
『「ゼロリスク社会」の罠』危険を見極めるコツ
HONZのレビューの書き手は日付の下一桁で決まっていて、さながらプロ野球の先発ローテーションのようだ。先発1番手は投稿回数73の鉄腕内藤順、2番手は豪腕ならぬ豪筆村上浩、3番手の神様仏様土屋様は昨日HONZ史上最高のアクセス数を記録、サーバーをダウンさせた。 強力3本柱の後、4の付く日はそれなりにプレッシャーがかかる。だとしても、怖じ気づいてもボールを投げな
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HONZのレビューの書き手は日付の下一桁で決まっていて、さながらプロ野球の先発ローテーションのようだ。先発1番手は投稿回数73の鉄腕内藤順、2番手は豪腕ならぬ豪筆村上浩、3番手の神様仏様土屋様は昨日HONZ史上最高のアクセス数を記録、サーバーをダウンさせた。 強力3本柱の後、4の付く日はそれなりにプレッシャーがかかる。だとしても、怖じ気づいてもボールを投げな

いきなり言い訳になってしまうが、高橋秀実作品の面白さをレビューで伝えるのは、実は難しい。構成は徹底的に練られ、すべての章、すべての文が有機的につながっていて、その一部を取り出したところで、本全体が醸す、なんともいえない、そこはかとない面白さを伝えることができず、もどかしい気分になる。 なので、こう書くしかない。本書はとびきりに面白い。近年の作品の中では、一番

「科学と宗教」という、既に語り尽くされたと思われるテーマに、無神論的心理学者の著者ジェシー・ベリングを向かわせたのは、母の病気である。ベリングが10代のころ、彼の母はがんと診断された。母の病状を聞いたとき、神の存在を微塵も信じていなかった彼の頭に、意外な言葉が浮かんだ。 反射のように浮かび上がった神を、ベリングは理性の力で即座に振り払った。母の症状が科学的に

保衛員が数人がかりで中年女性を絞首台に引きずり出し、青年を柱に縛りつけた。それは彼の母親と一人っきりの兄だった。保衛員が母の首に回した縄の輪をきつく締める。母は彼の目をとらえようとしていた。だが、彼は視線をそらした。それどころか、悶え苦しむ母を見ながら、死んで当然と考えていたのだ…… 彼の名前はシン・ドンヒョク。北朝鮮の政治犯収容所で生まれながら、脱走を果た

リーダーとは、つまり何だろうか。本書を読みながら、そんなことを考えてみた。 そして、私なりに辿り着いた(暫定的な)答えを、この場に書きとめてみたい。 人によって中心に据えられ、人を中心に据えることでそれに報いる存在。 それこそが、リーダーではないかと。 ネビル・イズデル。2004年6月、当時泥沼に喘いでいたコカ・コーラのCEOに就任し、5年間の在任期間中に見

座敷牢の調査報告書。 一言でいえばこんなところだろうか。ただし、100年前の話。 著者の呉秀三は、「日本精神医学の父」と呼ばれる、明治から昭和のはじめにかけて活躍した医学者だ。精神病患者の看護法を刷新したことで知られる。つまり、本書は看護や治療のやり方を一新すべく、当時の精神病患者がおかれた状況を実地調査したレポートなのである。 明治43(1910)年から、

例えば、「HONZでレビューする本」が予め誰かに決められていたら、 このレビュー のような、本当に書き終わるのかとハラハラする文章が書かれることは、多分無かった。また、例えば、サッカーの審判がレッドカードを出しまくって選手の自由な動きを止めてしまったら、そのゲームは大変つまらないだろう。おもしろい結果を出す組織は、最低限のルールと、ルールに従って自由に考える

てっきり書名からレアメタルの産業利用や資源開発がメインテーマかと思っていたが、本書で主に扱うのは生命科学の分野である。身内の第一人者を出し抜くようなテーマで僭越ではあるが、これは神秘的かつ深刻な内容に富んだ相当な力作。新刊本ウォッチャーの端くれとして、この一冊を見逃すわけにはいかない。 意外と知られていない事実ではあるが、重金属は人類の生活や科学技術に必須で

スタバ本にハズレなし、リッツ・カールトン本にハズレなし、というように、「〇〇にハズレなし」というのが自分の中では幾つかある。今日紹介する原田泳幸氏の書籍にもハズレなし。というのが自分の考えである。(ちなみにHONZの代表である成毛眞の著作にもハズレなしだと私は思っている)今回もその考えは間違っていなかった。 アップルの日本法人社長から日本マクドナルドの社長に

世界中で愛飲されているシャンパン。パーティーや祝いの席には欠かせないワイン。この美しく輝く琥珀色で泡立つワインの歴史は、それほど古いものではない。そもそもワインに泡が立つということはワインの腐敗を意味し、歓迎されることのない現象なのだ。スパークリングワインの発祥や商品化については、どこで始まり誰が行ったのか諸説あり、いまひとつはっきりとしていないようだ。 シ
ゼロからトースターを作ってみた 最初に壊したのは、多分おもちゃだ。 人形遊びが嫌いで、虫を捕ったりパズルをしたり、図鑑を見るのが好きな子供だった。動いているものを見ると、どうして動くのかが知りたくて、バネ仕掛けのびっくり箱やオルゴールを分解したことを覚えている。目覚まし時計をバラしたときは、誰もがそうだろうけれど、最後にネジが1本余った。普通に動いたので問題

ホームに入ってくる新幹線に一礼している集団を見たことあるだろうか。フランスの国鉄総裁に「これをフランスに輸出してほしい」と言わしめた日本が誇る「おもてなし集団」である。前米国カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルェネッガー氏や米国運輸長官ラフード氏も、日本を訪れた際にわざわざこの集団を視察している。国内では『日経ビジネス』誌がこの集団を「最強のチーム」と

タイトルから誤解を招きそうなので、予め断っておくが、自己啓発書ではない。自動車王ヘンリー・フォードが発明王トーマス・エジソンから直接聞いた話をまとめた言行録である。今回新訳として出版された本書の原著は80年以上前に出版され、日本では昭和初期に一度翻訳されている。 二人はそれぞれ49歳、33歳のとき上司部下の関係で初めて出会い、その後、親しい友人として、お互い

線量計と機関銃。ふたつは戦時と現在をまたいで同じ役割を果たしている。戦時中、機関銃は科学の発達により「誰でも簡単に大量殺戮が可能な」兵器として発明された。機関銃を背負った人々は誰でも簡単に、躊躇せず、敵を打ち負かす。専門的な技術を必要としない武器は、当時の人々に衝撃を与えた。 そして3.11後の現在。人は線量計を片手に取り、原発と向き合う。かつて、エネルギー

四川省に生まれ、四川大学で日本文学を勉強した著者は、さらなる日本文化の研究のために来日し、日本の大学で修士号、博士号を取得した。異国の地で、異国の言葉で、異国の文化についての本を上梓するほどにまで、この中国人女性研究者を駆り立てたのは、日本の生活を通して感じ続けた感嘆と疑問である。 来日して初めての正月、彼女を驚かせたのは友人に振舞われた 屠蘇酒 (とそしゅ

日本語には相反する意味を持つことわざが、非常に多い。 「好きこそ物の上手なれ」と「下手の横好き」 「君子危うきに近寄らず」と「虎穴に入らずんば虎子を得ず」 「二度あることは三度ある」と「三度目の正直」などなど… 「蛙の子は蛙」と「鳶が鷹を生む」の関係も、その典型的な例と言えるだろう。前者は子の性質や能力は親に似るものだということであり、後者は突然変異のように

企業取材を仕事とするため、経営者に会うことは多い。国内の雇用に対する考え方を聞くことも少なくない。自分でも陳腐な質問だなと思うが、企業の生産拠点の海外移転に伴って国内の雇用縮小などを指す「空洞化」という言葉を一ヶ月に一回は使っているかもしれない。 「空洞化」について個人的に強い関心を持っているわけではない。本音を言えば、相手の答え方次第では記事の見出しが立ち

街と町は、違う。 私とあたしも、違う。 そして空地と空き地も、きっとどこか違う。 最初の1冊が取り扱うのは、「(公ではない)私が変えていく街」だ。 そこでは、空地は地価と収益性でシビアに評価され、市場の論理に翻弄される。 2冊目は「あたしがぶらつき、シャッターを切った町」の物語だ。 そこには、そもそも空き地がほとんど残っていないけれど、残された数少ない空き地

「単純ヘルペスⅠ型」 ウイルス。 日本人の8割が既に持っているウイルスと言われており、風邪の時や、夏のレジャーで紫外線を浴びた時など、抵抗力が落ちた時に、唇の隅に小さな発疹ができるのが主な症状である。と、他人事のように書いてみたが、かく言う私も「持っている」一人だ。いやー、かゆいんです、これが。そうなった後には、病院で飲み薬や塗り薬が処方されて、友人から「ペ

俳句と言えば何を思い浮かべるだろうか。年寄り趣味の代表格、自分のメッセージや感動の自己表現、五七五や季語を入れるなどルールが多そう……。そういった先入観をいったんチャラにして、俳句を「自分の外に出るためのゲーム」として捉えなおそう、というのが著者の提言だ。 その第一歩は「俳句は自己表現の手段」という考え方を否定すること。そもそも人間の「言いたいこと」なんて高

西洋列強の帝国主義が猛威を振るうなか、なぜ日本だけが近代化に成功したのか? という問いはいまだに歴史の大きなテーマの一つである。同じ時期に清朝で洋務運動、オスマン帝国でもタンジマートといった西欧文明を導入しようとする改革運動が行われたが、いずれも失敗に終わっていることを考えると確かに興味深い。列強諸国から遠く離れた日本の位置、天皇の存在など、今まで多くの理由

ロンドンのメイフェア地区に位置する僅か500mに満たない通りには紳士服のテーラーが30前後も軒を連ねている。紳士服の聖地として200年以上の歴史を持ち、テーラード・スーツの日本での呼称である「背広(せびろ)」の語源とも言われている。その通りの名をサヴィル・ロウという。人々は敬意と憧憬を込めてこの通りを「ゴールデンマイル」(黄金の道)と呼ぶ。 この本はサヴィル

自分の体験を手がかりに、雑食的に本を貪り読むと、自分の体験と本の登場人物が積んだ経験の境界線がわからなくなる。この本は読み終わった瞬間にその錯覚に囚われ、この本を読んだ前の世界に戻れなくなってしまった。 バックパッカー、古くは沢木耕太郎や藤原新也が有名だ。旅先でも彼らの本が伝説のバイブルとなり、バックパッカーの間で古本が交換され流通している。90年代は電波少

ディスカバリー・チャンネル、ナショナルジオグラフィック・チャンネルなど、海外のドキュメンタリー好きなら、オオカミの群れと一緒に暮らすこの男のこと知っているかも知れない。日本のテレビでも何度も取り上げられているので、彼の顔に見覚えのある人も多いだろう。 オオカミの群れとともに暮らし、服を何ヵ月も着替えず、羊の死体から直接生肉をむさぼり食い、唸り、遠吠えをする。

地獄というものがこの世に存在するのなら、著者が1994年にルワンダで見た光景こそ、そう呼ぶに相応しい。徹底的に破壊された都市、拷問の限りの果てに殺された人の山、その死体を食べて犬の大きさにまで成長したネズミ。そこには、正気を保っているほうが異常であると思われるような、圧倒的な現実が広がっていた。 本書の著者であるカナダ出身の軍人ロメオ・ダレールは、1993年

あらためて言うようなことでもないのだが、拙宅の本棚が大変なことになっている。毎月ハイペースで本を購入し続けているわけだから当然と言えば当然なのだが、スペースの確保以上に頭を悩ましているのが本の並べ方である。 いつもジャンル毎に分けるべく整理を始めるのだが、いかんせん買う本のカテゴリーに偏りがあるため、やがてそのルールも破綻。いつの間にか買った順番に置いてい

サブカルライターであり書評家であり、「プロインタビュアー」を名乗る吉田豪がサブカル業界人10人に迫ったインタビュー集だ。雑誌「クイック・ジャパン」の連載をまとめたもので、インタビュー対象はリリー・フランキー、大槻ケンヂ、松尾スズキ、みうらじゅん、菊池成孔など一定の知名度があると思われる人から杉作J太郎など一部のマニアには熱狂的に受けそうな人まで。狭いのか広い

「ところで―」 男が問いかけてくる。「君は1日に、どのくらいテレビを見るのかね。」 そして、諭すような口調で続ける。「30分未満がいい。長いことテレビを見ていると不幸になる。2時間半も見ようものなら、もはや両脚をどっぷりと不幸に埋めているようなものだ。」 すると、別の男が横から口を挟む。 「それでも、仮に君が左利きだったとするならば、運命は変わってくるかもし

本書は美の歴史100年を俯瞰したものだが、冒頭のワードマップに驚いた。その年表は世界の出来事と、アーティストの登場/主義と歴史がディケイド(十年)ごとに分けて整理している。ありそうで見た事がなかった。すでに〈ワードマップ〉シリーズではロングセラー『現代美術─アール・ヌーヴォーからポストモダンまで』(1988年)があるが、半世紀経過した今のタイミングで改良し本
弱いロボット (シリーズ ケアをひらく) この夏、東京新宿歌舞伎町に新名所となる ロボットレストラン が誕生した。行ってきた人の話によると、バブルのころに大流行したショーパブのようなものだが、本当にドでかいセクシー女性ロボットが登場し、ダンサーたちと絡むのだそうだ。一日3回ある公演は、ほぼ満席で、女性が見ても嫌悪感なく面白いとか。これはぜひ行ってみたい。 こ

2009年末、トヨタ自動車は苦渋の決断を下した。10年以上手塩に育て、優勝まであと一歩のところまで成長したトヨタF1チームを解体することを決めたのだ。F1撤退の記者会見にて見せた豊田社長の険しい顔、隣で悔し涙を流す山科専務の姿は記憶に新しい。 トヨタがF1に参戦したそもそもの発端は、1997年6月11日に奥田碩社長(当時)が発した「F1はどうだ?」という一言

都市の暮らし方の新しい常識を構想している研究会がある。その名は「 HOUSE VISION 」、長野オリンピック開会式のプログラム、愛地球博の公式ポスターなど日本の文化に根ざした仕事を行ってきたデザイナー原研哉が発案した。HOUSE VISIONは多様な技術産業の交差点に「家」がある考え、「家」から新しい日本の産業ビジョンを構想する壮大なプロジェクトである。

書店でこの本を見かけたとき、特に興味を持つこともなく一瞥してその場を離れた。しばらく店内をブラブラとしているとき、頭の中に山と森のイメージがわいてきた。その森は針葉樹で覆われた森。よく考えてみると行楽などで山に行くと車窓から見える森の多くは針葉樹の森ではないか? 自然林でこんなにも針葉樹の森が形成されるわけがない。そうだ日本の森の多くは人工林なのだ。そのよう

「リブセンス」という会社をご存知だろうか? 私は全く知らなかった。どうやらジョブセンスというアルバイト情報サイトなどを手がけているITベンチャーらしい。早稲田大学在学中にベンチャーコンテストで優勝。ベンチャー企業を立ち上げ、2011年12月には社長の村上太一が史上最年少の25歳1ヶ月で東証マザーズに上場している。現在では時価総額でSNSの雄mixiをも上回っ

最近、月曜の夜11時が待ち遠しくて仕方がない。NHKで「 スーパープレゼンテーション 」が放映されているからだ。世界が注目するイベント「TEDカンファレンス」を題材に、そのプレゼン手法を学ぶという番組であり、ナビゲーターをMITメディアラボ所長の伊藤 穣一氏が務めている。 そもそも「TEDカンファレンス」自体が面白いのだから、つまらないはずもない。学術、エン

想像してみてほしい。 産まれて間もない息子が眠るベビーベッドの上からテニスボールのモビールを吊るし、息子の右手に卓球のラケットをくくりつけて「ボールを打ってごらん」と語りかけたというテニス狂の父親に育てられ、テニスをしたいかと誰からも問われることのないままに、テニスが人生そのものとなっていった少年のことを。 わずか7歳にして、「ドラゴン」と名づけられた改造ボ

「就職氷河期」という言葉が定着するようになって久しい。一時は回復の兆しが見えそうな時期もあったがリーマンショックですべてが吹き飛んでしまった。雇用に関して僕ら若者は入口に立つことすら困難な時代になったと言っていい。「非正規雇用の増加」なんて言葉もしばし声高に叫ばれている。 それでは会社に入った後はどうだろう。すると「終身雇用の崩壊」「成果主義の徹底」なんて言

現代を代表する歌人の河野裕子が亡くなったのは2010年の夏だ。河野の死後、夫の永田和宏が妻の遺品の整理をしていて、ティッシュ箱を捨てようとしたときに目に入ってきたのが箱の上面の文字だった。横や裏にも文字は並んでいた。薄い文字で書かれていたが間違いなく歌の断片だった。ティッシュの箱だけでなく、薬袋や封筒にも文字は残されていた。死後、細胞学者であり歌人でもある永

『宗教とツーリズム』という題を見て、抜き差しならない何かがありそうな気がしたのだ。喩えて言うなら、ボランティアと偽善、とか、お金と愛、とか、処女より娼婦のほうが心は清純とか、そんな感じで、宗教なの?ツーリズムなの?どっち!という話ではないかと勝手に想像、よっしゃ、いってこい!とひっそりネット購入した。この本ベースにいろいろ無責任な事を考えたら、きっと楽しいに

ロンドン五輪の熱狂覚めやらぬ中、銀座で行われたメダリストのパレードには50万の観衆が駆けつけた。史上最多の38個のメダルを獲得した五輪のヒーロー・ヒロインたち、真剣勝負の険しい表情も凛々しいが、晴れやかな笑顔も見ていて気持ちが良いものだ。 栄光の勝利、そして歓喜の渦の中にあっても、天才アスリートは自分を支えてくれた人々への感謝の言葉を欠かさず口にする。彼らは