポーツ / 新刊超速レビュー

『少女系きのこ図鑑』新刊超速レビュー

どうやら世の中ではきのこブームがおきているらしい。水玉模様のきのこグッズなどに女性はかわいい!の声をあげ、なめこを育てるゲームに熱中し、のキャラクターグッズをたくさんの人が買い求めている。また、きのこの山と、たけのこの里による争いの話は鉄板ネタになっている。( 『出ない順 試験に出ない英単語』のレビュー でもこの話題が出ていた。) 自分の周りにも、きのこ好き

『「黄金のバンタム」を破った男 』 ファイティング原田のいた時代 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『「黄金のバンタム」を破った男 』 ファイティング原田のいた時代

63.7%。この数字は1966年に打ち立てられてから、今でも塗り替えられることのない、ボクシングのテレビ放映における歴代最高視聴率である。日本最長の13連続防衛を達成した“カンムリワシ”具志堅用高も、日本最速(当時)の8戦目で世界王者となった“浪速のジョー”辰吉丈一郎も、本書の主人公ほどには日本全土を熱狂させることはできなかった。 その日本史上最も注目を集め

NO PHOTO

アート・スポーツ / 新刊超速レビュー

『世界で勝たなければ意味がない』 - 新刊超速レビュー

世界で勝たなければ意味がない―日本ラグビー再燃のシナリオ (NHK出版新書 392) 私は心の中で、7年後の長期休暇を予約している。 理由はもちろん、オリンピック、サッカーW杯に続いて世界で3番目に規模の大きい国際的なスポーツイベントが、ここ日本で開催されるからだ。 そう、2019年はラグビーワールドカップ日本大会なのだ。 日本ではあまり知られていないが、ラ

『昭和天皇のゴルフ』 - 芝生に刻まれた昭和の歴史 書影

アート・スポーツ / 人物

『昭和天皇のゴルフ』 - 芝生に刻まれた昭和の歴史

球史に残る昭和天皇のエピソードといえば、1959年に天覧試合として行われた巨人ー阪神戦を思い出される方も多いだろう。9回裏、先頭バッター長嶋のサヨナラホームランで幕を閉じたこの試合は、プロ野球人気を決定づけた出来事として、あまりにも有名である。 だが同じ球技でも、ゴルフと昭和天皇の関わりについてご存知の方は、あまり多くないだろう。しかも若かりし頃の趣味であっ

『芸術家たちの臨終図鑑』死から読み解く西洋絵画 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『芸術家たちの臨終図鑑』死から読み解く西洋絵画

私には西洋美術の素養がまったくない。ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、マネ、モネ、ルノワール、シャガール、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ……。どれも名前くらいは聞いたことがあるが、彼らの代表作は?と聞かれて即答できるものはほとんどない。さすがにダ・ヴィンチのモナリザくらいは知っているが、ルノワールっていいよね。と言われたら、あぁ、あの喫茶店いいね。とい

脱力系講義『ヘンな日本美術史』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

脱力系講義『ヘンな日本美術史』

タイトルに「ヘンな」とあるように、ちょっと変わった美術本だ。 アートに興味を持つ人ならば、表紙でピンとくるかもしれない。帯の上を眺めると、絵師であろう様々なおじさん達が絵を描いているが、タッチが柔らかいせいか、みんな楽しそうで宴会のようにも見える。なんだか最初から力が抜けている。その奥でムム!っと唸っている男性がひとり。本書の著者である。 著者は画家の 山口

NO PHOTO

アート・スポーツ / ビジネス

過激なる常識論 『創造力なき日本』

創造力なき日本 アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」 (角川oneテーマ21) 村上隆は単なるクリエイターではない。「カイカイキキ」というアート集団をまとめあげ、そのサステイナビリティーを追求する経営者でもある。『芸術闘争論』で垣間見せたその一面を、若手を育てるという観点から論じた一冊だ。タイトルは『創造力なき日本』になっているが、『世界を相手にする芸

『オーケストラは未来をつくる』クラシック音楽界のイノベーション 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『オーケストラは未来をつくる』クラシック音楽界のイノベーション

サンフランシスコ交響楽団、今一番注目を集めているオーケストラだ。 楽団の自主レーベル「 SFSメディア 」が制作したマーラー交響曲全集は7つのグラミー賞を受賞。世界中から旬なオーケストラを集めるスイス・ルツェルン音楽祭にも近年継続出演。さらに昨年はクラッシック音楽の本場ウィーンにてアメリカのオーケストラとしては異例の四公演を行った(通常は二公演)。今まさに旬

『アートでみる医学の歴史』 新刊超速大阪弁レビュー 書影

医学・心理学 / アート・スポーツ

『アートでみる医学の歴史』 新刊超速大阪弁レビュー

買(こ)うてや、買うてやぁ~! 安いで安いでぇ~。なんと、こんだけ大きいて立派な本が5千と7百円っ! 税金入れても、6千円で15円のおつり。え? 6千円もする本は高いて? アホなこというたらあかんがな。ものを買うかどうかは、値段で決めたらあかん。値打ちで決めなあかん。学校で習わへんかったんかいな。うそ言わへん。こんだけの本が6千円でおつりっちゅうのは、びっく

『ピカソは本当に偉いのか?』新刊超速レビュー 書影

アート・スポーツ / 新刊超速レビュー

『ピカソは本当に偉いのか?』新刊超速レビュー

ピカソの代表作とされる絵画の前に立たされた時に多くの人が持つ疑問、 1.この絵は本当に美しいのか?(どこが上手いのか?) 2.見る者にそう思わせる絵が、どうして偉大な芸術とされるのか? 3.かりに偉大な芸術としても、その絵にどうしてあれほどの高値がつくのか? さらに 4.ピカソのような絵であれば、誰でも描けるのではないか? 5.そういう絵を偉大とする芸術とい

『測って描く旅』新刊超速レビュー 書影

アート・スポーツ / 新刊超速レビュー

『測って描く旅』新刊超速レビュー

書名には、著者や編集者たちの色々な思いが込められているのだろう。その思いの丈は、ハッと驚くタイトル、ついつい手に取りたくなるタイトル、そして、二匹目どころか五匹目くらいのどじょうを狙ったタイトルが書店に溢れていることからもうかがい知れる。 本のタイトルは様々であるが、その最も大切な役割は、その本に何が書かれているかを伝えることではないか。「書籍の内容を伝える

『チャンピオンズリーグの20年』ビジネスとしてのフットボール 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『チャンピオンズリーグの20年』ビジネスとしてのフットボール

ヨーロッパのクラブNo.1を決める戦い。それがUEFAチャンピオンズリーグ(以下CL)である。いまやワールドカップを凌ぐほどの地位と名声を得ており、世界中のフットボーラー憧れの舞台となっている。 ヨーロッパ各国のトップチーム同士の対戦は、いままで数多くのドラマを生みだしてきた。そして信じられないような奇跡が起きるのもチャンピオンズリーグの魅力である。まずは私

『日本最強馬 秘められた血統』 オルフェーヴルが詰めた20馬身 書影

アート・スポーツ / ビジネス

『日本最強馬 秘められた血統』 オルフェーヴルが詰めた20馬身

最後の直線で大外から並ぶ間もなく先頭に立ったとき、誰もが確信したはずだ。「勝てる」。それほど脚色は違った。あとはどれだけ2着以下を突き放すのか。競馬の世界最高峰のレースのひとつである凱旋門賞。日本馬が挑み始めて43年。日本競馬界は悲願の頂に登ろうとしていた。その10秒後にまさか「ぐおおおおおおおお」と声にならない叫びをあげるとは今となっても信じられないが。

文化を牛耳る『平山郁夫の真実』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

文化を牛耳る『平山郁夫の真実』

2009年に他界した平山郁夫といえば、東山魁夷、岡本太郎と並び日本で最も高名な画家の一人として知られる。本人の絵を飾っている方もいるかもしれない。 国内において一番知名度があり、値段が高く、画壇ヒエラルキーの頂点にいた事実でいえば「平成の国民的画家」は間違いなく平山郁夫だろう。なにより「芸術家は貧乏だ」という常識を覆す美術界のモンスターだった。 平山自身は画

『「弱くても勝てます」』 超進学校の「異常な」セオリー 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『「弱くても勝てます」』 超進学校の「異常な」セオリー

いきなり言い訳になってしまうが、高橋秀実作品の面白さをレビューで伝えるのは、実は難しい。構成は徹底的に練られ、すべての章、すべての文が有機的につながっていて、その一部を取り出したところで、本全体が醸す、なんともいえない、そこはかとない面白さを伝えることができず、もどかしい気分になる。 なので、こう書くしかない。本書はとびきりに面白い。近年の作品の中では、一番

『中国と 茶碗と 日本と』 文系的センス・オブ・ワンダー 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『中国と 茶碗と 日本と』 文系的センス・オブ・ワンダー

四川省に生まれ、四川大学で日本文学を勉強した著者は、さらなる日本文化の研究のために来日し、日本の大学で修士号、博士号を取得した。異国の地で、異国の言葉で、異国の文化についての本を上梓するほどにまで、この中国人女性研究者を駆り立てたのは、日本の生活を通して感じ続けた感嘆と疑問である。 来日して初めての正月、彼女を驚かせたのは友人に振舞われた 屠蘇酒 (とそしゅ

『朽ちる鉄の美』 書影

アート・スポーツ / 新刊超速レビュー

『朽ちる鉄の美』

鉄は朽ちる。特に日本のように湿度の高い土地では少し油断するとたちまち錆が生じ朽ち果てる。本書は朽ち果て行く鉄の道具を集めた写真集である。 鉄の美を語る上でよく引き合いに出されるのは日本刀である。本書には日本刀は登場しないが、日本刀にも錆を鑑賞する部分がある。それは茎である。日本刀の刀身は木製の柄にはめ込まれており、目釘という竹の釘で固定されている。目釘を抜き

歴史とリンク『二十世紀美術1900‐2010 (ワードマップ)』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

歴史とリンク『二十世紀美術1900‐2010 (ワードマップ)』

本書は美の歴史100年を俯瞰したものだが、冒頭のワードマップに驚いた。その年表は世界の出来事と、アーティストの登場/主義と歴史がディケイド(十年)ごとに分けて整理している。ありそうで見た事がなかった。すでに〈ワードマップ〉シリーズではロングセラー『現代美術─アール・ヌーヴォーからポストモダンまで』(1988年)があるが、半世紀経過した今のタイミングで改良し本

『トヨタがF1から学んだこれだけのこと』プロジェクトマネージャー必読書 書影

アート・スポーツ / ビジネス

『トヨタがF1から学んだこれだけのこと』プロジェクトマネージャー必読書

2009年末、トヨタ自動車は苦渋の決断を下した。10年以上手塩に育て、優勝まであと一歩のところまで成長したトヨタF1チームを解体することを決めたのだ。F1撤退の記者会見にて見せた豊田社長の険しい顔、隣で悔し涙を流す山科専務の姿は記憶に新しい。 トヨタがF1に参戦したそもそもの発端は、1997年6月11日に奥田碩社長(当時)が発した「F1はどうだ?」という一言

『HOUSE VISION』21名+12社の描いたちょっと先の家 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『HOUSE VISION』21名+12社の描いたちょっと先の家

都市の暮らし方の新しい常識を構想している研究会がある。その名は「 HOUSE VISION 」、長野オリンピック開会式のプログラム、愛地球博の公式ポスターなど日本の文化に根ざした仕事を行ってきたデザイナー原研哉が発案した。HOUSE VISIONは多様な技術産業の交差点に「家」がある考え、「家」から新しい日本の産業ビジョンを構想する壮大なプロジェクトである。

『OPEN』 - 悲痛で、そして甘美な英雄アガシの半生 書影

アート・スポーツ / 人物

『OPEN』 - 悲痛で、そして甘美な英雄アガシの半生

想像してみてほしい。 産まれて間もない息子が眠るベビーベッドの上からテニスボールのモビールを吊るし、息子の右手に卓球のラケットをくくりつけて「ボールを打ってごらん」と語りかけたというテニス狂の父親に育てられ、テニスをしたいかと誰からも問われることのないままに、テニスが人生そのものとなっていった少年のことを。 わずか7歳にして、「ドラゴン」と名づけられた改造ボ

『師』 メダリストに一流の恩師あり。 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『師』 メダリストに一流の恩師あり。

ロンドン五輪の熱狂覚めやらぬ中、銀座で行われたメダリストのパレードには50万の観衆が駆けつけた。史上最多の38個のメダルを獲得した五輪のヒーロー・ヒロインたち、真剣勝負の険しい表情も凛々しいが、晴れやかな笑顔も見ていて気持ちが良いものだ。 栄光の勝利、そして歓喜の渦の中にあっても、天才アスリートは自分を支えてくれた人々への感謝の言葉を欠かさず口にする。彼らは

『Encyclopedia of Flowers–植物図鑑』 新刊超速レビュー 書影

アート・スポーツ / 新刊超速レビュー

『Encyclopedia of Flowers–植物図鑑』 新刊超速レビュー

書棚に置いておくべき本がある。人生のときどきに読み返したくなる本はもちろんだが、書棚の持ち主の問題意識やセンスを一瞬で感じ取れるような本もある。ボクにとって前者の究極は『ご冗談でしょう、ファインマンさん』であり、問題意識という意味での一冊はセバスチャン・サルガドの『Workers』だ。この軽いエッセイと重い写真集の2冊があれば、目の前に高い壁が見えてきても勇

『オペラと歌舞伎』 美の道楽 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『オペラと歌舞伎』 美の道楽

いきなり度胆を抜かれる文章から本書ははじまる。すこし引用してみよう。 さらに続けて もちろん、自嘲的な皮肉を込めたジョークである。しかし、たしかにオペラと歌舞伎をもつ日独伊は、英仏と異なり近代にいたるまで植民地をもたなかった。著者はその理由として という。たしかにその通りかもしれない。とりわけ日本人は江戸時代の長き平和のなかで芝居や色事にうつつをぬかし、黒船