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世界史

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361記事

『国と世紀を変えた愛』by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『国と世紀を変えた愛』by 出口 治明

タイトルは正確ではない。なぜなら、「張学良と宋美齢、66年目の告白」と副題にあるが、本書はこの2人のことを主として書いた本ではないからだ。また率直に述べれば、本としての完成度が特に高い訳でもないと思う。それにもかかわらず、この本は一挙に読ませてしまう強さを持っている。1992年、ふとした偶然から還暦を超えた著者は92才の張学良に取材する。初対面の著者に示した

『人口の世界史』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『人口の世界史』by 出口 治明

時宜を得た本だ。わが国の最大の政策課題は、少子高齢化対策、即ち人口問題にある。本書は、なかなか一筋縄ではいかない結構厄介な人口問題の全貌を、広く高いスパンから一望のもとに俯瞰するまたとない入門書である。 「人間の歴史を通して、人口は繁栄、安定、安全と同義だった。」本書はこの胸のすくような一文から始まる。期待が否が応にも高まる。世に竜頭蛇尾の本は絶えてないから

『総力戦 (現代の起点 第一次世界大戦 第2巻)』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『総力戦 (現代の起点 第一次世界大戦 第2巻)』by 出口 治明

このほど、岩波の「現代の起点 第一次世界大戦」全4巻が完結した。第1巻は世界戦争、2巻は総力戦、3巻は精神の変容、4巻は遺産、と名付けられ、夫々約10編の論文から構成されている。今年はサラエボの銃声からちょうど100年、いかにも岩波らしいオーソドックスな取組である。各巻ともとても面白く、改めて大変勉強になったが、ここでは主に「第2巻総力戦」を取り上げたい。

『「音楽の捧げもの」が生まれた晩: バッハとフリードリヒ大王』by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / 世界史

『「音楽の捧げもの」が生まれた晩: バッハとフリードリヒ大王』by 出口 治明

クラシックが好きな人間なら、バッハの「音楽の捧げもの」という名曲を少なくとも一度は聞いたことがあるはずだ。この曲は、老バッハがフリードリヒ2世の宮廷を訪ねた時、若き君主が与えた主題にバッハが曲をつけ、献辞をつけて献呈したと言われている。心温まるエピソードのように聞こえるが、著者は、王はバッハを困らせようとして、この主題を与えたのではないかと推論する。しかもそ

『史上最大の決断』 書影

世界史 / ビジネス

『史上最大の決断』

今から遡ること、70年前の1944年6月6日。北フランスのノルマン地方の海岸で史上最大の作戦が行われた。「ノルマンディー上陸作戦」だ。この上陸作戦は連合軍の本格的な反攻作戦の一環で、上陸後ノルマン地方の都市、カーンを軸にし連合軍が大きく右回りをしながらドイツ軍の主力を撃滅するという「オーバーロード作戦」の初戦として行われた上陸戦だ。 アメリカ、イギリス、カナ

『ヨーロッパ覇権以前 (上下)』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ヨーロッパ覇権以前 (上下)』by 出口 治明

マクロ経済学は「ルーカス批判(1976年)」の前後では全く様相を異にする、と言われているが、歴史学も、おそらくウォーラーステインの「近代世界システム(1974年)」前後では同じことが言えるだろう。その後、ウォーラーステインに触発されてすばらしい研究が相次いだが、本書はその中でも最も印象に残った1冊であった。10余年振りに再刊されたので改めて再読してみたが、4

『ティムール帝国』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ティムール帝国』by 出口 治明

ユーラシア大陸の東西を、自ら先頭に立ち何千里にも渡って踏破して、大帝国を築き上げた英傑は、アレクサンドロス大王(イスカンダル)以降、わずかに3名を数えるのみである。バトゥ(ジョチ・ウルス)、フレグ(フレグ・ウルス)そしてティムールである。著者は、その中で「わが国ではその人物像はほとんど知られていない」ティムールを取り上げたのである。 ティムールは、1336年

『中国の歴史認識はどう作られたのか』 共産主義から愛国主義へ 書影

社会 / 世界史

『中国の歴史認識はどう作られたのか』 共産主義から愛国主義へ

この10年間の最大の過ちは教育にありました。ことにイデオロギー的、政治的教育です。単に学生たちに対してのみならず、人民一般に対する教育です。 1989年に世界を震撼させた 天安門事件 を振り返り、鄧小平はこう語った。彼は、民主化を求める抗議行動の拡大を目の当たりにして、1980年代における共産党の最大の過ちは、人民に銃をつきつけたことではなく、イデオロギー教

『偉人は死ぬのも楽じゃない』 書影

医学・心理学 / 世界史

『偉人は死ぬのも楽じゃない』

本書には、カエサル、コロンブス、マリー・アントワネット、アインシュタインといった、歴史にその名を刻む19人の偉人たちが登場する。しかし本書がスポットを当てているのは、その武勇でも、才能でも、豪勢な暮らしでも、壮絶な運命でもない。書かれているのは、偉人たちが具体的にどのように死んだのか、という死に際の物語だ。それが1人物につき1章で、大体10ページくらいでまと

『リーマンショック・コンフィデンシャル』金融危機時の人間ドラマ 書影

人物 / 事件・事故

『リーマンショック・コンフィデンシャル』金融危機時の人間ドラマ

これまでさまざまな学者や評論家がリーマンショックについて解説しており、「住宅ローン基準の緩和に伴うサブプライムローンが、、、」といった抽象論は耳にたこができるほど聞かされている人は少なくないだろう。 私自身そんな大勢の一人で、今更リーマンショックの顛末にあまり興味はなく、本書を手にとったのは、「フィナンシャル・タイムズ」「エコノミスト」両紙の2009年ベスト

『スキタイの騎士』by 出口 治明 書影

世界史 / 小説

『スキタイの騎士』by 出口 治明

昨年の6月、 「カールシュタイン城夜話」の書評 で、僕はクプカの歴史物語三部作の残る2作、「スキタイの騎士」と「プラハ夜想曲」を早く読んでみたい、と書いたが、1年も経たずしてその望みが叶えられることになった。出版元である風濤社に深く謝意を表したい。そして、何よりも嬉しいことに本作も面白さにかけては前作に勝るとも劣らないのだ。しかも本書は「スキタイの騎士」と「

『男性論 ECCE HOMO』by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『男性論 ECCE HOMO』by 出口 治明

人間が一番分からないのは、自分自身である。そして、男性が永遠に分からないのは、女性である。逆もまた真である。僕は、本の中では、「ハドリアヌス帝の回想」を偏愛しているが、ハドリアヌスが大好きだと広言している「テルマエ・ロマエ」の著者、ヤマザキマリさんが、男性論を書いたと聞けば、これもまた読むしか他にないではないか。 全く意外な本だった。確かに、男性論の体裁はと

『仁義なきキリスト教史』 新刊超速レビュー 書影

世界史 / 新刊超速レビュー

『仁義なきキリスト教史』 新刊超速レビュー

昨夜、 Facebook上でお騒がせいたしました 注目の新刊はこれでございます。間違いなくHONZメンバーが先制攻撃をしてくると思われるため、決死の「新刊超速レビュー」で紹介することにいたしました。 なにしろ本書は全編にわたった広島弁・やくざ弁で構成されるという奇跡のキリスト教史。東映のヤクザ映画を見ていた年代の人々にも、そうでない人々にも驚愕の一冊でありま

『アラブ500年史:オスマン帝国支配から「アラブ革命」まで』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『アラブ500年史:オスマン帝国支配から「アラブ革命」まで』by 出口 治明

ムハンマドからウマイヤ朝、アッバース朝などの盛期に至るアラブの歴史は、わが国でも比較的よく知られている、と言っていいだろう。僕たちがいつも戸惑うのは、あの輝かしいイスラーム帝国の時代と、現代のアラブ社会の混迷振りとの著しい落差にある。その間隙を埋める意欲作が現れた。それが、本書である。 本書は、1516年のマルジュ・ダービク(アレッポ郊外)の戦いから筆を起こ

『遠い鏡』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『遠い鏡』by 出口 治明

かつて書物には、クロニクル(年代記)という分野があった。廃れて久しいものがあるが、珍しく本格的なクロニクルに出会った。それが本書である。1,000ページ2段組みの大作ではあるが、これがなかなか面白くて、一気に読ませてしまうのだ。扱う時代は14世紀後半のヨーロッパ、主人公は、ピカルディーのクシーの殿、アンガラン7世(1340~1397)である。この半世紀は、ペ

『零戦 搭乗員たちが見つめた太平洋戦争』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『零戦 搭乗員たちが見つめた太平洋戦争』

日本人の心に強く刻み込まれた戦闘機が存在する。純国産であり、開発された当時において、世界最高の能力を有した大空の王者。しかし、その強さにもかかわらず、大戦末期の劣勢覆うべくもない戦況で、多くの若者を乗せ、帰る事のない死の攻撃に赴かせるという悲しくも皮肉に満ちた運命を背負い込むことになった戦闘機。その華々しい戦果と悲劇性により、開発から70年以上がたった今でも

『歴史学の将来』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『歴史学の将来』by 出口 治明

碩学の本は、とてつもなく重い。来月、出版予定の歴史をテーマにした拙著の最終校正をしていたが、この本を読んで、一瞬、出版を取り止めようかと思ったほどである。歴史を書くということは、生半可な営為ではないのだ。そのことを、改めて痛いほど思い知らされた。 およそ何事であれ、物事を論じる時には、まず、言葉の定義を明確にしなければならない。ルカーチはオックスフォード英語

『政治の起源 下』 法の支配と政府の説明責任 書影

社会 / 世界史

『政治の起源 下』 法の支配と政府の説明責任

先史時代にまでさかのぼり、多くの国・地域を比較することで、政治制度の起源に迫っていく本書は、2013年出版本でおすすめNo.1だ。著者フランシス・フクヤマによる起源をめぐる探求は広く、深い。上下巻合わせて700ページ超という大著でありながら、複雑に絡み合った歴史の流れが明快な論理に則って展開されるため、最後までまったく飽きさせない。ページをめくるたびに、1行

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世界史 / おすすめ本レビュー

『世界ナンバー2列伝』歴史の名脇役

『世界ナンバー2列伝』これが、本書のタイトルだ。ナンバー1ではない。あくまでナンバー2である。人間という存在が組織的な活動をするためには、どうしても序列が必要になる。大きな組織の場合、ナンバー1になるということ自体が並大抵のことではない。著者も本書で似たことを述べているが、ナンバー1になるためにはある種の正当性が問われることになる。特に社会の機構が複雑になれ

『北からの世界史』北方世界に歴史があったんだ 書影

生物・自然 / 世界史

『北からの世界史』北方世界に歴史があったんだ

まるで歴史ドキュメンタリー番組を観ていたかのような読後感を味わえる一冊だ。 本書は、歴史上、ロシア・カナダ・アメリカなど極寒の世界に人々が「何」を求めて遠征していき、「何」を売り買いすることで世界経済と繋がっていったのかをおう歴史書である。歴史書といってももちろん学校で習うような事実の羅列とは全く違う。本書を読んでいると、学校で暗記した地域や年代別の世界史が

『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』 by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』 by 出口 治明

フェデリーコ(フリードリッヒのイタリア語読み。彼が愛したプーリアでは、今でもそう呼ばれているので、ここではフェデリーコと呼ぶ)のことを識ったのは、ブルクハルトが最初だった。学生時代の頃、愛読していた世界の名著(中央公論社)からである。彼のことを、もっともっと知りたいと思い、13世紀の西洋史の本を探してきては、むさぼり読んだ。パレルモやカステル・デル・モンテ、

『デモクラシーの生と死』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『デモクラシーの生と死』 by 出口 治明

刺激的な本だ。一言でいえば、デモクラシーの世界史である。上下2巻2段組みで900ページに迫る労作だが、知らないことがたくさん書かれており、読者を飽きさせない。本書は全体で3部に分かれており、上巻では「集会デモクラシー」と「代表デモクラシー」が、下巻では「代表デモクラシー」の続きと、「モニタリング・デモクラシー」が語られる。デモクラシーは、要するに、貴族制、王

『海賊旗を掲げて』海洋ノマドとしての海賊 書影

教養・雑学 / 世界史

『海賊旗を掲げて』海洋ノマドとしての海賊

黒地に髑髏とクロスボーンをあしらった海賊旗(ジョリー・ロジャー)を高らかに掲げ、木造帆船を駆使して大海原を闊歩する海賊。最近では漫画『ONE PIECE』や映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』が世界的なヒットを飛ばしている。体制に反抗しながら、お宝を追い求める男たちの物語に多くの人々が何かしかのロマンを感じているのだろう。その一方ソマリアなどで繰り返される海

『罪人を召し出せ』 by 出口 治明 書影

人物 / 世界史

『罪人を召し出せ』 by 出口 治明

いつかは読まなければいけない、誰しもそういった本のリストを持っているだろう。ヒラリー・マンテルの「ウルフ・ホール」は、この2年ほど、僕の読むべき本リストのトップページに、太字で書き込まれていたのだが、読む機会が訪れないうちに、先に続編を読む羽目になってしまった。それが、本書である。ヘンリー8世の右腕として活躍した稀代の政治家、トマス・クロムウェルの評伝のPa

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社会 / 世界史

『独裁者のためのハンドブック』 独裁者は援助がお好き?

これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば、だが。 イギリス首相として、第二次世界大戦を勝利に導いた ウィンストン・チャーチルの言葉 だ。たしかに、民主的選挙で選ばれた日本の政治家の醜態を見るにつけ、民主主義は最悪の形態だと言いたくもなる。しかし、独裁政治体制下の貧困や拘禁の恐怖におびえる生活を想像すると、民主主義国家以外で暮らしたいと思

『インダス文明の謎: 古代文明神話を見直す』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『インダス文明の謎: 古代文明神話を見直す』 by 出口 治明

僕は「歴史オタク」を自認しているけれど、インダス文明については、「文字が未解読である」「広域文明だった」「王墓がない」ぐらいのイメージしか、すぐには思い浮かばない。確かに、4大文明の中で、インダス文明は最も言及されることが少ない文明だ。それには、文字が未解読であることが大きいと考える。畢竟、歴史とは文字で書かれたものであるからだ。 本書は多くのインダス遺跡を

『政治の起源 上』 グローバルヒストリーで読み解く制度の進化 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『政治の起源 上』 グローバルヒストリーで読み解く制度の進化

世界は多様性に満ちている。 ITの普及とともに急速に平準化されていく世界を描いた『 The World Is Flat 』(邦題『 フラット化する世界 』)の発売から8年以上が経過し、スポーツから経済まで“グローバル化”が合言葉になっている。それでも、世界はまだまだデコボコなままではないか。インターネットの力で世界はより繋がりあったかもしれないが、今もわれわ

『英国二重スパイ・システム』ヒトラーの頭の中に入り込め!! 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『英国二重スパイ・システム』ヒトラーの頭の中に入り込め!!

アプヴェーア という組織がかつて存在した。ドイツ軍により1921年から1944年まで運営されていた諜報機関である。にわかには信じられないのだが、このアプヴェーアが第二次世界大戦中、イギリスに潜入させたスパイの全てが、イギリスの防諜機関MI5の手に落ちていたという。しかも、刑務所に拘禁されるか処刑されたもの以外は、二重スパイとして活動していたというのだ。つまり

『新・ローマ帝国衰亡史』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『新・ローマ帝国衰亡史』 by 出口 治明

5月に出版されたのに、新書なので「薄くていつでも読める」と、ついつい積ん読本になってしまっていた。こんなに面白い本なのに、申し訳ないことをした、という自責の念でいっぱいである。 エドワード・ギボンの「 ローマ帝国衰亡史 」は、長年の愛読書の1冊であるが、この『新・ローマ帝国衰亡史』のどこが面白いのか。それは、ローマ帝国を辺境から眺めているからである。ローマ帝

『インダス文明の謎』 大河文明ではないインダス 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『インダス文明の謎』 大河文明ではないインダス

世界四大文明といえば? 義務教育時代の記憶を掘り起こせば、センター試験で地理を選択した理系の私でも、エジプト文明、メソポタミア文明、黄河文明、そしてインダス文明の名を辛うじてあげられる。この“四大”文明というくくり方には様々な異論もあるようだが(2009年出版の『 もういちど読む山川世界史 』にも「四大文明」という表現はみられない)、大河に支えられて発達した

『ヤルタからヒロシマへ: 終戦と冷戦の覇権争い』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ヤルタからヒロシマへ: 終戦と冷戦の覇権争い』by 出口 治明

本書は、日本の運命を決したヤルタ会談(1945年2月)からポツダム会談(7月)へ、そして原爆投下までに至る第2次世界大戦末期の激動の6カ月を再現した物語である。新しい発見はないが、関係者の証言が寄木細工のように丁寧に積み重ねられており、読者はまるでその場に居合わせたかのような、迫真の臨場感を味わうことができる。まさに、「神は細部に宿る」のである。 第1部は、

『実録 ドイツで決闘した日本人』 - 高貴なる野蛮 書影

民俗・風俗 / 世界史

『実録 ドイツで決闘した日本人』 - 高貴なる野蛮

そんな書き出しで本書は始まるのだが、驚くのはこちらの方だ。隣のページに目を移すと、いきなり著者が身長2メートル近いドイツ人の大男と決闘しているシーンの記述に出くわす。それも著者が留学していた当時の話だから、わずか30年くらい前の出来事なのだ。 ドイツ語で「メンズーア」と呼ばれるこの「決闘」は、刃渡り88センチ、柄の部分が15センチもある鋭利な真剣を用いて、顔

ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」』 by 出口 治明

1543年9月、倭寇の頭目の1人であった王直の船が、種子島に漂着し、乗っていたポルトガル人が、わが国に鉄砲を伝えた。これが、日本と西洋の初めての出会いであった、と言われている。このこともあって、ポルトガルはわが国には馴染の深い国ではあるが、では、どうしてポルトガルが逸早く海に乗り出し、海洋帝国を築き上げたのか、ということは、あまり知られていない。本書は、ヴァ

『都市の誕生: 古代から現代までの世界の都市文化を読む』by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『都市の誕生: 古代から現代までの世界の都市文化を読む』by 出口 治明

旅の楽しみの極みは、初めて訪れた見知らぬ街を当てもなく彷徨い歩くことに尽きる。「迷子になることは、都市を本当に体験する唯一の方法なのだ。」 著者は、「この本は、自分の好きなページから読んでもらいたい」と、まえがきで述べる。8章から構成されたオムニバス映画のような本書は、読者を積極的に迷子に誘うのだ。「迷子になることは心配しなくてもいい」と。 「第1章 到着」

『真珠の世界史』珠からみた世界 書影

社会 / 世界史

『真珠の世界史』珠からみた世界

私はダイヤモンドが好きだ。20代の頃はHIPHOP系の服を扱うショップの店員をしていたこともあり、指にはダイヤの指輪を常に複数はめていた。ダイヤの冷たい輝きは、私の自己顕示欲や虚栄心を満たしてくれる存在だった。ダイヤこそ宝石の王者だと思っていた。しかし、本書で古代から近年にいたるまで、最も高い評価をされていた宝石が真珠であるということを知った。養殖真珠が登場

『アウグストゥス』神の息子アウグストゥスと人間オクタウィアヌス 書影

人物 / 世界史

『アウグストゥス』神の息子アウグストゥスと人間オクタウィアヌス

漆黒の闇の中にたたずむ軍装の男は、右手を掲げ何かを指さしている。自信に満ちた視線は男が指さす先に向けられている。男が何を指さし見つめているのか、今となっては知るすべがない。本書の表紙に写るアウグストゥスは二千年以上老いることも朽ちることもなく、この男の威厳を今に伝えている。この大理石の彫像はローマにある バチカン美術館 に収蔵されている。彼の妻が隠居していた

『チーズと文明』 by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / 世界史

『チーズと文明』 by 出口 治明

偶に芳醇な赤ワインを飲み、フランス料理をいただくと、何故か、食後に無性にチーズが食べたくなるときがある。でも、これは何も人間に限った話ではない。9,000年前に、西アジアで生まれたチーズは、神々も大好きだったのだ。何しろ、シュメールの豊饒の女神イナンナは、チーズに魅かれて夫に羊飼いのドゥムジを選んだくらいなのだから。 本書は、人間の文明史と交差するチーズ9,

『ビルマ・ハイウェイ』 アジアの裏口 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『ビルマ・ハイウェイ』 アジアの裏口

本書は、ビルマ(ミャンマー)と、隣接する中国・インドの都市を歩き、リアルな現場を伝えると同時に、その都市に関連する歴史を振り返った本だ。著者はケンブリッジ大で歴史の博士号を取得し、国連や国際機関で勤務した後、現在はビルマで歴史的建造物の保存に取り組んでいる。テインセイン大統領の諮問評議員や、ミャンマー平和センターの特別顧問を務めるなど、現在進行中の自由化改革

『ローマ政治家伝I カエサル 』 by 出口 治明 書影

世界史 / HONZ客員レビュー

『ローマ政治家伝I カエサル 』 by 出口 治明

20世紀の初め、現代につながるローマ共和性研究の基礎を築いた碩学ゲルツァーは、共和制末期のポンペイウス、カエサル、キケロの伝記を書いた。嬉しいことに、この3冊がゲルツァーの弟子の手により、揃って訳出されることになった。本書はその第1巻である(9月1日現在、カエサルとポンペイウスの2巻が出版されている)。 ゲルツァー史学の特徴は、何よりも人間関係に着目し、当時