
『ヒロシマを暴いた男 米国人ジャーナリスト、国家権力への挑戦』《世紀のスクープ》マッカーサーが隠した被爆者の真実
1945年8月6日午前8時15分、世界で初めて、広島に原子爆弾が落とされた。三日後、今度は長崎が標的となった。日本は世界で唯一、核兵器で攻撃を受けた国となった。 本書はキノコ雲の下で生き残った生存者の生の声を初めて報道した『HIROSHIMA』の著者ジョン・ハーシーと記事を掲載した〈ニューヨーカー〉誌編集部が、原爆の被害を隠蔽しようとするアメリカ政府と東京の
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1945年8月6日午前8時15分、世界で初めて、広島に原子爆弾が落とされた。三日後、今度は長崎が標的となった。日本は世界で唯一、核兵器で攻撃を受けた国となった。 本書はキノコ雲の下で生き残った生存者の生の声を初めて報道した『HIROSHIMA』の著者ジョン・ハーシーと記事を掲載した〈ニューヨーカー〉誌編集部が、原爆の被害を隠蔽しようとするアメリカ政府と東京の

帰還兵、復員軍人の精神面の問題は古くて新しいテーマだ。戦中、戦後は日本でも問題視されたし、現代ではイラクに派遣された自衛官の中にもPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し苦しんでいる人たちがいる。 9.11米国同時多発テロ事件以降、10年以上にわたりアフガニスタン、イラクとの非対称戦争を行ってきた米国には、かなりの数の帰還兵、復員軍人が存在する。そして彼ら

映画 「ラストタンゴ・イン・パリ」 が公開当時、私は中学生だった。映画に対する興味が湧き、一人で観に行くことが許された時期でもある。性に対しても敏感だったから、この映画のスキャンダラスな評判はよく覚えている。 中年男性と若い女性が大胆なセックスを繰り返すイタリア映画で、監督はベルナルド・ベルトルッチ。主役の中年男はマーロン・ブランドで女性を演じたのが『あなた

1967年10月8日、ベトナム戦争反対を叫び佐藤栄作総理の南ベトナム訪問を阻止せんとする全学連と機動隊とが羽田・弁天橋で激突した。 当時18歳の京都大学一年生、山﨑博昭さんがこの争いの中で命を落とす。死因は学生たちが奪った装甲車に轢かれたとも、機動隊に殴られたからとも言われている。 全共闘世代の一まわり下「しらけ世代」である代島治彦監督はこの闘争をめぐって山

長靴の形をしているのはイタリアだけではない。米国のルイジアナ州もそうである。だが、現在のルイジアナ州の「靴底」はボロボロに破れ擦り切れている。靴底にあたる地域にはかつて広大な湿地帯があったが、海に変わってしまったのだ。 同州では1932年から2000年までの間に約4920平方キロメートルが失われたという(これは福岡県の面積約4987平方キロメートルに匹敵する

世界最大の「コロナ敗戦国」になったアメリカ。新型コロナウイルスの感染者数は3440万人。死亡者数は61万人を超えた。これは第一次世界大戦と第二次世界大戦、そしてベトナム戦争で亡くなった死者の合計よりも多い。CDC(疾病予防管理センター)やトランプ前大統領が楽観的だったこともあり、初期対応がまずかったのは間違いない。しかしアメリカは新型コロナウイルスに対して無

我が家で「G」といえば例のアレである。妻がこの世でもっとも苦手とし、名前すら口にしたくないということで、我が家では「G」と呼ばれている。「G」が出ると私の出番だ。悲鳴をあげる妻をよそに素手でぱっと捕まえる。妻によれば、「この人と一緒になって良かった」と思う唯一の瞬間らしい。ちなみに「G」が現れるのは年に一度あるかないかくらいなのだが。 ところで、東京都庁にも

小説家・古川日出男は福島のシイタケ生産農家に生まれた。三人兄弟の末っ子で、兄と姉がいる。18歳で故郷を離れ家業は兄が継いだ。そして2011年3月11日、東日本大震災が彼の故郷を襲う。 冒頭は2019年12月に行われた母親の納骨風景だ。その直前、施設で寝たきりだった母の胃瘻をやめることを兄弟で決めたときに、躊躇っていた震災後の取材を兄に初めて申し出る。 第一部

新型コロナウィルス感染爆発の初期、台湾はIQ180の頭脳を持つデジタル担当相オードリー・タンによる的確な対策でパニックを免れた。昨年出版された評伝『Auオードリー・タン』(文藝春秋)では彼女の生い立ちから家族や仲間への思い、未来への展望などが詳述されている。 そのなかで、彼女の原点が、いじめにあった台湾の小学校を離れドイツで教育を受けたことだと知った。 オー

昨年、私は東京を離れ、某南の島に拠点を移した。周囲に、自生の葉物や果物を見分けて収穫する人や、自分で魚や猪を獲る人、潮の満ち引きや風の流れを読める人がぐんと増えたなかで、痛感しているのが「ああ、私何もできない」ということだ。頭でっかちで、「生きる力」「生きた知恵」が悲しいほどない…。 そんな反省の日々を送っていたなかで出会った本書『学校の枠をはずした』は、子

著者はドラマなどでお馴染みの桜田門にある警視庁科学捜査研究所(科捜研)の係長時代、地下鉄サリン事件の緊急鑑定に携わることになる。鑑定資料として車輛床面を拭き取ったものを持ち込んだ捜査員が皆「暗い」と言い、目に縮瞳が起こっていることから有機リン酸系の毒物であると判断。ガスクロマトグラフ質量分析装置によって「サリン」が検出された。 その前年、松本で起こったサリン

翻訳は面白い。例えば、松田青子の短編集 『おばちゃんたちのいるところ』 の英訳タイトル Where The Wild Ladies Are を初めて目にした時、「おばちゃん」が“Wild Lady”と訳されているのに笑ってしまった。ワイルドレディー。ひとたび目にするともう、「ヒョウ柄の服を着たやたら圧の強い年配女性」のイメージしか浮かばない。ちなみにこの作品

コロナ禍でステイ・ホーム時間が増えるなか、断捨離をしたという人は少なくないと思います。最初の緊急事態宣言から1年が経ちましたが、あらためて家を見回してみてください。物を減らして増えたはずのスペースに、また新しい物が増えていませんか? 私たちの日常は「買う」ことの連続です。「買えなくなるかもしれない」と思えば、買い溜めをし、外出しての買い物が難しくなれば、イン

探偵の人生にじっくり焦点を当てた本をずっと読みたいと思っていた。フィクションではなくノンフィクションでだ。結論を先に書いてしまうと、大満足の読書となった。 詳説していこう。本書は、表舞台ではまずお目にかかることのないリアルの探偵9名(と依頼者1名)にインタビューを行い、彼らの仕事内容と複雑な半生を解き明かしたルポルタージュである。著者はフリーランスの編集者で

コロナ禍が終息する気配を全く見せない現在、来年の状況を予測するのは極めて難しい。その一方、20年先であれば「歴史を的確に見る目」を持つ人ならば予測が可能となる。 本書は2040年の未来を予測・解析したもので、森羅万象に渡って博識の著者がその炯眼を余すところなく披露する。既に多くの書評によって紹介されているが、2040年というマジックナンバーは遠い未来ではなく

ひとつの犯罪が時代を象徴することがある。 令和元年(2019年)5月28日、朝7時40分頃、小田急線とJR南武線が交差する登戸駅近くで、男がスクールバスを待っていた児童や保護者らを次々と包丁で刺した。男は終始無言で凶行に及び、20メートルほど走って逃げた後、突然自らの首を掻き切り絶命した。この間わずか十数秒だった。 犯人によって小学6年生の女の子と39歳の保

『安いニッポン』というタイトルは、少し前ならキャッチーなものだったかもしれないが、今となってはうら寂しく感じられる。多くの国民が、世界の先進国と比べると自分たちは「下流」だ、ということに薄々気づいてしまっているからだ。 本書は、一昨年、日本経済新聞に掲載された「安いニッポン」シリーズをベースに、新たな取材から得た話などを盛り込み書籍化したものだ。連載時とくに

帯にある身も蓋もない惹句のとおり、本書は刑務所に服役する凶悪犯の大多数が自らの犯した罪について何ら反省していないと指摘する一冊である。 著者は、2件の殺人によって無期懲役判決を受け、すでに四半世紀以上服役中の人物。刑期が10年以上で犯罪傾向の進んでいる受刑者を対象とする「LB級刑務所」で日々を過ごす。たいへんな読書家で、支援者を通じて自身の読書遍歴や死刑存廃

マイノリティというと障害者などの社会的な少数者を想起するだろう。しかしこの本のマイノリティはもっと広い概念だ。例えば、著者は「運動音痴」を「スポーツ弱者」と定義しなおし、そのマイノリティ性に注目して「ゆるスポーツ」を生み出した。私も一人のスポーツ弱者として、この発想の新しさと優しさに感動してしまった。 読みどころは数多あるが、この「ゆるスポーツ」について本稿

新型コロナウィルス感染症のパンデミックから1年以上が経過した。窮屈な生活にも慣れてきたが、流行初期の恐怖にかられた混乱の経験は多くの教訓と知恵を残している。 『世界を敵に回しても、命のために闘う』の副題は「ダイヤモンド・プリンセス号の真実」。大型クルーズ船内で起きた集団感染は日本が最初にコロナの危機に直面した事件だった。 多くの人は神戸大教授で感染症専門医の

昨年秋から、姑の介護生活がにわかに始まった。 89歳で乳癌発覚!それだけでも驚くのに、特殊な癌なのですぐに全摘出をせよ、とのこと。衰えたりとはいえ、頭も身体も元気で病気のなかった母にとっては青天の霹靂だ。神戸で一人住まいなので、毎週の検査に付き添うため、遠距離を通うことになった。 そんな日々が続くうち、少しずつ母の言動がおかしくなってきた。そして手術後、想像

まずは著者の紹介からはじめよう。 管賀江留郎氏は在野の研究者にして著述家である。長年、ウェブで「少年犯罪データベース」を主宰し、また2007年には、そこに集積された資料に基づいて『戦前の少年犯罪』(築地書館)を上梓した。 この本に盛り込まれた内容は、少年犯罪の“増加”や“凶悪化”に心を痛め、その元凶として、現代の薄情な潮勢から時代の風俗の病理、果ては戦後日本

何か不測の事態を前にすると、本読みの習性でつい本に手が伸びてしまう。 中国・武漢で発生した原因不明の肺炎に世間が注目し始めた頃、読み直さねばと書棚からひっぱり出したのは、 『パンデミックとたたかう』 という本だった。 この本は、SF作家の瀬名秀明氏が東北大学医学系研究科教授(当時)の押谷仁氏と新型インフルエンザについて議論を交わしたものだ。2009年に出た本

読み始めた途端、あの日の記憶が鮮明に甦った。 1995年3月20日、月曜日の朝だった。地下鉄で「異臭事件」が発生したとの一報を警視庁記者クラブで聞いた。当時の無線記録によれば、通信指令本部に八丁堀駅での乗客の異変を知らせる無線が入ったのは8時21分である。3分後、築地駅から「ガソリンがまかれた」との情報が入り、他の駅からも相次いで被害報告が入った。建物を飛び

テクノロジーが社会に普及するには、何が必要なのだろうか。コロナ禍で話題になった電子署名やUber、Airbnb…世に広がるものと、そうでないものは何が違うのか。電気が社会に普及した歴史など数々の事例から見出した、成功する社会実装の手法とは?スタートアップ支援の経験と豊富な事例研究実績がある著者が書いた、新たな視野を提示する一冊だ。 本書の基点は、本書の母体と

東日本大震災から10年。10歳から20歳になるのと50歳から60歳になるのとでは体感時間の長さや意味が違うかもしれないが、それでも誰もが等しく10歳歳を取った。 「あの日のわたしへ手紙をつづる」と副題が付された本書は、SFやファンタジー小説のようなタイムワープができたら、という設定がなされている。あの大地震と原発事故の被災者であり、年齢も性別も違う31人が、

「人材」という言葉がちょっと苦手だ。社会に広く根付いた言葉だし、自分だって使うこともあるが、どうもこの言葉には人をスペックだけでとらえているようなニュアンスを感じてしまう。使えるか使えないか、そんな限られた側面だけでしか人間をとらえていないような。 だから「高度外国人材」という言葉を目にした時はドン引きしてしまった。高度外国人材とは、簡単に言えば、「学歴や年

本書『怒りの時代││世界を覆う憤怒の近現代史』は、インドの評論家で作家のパンカジ・ミシュラのAge of Anger: A History of the Present を全訳したものである。原書は2017年1月、イギリスのアレン・レーンから刊行された。刊行直後からイギリスやアメリカを中心に話題となり、「ニューヨーク・タイムズ」や「ガーディアン」などの有力紙

親を否定できない。 本書で考えたかったのは、この点です。 生き物である以上、親がいることを誰も否定できない。それだけではなく、父親と母親は、誰にとっても否定できない。否定しようとすればするほど、コンプレックスや負い目を、わたしたち自身が感じます。 わたしの場合、父親は、医者として成功し、古希を超えて筋力を鍛えつづける元体育会ラグビー部員で、母親は、子育てから

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言、その後の辞任会見を見て、私は少し驚くほど怒りを感じていた。それと同時に、このような世の中を放置してきてしまった自分自身にも腹を立てていた。多分、同じように思った女性は多かっただろう。森元会長が実例として挙げられた日本ラグビー協会で、女性で初めて理事を務めた稲沢裕子・昭和女子大特命教授が 朝日新聞の

本書は『やわらかな遺伝子』や『繁栄』など多くのベストセラーを世に送り出してきたマット・リドレーが昨年発表した『 How Innovation Works』 の全訳である。 リドレーといえば、『利己的な遺伝子』などで知られるリチャード・ドーキンスと並び称される科学啓蒙家だ。一般読者向けに科学についてわかりやすく解き明かす名手である。しかも彼が語るのはいわゆる科

われわれ人類の平均寿命は延び続け、死亡率は低下し続けている。それは、先進国と発展途上国の別なく起きている。当然、喜ぶべき事象だ。 しかし、近年、米国の大卒未満の白人の間には、この世界的な潮流とは逆の傾向が見られる。労働階層の白人たちの平均余命は短くなり、死亡率が上がっているのだ。1990年代末頃から、とくに45〜55歳の低学歴中年白人の死亡率は年々高くなって

「被害にあった人は、他の人が同じような目にあわないために活動をしている人が多い」ということをよく聞く。 大変な使命を背負わされて、勇気をもってそれを果たしている人がいる。本書の編著者、入江杏さんもそのひとりだ。世田谷事件の被害者遺族だ。 この本は、入江杏さんが主宰する「ミシュカの森」に登壇した、柳田邦夫、若松英輔、星野智幸、東畑開人、平野啓一郎、島薗進の錚々

本にブックカバーはつけない。これを長年の流儀としてきた。 通勤電車で本を開くと、目の前に座る人の視線がきまって表紙に注がれる。本との出会いは何がきっかけになるかわからない。中には電車でたまたま見かけて興味を持ち、本を買う人だっているかもしれない。出版文化への貢献のためなら、喜んで歩く広告塔になろう。そう考えて、どんな本であろうと(たとえ 『性豪』 や 『鍵開

社会 / HONZブックマーク
本書の初版がイギリスで出版された2020年2月13 日、僕の頭はほかのことでいっぱいだった。COVID│19 (新型コロナウイルス)について朝に報告されたデータを見たあと、感染爆発の分析で自分たちが大きな間違いを犯したのかどうか確認する作業に追われていたのだ。その日中国から報告された新規患者数が1万5000人を超え、前日より750%も増えていた 。僕たちの調

大好きな2時間ドラマの再放送を見ていると、必ずと言っていいほど「過払い金の返還請求をおすすめするCM」が流れる。一時は消費者金融の過払い金返還請求を進めるものが多かったが、最近はクレジットカードでも過払い金がある可能性があるらしく、「もしかしたらあなたにも」とひっきりなしに流れてくる。ラジオも同じだ。半日も聞いていれば一度はその類を聞くことになる。よほど需要

本書の著者ファリード・ザカリアは、米CNNの報道番組「Fareed Zakaria GPS」のホスト役を務めている。同時に、ワシントン・ポスト紙のコラムニストを務めるなど、ベストセラー作家であり世界的コラムニストである。 米マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツが今回の新型コロナウイルスのようなパンデミックを、2015年のTEDトークで警告していたのは

本書は、今年度で京都大学を定年退官するHONZレビュアーの鎌田浩毅教授の最新刊であり、退官記念論文とも言える力作である。これは全ての日本在住者に等しく関わるものなので、是非、手に取って熟読して頂きたい。 本書のポイントは、1000年に一度という2011年の東日本大震災をターニングポイントとして、日本列島全体が地震の活動期、地球科学的に見た「動く大地の時代」に

「◯◯の天皇」という形容がある。 最近あまり目にしなくなったが、かつては週刊誌などでよく見かけた表現だ。ただしこの言葉を冠するには、相手もそれなりの人物でなければならない。たとえば「◯◯」に適当な企業や団体の名前でも入れてみれば、天皇になぞらえるには、あまりに小粒な人物しかいないことがよくわかるだろう。 出版界にはかつてこの呼称がぴたりと当てはまる人物がいた

コロナ禍に関する本はこれまでに数多く刊行されてきた。世界中の著名人が現状やコロナ後の世界について語っている。どれも示唆に富んでいて刮目するばかりだ。テレビでも、現地に派遣された特派員が各国の状況をリポートする様子を度々観てきた。彼らもコロナ禍での暮らしに不便を感じながら、必死に現地の様子を伝えている。 この本には、それらの本やテレビには映らない世界が広がって