
『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』プロデュースのスリルと快楽
映画プロデューサー・奥山和由といえば、強烈な個性とリーダーシップで数々のヒット作品を世に送り出す手腕が映画史に残る人物だ。 『丑三の村』『海燕ジョーの奇跡』『恋文』『ハチ公物語』『226』『遠き落日』『無能の人』『うなぎ』『地雷を踏んだらサヨウナラ』などなど。 これまでに100を超える作品を世に送り出した。 「世界の北野」を生み出したのも奥山さんである。『そ
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映画プロデューサー・奥山和由といえば、強烈な個性とリーダーシップで数々のヒット作品を世に送り出す手腕が映画史に残る人物だ。 『丑三の村』『海燕ジョーの奇跡』『恋文』『ハチ公物語』『226』『遠き落日』『無能の人』『うなぎ』『地雷を踏んだらサヨウナラ』などなど。 これまでに100を超える作品を世に送り出した。 「世界の北野」を生み出したのも奥山さんである。『そ

著者の小林宙(そら)くんは、15歳でタネの会社を起業した。会社名は、「鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション」。どんな会社かというと、伝統野菜を主とするタネと苗の販売、そして農薬と化学肥料不使用の野菜(伝統野菜)の販売を生業としている。 本書は、宙くんが各地域の伝統野菜を守るために、「流通」を生業とした事業を立ち上げるまでの、ストーリーが綴られている。どうし

円谷幸吉 、ある年齢以上の人にとっては決して忘れることのない名前だ。東京オリンピックのマラソン、二位で国立競技場に戻ってくるが、イギリスの ヒートリー に抜かれ惜しくも三位に。1968年のメキシコオリンピックを目指すが、その年の1月、両刃のカミソリで頸動脈を切って自殺する。 父上様、母上様、三日とろろ美味しゆうございました。 干し柿、餅も美味しゆうございまし

パイオニアはすべからく苦悶するのだろう、「明日にならねば、開かぬ扉がある」と。『 緋の河 』は、ニューハーフの新時代を切り開いたカルーセル麻紀をモデルにした、直木賞作家・桜木紫乃による小説だ。 釧路に生まれた主人公・秀男は、女の子よりもずっと可愛いといわれる色白の子どもだった。だが、小学校でつけられたあだ名は「なりかけ」、女になりかけ、という意味である。 そ

私が中学生だった頃、数学の先生が1と0だけで数を表現する二進法を教えてくれた。この1と0を電流が流れている状態、または切れた状態に対応させると、全ての数を電流のオンオフ組み合わせで表せるという。これを利用したのがコンピュータだと聞いて、私はいたく感動した。 その考え方を世界で初めて提示したのが、本書の主人公シャノンである。現代社会に不可欠のパソコン、携帯電話

HONZ代表の成毛眞は間違いなくある種の天才である。マイクロソフトジャパン社長時代の数々の伝説は言うにおよばず、このノンフィクションレビューサイトHONZにしたってそうだ。思いつきがやたらとおもしろい。 そのひとつに『表参道パルプンテの会』というのがあった。2017年の9月から1年間の期間限定で開催された秘密のパーティー(?)である。その目的は、「研究者、一

酒の上での失敗。私も含め身に覚えのある人が多いだろう。思い出すたび情けないが、そんな気持ちも栗下直也の『人生で大切なことは泥酔に学んだ』を読めば、自分はまだましなほうだと、間違いなくやわらいでくる。 各界有名人総勢27名のとんでもない泥酔エピソードが紹介されている。どれもすごいが、酒乱スケールの大きさでは、第二代内閣総理大臣・ 黒田清隆 の右に出る者はおるま

著者はボクがこれまでにお目にかかった経営者のなかで3本指に入る無茶な人だ。ある意味でビル・ゲイツや孫さんを超える。戦国時代から続く伊勢の超老舗当主が約束されていた人だ。創業は天正3年。この年、伊勢から直線距離で50km北東では織田信長と徳川家康が武田勝頼と戦っていた。長篠の戦いである。 東北大学では血尿がでるまで空手に打込み、社会人になってからは盛大な失敗つ

単行本「なかのとおるの生命科学者の伝記を読む」を出版してから早くも八年。思いがけず文庫化のお話をいただきました。あちこちに講演や講義でお呼びいただいた時に、けっこう「先生の伝記の本、面白かったです」と声をかけてもらえたり、サインをお願いしますと頼まれることがあって、ほんとうにありがたいことだと思っています。 何を書いたか忘れてしまっていることが多いことには、

まずは質問に答えてほしい。年齢や経歴によって答えられないものもあるかもしれない。それでも、ざっと眺めてほしい。 ・子どものころの夢は? ・駆け出しのころ役だった(または無視して正解だった) アドバイスは? ・仕事場のお気に入りポイントは? ・キャリアや仕事のために払った最大の犠牲は? ・あなたにとって成功とは? ・夜眠れなくなるような不安や悩みはある? ・1

『みんなの学校』をご存じだろうか?「ふつう」の公立小学校、 大阪市立大空小学校 のユニークな取り組みを紹介したドキュメンタリーのタイトルである。最初は2013年に 関西テレビのドキュメンタリー として放送され、2年後には 同名の映画 にもなった。 2006年に設立された大空小学校の初代校長・木村泰子は「すべての子どもの学習権を保障する学校をつくる」ことに全力

唇を制御する神経の考察。 友人に先を越され苦悩する姿。 天才の反対を凡才とするなら 、レオナルド・ダ・ヴィンチはその両面を持っていた。 本書は7200ページにわたる自筆ノートから、本人を検証した評伝だ。ノートには唇を制御する神経のスケッチから、友人たちに先を越され落ち込んだ気持ちまで記されている。天才で片付けられてきた彼も、わたしたちと同じ感情を持つ人間だと

機中で『友情』と『友情2』を読み終えると、私は窓から雲海を眺め、唇を噛んで涙した。本書は、故・平尾誠二氏と生前に深い親交があった15人が、彼への思いをまとめた本だ。そのなかには、ご家族(夫人・長女・長男)や山中伸弥氏も含まれている。 私はその死に大きな喪失感を覚えたが、同時に彼の生き様に「胸のすく」爽快感を感じた。ある時は泣かされ、ある時は笑わされる、感情を

1922年(大正11年)11月17日アインシュタインは神戸港に到着した。この日は京都の都ホテルに宿泊。日記には「下の町はまるで光の海。強烈な印象」「日本人は簡素で上品、とても好ましい」と綴っている。 アインシュタインが特殊相対性理論と光量子仮説を発表したのは1905年。26歳のときだった。自身のノーベル物理学賞受賞を知ったのは日本への船上だった。さぞかし楽し

タイトルにつられてクリックしたあなたは、きっと経験があるはずだ。気持ち悪くて起きられない。前の晩に二軒目、三軒目に行かなければ、いや、最後の一杯が余計だったか。そんなことを今更、寝床で悔いても問題は解決しない。 会社員は何もしなくても、会社にいることが重要と人生の諸先輩方が教えてくれたように、雨が降ろうが雪が降ろうが、はたまた槍が降ろうが会社を目指さなければ

ーもう一冊の新刊『女たちのテロル』も面白く拝読しました。100年前に自ら権利を勝ち取るために命を懸けて戦った女性たちがいたことを知ってなんかやらなくちゃいけない、と焦る気持ちちになりました。実は本を読んですぐ「文子と朴烈」を見に行ったんですよ。本から得た情報と映像が放つリアリティで息が詰まりそうになりました。 ブレイディ: それは作品にとって本望ですよ。主役

ー私はブライトンという町について全く知らなかったので、地図から探してみたのですがロンドンの南なんですね。 ブレイディ :そう、繁華街は海の近くにありますが、うちは海からバスで2・30分くらい離れたところの高台です。海辺はもともとリゾートで、ゲイカルチャーがさかん。ヒップで、おしゃれな店がたくさんある場所です。芸能人が別荘を持っていたり、芸術家たちなどが移住し

―発売3日で大増刷だそうですね。おめでとうございます。編集部から見せていただいた、書店員さんからの熱い反応はすごいですね 。 ブレイディみかこ(以下、ブレイディ) :ありがとうございます。皆さん熱心に読んでくださって嬉しいです。 ―この本を読み終わって思ったのは「こんな息子、欲しいなあ」でした。聡明で、ちょっとシャイで、彼の成長や事件を、近所のおばちゃんみた

仏教誕生の地、インド。だが、みなさんはご存知だろうか? インドでは一時、仏教が存続の危機にあったことを。その激減した仏教徒を1億5000万人にまで増やす偉業を成し遂げた最高指導者が、日本人であることを。「仏教徒を増やす」ことは、ほかならぬ貧困や差別との闘い、「不可触民」と呼ばれる人たちを救うためであった、ということを。 本書で描かれるのは、今もそのインド仏教

私たちはまだ本当の宇沢弘文のことを何も知らない・・・これが本書を読了しての思いである。そして、宇沢とは何者で、どこから来て、どこへ行こうとしていたのか、その全てを詳らかにしてくれるのが本書である。これをきっかけに宇沢の功績の再評価が行われるに違いないと確信させる、経済学の歴史に残る名著である。 「ノーベル経済学賞に最も近かった日本人」であり、「社会的共通資本

アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズの伝記が世界的なベストセラーとなり、一躍脚光を浴びた伝記作家、ウォルター・アイザックソンの新刊である。 なぜ今、レオナルド・ダ・ヴィンチの伝記を書こうとしたのか。それは、科学と芸術、人文学と技術といった異なる領域を結びつける能力こそが真のイノベーションのカギとなるという、アイザックソンが一貫して追い求めたテーマを最も

妹背山婦女庭訓は、浄瑠璃作者・近松半二による文楽や歌舞伎での大人気演目。そして、『渦』は、半二の生涯と妹背山婦女庭訓の成立を縦軸に、それをとりまく人々を横軸に描かれた物語。生き生きとした描写に、江戸時代の大坂、劇場街であった道頓堀かいわいの賑わいや、そこでうごめく人たちの姿が目に浮かんでくるようだ。 この世もあの世も渾然となった渦のなかで、この人の世の凄まじ

レオナルド・ダ・ヴィンチについては、これまで数多くの本が出版されてきたが、本書は正に、「ダ・ヴィンチ伝の最終決定版」である。 ダ・ヴィンチの作品に焦点を当てたこれまでの評伝とは一線を画し、世界的な伝記作家であるウォルター・アイザックソンが、現存する7,200頁ものダ・ヴィンチの自筆ノートを全て読破した上で、それをベースに執筆している。 日本でも、2005年に

確かあれは夏木マリさんの舞台を番組スタッフと観に行った帰り道だった。 「カッコいい女の人、というと誰を思い浮かべます?」 若いスタッフに訊かれた。たぶん彼女は夏木さんのパフォーマンスに圧倒されていたのだろう。質問のかたちをとってはいるけれど、言外に「夏木さんほどカッコいい女性はいないですよね」というニュアンスが込められていた。 もちろん夏木マリは文句なしにカ

「夜間飛行」という言葉を目にした時、ある人はサン=テグジュペリの『夜間飛行』を、ある人はちあきなおみの「夜間飛行」を、そしてある人は街の一角に佇むバー「夜間飛行」を思い浮かべるかもしれない。本書のタイトルは、主人公がずっと身につけていたゲランの香水の名前からヒントを得たものだ。「女性らしさを失うことなく、男性中心の社会でも自分の立場を貫き、冒険的で志のある女

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の後編『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開が間近に迫り、今か今かと待ちわびている昨今。そんな現在も活躍するマーベル・ヒーローの多くの生みの親であり、基盤を作り上げてきたスタン・リーの伝記が本書『スタン・リー: マーベル・ヒーローを創った男』である。昨年11月に95歳で亡くなったスタンリーだが、その年齢が示すとおり

誰一人として、こんな普通の男が大統領になるなどとは思っていなかった。妻はおろか、本人さえも。しかし、それが現実になった。1945年4月12日、フランクリン・ルーズベルトの急逝に伴い、副大統領から大統領に昇任した『まさかの大統領』ハリー・トルーマンがその人だ。 貧しい農家に生まれ育ったトルーマン、若い頃は失敗の連続だった。しかし、40歳を前にして、地元のボスの
ちばてつや。そう、あの『あしたのジョー』などの傑作を描いた、漫画家だ。最近はどうされているのかと思いきや、「18年ぶりの最新作」とうたっての自伝が刊行されていた。文字が多めの漫画、という風で、往時が生き生きと蘇る。描かれているのは、少年時代の中国での出来事だ。今では想像することができない、たった70年前の、中国での体験。 漫画としては18年ぶりの最新作という

「ならぬ……兄弟でこのようなこと―高天原から見ている者がいるかも知れぬ」 そう言って身を引きはがそうとすると、弟は接吻で兄の唇を塞いで、 「兄上。我々は神。神に許されぬことはございませぬ。それにこれは国生みに必要な儀式でございます」――『BL古典セレクション②古事記』より 「BL古典セレクションの編集者です」と言うと、「腐女子なんですか?」と訊かれることが多

縁あって私は今、札幌でテレビの仕事に就いている。札幌に赴任したのは、「明仁天皇が生前退位の意向を示した」というニュースが全国を駆け巡る少し前のことだった。 札幌は日本有数の美しい街だ。この地に居を構え、生まれ育った東京と、そこから遥か800キロ離れた札幌との「二都物語」が私の中で始まった。その物語のエピソードのひとつとして私は札幌の中に「皇室」を見つけた。北


本書の帯に、心惹かれるこんな一文がある。 辞書編集とは“刑罰”である。 これは、『日本国語大辞典(日国)』の第二版編集作業中の1999年11月、小学館辞書編集部にふらりと現れた作家の井上ひさしさんが言い残していった話だ。真偽は不明だが、なんでも、19世紀のイギリスでは辞書編集が重い刑罰だったそうである。辞書編集は、語彙採集・用例採集、ゲラ(校正刷り)のチェッ

すごい本だ。もしこれが小説なら、荒唐無稽と片付けられてしまうに違いない。ノンフィクションの醍醐味をこれほど味わえる本はない。今年最高の1冊と断言しよう。 旧ソ連、ウクライナ生まれの女性狙撃手、 リュドミラ・パヴリチェンコ の自伝である。軍需工場で射撃の経験があったリュドミラは、ドイツ軍のソ連侵攻の翌日、狙撃兵としての入隊を志願する。軍における女性の仕事は衛生

「歩くたびにおっぱいが大きくなるマシーン」「インスタ映え台無しマシーン」「全ての者が裸に見えてしまうメガネ」「土下座しても悔しくならない無駄装置」「一人でもコックリさんが出来る装置」など、200以上の「無駄なもの」をつくり、 YouTubeで6万人以上 、 Twitterで5万人 近いフォロワーを誇る、発明家の藤原麻里菜さん。 本書『無駄なことを続けるために

平成最後の年間ベストセラーリストが発表された。メディアでは、当代のベストセラーを振り返る報道が相次いでいる。ここでは、平成のミリオンセラー『超訳ニーチェの言葉』『嫌われる勇気』『漫画君たちはどう生きるか』の振り返りから入りたい。 この三冊は、偉大な哲学者(ニーチェ)や心理学者(アドラー)などの思想を、今の人に伝わるように表現を工夫したものだ。時代の空気を読み

2018年5月26日、多くの武道小説を書き続けてきた津本陽が急逝した。本書はその遺作となったの、合気の達人「佐川幸義」の評伝である。 異色であると同時に大変な力作であるこの本は、武術の極意を小説で表そうとした小説家が、実際に合気という神技の深奥に触れた感動が正直に語られていく。 津本が、大東流合気武術の祖である武田惣角の弟子であり、天才武術家として名を馳せて

酒と放浪。若山牧水の歌といえばこの2つだろう。しかし、若いころには恋の歌をたくさん詠んでいる。その相手は2歳年上で、抜群の美人だったという園田小枝子。 しかし、いつまでも小枝子の態度は煮え切らなかった。そりゃそうだろう、人妻であることを隠していたうえ、従兄弟との三角関係もあったというモヤモヤ状態だったのだから。 そんな2人の関係が、牧水の歌に直截的に読み込ま

タレントの仕事はといえば、その日その日で「現場」へ向かい、その日限りの仕事をこなすのが日常です。わっと集合して、どっと収録して、さっと帰る。日々多くの人に出会いますが、プライベートでも付き合うような間柄の人は(まあ人にもよるでしょうが)あまり多くはありません。というか私はそうです。テンション高く、ひとときの「祭り」を演じ、終われば次へ行くのです。 若林さんは

HONZ でレビュアーしてますと、いろんなところが本を送ってくれはります。ありがたいことですわ。買うつもりでいた本が送ってもらえたらむっちゃうれしいけど、買った本が送られてきたらちょっと悲しい。 そんなんとちごて、こんなん絶対に買わへんわ、という本が送られてくる時もあります。けっこう礼儀正しいから、お送りいただいた本は必ず目をとおします。けど、やっぱり、自分

ありふれた日常も描き方によっては人を惹きつけることを、本書に収められた22編は認識させてくれる。 主役の大半は市井の人々だ。風呂無しアパートにひとり住み、決まった時間に決まったことを日々こなす老人、公園のベンチに座っているタンクトップ姿の中年、新聞配達の男性。そこには大文字で語られるような出来事はなく映るが、一皮むけば我々が想像しないような苦悩も、喜びも転が