ノンフィクションはこれを読め!

おすすめ本レビュー

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まっとうな未来を生きるための科学的思考 『進化を飛躍させる新しい主役』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

まっとうな未来を生きるための科学的思考 『進化を飛躍させる新しい主役』

地味な本である。しかし、ひとつのささやかな研究が、「進化を飛躍させる新しい主役」という、進化論を覆すような刺激的な仮説に至る過程には、科学的思考の基本が詰まっている。岩波ジュニア新書の一冊だが、はじめて科学に触れる少年少女はもちろん、私を含め、日々、科学的思考を身につけたい大人にぜひ読んでほしい。日常生活で思い込みや迷信から開放され、まっとうな問題解決への道

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サイエンス / おすすめ本レビュー

『食欲の科学』 どうしてお腹が減るのかな

食欲の科学 (ブルーバックス) 食欲を押さえ込むことだけではない、食べ続けることもまた難しい。この難しさは、ヴァーモント大のグループが行った、200日間ずっと通常の2倍の量の食事を摂り続けるという実験の結果からよくわかる。多くの被験者は、体重が増えるに連れて食べることを苦痛に感じ始め、望んで参加した実験を続々とリタイアしていったのだ。また、実験後に被験者達の

『芸術家たちの臨終図鑑』死から読み解く西洋絵画 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『芸術家たちの臨終図鑑』死から読み解く西洋絵画

私には西洋美術の素養がまったくない。ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、マネ、モネ、ルノワール、シャガール、ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ……。どれも名前くらいは聞いたことがあるが、彼らの代表作は?と聞かれて即答できるものはほとんどない。さすがにダ・ヴィンチのモナリザくらいは知っているが、ルノワールっていいよね。と言われたら、あぁ、あの喫茶店いいね。とい

壮絶な北海道開拓史 『赤い人』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

壮絶な北海道開拓史 『赤い人』

年末恒例の「今年のベスト・・・」のセレクションがたけなわである。ちょっと早いが、私が今年復刊されて一番うれしかった『赤い人』を紹介したい。私をノンフィクション好きにしたのは、吉村昭であると言っても過言ではないほど、どの作品も思い出深いが、明治初期の北海道を舞台にしたこの作品は衝撃的だった。 本書は、わずか300頁を少し超えたほどの文庫である。昨今の小説では普

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教養・雑学 / おすすめ本レビュー

しんみり味わう 『京のわる口』

京のわる口 (平凡社ライブラリー) ゆっくりと、余韻に浸りながら読み進めたい一冊だ。本書では、京都出身で太宰治賞の受賞作家でもある著者によって、題名にもある「京のわる口」が一つずつエッセイに綴られている。陰陽で言えば陰、「批判語」というネガティブなテーマであるにもかかわらず、全編、懐かしくも雅な雰囲気が漂う。何とも不思議な一冊だ。 私の感覚では「ちょっと羽目

脱力系講義『ヘンな日本美術史』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

脱力系講義『ヘンな日本美術史』

タイトルに「ヘンな」とあるように、ちょっと変わった美術本だ。 アートに興味を持つ人ならば、表紙でピンとくるかもしれない。帯の上を眺めると、絵師であろう様々なおじさん達が絵を描いているが、タッチが柔らかいせいか、みんな楽しそうで宴会のようにも見える。なんだか最初から力が抜けている。その奥でムム!っと唸っている男性がひとり。本書の著者である。 著者は画家の 山口

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アート・スポーツ / ビジネス

過激なる常識論 『創造力なき日本』

創造力なき日本 アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」 (角川oneテーマ21) 村上隆は単なるクリエイターではない。「カイカイキキ」というアート集団をまとめあげ、そのサステイナビリティーを追求する経営者でもある。『芸術闘争論』で垣間見せたその一面を、若手を育てるという観点から論じた一冊だ。タイトルは『創造力なき日本』になっているが、『世界を相手にする芸

『オーケストラは未来をつくる』クラシック音楽界のイノベーション 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『オーケストラは未来をつくる』クラシック音楽界のイノベーション

サンフランシスコ交響楽団、今一番注目を集めているオーケストラだ。 楽団の自主レーベル「 SFSメディア 」が制作したマーラー交響曲全集は7つのグラミー賞を受賞。世界中から旬なオーケストラを集めるスイス・ルツェルン音楽祭にも近年継続出演。さらに昨年はクラッシック音楽の本場ウィーンにてアメリカのオーケストラとしては異例の四公演を行った(通常は二公演)。今まさに旬

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教養・雑学 / ビジネス

『さか上がりを英語で言えますか?』日本人の9割に英語はいらないーそれでも勉強したければ

小学校で習った言葉 さか上がりを英語で言えますか? 常々、日本人の9割に英語はいらないと言ってきた。9割の国民は数年に1回行くかどうかの海外旅行以外で英語を使う機会はない。自分自身、12年前にマイクロソフトを退職したあとは、海外への観光旅行以外で英語を使ったことはない。英語が必要なのは都心のホテルマン、外資系社員の一部、商社マンやメーカーの海外担当者などじつ

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人物 / 世界史

『スターリンのジェノサイド』のことを、知っておきたい。

スターリンのジェノサイド こういう著作を、良書というのかなと思う。 名著や傑作ではないかもしれない。HONZで紹介される多くのノンフィクションのように、キャッチーでもない。みすず書房らしい至ってシンプルな装丁は、版を重ねることを戦略的に狙っているとも思えない。原文で176ページとテキストも短く、ハードカバーにしては物足りないと感じる向きもあるかもしれない。

『2100年の科学ライフ』科学者による未来予想図 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『2100年の科学ライフ』科学者による未来予想図

1903年、『ニューヨーク・タイムズ』は未来を予測して、飛行機の開発は時間の無駄だと宣言した。ライト兄弟の初飛行のわずか1週間前だった。それに懲りずに同紙は1920年、ロケットの研究などナンセンスだと断じた。その49年後、アポロ11号が月に降り立ったとき、賢明にも同紙は予測が外れたことを認めて謝罪した。 かくも難しいテクノロジーの未来予測に挑戦してみたのが本

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サイエンス / おすすめ本レビュー

『ひとの目、驚異の進化』 エイリアンは黒人と白人を見分けられない

ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ 本書で進化理論神経科学者マーク・チャンギージーの論理展開を堪能し終える頃には、あなたの世界の見方は一変しているだろう。難解な科学的事実に対する分かりやすい解説と直観に反するファクト。大胆な仮説とその仮説を支える緻密なデータ。サイエンス本が持つべき美点の全てを兼ね備えているかのような本書を、『 錯覚の科学

『スタンフォードの自分を変える教室』≒意志力の科学 書影

医学・心理学 / ビジネス

『スタンフォードの自分を変える教室』≒意志力の科学

そんなことを言われなくても、シロクマのことなんて普段から意識したことないし、考えたことなんてないよ。と、読んでいる人の大半が思っているに違いない。それならなおのこと、シロクマのことを考えないで、この先のレビューを読み進めてください。 この本はスタンフォード大学の人気講座である『意志力の科学』をもとに作られた本である。この本が発売以来飛ぶように売れている。そん

本人非公認自伝がリークするもの - 『ジュリアン・アサンジ自伝』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

本人非公認自伝がリークするもの - 『ジュリアン・アサンジ自伝』

ある意味、とびきりのリークだ。 「公開こそ正義」という強烈な信念を持った異端児の姿を、剥き出しにしたのだから。 この自伝が「本人非公認」、つまりリークとして刊行されることになったのは、運命の皮肉だろうか。 ジュリアン・アサンジ。言わずと知れたウィキリークスの創設者は今、ロンドンのエクアドル大使館に滞在している。2010年12月、スウェーデンでの婦女暴行容疑で

『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』薄一族の野望と挫折 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』薄一族の野望と挫折

2月6日、前代未聞の事件が起きた。中国重慶市の副市長の王立軍がアメリカ領事館に逃げ込んだ。地方政府とはいえ共産党幹部がアメリカに助けを求めたのだ。それも、女装姿で他人に借りたジープを駆って。 「薄熙来に殺される」。 ハリウッド映画もびっくりの展開だが、これは当時の重慶市のトップだった薄熙来とそのファミリーが世界を震撼させる序章に過ぎなかった。王立軍が薄熙来の

『12月25日の怪物』  サンタクロース伝説を追う 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『12月25日の怪物』 サンタクロース伝説を追う

本書によれば、サンタクロースが日本に最初に登場したのは明治7年。裃(かみしも)を身につけ、大小の刀を腰に差し、大森かつらを頭にかぶった「殿様風」の装いだったという。その格好で一体何をしたというのか?善意かどうかはさておき、やっていること自体は忠臣蔵とほぼ同じだ。カマドから出てきてホウ!ホウ!などと言ったら怖いではないか。子供は喜ぶのか。その頃はきっと、サンタ

問題は何も終わっていない。 - 『ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

問題は何も終わっていない。 - 『ユーロ破綻 そしてドイツだけが残った』

かつてニクソン大統領の経済顧問を務めたハーバート・スタインの言葉だ。アメリカが抱える双子の赤字が急増しているのは問題だとする論者達への返答として発せられたこの言葉は、現在でも語り草になっているそうだ。どのみちストップするのは分かりきっている。問題はどのようにストップさせるかだ。スタインがこの短い一節をもって示唆したのは、そういうことだった。 著者はこのエピソ

「ユダヤ」を知るならこの一冊 『ユダヤ人の歴史』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

「ユダヤ」を知るならこの一冊 『ユダヤ人の歴史』

ユダヤ人のことを知りたいけれど、いろいろとありすぎてわからない。 どの本を読んだら、よいのやら。 そんなあなたが読むべきはこの一冊だ。そもそも、翻訳者の入江規夫さんがこの本に興味を持ったのも、同様の素朴な疑問からだった。 海外の出版社と仕事をしていた入江さんは、フランクフルト国際ブックフェアに参加する。毎年秋に開かれる、世界最大の本の見本市である。フェア開催

究極のチンポロジー 『チンパンジーはなぜヒトにならなかったのか』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

究極のチンポロジー 『チンパンジーはなぜヒトにならなかったのか』

なんとかオロジー=~ology というのは、「学問」を示す接尾辞である。したがって、タイトルにあげた「チンポロジー」は「ち◎ぽ」の学問。 という訳ではなくて、「チンプ」すなわちチンパンジーについての学問である。 われわれ人類と700万年前に枝分かれしたチンパンジーをめぐり、その生態、知能、進化、病気、言語能力、などなど、研究の歴史から最新の知見までをこれでも

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事件・事故 / おすすめ本レビュー

『アルゴ』  CIA史上、最もあり得ない救出作戦

アルゴ (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) (ハヤカワノンフィクション文庫) 1979年11月4日、イランの過激派学生がテヘランのアメリカ大使館に乱入・占拠し、66人を超えるアメリカ人を人質にして立てこもった。当初、女子学生を先頭にして侵入してきたデモ隊は“怖がらないで。我々はセットイン(はまりこみ)したいだけ”と書かれたプラカードを掲げ(のちにこれはシット

『ルリボシカミキリの青』科学の楽しさ再発見 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『ルリボシカミキリの青』科学の楽しさ再発見

======== HONZの『ノンフィクションはこれを読め! - HONZが選んだ150冊』本日発売です。おかげさまでAmazonで販売開始即刻品切れ!街の書店で是非手にとってみてください。 ======== 本書を読み進めていると何歳か若返った気分になる。人気科学者である著者が生命のセンス・オブ・ワンダーを次々と紹介し、読んでいるとなんだかワクワクするのだ

『一揆の原理』 Facebookのルーツは一揆にあり? 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『一揆の原理』 Facebookのルーツは一揆にあり?

「一揆」は不遇を託っている。教科書で習い、多くの人がその言葉を知っているのにもかかわらず、一揆が好き、という人にはお目にかかったことはない。信長がどうとか、明治維新がどうとか、語る人はいっぱいいるのだから、「やっぱり正長の土一揆が最高だよな」とか「尊敬する人は、三河国賀茂郡で一揆を指揮した辰造です」とか「延暦寺の僧徒が日吉社の神輿をかついで朝廷に迫ったときは

『裁判百年史ものがたり』 日本をつくった12の事件 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『裁判百年史ものがたり』 日本をつくった12の事件

1891年5月11日、2週間前に長崎港から来日したロシア皇太子のニコライは、鹿児島、神戸、京都を経て大津にやって来た。昼食をすませた彼は心地よく人力車に揺られながら、今夜の芸妓との楽しい時間に想いをめぐらしていた。少しずつ、だが確実に、死の危険に近づいていることも知らずに。 異国の皇太子目当てに詰めかけた人の群れの中に、鬼の形相でニコライを睨みつける男がいた

すべらない授業 - 『これが物理学だ!』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

すべらない授業 - 『これが物理学だ!』

大量のアクセスとともに「Webスター」の称号も手に入れた、あの名物教授の講義がついに書籍化された。 MITの物理学者ウォルター・ルーウィン。彼の講義は、まるでロックスターのように教壇上をところ狭しと駆け回り、大教室をまるでサーカスのような興奮のるつぼと化してしまう。決め台詞は「その目で見ただろう?これが物理学だ!」。 その熱狂は、学内のみに留まるわけもない。

『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ 書影

日本史 / ビジネス

『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ

本書を読みながらまず思ったことは「おいおい、日本は太平洋戦争からまったく何も学んでいないじゃないか。」という一点だった。 もちろん、この歴史に学ばない日本については、様々な時局で指摘され続けていることは判っている。無責任きわまりない年金行政や、革新性を失い戦力を逐次投入し、衰亡する家電業界などがその代表例だろう。しかし、福島の原発事故とその事故処理を目にし、

『ガレキ』 思い出の別名 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『ガレキ』 思い出の別名

私が東京で暮らし始めたのは予備校の寮に入った時で、服が詰まった大きなバッグ1つでやってきて、机とベッドが置かれた小さい部屋に入った(本は郵送だ)。あれから何年も、いや何十年も経ったけれど、この前あの建物がなくなったと聞いた時、やっぱりちょっと寂しかったのだ。当たり前だけれど、過ごした場所は思い出の一部になる。自宅はもちろん、学生時代のアパートとか、旅行先で泊

『ヒトはなぜ眠るのか』 24時間、戦エマセン。 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『ヒトはなぜ眠るのか』 24時間、戦エマセン。

眠るという行為にはどうしてもサボる・不謹慎といったマイナスイメージが付きまとうようだが、はたしてそれは正しいのだろうか。眠りとは、自分が生産的であり続けるための創造的行為なのだと、今こそ声高らかに叫びたい。そんな私の心境に科学的見地から応えてくれる一冊が見つかった。 睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があることは広く知られている。レム睡眠というのは、閉じ

『アイリーンといっしょに』空を飛ぶチキン 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『アイリーンといっしょに』空を飛ぶチキン

クリスマスシーズンのスーパーマーケット。聖なる日を祝うための、きらびやかな飾りつけ。そんな店内のなかで、ひとりの女性が怒り狂い、チキンのパックを、つれの女性に投げつける。『アイリーンといっしょに』は空を飛ぶチキンで幕開けする。 著者テレル・ハリス・ドゥーガンはユタ州ソルトレーク市に住む初老の女性だ。チキンを投げつけたのは彼女の妹でアイリーン。彼女が生まれると

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民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『職業外伝 紅の巻・白の巻』 あなたの天職、なんですか?

職業外伝 紅の巻 (ポプラ文庫) 職業外伝 白の巻 (ポプラ文庫) 飴細工師、俗曲師、銭湯絵師、へび屋、街頭紙芝居師、野州麻紙紙漉人、幇間、彫師、能装束師、席亭、見世物師、真剣師。 イタコ、映画看板絵師、宮内庁式部職鵜匠、荻江流家元、琵琶盲僧、蝋人形師、チンドン屋、流し… 紅と白、二冊の『職業外伝』で紹介された、滅びつつある仕事の数々である。取材開始が20年

『通貨戦争』ペンタゴンが警戒するシナリオ 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『通貨戦争』ペンタゴンが警戒するシナリオ

2009年3月17日と18日、軍・情報機関・学界・シンクタンク・投資銀行等の専門家60名が、厳重なセキュリティ・チェックを受けないと入れないワシントンDC近くにあるAPL戦争分析研究所内に密かに結集していた。彼らは皆、アメリカ国防総省(ペンタゴン)が後援する初の金融戦争シミュレーション・ゲームの参加者である。 アメリカ国防省は、敵対国もしくは過激派が通貨、株

『チャンピオンズリーグの20年』ビジネスとしてのフットボール 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『チャンピオンズリーグの20年』ビジネスとしてのフットボール

ヨーロッパのクラブNo.1を決める戦い。それがUEFAチャンピオンズリーグ(以下CL)である。いまやワールドカップを凌ぐほどの地位と名声を得ており、世界中のフットボーラー憧れの舞台となっている。 ヨーロッパ各国のトップチーム同士の対戦は、いままで数多くのドラマを生みだしてきた。そして信じられないような奇跡が起きるのもチャンピオンズリーグの魅力である。まずは私

『非道に生きる』 刹那を生きる 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『非道に生きる』 刹那を生きる

本書の著者である映画監督、園子温(その・しおん)の小学校時代の通知表には、教師からのこんな言葉が記されていた。 「落ち着きがない」、「教師の話を聞かない」であれば珍しくはないが、「性的異常」にはなかなかお目にかかれない。子温少年は一体何をしたというのか。 答えは驚くほどシンプル。彼は、全裸で教室に入っていったのだ。 教師から「全裸」であることをこっぴどく叱ら

『あるロマ家族の遍歴』旅に生きた人生 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『あるロマ家族の遍歴』旅に生きた人生

正直にいうと、私は長期間、遠くに行くのがあまり好きではない。理由はわからないが、子供の頃からそうだったし、今もそうだ。 もしかしたら、根っからの農耕民的な性格を引き継いでいるのかもしれない。江戸時代の農民にでも生まれていたら、一生の大半を生まれた村から出ることなく生きたであろう。そんな出不精な私が、たまたま手に取ってしまったのが、私とは正反対の生活を営む放浪

建ててくれるアイドル!? - 『建設業者』の鉄骨男子たち 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

建ててくれるアイドル!? - 『建設業者』の鉄骨男子たち

「ものづくり」が変革の時を迎えようとしている。3Dプリンター、カッティング・マシン、ミリング・マシン、PC制御ミシンなど、デジタル工作機械の登場により「つくる」という行為そのものの意味が、変わりつつあるのだ。 中でも注目を集めるのが、ファブ建築と呼ばれる手法である。分解・組立可能で、まるでプラモデルのように作れる木造建築は、「ソーシャルビルド」としての側面か

『日本最強馬 秘められた血統』 オルフェーヴルが詰めた20馬身 書影

アート・スポーツ / ビジネス

『日本最強馬 秘められた血統』 オルフェーヴルが詰めた20馬身

最後の直線で大外から並ぶ間もなく先頭に立ったとき、誰もが確信したはずだ。「勝てる」。それほど脚色は違った。あとはどれだけ2着以下を突き放すのか。競馬の世界最高峰のレースのひとつである凱旋門賞。日本馬が挑み始めて43年。日本競馬界は悲願の頂に登ろうとしていた。その10秒後にまさか「ぐおおおおおおおお」と声にならない叫びをあげるとは今となっても信じられないが。

『祈りよ力となれ』 リベリア内戦を終わらせた活動 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『祈りよ力となれ』 リベリア内戦を終わらせた活動

本書を改めて読み返した時、冒頭の「内戦前の高校時代の話」が「夢のような思い出」であったことがよくわかった。1990年にリベリアで内戦が始まった頃、彼女は、入学したばかりの大学生だった。将来は、医者になりたかった。そこから14年に及ぶ戦争が始まる。 本書は、シングルマザーとして内戦を生き延び、非暴力の平和構築活動による貢献によって昨年度のノーベル平和賞が与えら

『日本のリアル』解剖学者と4人が語る現場 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『日本のリアル』解剖学者と4人が語る現場

食卓を語り、農業を語り、漁業を語り、そして林業を語る。この本は解剖学者である養老孟司が「本当の仕事」をしていると考える4人と対談した、対談集である。 4人とは岩村暢子。岩澤信夫。畠山重篤。鋸谷茂。それぞれ日本の1次産業で日本の今に接し、そのあり方に大きな疑問や提唱をおこなってきているスペシャリストだ。ひとまず目次を見てみよう。 第一章 現代人の日常には、日常

文化を牛耳る『平山郁夫の真実』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

文化を牛耳る『平山郁夫の真実』

2009年に他界した平山郁夫といえば、東山魁夷、岡本太郎と並び日本で最も高名な画家の一人として知られる。本人の絵を飾っている方もいるかもしれない。 国内において一番知名度があり、値段が高く、画壇ヒエラルキーの頂点にいた事実でいえば「平成の国民的画家」は間違いなく平山郁夫だろう。なにより「芸術家は貧乏だ」という常識を覆す美術界のモンスターだった。 平山自身は画

血の通った熱い男、藤原岩市が紡いだ歴史の一頁。 - 『F機関』 書影

人物 / 日本史

血の通った熱い男、藤原岩市が紡いだ歴史の一頁。 - 『F機関』

最近、歴史を意識させられることが多い。竹島でも尖閣でも、結局のところ歴史的経緯から紐解いていく必要が生じている。尖閣問題では中国国内で大規模な反日暴動が発生し、多くの日本人が心を痛めたのは記憶に新しいが、日本側が「領土問題など存在しない」と主張したところで、中国や台湾にとっては歴史問題であって、最後はどうしても同じ場所、つまり「日本の近現代史」に行き着いてし

『ネゴシエイター』親族が誘拐されたらどうしますか? 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

『ネゴシエイター』親族が誘拐されたらどうしますか?

著者は誘拐犯や人質立てこもりの犯罪者との交渉を担当するプロフェッショナル、通称「交渉人」(ネゴシエイター)。本書は、彼がこれまでに担当してきた事件の中身を綴ったノンフィクションである。事実は小説より奇なり、とはこのことのだろう。これまで交渉人を扱った小説や映画は沢山あるが(ジェフリー・ディーヴァ―の出世作『静寂の叫び』、ブルース・ウィルス主演の『ホステージ』