
『NARA LIFE』 -君と僕はちょっと似ている
本書は、2009年から2012年5月までの間に、ブログ『奈良美智の日々』に掲載された記事と、奈良さんがtwitterに投稿したコメントを元に加筆・修正した本だ。表紙になっている奈良さんの絵、ちょっとどこかで見覚えがあるのではないだろうか。 先週末から奈良さんの個展が横浜美術館で開催されている。テーマは、“ 君や 僕に ちょっと似ている ” だ。ビートルズの、
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本書は、2009年から2012年5月までの間に、ブログ『奈良美智の日々』に掲載された記事と、奈良さんがtwitterに投稿したコメントを元に加筆・修正した本だ。表紙になっている奈良さんの絵、ちょっとどこかで見覚えがあるのではないだろうか。 先週末から奈良さんの個展が横浜美術館で開催されている。テーマは、“ 君や 僕に ちょっと似ている ” だ。ビートルズの、

先日何気なくつけたテレビで目にしたNHK番組「 仕事ハッケン伝 」には心底参った。職場体験者である芸人ザブングル加藤のミッションは、女子中学生向けのファッション誌「ニコラ」の編集を担当するというものだった。 加藤はいつにも増してカッチカチの険しい表情で、不慣れな仕事に懸命に取り組む。企画のネタだし、少女モデルへ流行の話題の聞き込み、写真撮影に誌面の割り付け検

マイブームではないが、いつも本を探す時に気になるワードがある。それを一度意識しだすと、不思議なことにその言葉を何度も目にするようになるのは私だけだろうか。 最近は「至福」という言葉だった。意味を調べると、単純に「幸せ」という言葉にも段階があり、中でも至福は最上位における愛で満たされている状態らしい。偶然にも本書を購入した後にそのキーワードは各所に入っていた。

前日の書評がドイツ一色、そしてEURO2012でもオランダを破り、連勝中で絶好調のドイツ。験を担いで、僕もドイツからスタートしたい。世界最大の物流会社DHLを傘下に収めるドイツポストが来る2050年に向けて5つのシナリオを考えている。 シナリオ1: 暴走する経済‐迫り来る崩壊(1:37-) シナリオ2: 巨大都市における超効率化(2:10-) シナリオ3:

「たけしの誰でもピカソ」の北野武さんは、以前アーティストについて「芸がよければ王様ですら言うことを聞く」と言っていた。ヨーロッパの宮廷には王の側近に道化がいた(宮廷道化師)。城の中にはイエスマンしかいないので、道化はその組織と制度に属さず、一歩離れた視点から国や王の行動を観察し、冗談を装いながら批判し、時には王をいさめていた。これは豊臣秀吉に対する千利休と同

「アート」とか「味」という類の言葉は結構便利で、世の中の大部分はそれでどうにかなってしまう。それらを口にさえすれば、え?と思うようなものも、え?と思う側の人を無粋にしてしまう、なんとも魔法のような言葉でもある。 本書は以前、芸術新潮に掲載されていた「股間若衆」と「新股間若衆」の連載と、追加で書き下ろされた「股間漏洩集」が纏められ単行本となったもので、日本の近

プロ野球のエースといえば、誰を思い浮かべられるだろう。古くは沢村、そして、金田、村山、江川、鈴木、佐々木、野茂、ごく最近ではダルビッシュ。年齢と時代によってそれぞれに自分のエースがいるに違いない。わたしにとってのエースはなんといっても江夏である。オールスターゲームでの9連続奪三振、延長11回を投げきって自らのサヨナラホームランで仕上げたノーヒットノーラン、そ

長かった冬もようやく終わり、東北にも春が訪れたようだ。この冬は、いつにも増して寒く雪が多かったと聞く。東日本大震災から1年以上経過しても、多くの仮設住宅に住んでいる方は、ほっと胸を撫で下ろしているのではないか。しかし今度はまた暑い夏がやってくる。 2004年から2007年にかけて、水害や中越地震、中越沖地震に見舞われた新潟県では多くの人々が仮設住まいを余儀な

野球についての客観的・統計的な研究。ビル・ジェイムズという一人の野球ファンによって提唱され、アメリカ野球学会の略称であるSABRと測定を意味するmetricsからその名がつけられている。当初は好事家の間の趣味として広まったが現在ではMLBの多くの球団が専門家を雇い入れ、チームの運営に活用している。 ところ変わって日本プロ野球。本書はセイバーメトリクスを日本プ

サッカー日本代表で「海外組」という言葉がある。普段はJリーグではなく「海外」のチームでプレーしている選手たちだ。この場合の海外とはドイツやイタリアなどサッカー先進国を指す。つまり、国内よりも確実にレベルが高いリーグで戦う彼らに対する敬意がこめられているのだろう。この本もある意味「海外組」に焦点を当てた本だ。ただ、本書の「海外」はベトナムやマレーシア、アルバニ

1997年1月、成田空港。ここに1人の28歳の男がいる。彼の名前は濃野 平(のうの たいら)。出発前の混み合うロビーで、大勢の行き交う旅行者を眺めている。彼も日本を発つ目的があったが、他人に話せる自信がなかった。誰一人として、まじめに受けとってくれるとは思えなかった。家族や友人たちにさえ、数ヵ月ほどヨーロッパ旅行に行って来ると告げていた。要は、笑われるのが怖

図版のある本が大好きなので、本屋ではいつもチェックしているのだが、HONZに参加する事でさらに輪をかけて調べるようになった。今回はその中でも上位に属する「鳥系の本」だ。 私は都内の大学に入学する迄は田舎で育ったので、周りは田んぼと山ばかりだった。子供の頃、そんな景色の中で大きな鳥を見れば「あれは鷹だ!」とか言い張っていたが、実際はトンビだった。同じように高い

2010年、ニューヨークのクーパー・ヒューイット国立デザイン博物館は「なぜ今デザインなのか」展を開催した。本書はそこで展示された製品やプロジェクトをまとめたものである。この展覧会はデザインがいかにして環境保護や社会の平等などを後押しできるかを提示した。 たとえば、米国でデザインされた籐や竹で作られたリアカーがある。変形させて椅子になることも、鶏や水を運ぶため

色の本については、HONZ朝会で頻繁に話題になっていたが、またまた面白い本を発見した。 本書は一見、図説系資料本と思いきや、脳生理学による科学的根拠に基づき、色の原理を解き明かしている。特定の色を見た時、それから引き出される生理現象、刺激部位、分泌物、効果を解説している。なので、例えば30代を過ぎて魅力をもっと出したい人には、ファッションに活用していくのはど

デザイン、幾何学、生物学に共通する内容をグラフィックデザインを学ぶ生徒に教えるために作られた本である。著者は教育の過程でデザイナーが幾何学的構図を理解していないがため、優れたコンセプトが台無しになる過程をたくさん目にしてきた。 幾何学的構図を理解するとはどういうことだろうか?本書で行われている解析を真似して試してみた。事例はtwitter。 twitterは

「そりゃそうだ」とタイトルでスルーしてしまいそうな本だ。しかし一読してびっくり。これから親になる人や小さな子供を持つ親は必読である。 本書は深代千之とスポーツジャーナリストの長田渚左の対談で話が進められる。深代は東大大学院の教育学教授。力学・生理学などの観点から身体運動の理解と向上を図る「スポーツバイオメカニクス」の第一人者である。以前『 運動会で一番になる

ロベール・クートラス(1930~1985)という画家は生前、現代のユトリロと評されていた。フランス存命中にも熱心なファンがいたものの、美術界で光があたる評価はあまりされなかった。しかしその作品達が没後四半世紀を経て、現在故郷パリから遠く離れた日本で注目をあびている。 舞台はフランスなので、物語にはパリの町並み、アルザス、ブルターニュのカテドラルなどが背景であ

美術館の作品にはそれぞれ物語があって、それを個々に全体に表現するというのがキュレーターの本来だろう。その場に行けば作品と空間を共有することはできる、しかし、時間は容易に共有できない。作品の生い立ちを紹介する方法によって、つまり、物語の表現によって、作品の見え方が変わる。私という個人を誰かが紹介するようなものだ。美術に限った話ではない。これからは、背景となる情

今日の「新刊ちょい読み」は、芥川賞でも直木賞でもなく、小学館ノンフィクション大賞の受賞作品をご紹介。 時を遡ること40年前の1972年、アジアで初めての冬季オリンピックが札幌の街で開催された。このオリンピックには、台湾という国が宿命のように背負い続けてきた苦難と、激しい政治的抗争の爪痕が刻まれていたのだという。 オリンピック開催の前年、台湾が国連を脱退した。
出版社/集英社インターナショナル 我那覇和樹。サッカーに興味がある人ならば聞いたことがある名前だろう。5年ほど前、彼はサッカーサークルの中心部にいたはずだ。2006年、我那覇は輝いていた。サッカーJ1リーグの川崎フロンターレに所属していた彼は、その年、リーグ戦32試合で52本のシュートを放ち、18得点を挙げた。ゴール数は日本人最多、シュート決定率は35%で外

年末恒例の"来年こそはシリーズ"の中で買ったものなのだが、年が変わると気も変わるもので、すっかり放り出しそうになっていた一冊。まあ人間には、向き不向きというものがありますからね。 しかし本書を少し読み始めると、自分の走る走らないはさておき、十分に楽しめる一冊であるということが分かった。古今東西の「走り」の歴史が一望できる、壮大な文化人類史となっている。 なぜ

気のおけない仲間との音楽談義は楽しいものだ。知人の部屋に上がり込んで自慢のコレクションを物色しつつ、あるいは銘々がとっておきの名盤や珍演奏を持ち寄り、聴き比べては悦に入る幸福。 音楽は万人の前に等しく微笑みかける。本書で小澤征爾と村上春樹がくつろいで語らい合う様子からも間違いなく言えるのは、二人もマエストロと小説家である以前に、我らと同じ音楽愛好家だというこ

昨今の美術館は、どこも休日は大人気で鑑賞者で一杯だ。都内の根津美術館などは平日でも込み合っているし、伊藤若冲の展示を観るため東京国立博物館まで足を運んだ事もあったが、最終日という事で館内は満杯で鑑賞どころではなかった。そんな経験から、晴耕雨読ではないが人の少ない雨の日を狙って、美術館に行く事に決めた。入場すれば白い壁に囲まれ、天井の高い部屋に入り、日常と切り

フィリップ・ボールが、完全に量産体制に入っている。「自然が作り出す美しいパターン」三部作の『 かたち 』『 流れ 』、年明けに発売される『枝分かれ』。その合間をぬって『音楽の科学』ときた。それにしても1年間に4冊の本は、なかなか出せるもんじゃない。 それはさておき、本書『音楽の科学』は、心して掛かった方が良い一冊だ。なにしろ全620頁による圧巻のボリューム。

ロンドン五輪の開幕まで300日を切った。ヨーロッパでの夏季オリンピック開催は1992年のバルセロナ以来、実に20年ぶり。経済でのどたばた劇が続くヨーロッパへのカンフル剤となるだろうか。ちなみに、ロンドンでの開催は1908年、1948年に続く3回目であり、これは同一都市開催の最多記録である。 室伏宏治復活の金メダルと織田裕二の絶叫ぶりに沸いた世界陸上、「なでし

久々にジャケ買いした一冊。勝新太郎と言われても、子供のころに記者会見で見たキテレツなイメージしか残っていなかったのだが、表紙の写真に「おいっ」と呼び止められた気がして思わず購入した。読み進めて素顔を知るにつれ、そのイメージは驚きへと変わっていく。 著者は、勝新太郎の最後の「弟子」と称される人物。かつて、勝新太郎が週刊誌で人生相談をしていた時の編集者だ。勝新太

アイ・ウェイウェイの名前はそこまで日本では浸透していないだろう。艾未未、日本語読み(がい びび)中国読みで(アイ・ウェイウェイ)という彼は現代美術家・キュレーター・建築家・詩人・都市計画家であり、父であるアイ・チンは1930年代のパリでアートを学んだ詩人である。父アイ・チンはランボーやボードレールといった詩人の影響を受け、中国に帰国した後は最高の現代詩人と称


タイトルからして何やら怪しい内容だが、あなた様が想像しているものとはきっと違います。 田中 泯はダンサーであり、舞踏(ぶとう)の人物だ。 舞踏は日本で発祥し、半裸で踊るスタイルである。疾走する身体というよりむしろ動かなかったりする。しかし死を匂わせる静止した動作かと思いきや、いきなり生に執着する表情をとり、口を全開させた呼吸音が胸に響く。その支離滅裂な行為に

先日、学校でサッカーをして帰ってきた小学校1年生の息子に、「今日本が世界で一番強いんでしょ」と聞かれた。「もちろん」と力強く答える私。 そう、2010年10月8日、サッカー日本代表A代表は、世界の頂点に立った。 1998年、アルゼンチンを相手に日本サッカー史上初めてのタイトルマッチに挑み、0-1で退けられて以来、フランス、スペイン、オランダと三度の世界戦に敗

運動不足の人が本当に多い世の中だ。 デスクワークでパソコンの仕事をする人は、ほとんど目と指と大脳以外は動かしていない。両手をポケットにつっこんで歩いている人は、手は動かさず、足の前後運動だけで前に進もうとしている。そして現代人は、そこまで動いてないのに時間がきたら3食きちんと食べようとする。それでは病気になるのもあたりまえだ。 私もひとつの作業に没頭してしま

プロ野球のペナントレースも、いよいよ大詰め。今年のセ・リーグはヤクルト、中日が頭一つ抜けるも団子レース、パ・リーグはソフトバンクで決まりか。セ・リーグが団子レースになっているのは、交流戦の影響が多分にある。昨年に引き続き、二年連続でセ・リーグがパ・リーグに大きく負け越しているからだ。少ないパイを奪い合っていれば、必然的に団子レースにもなる。昔から「人気のセ、
著者の本職は分子生物学者だが、昨今最高の美文家の一人でもある。本書でもその才能はいかんなく発揮され、「ニューヨークの振動」という文章の冒頭などは、一篇の詩として自立して余りあるほどである。本書は絵を見る目においても才能をもつ著者が、フェルメールの絵を鑑賞するためにオランダ、米国、フランス、英国、ドイツ、オーストリアを4年間かけて巡った美術紀行だ。 それぞれの

チェリスト、青木十良が88歳のときから録音を始めたバッハの 無伴奏チェロ組曲 を聞いたときの驚きは忘れられない。 艶やかで密度の濃い音楽だけが、ある。そして90歳代に入ると、もはや「音」だけしかない、という境地に至る。まわりのすべてのものが消えて、世界に音しか存在しなくなる、と言ってもよいかも知れない。そして、透き通るようでありながら「存在感そのもの」ともい

先ごろ、岩手県平泉が世界文化遺産、小笠原諸島が世界自然遺産に認定され、地元は大変な喜びようであったことは記憶に新しい。さらに「世界記憶遺産」に山本作兵衛の炭鉱画が選ばれ、昨日、認定書が田川市に届いたというニュースが入った。 実はユネスコの世界遺産のなかにこのようなジャンルがあることを初めて知った。聞けば「アンネの日記」や「ベートーベンの第9草稿」、「フランス



版画家・藤牧義夫。美術史においてさして有名な作家ではないが、本読みの方なら、もしかしたら洲之内徹のエッセー、『気まぐれ図書館』シリーズの「中野坂上のこおろぎ」、「夏も逝く」、そして同シリーズの絶筆となった、「一之江・申孝園藤牧義夫」で取り上げられた版画家として覚えている人もいるかも知れない。 本書は、その洲之内も登場し、夭折の芸術家・藤牧義夫の謎を追ったノン
モノを創る人、直す人はもちろん、使う人にもおススメ 1981年~1982年の連載、1999年から2002年の連載をまとめたものであるが、その内容は決して古くない。是非書店で本書を手にとってそのイラストを見て欲しい。きっと買いたくなるはず。 「復旧」でなく「復興」を、という言葉を目にすることが多くなった。復興のためには、これから沢山のものを直さなければならない

科学ノンフィクションを除いて、日本のノンフィクションは、世界的に見て非常に優れていると思う。 一般書であっても、取材によって得られた事実や史料の扱い方が誠実で、読者が作品の背後にあるそれらの事実まで、リアルに届くことができるからだ。 乱暴な言い方だが、海外ノンフィクションでは、それらの史料そのものが持つ魅力や事実の力を、著者自身の優れた(と著者自身が思ってい