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『震災と行方不明』喪われたつながりを求めて 書影

社会 / 事件・事故

『震災と行方不明』喪われたつながりを求めて

新型コロナウィルス禍によって東日本大震災3.11の政府主催の追悼式は中止となり、総理官邸での献花式が行われた。被災した各地方での追悼式も規模の縮小などを余儀なくされ、震災から9年目のこの日は、それぞれの胸の中であの日を思い出していた。 東北学院大学教養学部地域構想学科、金菱清ゼミナールによる震災の記録ブロジェクトから出版された震災関係の本はこれで10冊目にな

『戦争は女の顔をしていない 1』女たちの独ソ戦の記憶、決死の覚悟で求めたものとは 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『戦争は女の顔をしていない 1』女たちの独ソ戦の記憶、決死の覚悟で求めたものとは

発売直後から、私のSNSのタイムラインには「あの名作がついに」「まさかのコミック化」と、賛辞のコメントが相次いだ。独ソ戦という、日本ではあまり知られることのなかった出来事が、なぜこんなに多くの人の心を動かすのか? 思わず手に取らずにはいられなかった一冊だ。 原作は、2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのデビュー作である。独ソ

『2050年 世界人口大減少』と『人口で語る世界史』2050年以降の世界人口は減少に転じるのか? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『2050年 世界人口大減少』と『人口で語る世界史』2050年以降の世界人口は減少に転じるのか?

経営学者で未来学者のピーター・ドラッカーは、1985年の著書『イノベーションと起業家精神』の中で、未来予測における人口動態(demography)の有用性について、「人口、年齢、雇用、教育、所得など人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。予測が容易である。リードタイムまで明らかである」と語っている。 昨年6月に発表された国連報告書『世界

『シン・ニホン』未来を予測するのに一番良い方法は、それを発明することである 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『シン・ニホン』未来を予測するのに一番良い方法は、それを発明することである

本書は10年前に発売された安宅和人氏の名著『イシューからはじめよ』の続編とも言える、ファクトベースの現状分析に基づいた、新たな時代に向けての日本社会への提言書である。 本書の主題は、冒頭にある以下の文章に集約されている。 「ほとんどの人は、あまりにも多くのことが変数として一気に動く目まぐるしさの中で、変化が落ち着く日を待っているようだ。でも、残念ながらそんな

再生可能エネルギーを前提としたインフラへと大転換するための道筋を示した一冊──『グローバル・グリーン・ニューディール: 2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

再生可能エネルギーを前提としたインフラへと大転換するための道筋を示した一冊──『グローバル・グリーン・ニューディール: 2028年までに化石燃料文明は崩壊、大胆な経済プランが地球上の生命を救う』

『第三次産業革命』、『限界費用ゼロ社会』などの著作でこれから先のエネルギー源、都市インフラについて一貫した提言を行ってきたジェレミー・リフキンによるこの最新作は、副題にも入っている通り、化石燃料文明の崩壊に備えて再生可能エネルギーを主軸にした新しいインフラを、今こそ整備するときであるという現状の紹介とこれからについての提言の書である。 現在、地球上では温室効

『イージス・アショアを追う』国の防衛政策を徹底検証、地方新聞の戦いの記録 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『イージス・アショアを追う』国の防衛政策を徹底検証、地方新聞の戦いの記録

発端は、読売新聞の記事だった。2017年11月11日の朝刊で「イージス・アショア」という新たなミサイル防衛システムを国が導入するにあたり、秋田と山口が配備先に挙がっていると報じた。 地元紙・秋田 魁(さきがけ) 新報の記者たちは当初、イージス・アショアがどのようなものか知らなかった。だが、自分たちの街がミサイル防衛の最前線に位置づけられそうになっていることだ

『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」 書影

社会 / 事件・事故

『孤塁』初めて語られた双葉郡消防士たちの「あの日」

あの日、あなたはどこで何をしていただろうか。 2011年3月11日、福島県双葉郡では、多くの学校で卒業式が執り行われた。子どもたちは通い慣れた校舎に名残惜しさを感じながら、未来への希望に胸を膨らませていたに違いない。だが14時46分、巨大地震がこの地を襲った。 本書は、双葉郡の消防士たちが初めて「あの日」について語ったノンフィクションである。震災について書か

『「その日」の前に』よく生きよ、死を思え 書影

医学・心理学 / 社会

『「その日」の前に』よく生きよ、死を思え

誰もが行きつく人生の終着点、死というゴールがすぐそこに見えている人は、何を考えているのだろう?ロサンゼルス在住の写真家、アンドルー・ジョージは「死ぬ前の自分にとって大事なことは何だろう」と考えた。 カリフォルニアにあるプロヴィデンス聖十字架医療センターに入院する緩和ケアを受ける患者たちひとりひとりに対峙し、写真とともに彼らの考えや歴史を語ってもらう試みは2年

『スクエア・アンド・タワー』ネットワークと階層制組織 2軸で読み解く世界の歴史 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『スクエア・アンド・タワー』ネットワークと階層制組織 2軸で読み解く世界の歴史

本書は『タイム』誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、今、世界で最も優れた知性の一人といわれる歴史学者ニーアル・ファーガソンが、過去500年にわたる世界の歴史を、国家や企業など「垂直に伸びる階層制組織(タワー)」と、革命運動やSNS(交流サイト)など「ヨコに広がる草の根のネットワーク(スクエア)」という斬新な切り口で読み解いた画期的な本である。 フ

『プログレッシブ キャピタリズム』経済学が目指すべき目的とは? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『プログレッシブ キャピタリズム』経済学が目指すべき目的とは?

本書の著者であるコロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は、非対称情報下での市場経済理論への貢献により、2001年にジョージ・アカロフ、マイケル・スペンスと共にノーベル経済学賞を受賞した経済学の泰斗である。 研究面において優れた論文を多数発表し、米国の経済政策に大きな影響を与えたのみならず、クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、世界銀行で上級副総裁

『得する、徳。』徳を積む恩恵 書影

教養・雑学 / 社会

『得する、徳。』徳を積む恩恵

ペンシルベニア大学教授のアダム・グラントは、人間を「ギバー(人に惜しみなく与える人)」「テイカー(自分の利益を優先させる人)」「マッチャー(状況によってギバーにもテイカーにもなる人)」と3種に分類した。そしてギバーこそが、成功者になれることを実験と調査で明らかにした。 本書は実際に徳を積むことで、どれだけ自分が得をするかを、渋沢栄一や土光敏夫など偉人から検証

『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 書影

人物 / 社会

『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論

告白しよう。評者はずっと、なるべく他人と関わりたくないと祈りながら生きてきた。楽しいことも悲しいことも何も経験したいと思わない。誰かと揉めたり争ったりするなどもってのほかだ。人生の糧になる? 知るか。全部ストレスだ。願いは一つ、社会的接点を一切放棄して、永遠に寝床で布団にくるまっていたい……。 こんな暗い感情を披瀝したところで会話が盛り上がるはずがなく、賛同

『2050年のメディア』メディアの栄枯盛衰を辿る記録 書影

社会 / ビジネス

『2050年のメディア』メディアの栄枯盛衰を辿る記録

最初にパソコンを買ったのは1997年のこと。Windows95の発売で一般家庭でもコンピュータを持つことが普通になった。インターネットもダイアルアップで繋ぎ、ジリジリという音を聞きながら画像が出てくるのを待った。 思えばわずか20年ほど前のことだ。今では当たり前に手の中にスマホがあり、気になることはググれば済む。むしろ携帯を忘れると心細くてたまらない。若い世

『時間とテクノロジー』時間と空間、主観と客観。アイデンティティーのこれから 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『時間とテクノロジー』時間と空間、主観と客観。アイデンティティーのこれから

ヒトはどこから来たのか? そしてどこへ行くのか? その答えを求めることは、人類にとって普遍的なテーマといえる。確かにわれわれは過去の歴史の中に答えを求め、そして行く末を夢想してきた。それは、時間感覚の中にこそ、われわれのアイデンティティーがあると固く信じてきたからだ。 しかし、この時間感覚というものは、時代によって移り変わるものである。室町時代のような中世に

『得する、徳』は令和の「論語と算盤」だ! ということにしておきたい 書影

社会 / ビジネス

『得する、徳』は令和の「論語と算盤」だ! ということにしておきたい

この本が送られてきた時、腰が抜けるほど驚いた。あの栗下直也が徳を説くというのだ。すでに レビュー を書いているアーヤ藍ならずとも、栗下を知っている人なら全員が驚愕反応を示すはずだ。もちろん、日本中で栗下を知っている人はそう多くないだろうが、知らない人も同じくらい驚いていただきたい。 なにしろ、栗下といえば酒である。それしかない。HONZで飲み会があると、その

『21Lessons 21世紀の人類のための21の思考』急速に変化する世界をどう生きる 知の巨人が語る現代の問題21章 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『21Lessons 21世紀の人類のための21の思考』急速に変化する世界をどう生きる 知の巨人が語る現代の問題21章

近年、急速に発展するテクノロジーと科学の進歩は、産業革命を超える社会的変化を私たちに強要しつつある。その変化は産業革命よりもはるかに大きく、そして速い。そのような現代の問題に警鐘を鳴らすのが、世界的なベストセラーとなった『サピエンス全史』の著者、ユヴァル・ノア・ハラリだ。 今作『21 Lessons』では科学、テクノロジー、哲学などの最新研究を取り入れながら

天邪鬼な人にもオススメできる、酔いどれ栗下直也が説く『得する、徳』 書影

教養・雑学 / 社会

天邪鬼な人にもオススメできる、酔いどれ栗下直也が説く『得する、徳』

年末、HONZメンバーの栗下直也から急なメッセージが飛んできた。 「新しい本を書きまして… ちなみに、酒の話は一切出てきません」 え、栗下さんから酒をとったら…(以下略)という気持ちに若干なりつつ、届いた包みを開けてみると出てきたタイトルが『得する、徳。』。 意外すぎるテーマに驚いた一方で、ちょっと啓発本っぽいタイトルに、天邪鬼な私は、少しあとずさってしまっ

時系列に沿った「因果の物語」が通じなくなった世の中で生まれた新しい哲学『時間とテクノロジー』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

時系列に沿った「因果の物語」が通じなくなった世の中で生まれた新しい哲学『時間とテクノロジー』

たとえばあなたが会社員で、「あなたはなぜその部署で働いているのか」と質問されたとしよう。自分で志望した、先輩に推薦された、いきなり指名された、など様々な理由があると思う。そしてあなたは今、その理由を過去に遡り、上司や同僚との会話、これまでの人事移動、そして大学で勉強していた頃の風景を思い返しているかもしれない。 今の自分を鑑みる時、過去を振り返る。過去が今の

『片手袋研究入門』路上観察学会を震撼させた未来までを見渡す「考現学」 書影

教養・雑学 / 社会

『片手袋研究入門』路上観察学会を震撼させた未来までを見渡す「考現学」

片手袋問題に私が触れたのは、少し前のことだ。街道沿いに軍手が片方だけ落ちているのはなぜか?を検討していたバラエティのテレビ番組を見たのだ。その時、出演していたのが本書の著者かどうかは定かではないのだが、トラックの脇腹にある給油口のキャップに被せていたものが、走行中に落ちるのだ、という結論に驚いたのを覚えている。 その後、タモリ倶楽部で著者を知った。考現学にも

『ラディカル・マーケット』ラディカルなマーケットが創造する、平等で寛容で成長する社会とは 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ラディカル・マーケット』ラディカルなマーケットが創造する、平等で寛容で成長する社会とは

本書は、マイクロソフト首席研究員兼イェール大学客員研究員のグレン・ワイルと、シカゴ大学ロースクール教授のエリック・ポズナーによる共著である。 34歳の社会工学者・経済学者ワイルは、本書を監訳している大阪大学の安田洋祐准教授のプリンストン大学留学時代のオフィスメートで、同大学を首席で卒業して直ぐに大学院に進学し、経済学博士号をわずか1年で取得した大秀才だと言う

『2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望』SDGsを通して見る2030年の世界地図 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望』SDGsを通して見る2030年の世界地図

著者の落合陽一は、学者、メディアアーティスト、実業家など多くの顔を持ち、「現代の魔法使い」と呼ばれる若手マルチタレントである。30歳で筑波大学学長補佐に就任したことでも話題になった。 その著者が、2015年の国連サミットで採択された、持続可能な世界を実現するための共通目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)について解説

2020年代突入直後にめくりたい!未来の本 3冊 書影

サイエンス / 教養・雑学

2020年代突入直後にめくりたい!未来の本 3冊

そもそも、編集部からの無茶振りをよくも引き受けたものだ。100年前に『日本及日本人』という雑誌の臨時増刊号で前例があったといえども、100年後に思いを巡らせることなど、あまりに無謀だ。 100年後なら生きていないから、当たってもハズレても生きていないから結果は問われないと開き直るのは、上野千鶴子だ。そのまま現政権の批判に流れ込んでいく結論あは、読者の期待に答

『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『人口減少社会のデザイン』「人口減少社会」に直面する日本に残された選択肢とは

厚生労働省は12月24日、2019年の人口動態統計の年間推計を発表し、それが大きなニュースになっている。2019年の日本人の国内出生数は、最少だった2018年の91万8400人を下回り、前年比5.92%減の86万4千人となり、1899年の統計開始以来初めて90万人を下回った。出生数が死亡数を下回る人口の自然減も51万2千人と初めて50万人を超えて、2017年

『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』

ブレイディみかこが『THIS IS JAPAN』を著してから3年。アメリカではトランプが大統領となり、イギリスではメイに代わってボリス・ジョンソンが首相となった。停滞、格差、分断がキーワードとして繰り返し取り上げられる中、旧来の「右vs.左」とは異なる「上vs.下」の構図が、瞬間的には描かれる。しかしすぐさま、人々の高まった不満は、ポピュリズムの構図へと着地

『お金本』カネには色がないが、使い手には色がある 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『お金本』カネには色がないが、使い手には色がある

経団連(日本経済団体連合会)の1次集計では、大手企業に限れば冬のボーナスの平均額は過去最高なのだという。ほくほく顔の人もいれば、まったくピンと来ない人もいるだろう。不思議なことに、収入が少なくても貯める人は貯めているし、多くもらおうがカネがない人は常にない。それは会社員でも一芸に秀でた人でも同じであることが本書を読むとわかる。 作家の「お金」にまつわる約10

日本の科学は失速状態  『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』 書影

サイエンス / 社会

日本の科学は失速状態 『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』

日本の科学は失速している。一昨年の3月、ネイチャー誌に掲載されたレポートは大きな反響を呼んだ。一般の人たちには驚きを持って迎えられたようだが、多くの研究者にとっては、やはりそうかという感じであった。 『誰が科学を殺すのか』は、企業の「失われた10年」、「選択と集中」でゆがむ大学、「改革病」の源流を探る、海外の潮流、の4章から構成されている。毎日新聞に掲載され

『ドライバーレスの衝撃――自動運転車が社会を支配する』 書影

社会 / 「解説」から読む本

『ドライバーレスの衝撃――自動運転車が社会を支配する』

本書は2018年11月に出版された、サミュエル・シュウォルツによる No One at the Wheel: Driverless Cars and the Road of the Future (誰も運転していない――自動運転車と道路の未来)の邦訳である。 原題にある「ホイール(Wheel)」とはハンドルもしくは車輪のことで、直訳すれば「ハンドルのところに

『野生化するイノベーション 日本経済「失われた20年」を超える 』イノベーションに今、何が起きているのか 書影

社会 / ビジネス

『野生化するイノベーション 日本経済「失われた20年」を超える 』イノベーションに今、何が起きているのか

イノベーションは、意味のあいまいなままに、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉として、多用されています。日本企業の「有価証券報告書」を調べると、1,100社以上がイノベーションという言葉を用いています。この10年で4倍以上(2006〜2007年では、262社)に増え、短期間で浸透しています。 時事用語辞典では、プラスティック・ワード(人工的で

『義足と歩む ルワンダに生きる日本人義肢装具士』ジェノサイドから25年、ルワンダの今 書影

社会 / 世界史

『義足と歩む ルワンダに生きる日本人義肢装具士』ジェノサイドから25年、ルワンダの今

1994年、アフリカのルワンダで大虐殺(ジェノサイド)が起こった。フツ族によるツチ族の虐殺で、百万人もの死者が出た。 男も女も大人も子どもも、赤ちゃんでさえ犠牲者となった。生き残っても、手足を切り落とされたり地雷で吹き飛ばされたりして障害を負った人が何十万人と残された。 ルダシングワ真美さんは義肢装具士である。マラリヤによって足が不自由になったルワンダ人の夫

『古典は本当に必要なのか、否定論者と議論して本気で考えてみた。』難問と相対する白熱の全記録 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『古典は本当に必要なのか、否定論者と議論して本気で考えてみた。』難問と相対する白熱の全記録

今年1月14日、ツイッターである話題がトレンドを席巻した。「#古典は本当に必要なのか」というハッシュタグに連なる論争である。震源は明星大学人文学部日本文学科が主催した同名シンポジウムだ。 この催しの趣旨は以下のとおりだ。2015年の文系学部廃止報道以降、日本の古典文学研究・教育は縮小の一途をたどっている。この危機に対して、古典(本書では主に古文・漢文を指す)

『危機と人類』を買ったのは、どういう人たちなのか? 書影

社会 / 併せて読まれたこの一冊

『危機と人類』を買ったのは、どういう人たちなのか?

9月・10月と荒天の影響を受けて書店店頭も大苦戦中です。そんな中、ノンフィクションジャンルには大きな追い風が吹いてきつつあります。まずは先日こちらでもご紹介した『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』のYahoo!ニュース|本屋大賞 2019年ノンフィクション本大賞の大賞授賞。ノンフィクションの”普通“を超える驚異的な売れ方で関係者を驚かせています。

『AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望』AIが突きつける「人間とは何か?」という根源的な問い 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『AI以後 変貌するテクノロジーの危機と希望』AIが突きつける「人間とは何か?」という根源的な問い

本書は、NHKドキュメンタリー『人間ってナンだ?超AI入門』の特別編として、『世界の知性が語るパラダイム転換』というタイトルで放送された、マックス・テグマーク(宇宙物理学)、ウェンデル・ウォラック(倫理学)、ダニエル・デネット(哲学)、ケヴィン・ケリー(編集学)という4人の世界的知性のインタビューを一冊にまとめたものである。 我々は今、AI(人工知能)の登場

『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話』ギークな女子高校生2人の痛快サクセスストーリー 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ガール・コード プログラミングで世界を変えた女子高生二人のほんとうのお話』ギークな女子高校生2人の痛快サクセスストーリー

ある日を境に急に有名人になってしまうなんて経験、そうそうないだろう。だがソフィーとアンディの人生にはそのめったにないことが起きた。本書は、しなやかな発想で世界を驚かせた女子高校生2人の成長物語である。 ソフィー・ハウザーは、授業中に手を挙げて発表することにもおびえるほどの極度のあがり症だ。気楽に自分を表現できる場は日記か親友の前だけ。そんな彼女は、スタートア

見えなくても、聞こえなくても、映画を一緒に楽しむ『夢のユニバーサルシアター』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

見えなくても、聞こえなくても、映画を一緒に楽しむ『夢のユニバーサルシアター』

「見えない」のは、何か力を失った状態ではなく、「視覚に頼らない」という力をもつことでもあるのだと、ここ数年、いろんなご縁のなかで感じている。 その”ご縁”のひとつが、東京都北区田端にある、20席ほどの小さな映画館、そして日本初の「ユニバーサルシアター」でもある Cinema Chupki Tabata(シネマ・チュプキ・タバタ) だ。 「ユニバーサルシアター

『愛という名の支配』わたしたちを幸せにするフェミニズム 書影

社会 / 「解説」から読む本

『愛という名の支配』わたしたちを幸せにするフェミニズム

田嶋陽子さんは、討論バラエティ『ビートたけしのTVタックル』への出演で高い知名度を得た、日本を代表するフェミニストだ。時は1990年代、平成がはじまったばかりのころ。フェミニストがどういう人なのか、フェミニズムがなんなのかまったく知らなかった当時のわたしも、この番組でのやりとりを面白おかしく見ているうちに、「フェミニスト=田嶋陽子」と同義語のようにすり込まれ

タピオカドリンクがヤクザの資金源に?『教養としてのヤクザ』 書影

教養・雑学 / 社会

タピオカドリンクがヤクザの資金源に?『教養としてのヤクザ』

「教養」がブームになってひさしい。2010年代の前半から『教養としての○○』というタイトルの本も数えきれないほど発売されている。そんな中、『教養としてのヤクザ』というタイトルの本を書店で目にして、つい手に取ってしまった。完全にタイトル勝ちである。ヤクザの話がいったい教養になるのかどうか?はなはだ疑問ではあるが、著者の名前を見て、これは買いだと確信した。 なぜ

著者インタビュー『哲学と宗教全史』出口治明氏 書影

社会 / 著者インタビュー

著者インタビュー『哲学と宗教全史』出口治明氏

いきなりだが、私は自分の頭に自信がない。HONZに学生メンバーで入って早8年。8年の月日は早く、気付けば社会人5年目になっていた。少しずつ仕事を任されるようになったが、「考えて動く」ことの難しさを日々感じている。そして私は心のどこかで同志と呼べる仲間を探している。そして、同志に伝えたい。私たちだって、頑張れば、何かしらになれるってことを。そして、この世には話

均衡としての汚職──『コラプション:なぜ汚職は起こるのか』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

均衡としての汚職──『コラプション:なぜ汚職は起こるのか』

いったいなぜ汚職が起こるのか、と言われても、それが発生する人間心理についてはそう不可思議な点はない。乱用できる権力があり、さらにそれを振りかざすことで利益が手に入るのであれば、そうすることもあるだろう、と容易く想像できてしまう。 「やるだろうな」と想像できる一方で、賄賂などを受け取ることによるリスク(法律違反による逮捕や、糾弾などの制裁)がある時、賄賂をため

『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』膨大な弱いつながりを見つめ直し人間らしく生きる哲学 書影

社会 / ビジネス

『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』膨大な弱いつながりを見つめ直し人間らしく生きる哲学

我々はSNSやソーシャルゲームに備わる巧妙で強い依存性のある仕掛けに心を絡め取られている――というのは、 評者が先月レビューしたアダム・オルター『僕らはそれに抵抗できない』(ダイヤモンド社) の主張である。記事への反応を見るに、こうしたテクノロジーの利用法にモヤモヤしている方は大勢いるんだなあ……と思わずにはいられなかった。 さて本書『デジタル・ミニマリスト

『経済学はどのように世界を歪めたのか』経済学はなぜリーマンショックを予見できなかったのか? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『経済学はどのように世界を歪めたのか』経済学はなぜリーマンショックを予見できなかったのか?

金融界の人が書く経済の本は余りにも人間や社会の視点が欠けていて、しかも限定された場での理論的整合性を失わないために、専門分野以外のことは自分の守備範囲ではないとして、それ以上の対話を拒むような自己完結したものが多く、それだと現実の世界に照らし合わせて読むことはとてもできないが、本書は秀逸だった。 「近代経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスは、市場の調整機能を