ノンフィクションはこれを読め!

2021年の記事

ARCHIVE

301記事

『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『絶望死のアメリカ 資本主義がめざすべきもの』米国が直面する悪夢 レントシーキングの罪

われわれ人類の平均寿命は延び続け、死亡率は低下し続けている。それは、先進国と発展途上国の別なく起きている。当然、喜ぶべき事象だ。 しかし、近年、米国の大卒未満の白人の間には、この世界的な潮流とは逆の傾向が見られる。労働階層の白人たちの平均余命は短くなり、死亡率が上がっているのだ。1990年代末頃から、とくに45〜55歳の低学歴中年白人の死亡率は年々高くなって

先月出た本 2021年3月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2021年3月

2月も書店店頭にはお客様が多い日が続きました。巣ごもりが続く中、勉強して知識を増やすということに取り組んでいる方も多いようです。まずは先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。 日販オープンネットワークWINから2月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2021/2/1

居場所をどう見つけていくか『悲しみとともにどう生きるか』 書影

教養・雑学 / 社会

居場所をどう見つけていくか『悲しみとともにどう生きるか』

「被害にあった人は、他の人が同じような目にあわないために活動をしている人が多い」ということをよく聞く。 大変な使命を背負わされて、勇気をもってそれを果たしている人がいる。本書の編著者、入江杏さんもそのひとりだ。世田谷事件の被害者遺族だ。 この本は、入江杏さんが主宰する「ミシュカの森」に登壇した、柳田邦夫、若松英輔、星野智幸、東畑開人、平野啓一郎、島薗進の錚々

忘れられかけていた女性たちの活躍を蘇らせる一冊──『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

忘れられかけていた女性たちの活躍を蘇らせる一冊──『アニメーションの女王たち ディズニーの世界を変えた女性たちの知られざる物語』

この『アニメーションの女王たち』は、ディズニー・アニメーションの中で、アートに脚本にと活躍してきたにも関わらず、エンドクレジットにも表記されず、伝記などにも存在がほとんど残されていない、女性アーティストを焦点に当てた一冊である。 その立ち上げの時期、最初の女性の参画からはじまって、『アナと雪の女王』までを通して、ディズニーと女性アーティストの関係性は一直線に

『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって 書影

社会 / 民俗・風俗

『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって

本にブックカバーはつけない。これを長年の流儀としてきた。 通勤電車で本を開くと、目の前に座る人の視線がきまって表紙に注がれる。本との出会いは何がきっかけになるかわからない。中には電車でたまたま見かけて興味を持ち、本を買う人だっているかもしれない。出版文化への貢献のためなら、喜んで歩く広告塔になろう。そう考えて、どんな本であろうと(たとえ 『性豪』 や 『鍵開

『危機の世界史』 書影

世界史 / 「解説」から読む本

『危機の世界史』

本書は序文から思わずぎくりとするようなことが書かれている。いわく「いまの時代は安定しているように思えるが、現在の状況がひっくり返らないという保証はない……パンデミックは簡単に起こりうる」。さらに「核戦争も起こりうるし、環境災害が待ち構えているかもしれない」と続く。 これは歴史の本ではあるが、オーソドックスな歴史書ではない。著者が目を向けているのは、何らかの形

『感染の法則 ウイルス伝染から金融危機、ネットミームの拡散まで』 書影

社会 / HONZブックマーク

『感染の法則 ウイルス伝染から金融危機、ネットミームの拡散まで』

本書の初版がイギリスで出版された2020年2月13 日、僕の頭はほかのことでいっぱいだった。COVID│19 (新型コロナウイルス)について朝に報告されたデータを見たあと、感染爆発の分析で自分たちが大きな間違いを犯したのかどうか確認する作業に追われていたのだ。その日中国から報告された新規患者数が1万5000人を超え、前日より750%も増えていた 。僕たちの調

『読書と人生』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『読書と人生』

物理学者の寺田寅彦(1878~1935)は科学者というよりエッセイストとして有名かもしれない。本書は彼が残した膨大な随筆から読書論と人生論に関連するものを集めたアンソロジーで、1950年に角川書店から刊行された底本には創業者である角川源義の解説が付けられていた(本書にも掲載)。 取り上げられた主題は、身の回りの些事からアインシュタインの教育観まで幅広い。そし

今週のいただきもの:2021年2月21日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2021年2月21日週

遅ればせながら我が家のバレンタインディナーの紹介です。見た目華やかに見えますが、慣れれば短時間で用意できるものばかりなので、ぜひ試してみてください。 苺とブッラータ ブッラータは季節のフルーツとあわせて、オリーブオイルと塩で。 鰹のカルパッチョ カルパッチョは、オリーブオイル、醤油、粒マスタード、レモン、すりおろしたニンニクと和えるだけ。 時間があれば、和え

科学の真髄ここにあり!?『ヘンな科学”イグノーベル賞” 研究40講』がおもろすぎるぞ。 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

科学の真髄ここにあり!?『ヘンな科学”イグノーベル賞” 研究40講』がおもろすぎるぞ。

あと1年少しで定年を迎える。その後は、『こぐこぐ自転車』以来、勝手に師匠と仰いでいる英文学者・伊藤礼先生の『ダダダダ菜園記 明るい都市農業』を片手にちっさい畑での農業にいそしもうと思っている。あこがれの、晴耕雨読、ときどき物書き生活。 もうひとつ、秘かにイグ・ノーベル賞を狙った研究をおこなうつもりだ。もうネタは決まっている。どう測定するかがちょっと難しいのだ

『メンター・チェーン ノーベル賞科学者の師弟の絆』オンライン時代にあえて読みたい「密」な関係の物語 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『メンター・チェーン ノーベル賞科学者の師弟の絆』オンライン時代にあえて読みたい「密」な関係の物語

「メンター」(師、指導者)というのは不思議な存在である。親を選ぶことはできないが、メンターは自分で選べる。にもかかわらず、良いメンターに出会えるかどうかは運命に委ねるしかない。そして、いったん出会ってしまえば、弟子はメンターから全人格的な影響を受ける。 科学の世界では、濃密な「メンターと弟子」の関係が今も生きている。弟子はメンターから研究テーマへのアプローチ

地図の世界がいまアツい!『地図づくりの現在形』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

地図の世界がいまアツい!『地図づくりの現在形』

読書の楽しみは、煎じ詰めれば、「これまで知らなかったことを知る」ことにある。その喜びは何物にも代えがたい。だから本好きにとって最高の本というのは、書かれていることが「知らないことだらけ」の本なのです。 本書はまさにそういう一冊だった。 店頭で思わずスルーしてしまいそうな地味なタイトル。でも手にとってみると、これまでまったく知らなかった奥深い世界が広がっていた

『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』行間に立ち上る、人々の暮らしの息遣い 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』行間に立ち上る、人々の暮らしの息遣い

大好きな2時間ドラマの再放送を見ていると、必ずと言っていいほど「過払い金の返還請求をおすすめするCM」が流れる。一時は消費者金融の過払い金返還請求を進めるものが多かったが、最近はクレジットカードでも過払い金がある可能性があるらしく、「もしかしたらあなたにも」とひっきりなしに流れてくる。ラジオも同じだ。半日も聞いていれば一度はその類を聞くことになる。よほど需要

これから出る本 2021年3月 書影

併せて読まれたこの一冊

これから出る本 2021年3月

2月。新型コロナウイルスの流行が始まってから1年になりました。また、東日本大震災から10年という節目を前にして大きな地震も発生。ただ10年を振り返るだけではなく、これからの災害に備えるという意識も強くなってきた気がします。これからどんな本が話題になっていくのでしょう。 ノンフィクションの予約ランキングから見ていきます。2021年2月19日時点の予約受注実績か

『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』「住銀を救った男」が銀行を追われた理由に迫る 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』「住銀を救った男」が銀行を追われた理由に迫る

大阪の中堅商社イトマンから数千億円ともいわれるバブルマネーが裏社会に流れ込んだ「イトマン事件」。2016年のベストセラー『住友銀行秘史』は、四半世紀を経てその内実を明らかにした。 イトマン事件をめぐり、バブル紳士の暗躍を描いた作品は少なくなかったが、同書は当事の経営幹部の姿を実名で詳述し、銀行組織の暗部に光を当てたため金融業界に衝撃が走った。著者で、当時住銀

今週のいただきもの:2021年2月14日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2021年2月14日週

先週末は春のような気温でしたが、またグッと下がりましたね。そんな寒い日々には鍋です。我が家で今季暫定1位のせり鍋をご紹介しましょう。 作り方は簡単で、昆布と鰹で出汁をとり、醤油、みりん、塩で味付け。ささがきにしたごぼうと、ほぐした舞茸、鶏団子(鶏ひき肉、卵、柚子胡椒、青葱)を入れて火を通し、食べる直前にせりを入れていただきます。せりは火を通し過ぎないようにす

あの劇場で見た映画が忘れられない…だから『そして映画館はつづく』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

あの劇場で見た映画が忘れられない…だから『そして映画館はつづく』

当たり前にあると思っていたものが、実は”当たり前”ではなく“有り難い”ものだったと、コロナ禍を経て、誰しも何か感じているものがあるのではないだろうか。 2020年4月初旬、コロナの影響で休業が相次ぐ全国のミニシアターを応援するためのクラウドファンディング「 ミニシアター・エイド基金 」が始まると、開始からわずか3日間で当初の目標額の1億円を突破。そこから約1

『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』最先端科学で探る、「色」の世界 書影

サイエンス / 医学・心理学

『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』最先端科学で探る、「色」の世界

はるか遠い記憶がある。 春うららかな小学校の教室で健康診断が行われている。順番に並んで身長、体重、座高などを測定し、最後に視力検査。さらにそのあと、変な絵を見せられた。 オレンジと緑で書き分けられた数字を読み取るという簡単なテストだ。それが分からない人がいるんだって、と帰宅してから親に言うと「色が分からない色盲っていう人がいるんだよ」と教えられた。同時に、決

贋金つくる『薩摩という「ならず者」がいた』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

贋金つくる『薩摩という「ならず者」がいた』

明治維新とはこんなヤンチャだったのか! 本書は従来型の明治維新史観をくつがえしてくれる。明治維新というと、日本が独自に近代化をはたした成功体験として語られるのが一般的だ。志や行動力で時代を切り開いていく若者たち、との司馬遼太郎史観ストーリーで描かれることが多い。著者はこれを「日本人を元気にする歴史観」といい、高度成長期の日本人に響いた歴史観だったと評する。

『パンデミック後の世界 10の教訓』未来を決めるのは新型コロナではない 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『パンデミック後の世界 10の教訓』未来を決めるのは新型コロナではない

本書の著者ファリード・ザカリアは、米CNNの報道番組「Fareed Zakaria GPS」のホスト役を務めている。同時に、ワシントン・ポスト紙のコラムニストを務めるなど、ベストセラー作家であり世界的コラムニストである。 米マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツが今回の新型コロナウイルスのようなパンデミックを、2015年のTEDトークで警告していたのは

今週のいただきもの:2021年2月7日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2021年2月7日週

春の山菜がおいしい季節ですね。昨年までは天ぷらやパスタなどで食べていましが、今年はおひたしにハマっています。筍やふき、せり、こごみ、うるい、わらび、根三つ葉、蕗の薹などの中から3~4種類を選び、だし:醤油:みりん=8:1:1にひたすだけです。2~3時間後から翌日までが食べごろ。 山菜は下処理が大変そうと思うかもしれませんが、さっと塩茹でするだけのもの(せり、

『首都直下地震と南海トラフ』1000年に一度の「動く大地の時代」の日本列島 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『首都直下地震と南海トラフ』1000年に一度の「動く大地の時代」の日本列島

本書は、今年度で京都大学を定年退官するHONZレビュアーの鎌田浩毅教授の最新刊であり、退官記念論文とも言える力作である。これは全ての日本在住者に等しく関わるものなので、是非、手に取って熟読して頂きたい。 本書のポイントは、1000年に一度という2011年の東日本大震災をターニングポイントとして、日本列島全体が地震の活動期、地球科学的に見た「動く大地の時代」に

『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯 書影

人物 / 社会

『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯

「◯◯の天皇」という形容がある。 最近あまり目にしなくなったが、かつては週刊誌などでよく見かけた表現だ。ただしこの言葉を冠するには、相手もそれなりの人物でなければならない。たとえば「◯◯」に適当な企業や団体の名前でも入れてみれば、天皇になぞらえるには、あまりに小粒な人物しかいないことがよくわかるだろう。 出版界にはかつてこの呼称がぴたりと当てはまる人物がいた

在外日本人の目に映る、世界各国の今 『日本の外からコロナを語る』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

在外日本人の目に映る、世界各国の今 『日本の外からコロナを語る』

コロナ禍に関する本はこれまでに数多く刊行されてきた。世界中の著名人が現状やコロナ後の世界について語っている。どれも示唆に富んでいて刮目するばかりだ。テレビでも、現地に派遣された特派員が各国の状況をリポートする様子を度々観てきた。彼らもコロナ禍での暮らしに不便を感じながら、必死に現地の様子を伝えている。 この本には、それらの本やテレビには映らない世界が広がって

2021年初のHONZ朝会、ZOOMにて開催しました。(その2) 書影

今月読む本

2021年初のHONZ朝会、ZOOMにて開催しました。(その2)

HONZ朝会の続きです。 ZOOMでの会合は意外とみんな自由です。声をミュートして本を読んだり、お茶を飲んだり、何か食べたり。しばらく写真が貼り付けてあるので「どうしたの?」と尋ねたら「お風呂入ってました!」にはちょっと驚きましたけど。 21人の紹介がぴったり2時間で終わるくらい、みんな話がうまくなっています。話に釣られて思わずポチするメンバーも多いみたい。

先月出た本 2021年2月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2021年2月

1月に入り再度非常事態宣言が発出されました。1回目の非常事態宣言と異なるのは、完全休業している書店がほとんどない、ということ。また、新刊も活発に発行されています。まずは先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。 日販オープンネットワークWINから12月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキング

『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』チーム研究の第一人者が唱える「心理的安全性」とは? 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』チーム研究の第一人者が唱える「心理的安全性」とは?

組織の中で、自分の発言が曲解されてしまうのではないかとか、それで足を引っ張られるのではないかと心配しだしたら、表立った発言は控えるようになり、裏で根回しするようになるのではないだろうか。 今回の東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の女性理事登用についての発言も、むしろそうしたありがちな状況を積極的に利用して会議を早く終わらせてしまおうという、いかにも日本的

2021年初のHONZ朝会、ZOOMにて開催しました。(その1) 書影

今月読む本

2021年初のHONZ朝会、ZOOMにて開催しました。(その1)

巣ごもり生活も約1年になり、ZOOMで行われるHONZ朝会も第2回になります。出席者は21人と今回もなかなかの盛況でした。久しぶりに代表の成毛眞も顔を見せてくれました。 朝会ではHONZのメンバーが一人一冊、「これから読む本」を紹介します。まだ読んでいない本を紹介するというのがミソで、どうして興味を持ったかを話してもらいます。 さて、今回も新しく入会したメン

音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

音楽で生きる、東京で生きる。『調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝』

近田春夫を知っている人は、すでに読んだにちがいない。知らない人は、いますぐ読んでほしい。音楽で生きる、東京で生きる、その2つを味わえる。日本のロック、パンク、ヒップホップ、さらにはJ-POPやCM音楽まで網羅した音楽史であり、東京でクールに生きてきた大人の足跡を体感できるだろう。 タイトル「調子悪くてあたりまえ」は、ビブラストーンの名曲からとられている。ご存

今週のいただきもの:2021年1月31日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2021年1月31日週

今日はHONZの朝会でした!HONZの朝会では、メンバーが「今月読む本」を紹介します。未読の本を紹介するのですが、みんなどうしてその本のことを知っているのだろう?というくらい情報量が多いです。 また、「どのようにしてその本を選んだか」ということを大事にしているので、本選びの参考になります。後ほど東えりかが「今月読む本」という記事をUPするので、お楽しみに。

『アルツハイマー征服』連帯が連帯を生む、絶望の中の希望の物語 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『アルツハイマー征服』連帯が連帯を生む、絶望の中の希望の物語

現在、全世界で約5000万人の患者とその家族が苦しんでいるアルツハイマー病は、完全に治す方法がないことで知られている。高齢化が進む日本で、今後アルツハイマー病による認知症がさまざまな課題を発生させていくことは想像に難くない。 しかしこの病に関する研究が進み、現在では治療への大きな希望が見えてきているのだという。本書はそんなアルツハイマーという病の征服に挑んだ

子はみな幸せであるように『「ちがい」がある子とその親の物語Ⅰ』『こどもホスピスの奇跡』『にほんでいきる』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

子はみな幸せであるように『「ちがい」がある子とその親の物語Ⅰ』『こどもホスピスの奇跡』『にほんでいきる』

国籍や肌の色、病気や障害などに関わらず子どもは幸せになって欲しい。その願いを込めた本を紹介したい。 『「ちがい」がある子とその親の物語』 はアメリカなどで活躍するノンフィクション作家アンドリュー・ソロモンが10年をかけて300組以上の親子を取材し、2012年に出版された。日本では三巻に分られ、その一巻目が上梓された。 この巻で取り上げたのはろう(聴覚障がい)

たまに死者も出る、この特殊な趣味の行方は……?『こいわずらわしい』 書影

生物・自然 / 教養・雑学

たまに死者も出る、この特殊な趣味の行方は……?『こいわずらわしい』

自信を持って断言する。恋愛コラム本なんて、私は買わない。たとえ176頁税別1300円の本が150円で売られていても、買わない。ただし、著者がメレ山メレ子さんならば話は別だ。 メレ山さんは、昆虫大学の学長である。「昆虫大学」が何か気になる方は、検索して調べてみてほしい。そして「虫? そんなのマニアの世界の話でしょ」と思ったみなさん。昆虫は地球の陸上生物では、圧

『スケール 生命、都市、経済をめぐる普遍的法則』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『スケール 生命、都市、経済をめぐる普遍的法則』

地球科学者の私は一般市民とはかなり違う尺度で日常を暮らしている。衣食住は同じでも、頭の中で考えるスケールがいささか外れているのだ。 まず時間軸が異なる。地球は46億年前に誕生し、日本列島は2000万年前にアジア大陸から分離して島国となった。日本の歴史は2000年だが日本列島の歴史は2000万年で、同じ2000でも桁が違う。何億年や何千万年が当たり前になると、

こんなに違う、日米医学事情『医療現場は地獄の戦場だった』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

こんなに違う、日米医学事情『医療現場は地獄の戦場だった』

本の紹介は1回だけと決めているのだが、今回の『医療現場は地獄の戦場だった!』は例外的に 読売新聞 に次いで2回目。ハーバード・メディカルスクール第2の教育病院、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院の救急治療室、ERに勤務する大内啓医師の本である。 前半は新型コロナウイルス禍におけるERでの出来事の紹介で、信じられないほど凄まじい。文字どおり息をのむような緊迫感だ

『羊の人類史』文化や貿易、軍事まで 羊は世界を変え続けた 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『羊の人類史』文化や貿易、軍事まで 羊は世界を変え続けた

羊といえば、なにを思い浮かべるだろうか。私の場合は、チェスターコートやメリノウールのセーターなど、ふだん愛用している衣類だ。浅はかながら、それ以外に思いつくことがなかった。本書では、羊と人間との思いもよらぬ関係が語りつくされている。文化、貿易、軍事など多くの面で、羊は人類の歴史に影響を与えてきたのである。 例えば、撥水性のある羊毛はモンゴルの遊牧民の移動式住

『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』呪術合戦は、安倍晴明と蘆屋道満の戦いさながら! 書影

教養・雑学 / 社会

『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』呪術合戦は、安倍晴明と蘆屋道満の戦いさながら!

ミャンマーはタイと同じ敬虔な仏教国というイメージが強い。2011年には軍事政権から民主政権に移行した。長い軟禁状態から解放されたアウンサンスーチーが16年に国家顧問となって政権の中枢に立ち、昨年の総選挙では与党が過半数を獲得したことは記憶に新しい。 13年にヤンゴンに新聞記者として駐在していた著者は、情報省の中堅幹部との会談で「テインセン大統領の誕生日を確認

まるでホラー映画みたい『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

まるでホラー映画みたい『妻がマルチ商法にハマって家庭崩壊した僕の話。』

この本はある意味でホラーである。もし自分の彼女や親しい友人がマルチ商法にハマったとき、周りの人間はこんなにも無力なものなのだろうか?マルチ商法にハマるのなんて情弱!自業自得だよね。みたいな認識が自分にもあったけれど、この本を読んでからは、その認識を改めた。著者はいう。 言いかたは悪くなるが「マルチ商法なんて頭や心の弱い人が巻きこまれるものだ、自分とは程遠いと

『不寛容論 アメリカが生んだ「共存」の哲学』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『不寛容論 アメリカが生んだ「共存」の哲学』

森本あんり氏は神学者で、その研究内容は必ずしも一般向けとは言えない。著作で扱っているのも、キリスト教の教義論争がメインコンテンツだ。なのに、その内容は、いつも同時代の問題意識にぴったりとシンクロしている。『反知性主義』しかり、『異端の時代』しかり。 今回の『不寛容論』も、まさにそういう本だ。 日本人はなんとなく、「キリスト教もイスラム教も、一神教で凝り固まっ

ギネスに届け!爆笑『明石家さんまヒストリー1、1955~1981 「明石家さんま」の誕生 』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

ギネスに届け!爆笑『明石家さんまヒストリー1、1955~1981 「明石家さんま」の誕生 』

かつて『 ヤングおー!おー! 』というテレビ番組があった。大阪の毎日放送が1969年から10年あまりにわたって制作した公開バラエティーで、視聴率が30%を越えたこともある驚異的な番組だった。日曜夕方6時からの1時間番組で、最盛期には、大阪の中高生は全員が見ていたのではないかと思えるほどの人気だった。 スタート時は笑福亭仁鶴と桂三枝(現在の文枝)が司会を務め、