ノンフィクションはこれを読め!

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466記事

『硯の中の地球を歩く』1億年前の原石に命を吹き込む無名の名工の誇りと決意 書影

教養・雑学 / 人物

『硯の中の地球を歩く』1億年前の原石に命を吹き込む無名の名工の誇りと決意

端正な本だ。内容に不釣合いなカバーと帯を取りはずすと、表紙には原寸大に近い一面の硯が刷られている。装丁だけでなく、紙質や印刷も素晴らしい。ゆっくりと味わうように読んだ。 著者は書道道具店の四代目。浅草の店では定番の筆や墨なども取り扱っているが、高級な硯は代々の店主がみずから原石を内外で買い付け、手作りで調製したものだ。文化財レベルの硯の修理なども手がけており

『ああ栄冠は君に輝く~加賀大介物語~』 書影

人物 / プレミアム・レビュー

『ああ栄冠は君に輝く~加賀大介物語~』

平成最後の夏、甲子園は100回目の記念大会、全国から集った56校が熱戦を繰り広げている。おもわぬ伏兵による逆転ホームラン、大差を諦めずに追いつき逆転した試合、2ランスクイズによる逆転サヨナラなど、とにかくドラマチックな試合が多い。そして、メディアは選手やチームに隠されたストーリーを掘り起こし、盛り上がりに加勢する。また、アルプススタンドもアツい。補欠の野球部

『ゲンバクと呼ばれた少年』いつだって星を見上げて 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『ゲンバクと呼ばれた少年』いつだって星を見上げて

この『ゲンバクと呼ばれた少年』は、さながらギリシャ神話の最高神ゼウスが人類最初の女性パンドラに与えた箱の中からあふれ出た、戦争、貧困、疫病、憎悪といった人類を取り巻くあらゆる災禍と、それでも箱の底に最後に残されたかすかな希望の物語のようである。 本書は、昨年8月に放送されたNHK・ETV特集「原爆と沈黙〜長崎浦上の受難〜」の内容を、子ども向けに書籍化したもの

『トレバー・ノア 生まれたことが犯罪! ?』世界は好きなように生きられるところだということ 書影

人物 / 編集者の自腹ワンコイン広告

『トレバー・ノア 生まれたことが犯罪! ?』世界は好きなように生きられるところだということ

どこにでも行けるし、なんでもできる、そんなふうに育ててもらった。 この世界は好きなように生きられるところだということ。自分のために声をあげるべきだということ。自分の意見や思いや決心は尊重されるべきものであること。そう思えるようにしてくれた。 本の編集をすると、校正で繰り返し同じ内容を読むことになるわけですが、何度読んでもこの部分にはぐっときてしまいます。それ

『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁 書影

人物 / 社会

『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁

著者、伊藤祐靖は自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の「特別警備隊」の創設に携わり、部隊創設後は先任小隊長として技術の向上に努めた人物である。本書は日本初の特殊部隊を創設した男の半生を綴った自伝であり、自衛隊という国防の最前線のリアルを描いたノンフィクションでもある。 そもそも日本は旧帝国陸海軍の時代から特殊部隊という特殊戦の専門部隊というものを持ったことがな

『お嬢さん放浪記』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『お嬢さん放浪記』

1948年秋、犬養道子さんはアメリカ・ボストンへ向けて羽田を飛び立った。当時、若い女性が一留学生として単身アメリカに渡るというのは、決してありふれたことではなかっただろう。そもそも女性の大学進学率がわずか2.3~2.4%、ましてや海外の大学に行くなど限られた人にしか叶わないことである。そんな時代に、犬養さんは旅立った。「お嬢さん育ち」の自覚はある。が、すべて

『革命 仏大統領マクロンの思想と政策』 書影

人物 / 社会

『革命 仏大統領マクロンの思想と政策』

トランプ大統領の登場により、多くのメディアは、グローバリゼーションや地球温暖化対策は曲がり角に差し掛かったと報じた。ブレクジットについてもEUの将来を悲観的に見る報道が多かった。 しかしフランスでは、グローバリゼーションを真正面から受け止めEUの強化を愚直なまでに訴えたマクロン大統領が誕生した。「革命」はマクロンが書き下した本である。大統領選に出馬するために

『一発屋芸人列伝』大きく勝って、大きく負けた山田ルイ53世が、負けの中に見出した勝機 書影

人物 / 著者インタビュー

『一発屋芸人列伝』大きく勝って、大きく負けた山田ルイ53世が、負けの中に見出した勝機

その日、電車に揺られながら、ぼくは迷っていた。これから会う相手にどんなスタンスで話を訊けばいいのか悩んでいたのだ。待ち合わせ場所は新宿小田急百貨店。この中にある書店で、山田ルイ53世の『一発屋芸人列伝』の発売を記念したトークショーが予定されていた。 『新潮45』連載時に「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞した本書は、発売前から重版がかかるほど評判が高く

『料理人という生き方』破天荒金髪シェフの浪花節人生 ーこの本が、あなたの勇気になりますようにー 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『料理人という生き方』破天荒金髪シェフの浪花節人生 ーこの本が、あなたの勇気になりますようにー

けったいなおっさんである。大阪駅から環状線で一駅目の福島駅近くにある、知る人ぞ知るフレンチレストラン『 ミチノ・ル・トゥールビヨン 』のオーナーシェフだ。つむじ風を意味する店名トゥールビヨンに込められているように、旋風をおこしたいと常にたくらんでいるおっさんが本を出した。 本の作りもけったいである。まず、表紙が普通じゃない。料理人の本なら、それらしいポーズを

九歳でロケット、十四歳で核融合炉を作った「天才」──『太陽を創った少年』 書影

サイエンス / 人物

九歳でロケット、十四歳で核融合炉を作った「天才」──『太陽を創った少年』

この世には「ギフテッド」と呼ばれる神から与えられたとしか思えない才能を持つ凄い人間たちがいる。そのうちの一人がアメリカ、アーカンソー州のテイラー・ウィルソン少年だ。彼は9歳で高度なロケットを”理解した上で“作り上げ、14歳にして5億度のプラズマコア中で原子をたがいに衝突させる反応炉をつくって、当時の史上最年少で核融合の達成を成し遂げてみせた。 彼は核融合炉を

『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』不完全だからこそやってみる 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』不完全だからこそやってみる

気になって仕方がないことがある。スポーツ選手のインタビューで連発される「ネ」だ。え? 意味わからない? では以下に例文を。プロ野球でお立ち台に上がった選手にアナウンサーがインタビューする場面である。 アナ:「サヨナラホームランを打った○○選手です!おめでとうございます!」 選手:「ありがとうございます!」 アナ:「勝負どころで打てた、その理由について教えてく

『ニュルンベルク合流「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源』にはノンフィクションを読む喜びの全てが詰め込まれている 書影

人物 / 世界史

『ニュルンベルク合流「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源』にはノンフィクションを読む喜びの全てが詰め込まれている

ハンス・フランクはひざまずき、傍らの神父に十字を切ってくれるよう願った。そして、微笑みを浮かべながら歩き出した。彼の人生の終着点となる絞首台へ向かって。 1939年からドイツ占領下のポーランド総督府総督としてユダヤ人虐殺を進めたフランクは、ニュルンベルク裁判で「戦争犯罪」と「人道に対する罪」に対する有罪で死刑判決を受けた。今では当たり前の存在にも感じる「人道

話下手でもあきらめるな。We Shall Never Surrender『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ』 書影

人物 / ビジネス

話下手でもあきらめるな。We Shall Never Surrender『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ』

「礼儀正しい始まりは、愚かしい始まりである」 これはチャ-チルの言葉だ。スピーチやプレゼンにおいて、一番大事なのは第一声である。それなのに「みなさまの前でお話しできることを嬉しく思います。」というような、ありきたりで退屈な言葉で話しをだす人がいかに多いことか……。 「Boring boring」退屈で、くだらない!そういった社交辞令をスピーチにいれたければ話

このカップルが大好き…『されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間』 書影

医学・心理学 / 人物

このカップルが大好き…『されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間』

著者は『最貧困女子』や『老人喰い』などのルポ作品で、犯罪現場の貧困問題をえぐり出してきた気鋭のノンフィクション作家だ。 働き盛りの44歳。作家稼業だけでは食えなくなってきた出版界にあって、社会派マンガの原作もこなしながら、いささか問題のある奥さまと、なんとか暮らしてきた。奥さまの問題とは、重度の発達障害を抱えたまま大人になっただけでなく、リストカットを繰り返

『隠れナチを探し出せ 忘却に抗ったナチ・ハンターたちの戦い』悪の凡庸と時間に挑み続ける者たち。 書影

人物 / 社会

『隠れナチを探し出せ 忘却に抗ったナチ・ハンターたちの戦い』悪の凡庸と時間に挑み続ける者たち。

1945年5月5日、アメリカ軍がオーストリアのマウトハウゼン強制収容所を解放したとき一人のユダヤ人男性の命が救われた。男の名はジーモン・ヴィーゼンタール。自信家で野心家。この男は、後に最も有名なナチ・ハンターとして頭角を現す。そして、最も、問題の多いナチ・ハンターとして数々の論争の的となっていく。 大戦中にドイツが占領した地域では、ドイツ軍及び現地の協力者に

『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』大川小学校の悲劇。あまりにも複層的な物語 書影

人物 / 社会

『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』大川小学校の悲劇。あまりにも複層的な物語

リチャード・ロイド・パリーの新刊である。そう聞いただけでピンときた人はよほどのノンフィクション好きか、あるいはHONZファンであろうか。英《ザ・タイムズ》誌アジア編集長、東京支局長でもある著者は前作『黒い迷宮』で2000年におきた英国人女性ルーシー・ブラックマンさん殺害事件を追い、日本の歓楽街の闇の一面を見事に描き出した。HONZでも話題騒然となり内藤編集長

『オリバー・ストーン オン プーチン』あの社会派監督が密着取材 北の帝王のもう一つの見方 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『オリバー・ストーン オン プーチン』あの社会派監督が密着取材 北の帝王のもう一つの見方

米国の社会派監督として知られるオリバー・ストーンは2015年から2年間かけてプーチン大統領に密着インタビューし、その模様を連続ドキュメンタリー番組として制作した。本書は放送されなかった素材を含めて書き起こしたものである。 放送された直後のアメリカメディアの反感は強烈だった。ニューヨーク・タイムズは「呆れるほど寛大なインタビュー」と論評。CNNやワシントン・ポ

『白鵬伝』矛盾の大きさが示す破格の器量 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『白鵬伝』矛盾の大きさが示す破格の器量

いまもっとも話を聴いてみたい人物といえば、なんといっても白鵬である。昨年の九州場所を前に発覚した暴行事件以来、相撲界が揺れに揺れているのはご存知の通りだ。メディアはわかりやすい対立の構図を仕立て上げ、それぞれの陣営の応援団を買って出た関係者が次から次にワイドショーに登場してはもっともらしい背景を語ってみせる。相撲界をめぐる空騒ぎは一向におさまる気配がない。

月1億8000万円稼いだ『ストリップの帝王』の栄枯盛衰 書影

人物 / 社会

月1億8000万円稼いだ『ストリップの帝王』の栄枯盛衰

文字通り「ストリップ産業の帝王」となった男の評伝だが、タイトルだけで敬遠すると損をする一冊かもしれない。 冒頭から過激だ。ストリップ劇場に刃物を持って押しかけてきたヤクザを、病院送りにするところから物語は始まる。殺人2件、殺人未遂7件のヤクザを失神させる男とはどんな男かと想像は膨らむ。ストリップという産業からしても主人公はチンピラ崩れかと思われるかもしれない

『バナの戦争 ツイートで世界を変えた7歳少女の物語』シリア情勢を知る最適な一冊 書影

教養・雑学 / 人物

『バナの戦争 ツイートで世界を変えた7歳少女の物語』シリア情勢を知る最適な一冊

爆弾が降りしきる中、私と同じように生活を営む人がいる。そんな当たり前のことを、本書を読むまで忘れかけていた。銃撃戦がひどい地域の住民は全員避難して、住居のなかは空っぽになっているというのは自分勝手な思い込み。バナは爆撃と銃撃戦が日々繰り返される街で生活していた。 バナの家族は、お父さん、お母さん、弟のモハメッド、戦争の最中に生まれた弟のヌール(光という意味)

『オリバー・ストーン オン プーチン』正義の反対は悪ではなく、また別の誰かの正義であることについて 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『オリバー・ストーン オン プーチン』正義の反対は悪ではなく、また別の誰かの正義であることについて

「正義の反対は悪ではなく、また別の誰かの正義である」という言葉があるが、それをまざまざと感じさせるインタビューだ。 日頃のニュース報道をどれだけ注意深く見ていたとしても、プーチンの実像など、なかなか見えてこない。元KGBの工作員であり、独裁者であり、言論の弾圧や人権の侵害でも、よく批判される。だが時に起こす大胆な行動に、世界は度々驚かされてきた。このミステリ

『最初に父が殺された』南アジアの楽園で起きた凄惨な歴史 書影

人物 / 社会

『最初に父が殺された』南アジアの楽園で起きた凄惨な歴史

ときに歴史は恐ろしいほどに陰惨な物語を生み出す。民主カンプチアでおきた出来事は、ナチスのホロコーストや、毛沢東の大躍進政策、文化大革命にも匹敵する人類史上稀に見る惨禍であろう。民主カンプチアという名前でピンと来なければポル・ポト政権と呼んでもかまわない。 この政権での、極端な共産主義思想に基づいて行われた虐殺と飢餓で、全国民の四分の一にあたる二百万人以上が殺

『西郷隆盛はどう語られてきたか』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『西郷隆盛はどう語られてきたか』

西郷隆盛という人物の全体像は、その全体を構成する部分の一つ一つを知れば知るほど、ますます途方もなく広がり、多面性を見せ、さまざまな解釈の可能性を生み出していきます。私自身は、そうした捉えがたさを増す西郷像の中で、何をもって「西郷」とするか、その問いに答えなくてはとつねに思い続けています。 そしてその模索の中で辿り着いた一つの答えは、西郷のいくつかの漢詩、とく

『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『チャップリン自伝 栄光と波瀾の日々』

本書は、世界の喜劇王チャーリー・チャップリンが、75歳の時に出版した自伝 “My Autobiography” の新訳である。日本では、長らく中野好夫氏による、格調高く、かつ翻訳であることを忘れてしまうほど自然な日本語による名訳で親しまれてきたが、なにぶん時代の制約のせいで多少の取り違えもあった。今回、チャップリン没後40年を記念して、また資料が出揃いつつあ

『感染地図』疫学の父が立ち向かった、見えない敵 書影

人物 / 世界史

『感染地図』疫学の父が立ち向かった、見えない敵

『世界をつくった6つの革命の物語』 (朝日新聞出版)、 『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』 (同前)、 『ピア PEER』 などで知られるスティーヴン・ジョンソン。彼の過去作が10年越しに文庫化された1冊である。 舞台は19世紀のロンドン。劣悪な衛生環境の中で、人びとは繰り返されるコレラの流行に苦しめられていた。本書は中でも集中的な被害をもたらした、1

『これが人間か』人とは、ここまでグロテスクになれるものなのか!? 書影

教養・雑学 / 人物

『これが人間か』人とは、ここまでグロテスクになれるものなのか!?

プリーモ・レーヴィはユダヤ系イタリア人。トリーノ大学を主席で卒業した科学者だ。彼は24才の時にパルチザンとして活動中に逮捕される。1943年の事だ。翌1944年にアウシュヴィッツに移送され、開放されるまで強制収容所で地獄のような日々を送った。彼が送られたのはアウシュヴィッツの中の第三強制収容所モノヴィッツである。この収容所は強制労働を主目的としており、囚人は

『カラヴァッジョの秘密』 書影

アート・スポーツ / 人物

『カラヴァッジョの秘密』

既に十分すぎるほどのオマージュを集めてきたカラヴァッジョ、17世紀以降の西洋絵画に絶大な影響を与えた稀有な天才について、今更、何かを書き加えることがあるのだろうか。そう思う人は、ぜひ、本書を紐解いて欲しい。 優れた作家が、周知の事実や数多の論及、古くからの評伝や長大な解説書など膨大な文献の洪水の中から、まるで魔法のように明確な輪郭を持ったシンプルで読みやすい

『パリのすてきなおじさん』人生が醸し出す大人の「絵本」 書影

教養・雑学 / 人物

『パリのすてきなおじさん』人生が醸し出す大人の「絵本」

老いは避けられない。どうせ老いるなら若い人に「素敵なおじさん」と呼ばれたいものだ。おじさんが何歳からなのか、はっきりした定義はないだろうが、30歳からをおじさんと呼ぶのなら、私はおじさん歴9年になる。そろそろ、おじさんも板についてきた頃だろう。しかし未だに素敵なおじさんが、どんなものなのかトンとわからない。おじさんのサンプル集でもあればと思っていたら、出てき

『レッド・プラトーン 14時間の死闘』今年一番の戦争ノンフィクション! 書影

教養・雑学 / 人物

『レッド・プラトーン 14時間の死闘』今年一番の戦争ノンフィクション!

戦闘前哨(COP)キーティングはアフガニスタン北東部に位置するヌーリスタン州の山岳地帯に作られた。パキスタンの国境から、わずか22.5キロメートル。9.11以降アフガニスタンに派兵した米軍はアフガニスタン東部での反乱に悩まされていた。アルカイダとタリバンの戦士達はこの急峻な山岳地帯の網の目のような隠れ谷をうまく利用し、戦士や武器をパキスタンから補給していた。

『どん底名人』最後の無頼派棋士の栄光と転落 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『どん底名人』最後の無頼派棋士の栄光と転落

名人4期、碁聖6期、タイトル獲得数35。「最後の無頼派」と呼ばれた囲碁棋士である依田紀基氏の自伝だ。ギャンブルで借金を背負い、家族が離散した「どん底」時代のエピソードまで赤裸々に明かしながら、プロとして勝ち続けるために必要な考え方について語る。勝負師の言葉は全ての職業人に通じる普遍性と重みがあるだろう。 学生時代の著者は絵に描いたような劣等生だった。通知表は

『ヒトラーの原爆開発を阻止せよ! “冬の要塞”ヴェモルク重水工場破壊工作』戦記物では収まらない大作!! 書影

サイエンス / 人物

『ヒトラーの原爆開発を阻止せよ! “冬の要塞”ヴェモルク重水工場破壊工作』戦記物では収まらない大作!!

本書は第二次世界大戦のさなか重水をめぐり行われた連合国とナチスとの攻防に脚光を当てた作品だ。舞台はノルウェーのオスロ西方にあるテレマルク県に広がるハンダルゲン高原という荒涼とした大地。極寒の地で冬には雪で閉ざされ、地元の猟師が時々、トナカイをしとめに足を踏み入れるくらいの場所だ。夜になると急激に気温が下がるため、地元では「炎さえ凍る」と実しやかに囁かれる厳し

『麿赤兒自伝』憂き世 戯れて候ふ 書影

アート・スポーツ / 人物

『麿赤兒自伝』憂き世 戯れて候ふ

著者は舞踏家の麿赤兒(まろあかじ)。劇作家である唐十郎の状況劇団に参加し、それから土方巽に師事した。その後に舞踏集団「大駱駝艦」を立ち上げ、国内外に舞踏を知らしめた人物だ。 舞踏は日本で発祥した半裸で踊るスタイルだが、疾走する身体というよりむしろ動かなかったりする。一見、死を匂わせる静止した肉体かと思いきや、いきなり生に執着する表情をとり、口を全開させ呼吸音

ゲームと共に生きる。『ゲームライフ――ぼくは黎明期のゲームに大事なことを教わった』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

ゲームと共に生きる。『ゲームライフ――ぼくは黎明期のゲームに大事なことを教わった』

人生を振り返ってみると、いつもその傍らにはゲームがあった。 プレイヤーの目の前に展開するゲームプログラムは誰にとっても同じものだが、ゲームがもたらす最終生産物は、プレイヤー各々にとって異なる「固有の体験」だ。僕の「初代ポケモン」と、誰かの「初代ポケモン」の思い出は大きく異なる。なにしろ、僕にとってのポケモンは、一緒に分担しながらポケモンを捕まえて、バグ技を共

『佐治敬三と開高健 最強のふたり』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『佐治敬三と開高健 最強のふたり』

赤坂・一ツ木通りが青山通りに突き当たるすこし手前に「木家下BAR」がある。読み方は「こかげ」。雑居ビルの地下一階にある店だ。 専用階段を降りて重い木の扉を叩いて来店を伝えると、マスターが中からドアを開けて迎い入れてくれる。10人ほどが座れるL字形のカウンターと、数人で囲める木のテーブルと椅子があるだけの小体な店だ。カウンターの端にはいつもの巨大なかすみ草の花

きっと本屋を開きたくなる 本ブームの謎に迫った『本の未来を探す旅 ソウル』 書影

教養・雑学 / 人物

きっと本屋を開きたくなる 本ブームの謎に迫った『本の未来を探す旅 ソウル』

韓国の首都ソウルでは、いま空前の本ブームが起きている。「独立書店」と呼ばれる個人開業の書店が週に1軒は生まれ、「独立出版物」と呼ばれる個人出版の本も、1日1冊のペースで出版されている。 一体なぜこんなムーブメントが起きているのか。学歴社会、就職難と非正規雇用、晩婚化と高齢化など、様々な共通した社会問題を抱える日本と韓国だからこそ、学べることがあるのではないか

新装復刊『大気を変える錬金術』 世界を変えた化学 書影

サイエンス / 人物

新装復刊『大気を変える錬金術』 世界を変えた化学

歴史上もっとも人口の増加に貢献した科学的発明は何か?それは、多くの病気から命を救った医薬品でも、世界中のあらゆる地域へ人類を移動させた航海技術でも、機械化による効率化をもたらした産業革命でもない。もちろん、これらの発明も多くの命を支えており、現代生活に欠かせないものではあるが、その発明のおかげでこの世に存在している人命の数では、ハーバー・ボッシュ法には及ばな

世界一の戦闘飛行機を創った男『銀翼のアルチザン』 書影

人物 / 日本史

世界一の戦闘飛行機を創った男『銀翼のアルチザン』

「疾風(はやて)」。離陸速度、最高速度、旋回、急降下等、その性能の高さは世界の中でも群を抜き、第二次世界大戦中、米国軍に「悪魔の機体」と名付けられた。それだけではなく、何よりもパイロットの安全を考え、彼らが迅速に機外脱出出来るよう設計されていた。戦後、米軍はその性能を分析し、驚愕した。 本書は「疾風」を世に生み出した中島飛行機と、そこで生きた人間の物語である

優しいペン 『わけあり記者』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

優しいペン 『わけあり記者』

弱者の気持ちを知っている人が、公器としてのペンを持っている社会は安心だ。本書の著者は、中日新聞の記者である。過労からうつ病になり、復職後に両親の介護をかかえ、パーキンソン病の進行を薬でおさえながら勤務を続ける「わけあり記者」だ。本書では、「ここまで書いてしまって良いのか」と思うほど克明に、事の次第を綴っている。心を動かされない人は、まずいないだろう。 熟達し

『ブラック・フラッグス 「イスラム国」台頭の軌跡』ザルカウィと群像 書影

人物 / 事件・事故

『ブラック・フラッグス 「イスラム国」台頭の軌跡』ザルカウィと群像

アフマド・ファディル・アル=ハライレー。それが本書の主人公の名前である。だが本名よりもこちらの名前のほうで世間には知られている。その名はアブー・ムサブ・アッ=ザルカウィ。イラクのアル=カーイダ(AQI)の創設者である。イラク戦争のさなか、米軍の占領政策の弱点を巧みにつき、イラク全土で武装反乱の炎を燃え広がらせたテロリストである。 本家のアル=カーイダとは違い

『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』清く、正しく、疑わしく 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』清く、正しく、疑わしく

何かの分野を一筋に研究した人物の評伝には名作が多い。中でもとりわけ面白いのが、厳格でアカデミックな世界をいかに破天荒に生きたかというタイプのものだ。生きている世界と生き方とのコントラストが、読者を惹きつけ魅了するわけである。そういった意味で、本書もコントラストの妙が効いているタイプの一冊ではあるのだが、世界と生き方の関係がそれらのものとは反転している。 超常