
『誰も調べなかった日本文化史 土下座・先生・牛・全裸』
現在に不満な人は、未来に期待せず、過去を美化して懐かしむのです。歴史の中でもっとも捏造されやすいのは、庶民史と文化史なんです ああもうマッツァリーノ先生のおっしゃる通り。 日本は豊かにはなったが、肝心の心を失ってしまった、昔は貧しくとも大家族で笑顔でくらしていた、誇り高く礼儀正しく生きていた云々かんぬんが、近年やたらと目につくのである。 昔を懐かしんで楽しく
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現在に不満な人は、未来に期待せず、過去を美化して懐かしむのです。歴史の中でもっとも捏造されやすいのは、庶民史と文化史なんです ああもうマッツァリーノ先生のおっしゃる通り。 日本は豊かにはなったが、肝心の心を失ってしまった、昔は貧しくとも大家族で笑顔でくらしていた、誇り高く礼儀正しく生きていた云々かんぬんが、近年やたらと目につくのである。 昔を懐かしんで楽しく

シンプルでセンス溢れる軽快な装丁、帯には江國香織と穂村弘の推薦文、著者は、僕らの世代だと、ハワイやサーフィンのイメージがすぐに浮かぶ、作家・翻訳家の片岡義男と、クッツェーの翻訳や『嵐が丘』の新訳で知られる鴻巣友季子。そしてタイトルの「蒟蒻問答」を思わせる遊び心ーー。 本を手に取れば、どうしても「洗練」「洒脱」といった言葉が思い浮かんでしまう。ところが、いざペ

いきなりこんな写真でスミマセン。このワイルドな料理は、「アリゲーターガーの丸焼き」。アリゲーターガーは「顔はワニ、味はトリ」という、北米および中米原産の魚である。いかにも異国情緒漂わせまくりのこの魚が、じつは今、東京や横浜の川にもバッチリ生息している。 本書はタイトルどおり、こうした外来魚を料理して食べたレシピ集……といっても、著者自らが外来魚を求めて日本各

マネーのない生活は想像すら難しい。電車に乗るためにも、ランチを食べるためにも、部屋に明かりを灯すためにも、マネーが重要な役割を果たしている。空気や水のように当たり前の存在だと思われるこのマネー、一体どのように生まれたのか。 マネーが生まれる前の社会から、マネーが発明される様子を想像してみよう。マネー以前の社会では、人々は自分が作ったモノと、自分が必要なモノを

日本の右傾化を危ぶむ声が高まりつつある昨今だが、まさか道路マニアにまでその影響が及んでいるとは知らなかった。 現在1号から507号まで、全国に459本指定されている国道。その姿形に胸を熱くする国道マニア達が、各地で猛威を奮っている。国の道にふさわしからぬ、細く荒れた状態の悪い「酷道」までもを走破し、国道脇に掲げられた看板を「おにぎり」と呼び、癒やしを求める。

「特殊清掃 戦う男たち」というブログをご存じだろうか。特殊清掃(以下:特掃)の世界に20年以上も身を置くある男性が、「特掃隊長」というペンネームで特掃の仕事について綴ったもので、2年ほど前に5年分の記事を一部抜粋してまとめた単行本が刊行された。 一部でとても話題になったこともあり、ご存じの方もいるかもしれないが、1か月ほど前に新書サイズの携書版が発売されたと

朝日新聞の顔とも言える「天声人語」。様々な名コラニストを生んできたが、深代惇郎もその一人だ。初めて新聞をつくる人の素顔を知って、かっこいいなと思った。同時に、新聞が大好きでたまらない人たちがつくった新聞が広く読まれていた時代があったことを知った。 「昭和」と「新聞」、私にはどちらも馴染みがない。私は平成3年生まれ、物心ついたときからインターネットでニュースを

国連で働く女性職員をといえば、事務所の中ではパリっとしたキャリアスーツを着てパソコンを猛烈に叩き、難民キャンプや食料調査、医療現場では髪をひっつめにして笑顔で支援にあたる、という絵が思い浮かぶ。キャリアウーマンの頂点、超エリートだと思っていた国連職員。しかし真実の姿はちょっと違っているようだ。 著者の川内有緒は日本の大学を卒業後、アメリカに留学。その後、東京

胸が熱くなる一冊だ。戦前最後の沖縄県知事、島田叡。戦況が悪化する最中に沖縄県知事に就任し、沖縄戦にて戦争被害を最小限に食い止めるべく県政の陣頭指揮にあたった人物である。これまで日の目を浴びることなく歴史に埋もれていたことが信じられないほど、偉大な人物だ。 当時だれも就きたがらない火中の栗である沖縄県知事の役割を彼が引き受けたのが1945年1月末。そう、アメリ

『氏か育ちか』というのは、生物を語る上で永遠の課題だ。もうすこし学問的な言い方をすると、遺伝素因と環境要因、どちらが重要か、ということになる。食べ物、生活場所、育てられ方、教育、人間関係、などなど、多彩な環境要因をすべて知るということは不可能だ。 一方で、分子生物学の進歩は、遺伝情報というものを、遺伝素因といったあいまいな言い方ではなく、 ゲノム という形で

ウォール街を震撼させたと言われる、マイケル・ルイス待望の新作。一読して心底驚いた。 その小説のような文体もあいまって、まるで架空の話のような印象も受ける。だが本書に出てくる、超高速取引(HFT)業者、フロントランニング、ダークプールといった単語を検索すると、全て実在の出来事である証拠が出てきて、現実に引き戻される。 そしてなによりも、投資するほどの資産を持ち

7つのゴールデングローブ賞、11のグラミー賞、そして27のアカデミー賞。1995年の『トイ・ストーリー』を皮切りに、ピクサーが生み出した14の長編映画は、数えきれないほどの賞を獲得し、世界中の観客の心を動かしてきた。芸術面での高評価にとどまらず、どの映画も多くの人々を映画館へと向かわせ、商業的にも大きな成功を収めている。水物と言われることもあるコンテンツビジ

1993年、僕たちふたりはチューリッヒの高速道路のすぐ脇に住む自転車乗り兼デザイナーでした。ある日、キッチンの窓から外を眺めていて、あの汚れた、10万マイル走るトラックのターポリン(防水シート)であつらえたメッセンジャー・バッグがあったらいい感じだろうとひらめきました。そのバッグは一点もので、リサイクル素材のみで作られており、丈夫で防水仕様。それは実現しまし

18世紀、船の大型化と航海技術の進歩により、頻繁に寄港することなく航海が可能なになった。こうしたことにより猖獗を極めた病がある。「 壊血病 」だ。壊血病とはビタミンC(アスコルビン酸)の欠乏により起こる病だ。壊血病になると身体の結合組織の細胞が変性を起こし、歯茎の腫れと出血、歯がぐらつく、口臭、無気力、倦怠感、古い傷口が開く、接骨した骨が外れる、などの症状が

東京オリンピックの喧騒と興奮を覚えている。まだ幼稚園児だった私でも、オリンピックというものが始まるのをわくわくするほど楽しみにしていたし、新しい物好きの父が月賦でカラーテレビを買ってきて家族中が仰天した記憶は鮮明だ。 開会式のブルーインパルスが作った飛行機雲での五輪。聖火台までトラックを走る最終走者の姿。女子バレーボールの東洋の魔女。へ―シングに負けた柔道。

2010年2月、アメリカの専門誌・JAMA(アメリカ医師会ジャーナル)に掲載されたツタンカーメンの記事は世界を震撼させるに足るものであった。 それはツタンカーメンが近親相姦によって生まれた子であり、生来の虚弱体質に悩まされ、さらに死因がマラリアという衝撃的な内容である。その事実は、すぐさま『マスクを脱いだツタンカーメン』というドキュメンタリー番組でも放映され

西アフリカでエボラが猛威を振るっている。WHOの発表によると、今回のアウトブレイクは、ギニア、リベリア、シエラレオネ3カ国での感染者が6553名、死者は3083名という史上最大の規模に発展している(2014年9月26日時点)。そしてついに、アメリカ本土での感染者も現れてしまった。アメリカ疾病対策センター(CDC)の想定では、このままの状況が続くと2015年1

成功者が書いたビジネス本ほど、警戒して読まねばならぬものはない。それがHONZの基本スタンスであることは分かっているのだが、ものの数ページほどで陥落した。あまりに面白くて、もう10回以上は読んだと思う。 大学生くらいの時にこの本に出会っていたら、もっと違う人生があったのかもしれない。でも今だからこそ、この本に書かれていることを理解できるのかもしれない。そうい

俺は、逆転したいだろうか? 『逆転!』という題名、「弱者の兵法」と書かれたオビを見て思った。自己申告で、どちらかと言えば弱者。勝ちたいかと言われれば、そりゃ勝ちたい。くらいか。原書の題名は、"David and Goliath"だ。ゴリアテに勝ったダビデのように、弱者が強敵や逆境に勝てる秘密は何か。 『氷川清話』 に出てくる横井小楠の話のように、失敗を都合の

美しい。あまりにも美しい。 淡く雪が降り積もった冬枯れのススキのような針ニッケル鉱。紺碧の星空を荒々しく千切りとったかのような銅藍。黄鉄鉱といったら、まるでそれは大小様々な立方体が体現する数学的な宇宙。 神の御業か、と思えるような造形は、しかし、原子配列の織り成す妙なのである。アンビリーバボー。 地球の岩石のほとんどは、わずか数種類の鉱物からできているという

カレーをつくって、旅をするひとたちがいる。 チームは3名。誰も料理のプロはいない、素人のカレー好きである。それぞれに本業がある。 だから、活動するのは3人全員が出そろうときだけである。道具一式を車に積む移動販売を彷彿とさせるキャラバン形式、いまのところ月に1度のペースのようだ。 訪れた先では、シンプルな使命がある。それは 「ひとと出会い まちでカレーをつくる

「なりすまし」というと、ツイッターのなりすましアカウントに釣られて真に受けてしまい、ちょいと恥ずかしい思いをする、というのは今やよくある話である。 ある選挙の際、候補者の名を騙るアカウントが現れて大勢がフォローするも「これはニセモノだ」というアナウンスがあって、「いやいやホンモノだ」という話もあって、あげく真贋騒動自体が話題作りじゃないの?といいだすものもあ

時代とともに言葉の意味が変わるということはよくあることだし、そうあってしかるべきだとも思う。だが、最近の言葉における概念の変化はなかなか激しいものがあり、面食らうことも多い。 たとえば「キュレーション」という言葉。つい2、3年前までは特定の分野に精通する人たちが情報発信をする際の作法のようなものを指していたと思う。ところが最近ではニュース・キュレーションサー

『メルトダウン』などの作品で知られる大鹿靖明が、10人のジャーナリストをインタビューし、まとめられた作品。人選のセンスの良さに思わず手に取った。 冒頭に登場するのはHONZ読者にもおなじみの 角幡唯介 。これは実力と受賞歴などの実績から言って、これは当然の人選。新聞協会賞を2度受賞、ボーン・上田国際記者賞も受賞している現代のもっとも優秀な新聞記者の一人であり

帯にはLNG船の写真と「日の丸」のような赤丸。その赤丸の中には「HONZ成毛眞氏大興奮!」と白抜き文字。そりゃあ間違いなく面白そうだと、書店で慌てて買ってみた。 なんてことはなくて、きっちりとゲラを読みこんだ上で、帯文の一助としていただいた。まさにこれを読まずに日本の未来は語れないと考えたからだ。著者は三井物産でエネルギー関連事業に携わってきた岩瀬昇さんだ。

死後3000年以上が経過した今も、このファラオには大国の首脳を動かす力がある。自国へのツタンカーメン来訪をエジプト大統領サダトに依頼したのは、米国大統領のニクソンだった。この直訴の結果1976年から1979年にわたって全米を回ったツタンカーメン展覧会は、100万という途方もない人数を美術館に向かわせる。来場者にはそれまで一度も美術館に行ったことのない人も多く


世界は混迷を深めている。中東で起こっている血なまぐさい事件の数々は言うに及ばず、東ヨーロッパではウクライナ危機が加速し、アジアでは台頭する中国が帝国主義的な政策の基で、世界秩序に挑戦している。日本もまた、中国の覇権主義の挑戦を受ける形で、自国の安全保障の見直しを迫られている。そんな中、各国の国民の間で再び強烈な民族主義と排外的な感情がその鎌首をもたげ始めてい

著者の布施英利先生が行う絵画教室はとてもシンプルだ。絵筆を置いて、自然へと繰り出す。そして自分のはらわたが疼くのを確認したら、素直に絵に描いて表現しよう。「そんなに簡単に言われても」、と困るかもしれないが、自分を表現するには、自然を目の前にして、自分の中で何が起こっているのかを理解しなければならない。 本書は2000年10月に『絵筆のいらない絵画教室』として

僕は二十二歳の自閉症者です。人と会話することができません。 ぼくの口から出る言葉は、奇声や雄叫び、意味のないひとりごとです。普段している「こだわり行動」や跳びはねる姿からは、僕がこんな文章を書くとは、誰にも想像できないでしょう。―僕と自閉症― 本書の最初のエッセイにはこんなことが書かれている。 ドナ・ウィリアムズ『自閉症だったわたしへ』(新潮文庫) を読んだ

8月20日未明、広島市を襲った豪雨は死者・行方不明者80名を超える大惨事を引き起こした。被害が大きかった安佐北区周辺で観測された1時間あたりの最大降水量は120ミリを超えており、さらに水分を含みやすいこの地方特有の「まさ土」が被害を拡大させたといわれている。 この特殊な地質や地形などから、広島県には3万個所を超える土砂災害危険個所があるという。そのため被害に

ビッグデータの時代である。私が生業とする生命科学の分野も例外ではない。全遺伝情報を解析するゲノム( genome )や、タンパク( protein )の発現をまるごと解析するプロテオーム( proteome )など、オーム( -ome )がうるさく幅を利かせるこのごろだ。 『オーム解析』は、私のように、古典的な生物学から研究をはじめ、手作業の分子生物学の時代

南米ペルー沿岸の広い範囲で海面水温が平年より高い状態が1年ほど続く、 エルニーニョ現象 。地球の裏側で起こるこの現象は、遠く離れた日本の夏をより涼しくし、雨の多いものとする。地球上の各地の気候はつながりあい、それぞれが影響しあっている。 2014年の夏は台風や局所的な豪雨などによる被害が頻発し、多くの人命が失われた。8月に広島を襲った豪雨は バックビルディン

日本全国の津々浦々で使用される方言は、地方の特色を彩る大きな要素の一つである。アホとバカ、ショッパイとカライ、イルとオルといった言葉の違いは、我々の文化の多様性の一端を示しているとも言えるだろう。 一方で、それらの方言をフレーズ化して構成される「ものの言い方」については、その人の性格に依拠するところが大きいものと思われがちである。間接的なもの言いが多ければ回

20世紀の文学に強烈なインパクトを残し、『クラッシュ』で知られるJGバラードらのNWSF世代や、ロックシーンではニルヴァーナのカート・コバーンからも、深くリスペクトされているウィリアム・バロウズ。 現代美術に複製性の問題をセンセーショナルに持ち込み、アイドル的な芸術家というモデルをこれ以上ないくらい鮮烈に演じきったアンディ・ウォーホル。 今回とりあげる対談集


私は、少なくとも半分は間違えた。正確に何個かは、数えないこととしたい。 まちがえたのは、本書で紹介されている自分でも試せそうな実験が「どんな結果になるか」だ。たとえばこんなのである。 ロウソクを使った問題です。 ロウソクに火をつけてビンをかぶせると、火は消えてしまいます。 では、ここからが問題です。 高さの違う2本のロウソクを並べて、火をつけます。 ここにビ

娼婦。その存在はいつの時代も様々な点で男たちを惹きつけてきた。実直な青年と高級娼婦の愛を描いた デュマ・フィス 著『 椿姫 』や映画『 プリティーウーマン 』などの作品に私も惹きつけられた。これらの作品に出てくる娼婦は、自堕落な生活を送りながらも本当は純真な心を奥底に秘めた哀れな社会の犠牲者として描かれていることが多い。 多かれ少なかれ、男というものは女性に

著者のダグ・メネズは1957年テキサス州生まれ。 1981年にはサンフランシスコ州立大学でフォトジャーナリズムの学位を取得した。 IBM-PCが発売された年である。パソコンがマニアの遊び道具から本格的なマシンへと変貌した年だ。 メネズはいまでもTIME、Newsweek、LIFEなどにフリーランスの写真家として報道写真を提供しつづけているという。これまでにも

5年ほど前、通っていた小学校が廃校になった。私が通っていた20数年前にも全校生徒数は70名弱だったというのに、30代となった同世代のうち今も地元にとどまり子どもを育てているのは数名だというのだから、当然ともいえる結果だ。小学校の次は何がなくなるだろうか。パンチパーマのオヤジがやっていた床屋だろうか、帰り道に寄っていた駄菓子屋だろうか。30年後には街そのものが