
Ce n’est pas grave!!『世界出張料理人』
人に料理を振舞うのはいい。どんなに忙しい仕事の最中でも、いったん気持ちをリセットしてくれる。次の手順、食材の量、味の塩梅、盛り付け方、そんなことだけを頭に浮かべ、どうやったら美味しくなるか、食べる人が楽しんでくれるか、それを考えるだけで心が弾む。 しかし、それも仕事となると別だろう。自分のお店や自宅でなく、呼ばれた先で賄わなくてはならない出張料理人ともなれば
466記事

人に料理を振舞うのはいい。どんなに忙しい仕事の最中でも、いったん気持ちをリセットしてくれる。次の手順、食材の量、味の塩梅、盛り付け方、そんなことだけを頭に浮かべ、どうやったら美味しくなるか、食べる人が楽しんでくれるか、それを考えるだけで心が弾む。 しかし、それも仕事となると別だろう。自分のお店や自宅でなく、呼ばれた先で賄わなくてはならない出張料理人ともなれば

これまでさまざまな学者や評論家がリーマンショックについて解説しており、「住宅ローン基準の緩和に伴うサブプライムローンが、、、」といった抽象論は耳にたこができるほど聞かされている人は少なくないだろう。 私自身そんな大勢の一人で、今更リーマンショックの顛末にあまり興味はなく、本書を手にとったのは、「フィナンシャル・タイムズ」「エコノミスト」両紙の2009年ベスト

米国ユタ州の砂漠の町モアブに、10年以上まったくお金をつかわずに暮らしている男がいる。スエロと名乗る彼は、50歳をすぎた現在でも、月の半分以上は野草やごみ箱から拾った物を食べ、人里はなれた洞窟に寝るという穴居生活を送っている。本書は、スエロの旧友でもあるノンフィクションライターの著者が、リーマンショックを機に、資本主義の煩わしさとは無縁の世界に生きる彼の元を

人間が一番分からないのは、自分自身である。そして、男性が永遠に分からないのは、女性である。逆もまた真である。僕は、本の中では、「ハドリアヌス帝の回想」を偏愛しているが、ハドリアヌスが大好きだと広言している「テルマエ・ロマエ」の著者、ヤマザキマリさんが、男性論を書いたと聞けば、これもまた読むしか他にないではないか。 全く意外な本だった。確かに、男性論の体裁はと

装丁の写真に写る少女は輝く大きな瞳と、笑った口元からのぞく白い歯がとても魅力的だ。その瞳、その笑顔はまだ、自らが何者かになれるという確信と希望に満ちているように感じられる。自らの立ち位置とその存在の小ささを現実という絶望から叩きつけられたことのない、幼き者だけが持つことの許される独特な輝きに満たされている。だが、彼女が顔を出している建物は、さびたトタンと棒切

本書は、国民的大ベストセラー辞典の「生みの親」に光をあて、これまで注目されてこなかった国語辞典の誕生秘話を解き明かす一冊だ。 合わせて累計4000万部に迫る驚異的な発行部数を記録する『新明解国語辞典』と『三省堂国語辞典』。辞書として最も有名な『広辞苑』の発行部数が1200万部であるから、これら二冊はそれ以上ないしは同等の部数を誇っていることになる。驚くのは、

最相葉月 さん、やっぱりうまい。いまさらながら感じ入った。『 絶対音感 』以来、大ファンなのである。こういうのは言い続けているといいことがある。一年半ほど前、元阪大総長である 鷲田清一 先生が最相さんと対談された時、ファンであることをご存じであった鷲田先生が、その後の食事に誘ってくださった。( 対談録はこちら:pdf ) 対談は『わが心の町 大阪君のこと』と

「男の子の理想の人生」――本書の読後感はこの一言に尽きる。 国家、産業、技術、芸術――なんでもいい。あるものの勃興期に生まれ合わせ、その盛り上がりと共に人生をおくるというのは素晴らしい、得難い幸運である。 本書のタイトルとこの解説文に惹かれて、本書の購入を決意。早速、家に帰って本書のページをめくってみると、期待通り読んでいてワクワクする夢のような人生が描かれ

著者はこの11月で34歳になったばかりの前途有望だったはずの若者である。少年時代をアメリカやスイスで過ごし、アメリカン・スクールやハワイの大学を経て、広告代理店でプランニングディレクターとして活躍していた。しかし、彼は31歳の誕生日のたった4日前、医師からALSと宣告されたのだ。 ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは、感覚や知能ははっきりしたまま、次第に体じゅう
我々が人類史上類をみない大変革の時に居合わせていることを気付かせてくれ、単調な毎日を過ごしがちな私たちをワクワクさせてくれる、そんな一冊だ。 日本ではまだ認知度が低いかもしれないが、今、世界中から「未来を変える天才経営者」として注目されている起業家がいる。1971年に南アフリカで産まれ、31歳の時アメリカで億万長者の仲間入りし、現在地球規模の壮大な挑戦をする
あけましておめでとうございます。2014年もHONZをよろしくお願いいたします。 さて、今回ご紹介するのはMOOKです。HONZのルール上、MOOKはアリなんだったかどうだか忘れましたが、コンビニのワンコインBOOKSがオーケーなんだからMOOKだっていいだろうということです、はい。なにしろ年末年始、わたくしはこの本でたっぷり楽しみました。実に「使える」本だ

フェデリーコ(フリードリッヒのイタリア語読み。彼が愛したプーリアでは、今でもそう呼ばれているので、ここではフェデリーコと呼ぶ)のことを識ったのは、ブルクハルトが最初だった。学生時代の頃、愛読していた世界の名著(中央公論社)からである。彼のことを、もっともっと知りたいと思い、13世紀の西洋史の本を探してきては、むさぼり読んだ。パレルモやカステル・デル・モンテ、

コータリンこと神足裕司といえば、ラジオ番組「キラ☆キラ」での、小島慶子とのオープニングトーク、週刊アスキーの連載、そして私の世代には忘れられない、西原理恵子とのコンビによる週刊朝日の「恨ミシュラン」などが印象深い。そして執筆やテレビ出演など超多忙な日々を送るなか、毎週毎週、事件記者としてさまざまな事件の現場を実際に取材してレポートした週刊SPA!の連載「これ

いつかは読まなければいけない、誰しもそういった本のリストを持っているだろう。ヒラリー・マンテルの「ウルフ・ホール」は、この2年ほど、僕の読むべき本リストのトップページに、太字で書き込まれていたのだが、読む機会が訪れないうちに、先に続編を読む羽目になってしまった。それが、本書である。ヘンリー8世の右腕として活躍した稀代の政治家、トマス・クロムウェルの評伝のPa

人間の欲望が丸出しになる政治のゴシップは東西を問わず人を惹きつける。権力闘争、飛び交う札束、そして、男女関係。本書には、金欲と情欲が渦巻く世界を泳いだ現代中国を代表する10人の悪女が登場する。 元重慶市党委員会書記の薄熙来の妻で、夫の力を背景に蓄財をしながら、英国人の愛人を殺害した谷開来。枕営業で国民的人気歌手になりながら、政財界の秘密を知り過ぎてしまったか

エンターテインメントノンフィクション、縮めてエンタメノンフの姉御格、内澤旬子さんの『捨てる女』。売れているらしい。ならばレビューを書くこともないかという気もする。しかし、書きたい。それくらいおもしろかった。こんなに小気味よくポンポンと書かれていて、笑えて、その上、どん引きさせられ、最後にディープに考えさせられる本など読んだことがない。 子供のころから何でもか

かの歴史家アーノルド・トインビーは、単独で通史を書くことの意義を語っている。というか、語っている、という話を聞いたことがある。通史となると、膨大な資料からなるのであるから、詳しさや正しさにおいて、一人で書くと不十分にならざるをえないかもしれない。それでも、通史にはおもしろさがある。 この本ほど、そのおもしろさが抜きんでている本はそうないだろう。まず、登場人物

人物 / HONZ客員レビュー
私たちは、「バーティ」あるいは、「H.G.」と呼ばれたH.G.ウェルズについて、何を知っているのだろうか。ジュール・ヴェルヌと並ぶ「近代SF小説の祖」(原子爆弾さえ予見した)であり、世界政府を夢見た理想的社会主義者(国際連盟でも演説した。また、フェビアン協会の有力メンバーだった)、性の自由を主張した華麗な女性遍歴者、また、人類が過去を共有できなければ、未来も
本書は、ジョン・F・ケネディ大統領の会話記録を歴史家のテッド・ウィドマーが編集した本だ。 大統領執務室や閣議室での会話が録音されていた、と初めて明らかにされたのは、大統領が暗殺された10年後の1973年であった。それまでは録音システムの存在そのものが極秘扱いにされ、知らされていたのはごく一部の人間であった。側近のスピーチライターだったテッド・ソレンソンは「唖

今年のビジネス書No.1はこれで決まり!読み終わった瞬間にそう確信した。この本はぜひともたくさんの人に読んでほしい。いやたくさんの人に届けなくてはいけない。書店員である私は勝手にそういう使命に燃えている。 むかし、とある人に「あなたが売ったその1冊の本が、その人の人生を変えるかもしれない。あなたたちはそういうものを売っているのです。」と言われ、私はそれを胸に

人物 / HONZ客員レビュー
上下2段組みで650ページを超える分厚い本だ(訳者も4名で分担している)。しかし、どうして読まずに済ませることができようか。これは、9.11、米軍のアフガニスタン侵攻、イラク戦争、北朝鮮の核問題、リーマン・ショックと21世紀初頭の激動の日々を、ジョージ・W・ブッシュ政権の「頭脳」として大統領を支え続けたコンディ(コンドリーザ・ライスの愛称)の回顧録なのだから

沢木耕太郎31歳、藤圭子28歳。 男は新進気鋭のノンフィクションライター。女は昭和の歌姫と呼ばれながら引退を発表した演歌歌手。 1979年秋、東京紀尾井町のホテルニューオータニ40階にあるバー・バルゴーでふたりは語り始める。 「うん」 「何にします?」 「ウォッカ、あるかな?」 「それはあるんじゃないかな。とりあえず、ここはホテルのバーなんですから」 「それ

面白いだろうと思って買った本が面白かったらうれしい。しかし、まぁ教養のために読んどこかぁ程度に思って買った本が面白かったら、もっとうれしい。すこし失礼かもしれないけれど、わたしにとって、『冷泉家八〇〇年の「守る力」』は、そんな本だった。 藤原定家の息子、初代の冷泉為家まで800年を遡ることができる、天皇家に仕えた和歌の家系。日本でも屈指の名家の話である。タイ

部分と全体の相似が特徴的な ロマネスコ 。「フラクタル」と呼ばれるこのような繰り返し形状は、シダや雲、海岸線、北斎の浮世絵、銀河の密度、さらには金融市場の価格変動等にも見られる。これらを対象とする数学を見出したのが、著者のベノワ・マンデルブロだ。「フラクタル次元」という「ラフさ」を表す数値は、次元であるが、整数ではない値になり得る。例えば、下記の繰り返し手順

以前に『世界の軍用犬の物語』という本の レビュー を書いた。この本を読んでいて気づいたのだが、現代の軍用犬は地雷探知犬や爆発物探知犬、または捜索犬などが中心であり、軍用犬と軍犬兵(ハンドラー)は軍隊という殺戮を主目的にした組織において、人命を救うことに主眼が置かれた兵科だということだ。特にイラク戦争のように無統制な武装勢力やテロリストが暗躍する戦場では、軍用

9月半ば、台風18号が本州を襲い、各地に大きな被害をもたらした。特に驚かされたのが京都の洪水だ。桂川が氾濫し、嵐山の渡月橋が今にも流されそうな映像に胸を痛めた人は多かっただろう。 嵐山の料亭といえば「吉兆」である。 ブログ に寄れば洪水は吉兆の門まで来たが、幸いにも庭の一部が浸水しただけで、建物自体に大きな被害はなかったそうだ。 この長い長いタイトルの新刊は

南米ベネズエラといえば、反米主義のウゴ・チャベス元大統領、石油、野球などが思いつく程度で、あまり日本人には馴染みのない国だろう。もしかするとミスユニバースを何人も輩出する美女大国として知っている人の方が多いかもしれない。 そんなベネズエラでは、ここ数年『エル・システマ』という音楽育成プログラム発祥地として世界中の注目を浴びている。注目を浴びるきっかけとなった

偉人伝にも、はやりすたりがある。野口英世やシュバイツアーの凋落は著しい。ユーリ・ガガーリンも、世代によってずいぶんと知名度が違う偉人のひとりだろう。知っている人にはいうまでもないが、『地球は青かった』という名言とともに記憶されている世界最初の宇宙飛行士だ。 ソビエト社会主義共和国連邦の秘密主義というのはここまですごかったのかということがよくわかる本でもある。

漆黒の闇の中にたたずむ軍装の男は、右手を掲げ何かを指さしている。自信に満ちた視線は男が指さす先に向けられている。男が何を指さし見つめているのか、今となっては知るすべがない。本書の表紙に写るアウグストゥスは二千年以上老いることも朽ちることもなく、この男の威厳を今に伝えている。この大理石の彫像はローマにある バチカン美術館 に収蔵されている。彼の妻が隠居していた

1981年から2000年までマイクロソフトで働いていた私にとっては、まさにデジャヴでもみているかのような物語だ。いまをときめくグーグルも、いつかは普通の大企業になり、それにつれて一方的にパンチを浴び続けていたメディア業界や広告業界なども気を取り直して反撃に転じ、創業期のメンバーが次々と退職し、やがて若いパンチ力のある会社と新しいビジネスモデルの出現を目の前に

本書は『rockin'on』『CUT』などを創刊してきた音楽評論家・編集者 渋谷陽一さんによる、スタジオジブリ プロデューサーの鈴木敏夫さんへのインタビュー集だ。もともとは、『CUT』誌に掲載されたインタビューをまとめた本になるはずだったが、ジブリの最初の頃の話を付け足したいという渋谷さんの提案で、半分以上のページがオリジナルのインタビューになっている。 「

人物 / HONZ客員レビュー
8月15日は、日本がポツダム宣言を受諾して第2次世界大戦が終結した日であるが、欧州の戦いでは、「自由フランス」を率いてドイツに徹底抗戦したのがドゴール将軍であった。ドゴールは、レジスタンスに象徴される救国の英雄であったが、臨時政府首相を1946年初頭に辞任した後は、不遇の時代(本人の弁では「砂漠の横断」)を過ごした。そして、1968年、67歳の老雄は、アルジ

本書は、2010年から2013年にかけて、小学館『本の窓』に連載された17回の対談をまとめたものである。大きく5つの章に分類されており、それぞれ、「「のど元過ぎれば…」で、また戦争するのか?」、「「知らぬが仏」では、すまされない」、「アメリカよりアジアを向いた脱官僚の国へ」、「人間力をとりもどすために」、「人は「資源」ではない。型破りのススメ」と題されている
とざい、と~ざい。本日はぁ、HONZはじめてのだしものぉ、HONZプレミアム。レビューしまするは、なかのとぉ~るぅ。(知ってる人は、文楽の口上風に声を出してよんでみてください。) ということで、HONZプレミアム、記念すべき第一回である。日本のノンフィクションを盛り上げようという崇高な使命をもったレビュー軍団HONZには、いくつかのルールがある。その一つは、

どれほどの絶望を、乗り越えなければならなかったのか。 第一次大戦中に捕虜として拘禁された収容所から脱走を試みること6回。その全てが失敗に終わった。ナチス占領下のフランスを離れイギリスで行っていたレジスタンス活動のために反逆者と呼ばれ、祖国から死刑判決を言い渡された。起死回生を期した軍事作戦の失敗で英首相チャーチルの信頼を失い、自ら命を絶つことすら考えた。 普

グーグルやビル・ゲイツなどから支援を受ける カーンアカデミー 、就職ランキング全米No.1の Teach For America など、EdxTechを中心に教育の未来形を指し示す本の出版が相次いでいる。その中で「 ドラゴン桜 e-Education 」を展開する大学生の若き起業家・ 税所篤快 が2冊目の本を出した。いわゆる社会起業と呼ばれる領域でも、税所氏

いすみ鉄道。この名前を聞いて、ピンときた人はよほどマニアックな人だろう。地方第三セクター立て直し事例として話題のローカル鉄道でありながら、まだ一部の専門雑誌などで紹介されるだけで、大手メディアはあまり取りあげきれていない。この鉄道の再生物語から、地方や中小企業が学べることは多く、注目に値するのでそろそろ取りあげられそうだ。 本書の著者は、千葉県を走るローカル

深海がブーム。みたいな気がする。NHKスペシャル『ダイオウイカ』の興奮は記憶に新しいし、その本が出ただけでなく、劇場用の映画にもなるらしい。 特別展『深海』 が国立科学博物館で開かれているし、本屋さんでも 『深海本』とでもいうべき写真集 がけっこうたくさん売られている。この原稿を書いているさなかにも、朝日新聞の科学欄に”生命の謎に深く迫る-超深海・熱水域で有

イルカやハワイの海をモチーフに、バブル期を一世風靡した米画家クリスチャン・リース・ラッセン。 日本では1980年から90年代にかけて異常なほど人気が高まり、多くの版画・ジグゾーパズルなどの商品が消費されてきた。しかし、これまで新聞を含め美術マスコミは「コメントに値しない」と彼の作品が正面から論評されることはなかった。本書はラッセンが受容される心理と欲望、彼の

『ゆるキャラ』や『マイブーム』という、いまや一般名詞と認知されるようになった言葉が、みうらじゅんの造語であるというから、そのセンスは尋常ではない。もうひとつ、いまいちひろまっていないが、もらっても少しもうれしくない観光地の土産物をさす『いやげもの』という言葉も、みうらの手によるものである。 今春は大阪で『 国宝みうらじゅんのいやげもの展 』というのが開催され