
『鰊場育ち』 新刊ちょい読み
昭和40年代、札幌の小学生たちの社会科見学といえば、雪印乳業やサッポロビールの工場などが人気スポットだったが、小樽近辺にある鰊御殿もかならず訪れる場所だった。鰊御殿とは鰊漁の網元たちが建てた豪奢な自宅である。1890年代から建築がはじまり、いまでも10棟以上が文化財として保護されている。鰊漁の最盛期は1932年。それ以降漁獲高は減り続け、遠い過去の記憶となっ
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昭和40年代、札幌の小学生たちの社会科見学といえば、雪印乳業やサッポロビールの工場などが人気スポットだったが、小樽近辺にある鰊御殿もかならず訪れる場所だった。鰊御殿とは鰊漁の網元たちが建てた豪奢な自宅である。1890年代から建築がはじまり、いまでも10棟以上が文化財として保護されている。鰊漁の最盛期は1932年。それ以降漁獲高は減り続け、遠い過去の記憶となっ

人間はもちろんのこと、ヒラメとカレイのように右型の種と左型の種の両方がいるような生物でも、脊椎動物なら必ず左側に心臓があると言えるそうだ。ところが無脊椎動物には、大胆にもそっくりそのまま左右を逆転してしまう仰天の進化を遂げた生物がいる。それが巻き貝である。 サザエ、タニシ、カタツムリなど、私たちの周りにいる巻き貝はほとんどが右巻きである。しかしカタツムリなど

インタビューその1はこちら! 成毛 なんだか面白そうな本がありますね。(一冊手にとって) えーっ(笑)。 仲野 ああ、『まんが医学の歴史』ですね。講義の小ネタ用に使ってます。どのくらい売れているのか知らないけど、ものすごくよく書けてますよ、これ。 成毛 (本をめくりながら)あー、ヒポクラテスの誓いから始まってずっと…… 仲野 分子生物学のことも書かれていて、

電車が好きである。どの乗り物が好きかと問われれば、迷わず電車と答える。 車を運転していては本が読めない。飛行機は酔ってしまうのでよほど体調が良い時でなければ本が読めない。船は体調が良かろうが悪かろうが酔ってしまうので本は読めない。タクシーの後部座席で本を読むなど考えるだけで恐ろしい。三半規管の発達が未熟な本読みの移動は電車と決まっているのだ。なので、電車が好

一口にビジネスマンと言っても、最近ではさまざまなワークスタイルを見ることができる。いわゆる会社勤めだけを見ても、フレックス勤務や在宅勤務というものがあるし、フリーランスや起業という働き方もすっかり定着してきた。 とりわけその中でも注目を集めているのが、都市ノマドというスタイルであるだろう。昨今のインフラの充実ぶりを背景に、MacBook AirやiPadでク
出版社/メーカー: 宝島社 ここ数年、日本の精神医学の遅れを指摘する本が以前よりも目に付くようになってきた。その中に必ず出てくるのが長期の入院患者の存在だ。入院期間が半世紀近くに及ぶ人もいるという。そして、彼らの中には、一見、入院の必要性を感じさせない普通の人々も少なくないという指摘もある。果たして彼らはどのような経緯で今に至ったのか。何を考えているのか。状

デザイン、幾何学、生物学に共通する内容をグラフィックデザインを学ぶ生徒に教えるために作られた本である。著者は教育の過程でデザイナーが幾何学的構図を理解していないがため、優れたコンセプトが台無しになる過程をたくさん目にしてきた。 幾何学的構図を理解するとはどういうことだろうか?本書で行われている解析を真似して試してみた。事例はtwitter。 twitterは

「なにかを判断するとき、人はどのように考えがちなのか」ということが書かれている本だ。「HONZのケースにたとえるなら」と考えていったら、私自身が、ともすればこの本に書かれているような考え方をしがちだ、ということがよくわかった。原題は“Everything is Obvious - Once You Know the Answer”、適当に意訳するなら、「それ

「そりゃそうだ」とタイトルでスルーしてしまいそうな本だ。しかし一読してびっくり。これから親になる人や小さな子供を持つ親は必読である。 本書は深代千之とスポーツジャーナリストの長田渚左の対談で話が進められる。深代は東大大学院の教育学教授。力学・生理学などの観点から身体運動の理解と向上を図る「スポーツバイオメカニクス」の第一人者である。以前『 運動会で一番になる

資生堂の初代社長福原信三についての学術研究に肉付けした本だ。著者は本書の原型となる論文で2010年に博士号を取得している。そのため読み物としては情報量が多すぎるきらいがあるのだが、それがまた本書の魅力にもなっている。そもそも資生堂は信三の父親である福原有信が明治5年(1872)に創業した薬局だった。有信は幕府医学所から大学東校(現在の東大医学部)に進んだ俊英

『 その科学が成功を決める 』などの著書でおなじみ、リチャード・ワイズマン博士の最新刊。タイトルで誤解される向きもあるかもしれないが、超常現象の信憑性を検証するという類の話ではなく、あくまでも超常現象には懐疑的なスタンスだ。そのうえで、人がなぜこうした不思議な現象を体験するのかという点にフォーカスを当てている。 非常に興味深い内容が盛りだくさんで、「ちょい読

ロベール・クートラス(1930~1985)という画家は生前、現代のユトリロと評されていた。フランス存命中にも熱心なファンがいたものの、美術界で光があたる評価はあまりされなかった。しかしその作品達が没後四半世紀を経て、現在故郷パリから遠く離れた日本で注目をあびている。 舞台はフランスなので、物語にはパリの町並み、アルザス、ブルターニュのカテドラルなどが背景であ

買ってはいけないものを買ってしまった。読んではいけないものを読んでしまった。これまでは新刊ノンフィクションのみを追い続け、古本屋店頭の100円均一台など見向きもしなかったのだが、明日から鵜の目タカの目で「痕跡本」なるものを探す自分が目に映る。まさに目から鱗。著者は愛知県犬山市で「古書 五つ葉文庫」を経営しているという。1979年生まれだからセドリ親父ではない

歌舞伎と江戸と食を愛する人であれば、絶対に外せない本である。味付けはあっさりと「山の幸」と「海の幸」の2章のみだ。底本としているのは3代目中村仲蔵の『手前味噌』という自伝である。文化6年(1809)生まれ、明治19年(1886)没の仲蔵は「食乱」を自認した大芝居(幕府公認の劇場)の名優だった。本書はその江戸の大スターにレポーターとなってもらい、様々な江戸グル

本を読んでいて気持ちが悪くなったのは、久しぶりだ。東日本震災では直後に強盗や暴動を起こさない日本人の行儀の良さが世界のメディアに取り上げられ、評価された。しかし、その裏側では隙を狙ったブローカーたちが獲物を狙っていたのだ。3月中旬、とあるリフォーム会社が求人広告を出していた、それは東北で震災被害を受けた住宅へのリフォーム営業の求人であった。家はリフォームする

本書は「グーグルの72時間」という巻頭ドキュメントから始まる。Googleは、3月11日、地震発生からわずか1時間46分という驚くべき早さで日本語使用の安否情報確認ツール「パーソンファインダー」を公開した。まだほとんどの人たちが避難していたり動揺していたりした中、六本木ヒルズ森タワー26階ではGoogle日本法人の川島優志氏(34歳)や三浦健氏(38歳)が、

以前、ツイッターで「クラシック音楽は三味線音楽と比べて粋ではない」と呟いたら、えらい勢いで反論されたことがある。クラシック音楽だって粋な楽曲があるというのだ。ボクにとって粋というのは真面目でも重厚でも芸術的でもない、むしろその逆の諧謔性・外連味のある・戯画化した何者かである。クラシック音楽は粋ではないと言ったのは、むしろ褒め言葉でもあったのだ。九鬼周造の名著

本日、2月14日、バレンタインデー。この日にちなんだ女性のしたたかな作戦は多くのドラマや実際の体験談で語りつがれている。一方で男性は数多くのドッキリの被害にあってきたに違いない。勝手な妄想だがバレンタインデーはエイプリルフールに負けず劣らずドッキリが仕掛けられてきたはずだ。 話は変わって第二次世界大戦中のドイツ、そこで起こったとんでもない事件。ヒットラーの右

今日はもう一本アップしたいと思っているので、少し軽めに。 1月の朝会で、栗下直也がこの本を紹介していた。 この本を読んで「妻に気持ち悪がられた」という栗下は、「要するに『子どもは虫を採れ!』ということなんですけどね」と本の内容をあっさりまとめたが、果たして虫採りが本当に教育にいいのか、本書を読むと、非常に不安になる。 昆虫採集を一番の遊びとして育った著者は、

日本将棋連盟会長の米長邦雄氏が、コンピュータ将棋ソフト「ボンクラーズ」に負けたということが話題になったのは、つい先月の1月14日のこと。それからまだ1ヶ月も経たないというのに、早くも対局した本人によって、その内幕の全貌が明かされた。それが本書『われ敗れたり コンピュータ棋戦のすべてを語る』である。 決戦の裏側に隠された興味深いエピソードが、いくつか挙げられて

「おそろしいことを発見した。HONZおすすめの本をAmazonでぽちると、HONZ の別の本を薦めてくる。ということは、けっこうな数のHONZ中毒者がAmazonでぽちらされているということだ。そのうち無限連鎖講防止法適用されるかもしれん」 わがHONZに対して、とある研究者から、上記のような言葉が投げつけられたのは3日前のこと。あの『白い巨塔』に登場する浪

「腰痛いし、煙草臭い。終電で帰ろうと思ったのに、もう朝かよ。徹夜の麻雀はやらないって決めてたのに・・・」 お酒を飲む人、ギャンブルをする人であれば一度はこのような感想を持ったことがあるはずだ。お酒やギャンブルをやらない人でも、ついつい食べ過ぎてしまったり、夢中になってテレビを見ていて一日が終わってしまったりしたことがあるのではないだろうか。好きでやっているは

いつの間にか「被害者の会」まで結成されそうな勢いになってきたHONZ。もともと、刊行点数の割には情報が少ないノンフィクションの新刊を、活字中毒者の読み手が集まって紹介していこう、という趣旨で成毛眞が考えたこと。ワタシも賛同してメンバーが集まり始まった。それから1年ほどで、評判になりつつあるのは単純にうれしい。「知らなければ買わなかったのに…」と呟かれると、少

最近つくづく思うのは、世の中には色々なフェチの人がいるものだなということだ。それは、今や巨大百貨店の様相を呈しているAmazonのレビューからも窺い知ることができる。 例えば このレビュー 。百歩引き下がって「いい肌触り」とコメントするところまでは良しとしよう。それに対して「参考になった」と投票した人の数が1991人(※2/11現在)というのはどうしたことか

文字通り「山はどうしてできるのか」を説明した本だ。副題の「ダイナミックな地球科学入門」もまさにそのとおり。事象はダイナミックであり、本書はあくまでも入門書である。プレートテクトニクス、プルーム、溶岩ドーム、大地溝帯などの用語を自力で説明できる人にとっては物足りない内容であろう。しかし、そうでない人にとっては格好の入門書だ。とりわけ、中高生にとってはワクワクす

今日のHONZ本編は栗下直也のマニアックな3冊だ。そのうちの一冊は『反社会的勢力』。たしかに最近、新刊新書コーナーで暴力団関係の本を目にする。とりわけ溝口敦は池上彰風の「です・ます調」で書かれた『暴力団』を2011年9月に出版して版を重ねている。さらに紳助事件を書き加えて新書化した『山口組動乱!!2008-2011』を2011年12月に、そして今月『抗争』を
自分が関係しているサイトを持ち上げるのも、気恥ずかしいのだが、最近のHONZで紹介されている本は面白いだけでなく何気におしゃれである。直近の3つだけ見ても民藝にピアニストにデザインである。雰囲気がある。私もその流れに続いて、おしゃれ度の向上に寄与したかったのだが、残念ながら締め切り当日になった今、断念した。おしゃれタスキをつなげそうもない。表紙とタイトルのお

画期的なフレームワークを軸にビジネスモデルを生み出すために創られた本書、1年半前越しで日本語版が出版された。オープンイノベーションだったり、本好きにはおなじみのロングテール、フリーミアムなど、ちょっと昔に話題になったビジネスモデルをイラストとフレームワークをうまく使って描かれている。動画を見てもらえば、よくわかる。 (フレームワークをダウンロードしたい方は

「デザイン」と聞くと、 IDEO や フロッグデザイン を思い出す。いつからだろう?「ビジネスではデザインが重要」という話を聞くようになったのは。「デザイン」と聞くと以前は服や文房具やコカコーラのビンをイメージしたが、「ビジネスにおいてデザイン思考が重要です」と言う時の「デザイン」は、ちょっと違う印象になる。本書が扱う「デザイン」も広い意味をもっていそうだ。

先月に比べると、いくらか陽の昇るのが早くなった気がする。それでも、まだ暗いうちに家を出て、ただ本の話をするためだけに六本木に向かう。他のメンバーは、今回はどんな知らない本を発掘してくれるだろうか。カブらないといいなあ、と心配しつつ会議室へ。 今日の欠席は「家庭の事情」で栗下直也。ゼミの関係で学生メンバーの一色麻衣。何の連絡もない塚越啓樹はどうしたのか?至急連

一流アスリートのパフォーマンスかと見紛うばかりの ピアノ超絶技巧 。あるピアニストは、最速度の演奏でリズムの正確さを保ちながら1秒間に平均で10.5回打鍵するという。またピアノを毎日4時間弾いたとすると、その手は1年間で490キロメートルほどの距離を移動する。東京と大阪を「手で」移動し、年間10回以上フルマラソンに出場しているようなものだ。 本書は、ピアニス

民藝とは、いまから1世紀ほど前に、思想家の柳宗悦らがつくった言葉である。日本が近代化し、機械生産に巻き込まれようとしていた時代に一石を投じたもので、時代に対するアンチテーゼのようなものが始まりであったという。 地域の素材や特性をいかし、昔ながらの手法で作られた日常の生活道具 ― 焼物、染織、漆器、木竹工などに光をあてる。そんな民藝の精神に、今ふたたび関心が集

本書は2009年7月に単行本として出版された傑作ノンフィクションである。それから2年半がたち、文庫化するにあたって、巻末の解説をあらたに書き起こすことを引き受けた。以下のレビューは2009年9月に週刊朝日で掲載されたものだ。自分でいうのも変だが、本書を読み終えたときの熱気が伝わってくるようだ。ノンフィクションファン、アフリカ・資源関係ビジネスパーソン、冒険好

日本文化における「かたち」を読み解く事典だ。「かたち」は直接的に目に飛び込んでくるものありながら、独自の文化や思想を含んでいる。つまり「かたち」とは、かた【型】+ち【魂】であり、本書は独特な日本文化の「かたち」を解説している。 発刊元である「形の文化会」の活動は、文化領域に括られる「かたち」を、科学・文化・歴史の視点で総合的に新しく研究し、人類思想上における

しまった、と臍をかんだ。頻繁にメディアに登場しているとは思っていたが、先週のテレビ番組で「今年大ブレーク必至!」と謳われ特集まで組まれてしまった作家・岩下尚史。先にあのキャラクターが刷り込まれてしまうと、素直に本の世界に入り込めなくなってしまうかもしれない。『ヒタメン 三島由紀夫が女に逢う時…』は、数ある三島由紀夫の評伝の中でも、今後、研究者が必ず読まなけれ

都内及び首都圏で引っ越しを検討しているなら、住宅情報紙を読むよりも、まずは本書を読むといいんじゃないか!? 20代か30代の女性に聞いたところ、今郊外に住んでいる人が10年後にもあんまり郊外に住みたいと考えていないようだ。傾向として、地方に住みたいという割合が多い。郊外では若者の定住意識が弱い。多額のローンを組んで、念願のマイホームを建てたお父さんとしては、

本書の物語はサブプライムローンの裏で大儲けした人々に迫った傑作『 世紀の空売り 』のために行ったインタビューを振り返るところから始まる。「物語」とは言っても、本書は当然ノンフィクションだ。統計だらけのスカウト戦略だろうが、CDS、CDO等の金融用語が飛び交うサブプライムローンだろうが、ヨーロッパの国家財政危機だろうが、この男の手に掛かれば目の離せない一級の物

しまった。完全に食わず嫌いだった。この言葉について、もっと早く知っておくべきだった・・・ 本書は今、注目を集めつつある「ゲーミフィケーション」の何たるかを説明した一冊。ちなみに、ゲーミフィケーションとは「ゲームの要素をゲーム以外のものに使う」ということ。ゲーム以外のことに使うのだから、ゲームの話ではない。僕はそこを大きく見誤っていた。 いったいゲームのどのよ

アール・ラヴレイスの小説『 ドラゴンは踊れない 』の訳者として、この本の著者のことを知った。 私もかつて滞在したトリニダード・トバゴの熱気と匂い、粘りながら躍動するその言葉と生活のリズムが行間から生々しく立ち上ってくるのは、ラブレイズの才能のみならず、その訳によるところも大きいことは、すぐに解った。 皿の上で湯気を立てた「小さな雲」のようなイディリから本書は

新潮社には「波」、岩波書店には「図書」、吉川弘文館には「本郷」など、老舗の出版社は月刊PR誌を発行している。たとえば「波」の場合、自社の新刊書評だけでなく、海堂尊や高橋秀実などによる連載を10本掲載している。A5版128ページ。電車の中で読むのには最適の重さと体裁だ。3年間で2500円。1冊70円。これで送料込みなのだ。もちろん、本屋の店頭で無料で手に入れる