
『東洋の至宝を世界に売った美術商: ハウス・オブ・ヤマナカ』
「美術品の世界へようこそ!」と両手を広げて迎え入れてくれるのは、本書の著者、朽木ゆり子さんだ。朽木さんが描く、美術品の背後に渦巻く歴史の数々に、読者は息をつく暇もない。ノンフィクション特有の、頭の中に次々とわき起こる知的興奮で四六時中頭がいっぱいになる。そんな著者の代表作、『ハウス・オブ・ヤマナカ』が文庫版として再登場した。 本書の序章だけ紹介したい。タイト
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「美術品の世界へようこそ!」と両手を広げて迎え入れてくれるのは、本書の著者、朽木ゆり子さんだ。朽木さんが描く、美術品の背後に渦巻く歴史の数々に、読者は息をつく暇もない。ノンフィクション特有の、頭の中に次々とわき起こる知的興奮で四六時中頭がいっぱいになる。そんな著者の代表作、『ハウス・オブ・ヤマナカ』が文庫版として再登場した。 本書の序章だけ紹介したい。タイト

偉人伝にも、はやりすたりがある。野口英世やシュバイツアーの凋落は著しい。ユーリ・ガガーリンも、世代によってずいぶんと知名度が違う偉人のひとりだろう。知っている人にはいうまでもないが、『地球は青かった』という名言とともに記憶されている世界最初の宇宙飛行士だ。 ソビエト社会主義共和国連邦の秘密主義というのはここまですごかったのかということがよくわかる本でもある。

朝っぱらから「ハムカツ」や「ホッピー」などの文字が並ぶレビューは書かないと決めたのは先月だったか。レビューを書くのは深夜だが、掲載は午前7時半だからだ。深夜のアルコールの勢いに任せて「ホッピー飲んでべろべろ」と書いたレビューを読者は通勤電車で読むのである。想像力が及ばなかったのは恥ずかしい限りである。実際、「酒」本のレビューはページビューを見ても、一部の少し

読んでよかった、という本がある。いろいろな場合があるけれど、そのうちのひとつは、その一冊を読んだら、この分野では、もう本を読む必要がないだろう、と思わせてくれる本である。『暗号本』はたいがい好きであったけれど、サイモン・シンの『 暗号解読 』を読んで、もうそれ以上は読む必要がなくなった。『野口英世本』は何冊読んだかわからないが、イザベル・プレセットによる『

向かって左上からQWERTYと並ぶパソコンのキー配列だが、これは19世紀にタイプライター発明者が考案した配列そのままである。当時はタイピストが速く打つと印字がうまくできなかったり、故障したり、問題が起きていた。苦肉の策で、速く打てないように並べた「非合理的な配列」が市場を席巻、1世紀以上たった今も残っているのである。 不思議な話である。我々はパソコンを使用す

フランス文学の碩学・鹿島茂先生の手によるエスプリの利いた引用句辞典の登場だ。いざスピーチ原稿や文章をしたためようと思い立ったものの、なかなか筆が進まないという経験はないだろうか。そんなときも引用で万事解決。シェイクスピア曰く、ゲーテ曰く、と名著から一節をちょいとばかり失敬し、「そう、自分もそれが言いたかった」と思いの丈を後に続けて綴っていけばよい。引用とは、

学歴が無用だとか、学歴なんか意味がない、と言われるとどきっとする。大学で禄を食んでいる者としては、『売り物』を否定されるようなものなのだから当然のことだ。しかし、本当のところはどうなのだろうか。どうも優勢な気がする学歴否定派は、学歴があってもこんなアホがおる、とか、学歴がなくてもこんなにすばらしい人がいる、とかいう少数のイメージで論じているようなところはない

個人的な話だが、昨日、夏休みが終わった。もちろん、ほとんど本も読まずに、旅行に出かけ、遊びほうけていた。休み明けにHONZのレビューの当番であることも、当然、すっかり忘れていた。「仕方が無い。今回は脱力系の本で軽くいくか」と書きたいところだが、お盆明けだろうがなかろうが、選書が軽い感じで変わらないのは気のせいだろうか。これはこれで少し悲しい。 今回取り上げる

マンハッタンの地上9mにある、全長1.5マイルの高架鉄道跡。解体の危機にあった「ハイライン」を保持すべく活動を開始したのは、2人のゲイの青年だった。最後の列車が高架を通ってから19年後の、1999年のことだ。2人は、別々にハイラインに興味を持った。新聞記事を読んで興味を持ったロバート、雑誌の取材でウェスト・チェルシーを歩いていて高架の存在に気づいたジョッシュ

本書は「朝日新聞 土曜版〈be〉」に2009年から2011年にかけて連載されていた歴史エッセイをまとめたものだ。著者はNHK「BS歴史館」でお馴染みの磯田道史。この人の解説から歴史が好きになった人も多いのではないだろうか。『武士の家計簿』や『殿様の通信簿』などの著作も好評で、すべての作品からは丹念に資料を追う著者の姿勢がにじみ出ている。 本書でも慶長時代の小

東京スカイツリーをテーマにしているのだが、スカイツリー自体がどこにも出てこないという奇跡のような写真集。今やスカイツリーと同じくらい名物になっているのが、ツリーの全体像をカメラに収めようと格闘している人たちである。本書は、そんな人々による「決定的瞬間の決定的瞬間」ばかりを集めた一冊。 全132枚の写真とともに収められているのは、編集の妙である。各々の写真には

さらに犬の優れた嗅覚は野営地の防御などにも役立つ。なんと犬たちは1キロ以上離れた敵の匂いをもかぎ分けるのだ。また9メートルも水に潜った敵の匂いをも嗅ぎ分けることが最近の研究で発見されている。この特性を生かし、2千年以上前から犬たちは人間の戦友として、そして兵器として、様々な時代の様々な戦場で、攻撃、防御、通信などの重要な任務に就いていたのである。 第一次世界

本書を発見し手にとると、帯にはこう書いてあった。 あ、コレ買うなと思った瞬間である。 本の購入には「ジャケ買い」ならぬ、この本絶対面白い!と確信する瞬間があるはずだ。 それは著者だったり、装丁だったりもするが、それ以上にビビっとくる直観だったりする。 ちなみに本書は昨日(8/6)に購入したばかりである。翌日にレビューを書いているのは一気に読んで面白かったから

ソフト人形を買い集め、イベントに足を運んだ。幼少時の憧れだったウルトラマン。本書を読んで驚いた。ウルトラマンは怪獣との戦いが長引き、ピンチになると胸の発光体であるカラータイマーが点滅して音を発するが、生みの親である円谷プロダクションの経営は私が幼少時に夢中になっていたときから、カラータイマーが鳴りっぱなしだったのだ。著者は円谷プロの元社長。「特撮の神様」と呼

文字通り『ラテン語図解辞典』である。見出し語約500、図版約700点、この一冊で古代ローマの文化と風俗に関するラテン語の根本を知ることができる。 たとえば"abacus"。原義は石・大理石・土器などの矩形の厚板。その厚板を使って作られたのが食器棚やそろばんであり、ともに"abacus"である。図版によれば、古代ローマそろばんはケタが決まっていたらしい。右の2

いすみ鉄道。この名前を聞いて、ピンときた人はよほどマニアックな人だろう。地方第三セクター立て直し事例として話題のローカル鉄道でありながら、まだ一部の専門雑誌などで紹介されるだけで、大手メディアはあまり取りあげきれていない。この鉄道の再生物語から、地方や中小企業が学べることは多く、注目に値するのでそろそろ取りあげられそうだ。 本書の著者は、千葉県を走るローカル

寄生虫の本であるにもかかわらず、まず最初に著者が取り上げるのは、旧約聖書に書かれた「エリコの戦い」だ。Battle of Jerichoと書けば、ジャズやゴスペルファンならピンと来るかも知れない。黒人霊歌「Joshua Fit The Battle of Jericho」で歌われた、モーゼの後継者ヨシュアがカナン人の都市エリコを攻略した、約3000年前の戦闘

もしあなたがTEDのステージに呼ばれたとしても、この本を読んでおけば大丈夫!あなたはサー・ケン・ロビンソンのような素晴らしいプレゼンをこなすことができるでしょう。えっ?TEDのステージに立つ機会なんて私にはないって?いやいや、そんなことはわかりませんよ。TEDのステージでプレゼンをする人には2種類のタイプがいるのですから。 第1のタイプは偉業を果たした人達、

話には聞いていたこの豪華全集。えいやっとついに購入してみた。 ただし、10巻『黄金とわび』を、一冊だけまずはとりあえず。 直接申し込むと、特製のダンボールに入り、袋がついてきた。函入りの布張り、B4判で、月報(関連情報をまとめた別刷)も挟まれており、なんだかお得な気分になってくる。 企画自体は、小学館の創業90周年記念事業の一環だそう。 1966年に刊行され

これは、紛れもなく格闘技である。一読して、そう思った。 22冊の本が取り上げられて、一見、書評という体裁をとってはいるが、立ち現われてくるのは、楠木 建という個性豊かな研究者が、体臭をムンムン発散させて、広いリングを縦横に動き回り、汗だくになりながら、相手(読者を含む)に的確なストレートパンチを浴びせ続けている姿である。まことに小気味が良い。江戸っ子の面目躍

例えば、ひと昔前の「紙の」稟議書がデジタル化されて、会社からも消えつつある現在、本書は書かれるべくして書かれた書物であると言えよう。デジタル化の波がひたひたと押し寄せつつある中で、紙という媒体が歴史の中で果たしてきた役割を振り返ってみることは、心躍る知的冒険に他ならない。 メディアとしての紙と言えば、我々は反射的に新聞や書物を連想してしまう。しかし、著者は「

書店で目に付き「あ、この人好きなんだ」と購入。読み始めてから「読んだことがあるぞ」と気づくことは、いつも本を持っていないと落ち着かない活字中毒者によくある話である。大概が、単行本から文庫化するにあたって改題された本だ。そのガッカリ感というか残念な気持ちは何度味わっても嫌なものなのだが、他に本を持っていないので仕方なく惰性で読んでいると、もともと好きな作家だか

このたぐいの本はあまり読まない。これまでにも何10冊も同じような本を手にとってきたし、もうそれほどの上昇志向も必要なく、つまり読まなくても良い年齢になっているからなのだが、本書は基調色が素晴らしいのでつい買ってしまった。じつはこの1分間シリーズはドラッカーからはじまり、スティーブ・ジョブズ、松下幸之助、バフェット、コトラーとつづいてきた。各巻ともデザインはま

今年は◯◯学史をテーマとした読み物の当たり年になるかもしれない。三月に量子力学史の『量子革命』が出版されたのに続き、近代経済学史の本書『大いなる探求』が発売になった。この二冊は長く手元に置いておく本になるだろう。自分にとって青年期だった20世紀を理解し、円熟するはずの21世紀を生きるために欠かすことのできない物理学と経済学について、丁寧に解説してくれながらも

「(4年目にして)授業に出て、勉強しよう」と思い立った矢先、就活が始まった。説明会や面接に時間をとられ、授業に出る暇もない。全くストレスが溜まる。鬱憤を晴らすために手に取る本は、小泉武夫先生の著書だ。就活なんて止めて、辺境に食べ歩きに出かけようか。未来を案ずるより、食卓に並ぶ納豆、キムチ、くさやが気になる。ああ、お酒が飲みたい。先生の著書は私のオアシスである

会社の近くの本屋さんで、この本が「演劇」の棚に置かれていたのを見つけた。「 第三舞台 」の、鴻上尚史さんの本だ。手にとったのは、とある事情で、コミュニケーション能力にちょっと自信を無くしていたからだ。 おお。あの、第三舞台の鴻上さんが、ずっと実践してきたことが書いてあるのか。 そうなのか。サッカーや野球みたいに、練習すればするだけ上達するのか。僕にも、「僕に

HONZの読者にこの本を紹介するのは「釈迦に説法、孔子に悟道」のような気がしている。本はいますぐ役に立たないものの宝庫だとか、本屋にいくのはムダなものに会いにいくというスタンスなど、この本で述べられていることは、HONZの考え方にとても近く、代表の成毛眞が『 本は10冊同時に読め! 』などで言っていることにも似ている。そう思っていたら、併読のススメという部分

とんでもない本が出たものだ。「開運!なんでも鑑定団」に出せば、そら恐ろしい鑑定額がつきそうな古い週刊誌を1冊にまとめた本である。古い週刊誌といっても19世紀末にフランスで発行されたA4・4ページの冊子だ。この雑誌は469号まで発行されたが、そのすべてに日本語解説を付け加えて収録したのだ。世界初だという。その週刊誌の名前を『今日の人々』という。 30年ほどまえ

テレビはほとんど見ないのだが、NHKで日曜夜7時30分から放送中の「ダーウィンが来た!」だけは見てしまう。そのために受信料を払っているようなものかもしれない。ほのぼのとした気持ちになりたいなど老化のあらわれだろうが、ほぼ毎週見ている。昨日(9日)のタイトルは「アザラシ母さん、愛の猛特訓」。タイトルだけで涙腺が刺激されまくりである。テレビでこのような状態なのだ

これまで買った本のなかでもっとも重かったのは、一昨年に出版された『Modernist Cuisine : The Art and Science of Cooking』だった。我が家で実測してみると重量はなんと19.3キログラムもあった。著者本人に聞いてみたところ、フルカラーのこの本に使われているインクの乾燥重量は4ポンドを超えているという。約2キログラムだ

仮説力を磨きたい人にはおススメの本。 いわゆる一流の人間とは、真理に近い仮説を立て、それをいち早く検証・実践した人間と言われている。確かにこのことは学問・政治・ビジネスなどあらゆる分野において普遍的であり、仮説力ある人が世の中をリードしていると言っても過言ではない、と言うと少し言い過ぎか。いずれにせよ、一朝一夕に仮説力を磨くのは難しく、よほどの才能がない限り

2013年のベストビジネス書はこの本で決まり!と、まだ半年以上残っているのだけれど、そう断言してもいいと思えるような本に出会ってしまった。ただジャンルでいうと自己啓発の部類に入るので、HONZの読者向きではないかもしれない。しかしHONZ代表の成毛が 文芸書を紹介 していたくらいなので自己啓発書でもきっと大丈夫だろう。 自己啓発という言葉を聞くと、ちょっとい

朝日新聞の土曜別刷り版「be」の人気連載である人生相談「悩みのるつぼ」。相談内容も幅広く、週替わりの回答者も多彩だが、その中で、なぜか下ネタ系の質問に重点的に答えてくれるのが社会学者で東大名誉教授の上野千鶴子先生だ。 「なぜか」と書いたが、ある意味必然かもしれない。最近は『おひとりさまの老後』でヒットを飛ばしたが、出世作は四半世紀前の著書『スカートの下の劇場

馳星周といえば小説『不夜城』である。登場人物のほとんどは歌舞伎町の深部に蠢く中国人マフィアなどだ。その馳星周の喰人魂というのだからギョッとするタイトルであることは間違いない。じっさい中国における食人は『水滸伝』の時代には珍しいことではなかった。平凡社の中国古典文学体系『水滸伝』駒田信二訳の第41回から引用してみよう。 「おいらが兄貴にかわってこやつを引き割い

あらためて、「侘び」とは何かと問われると難しい。裏千家十五代の千玄室は、侘びの英語訳として「imperfect beauty」「beauty of imperfection」という表現を用いている。ふつうは完全なものと考えられているヨーロッパ的な美とは対照的に、「不完全であるところに宿る美というものがあるのだ」というのが日本文化の偉大な発見、かつ偉大な創造で

ホリエモン仮出所後第1弾。2010年2月にスタートして、いまも続いているメールマガジン『堀江貴文のブログでは言えない話』の一部を抜粋した本である。メルマガは「時事ネタオピニオン」「刑務所わず」「ビジネスモデル教えちゃいます塾」「おすすめレストラン」「私のおススメデジタルガジェットコーナー」「Q&Aコーナー」「ロケット開発までの道のり」など15のコーナーがあり

世の中にたくさん存在しているであろう、成毛眞をはじめとした多くのトイレ読書家に、ぜひともオススメしたい本が文庫として再発売された。 文庫サイズで2310円もするのだが、これは安い買い物だ誰もが思うに違いない。『たべもの起源事典 日本編』は10年前、単行本が出版されたとき、買おうかどうか、非常に迷ったのをよく覚えている。1300項目にも及ぶ日本の食文化をほぼ網

書店でひときわ目立っていた一冊である。とはいっても派手なカバーであったり、強烈な惹句が踊っているというわけではない。むしろ地味である。白地の余白が多く、ちょっと懐かしいような装丁、帯も、ツヤもない地味な色の紙に、こちらも懐かしいような書体で、抑制の効いた、シンプルな言葉が書かれているだけ。 しかし、梶井基次郎のレモンじゃないが、派手な色と感嘆符だらけの扇情的

アルド・マヌーツィオ。出版界が生んだ天才で、革命家、そして本の歴史を変えた男である。彼の存在なくして、出版界は今日ほど大きな発展を遂げることはなかっただろう。 いつも鞄に本を一冊忍ばせている人は多いはず。私もそんな一人で、電車やトイレの中など少しでも時間が出来れば、鞄から文庫本を取り出す。私にとってはとても日常的な動作であるが、こんなことができるのも500年

昨年6月に発行された鹿島茂の『パスカル パンセ抄』がそろそろ文字通りクサくなってきた。1年近くも我が家のトイレの中にあったのだ。用をたすときにパッとどこかを開いて1ページだけ読むのには最適にして最高の本だ。雑誌の人生相談のようであっても鹿島文学になっているところがシブい。たとえば「精神の成長と差異の発見」という1ページ。 ううむ、なーるほどと、納得したりする