
よく生きるために学べ『フィンランド理科教科書 生物編』
インフォームドコンセントの世の中になって、お医者さんはたいへんだ。相当時間をかけて説明しても、頭のなかに『?』しか残らない患者さんや患者さんの家族がかなりの割合でおられるにちがいない。 医業を営んでいないといっても、医学部を出ているので、近所のおばばとかに病気の相談をされることがある。どのあたりの基本的なことから、どの程度の詳しさで話をしたらいいかが難しい。
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インフォームドコンセントの世の中になって、お医者さんはたいへんだ。相当時間をかけて説明しても、頭のなかに『?』しか残らない患者さんや患者さんの家族がかなりの割合でおられるにちがいない。 医業を営んでいないといっても、医学部を出ているので、近所のおばばとかに病気の相談をされることがある。どのあたりの基本的なことから、どの程度の詳しさで話をしたらいいかが難しい。

除草剤アトラジンをめぐる長年の論争がひとつの山場を迎えているようで、『ニューヨーカー』の2月10日号にホットなレポートが載っていました。アトラジンは日本でも使われている除草剤でもあり、今後の成り行きが注目されます。 が、今回の記事はアトラジンの性質というよりもむしろ、医薬品や農薬などの安全性を調べている科学者が、その製品を製造販売している企業にとって好ましく

本書は超天才ロジャー・ペンローズ博士の最新刊だ。 え? ペンローズって誰? うーん、たしかにペンローズは、玄人ウケするものの、さほど一般科学ファンに浸透しているとはいえないかもしれない。でも、この人、マジでスンゴイ科学者なんです。 ペンローズは、誰でも知っているホーキング博士のお師匠さんなんですね。あの「車椅子のニュートン」と呼ばれる天才物理学者の博士論文を

とても興味深い本だ。作者は、コペルニクスの地動説を揺るぎないものにした2人の知の巨人を、2人の交換書簡を媒介にして、その素顔を見事に浮かび上がらせた。僕たちの社会常識では、「それでも地球は動いている!」と「ピサの斜塔でおこなわれたことになっている実験」が(どちらも、恐らく創作だが)「執拗に生き続けている」ため、ガリレイは天文学の父として令名赫赫たるものがある

私が川口淳一郎さんと初めてお会いしたのは2013年9月14日、青森県八戸市で開催された講演会の控え室。 その講演会は「平成25年度 日本学術会議 東北地区会議公開学術講演会 サイエンストーク『宇宙ファミリー』」という格調高いがヤケに長い総合タイトルが付いたもので、川口さんと私は各々45分間の講演を行い、その後のパネルディスカッションにも加わることになっていた

飛行の夢に挑んだ人々の、技術開発の物語である。航空工学を専門とする著者が、飛行機技術進化の歴史を、多くの図版と少々の数式、そして科学者・技術者の人生とともに描き出す。技術発展の経緯を丹念に追うと、科学と技術がどのように共鳴するのか、技術がどのように積み上げられていくのか、そして技術がどのように世界を変えるのかが見えてくる。あるときは科学的真理の発見が技術を飛

物覚えが悪くなったのはいつ頃からだっただろうか、今となっては思い出せない。小学校の時から忘れ物は多かった人間だが、明らかに、最近、一皮むけたのだ。特に固有名詞だ。正解の直前までわかるのに「あれ」としか言えないもどかしさ。最近、物忘れがひどいんだよ…と友人に言ったら、「俺、今日、カタカナの“メ”が思い出せなかった。」と言われた。お互い、年である。“メ”がだめだ

出版されるやいなや、タイムラインには読み巧者たちによる絶賛の言葉がならんだ。しかし内容は重そうだ。まずはウォーミングアップにと、前作『 桶川ストーカー殺人事件-遺言 』を読んだ。そこには、桶川事件について抱いていた漠然としたイメージとはまったく違うドキュメントがあった。 そしてこの本。読み出すと文字通り止まらなかった。ここにもおぼろげに知っていると思っていた

読み応えのある本だ。 新書版で上下 600 ページ近く。それもやさしい本ではない。しかし、『科学を楽しみ、神経系がどのようにして学習し、記憶するかについての驚くべき新発見に興味を持つ一般読者』を想定して書かれたというこの本のもくろみは十分に達成されている。 専門用語がたくさん出てくるので、本屋さんでこの本をぱらぱらっと見たら、それだけで尻込みしてしまうかもし
成瀬先生との最初の出会いは、武蔵野栄養専門学校時代に私が先生の教え子だったことです。出来の悪い教え子でしたが。そして卒業して10年くらい経ったときに再会しまして、「今は何をしているの」と質問され、料理人ですと答えたところ、「一緒に本を作ってみないか」と仰っていただき『魚調理の「こつ」』という本を共同執筆で柴田書店から出しました。現在、私は80冊ほど著作があり

本稿は、2013年12月に文庫化された『ケプラー予想』の訳者あとがきです。2005年4月に刊行された単行本『ケプラー予想』の訳者あとがきは こちらから 。 (※編集部) 本書『ケプラー予想 四百年の難問が解けるまで』の単行本のための翻訳に取り組んでいたときのこと、私はおもちゃ屋さんでビー玉を大人買いした。適当に見つくろった容器の中にビー玉を配置してみたり、お

好むと好まざるとにかかわらず、職業はその人の考え方に大きな影響をおよぼすものだ。私が生業とする科学者とて例外ではない。 まず、科学者は考え方が厳密である。悪いことではないが、一般の人から見ると、融通が利かない感があるに違いない。しかし、この厳密性のイメージがあるからこそ『科学』という名がタイトルにつけば、その本に正しそうな雰囲気をもたらしてくれる。 もうひと
400年の時を超えて、ある数学の命題が証明された。こう書くと、すぐさま「フェルマー予想(最終定理)」を思い出す人もいるだろう。しかし本書に取り上げられているのはフェルマー予想ではない。フェルマー予想よりもさらに長い歴史をもち、1900年にパリで開催された国際数学者会議では、大数学者ヒルベルトが重要な未解決問題のひとつとして提起した「ケプラー予想」である。 ケ
先日、帰郷した際に美術展「ジパング展」を観てきた。展示内容は、会田誠や山口晃など現代美術作家30名以上が参加した豪華ラインナップであり、500円という入場料金にもかかわらずほぼ貸し切り状態でとても堪能できた。 その中のラインナップに、異色の作品があった。一見すると絵画だが、よく見るとゆっくりと雪が降りつもり、枝には雀がとまってくる。そのフレームの中は動画だっ

みなさま、正月三が日も終わろうとしておりますけれど、今年もサイエンス通信をどうぞよろしくお願い申し上げます。 できるだけ幅広い分野から話題を選びたいと思っているのですが、あらためてそういう目で眺めてみると、『ニューヨーカー』のサイエンス記事って、バイオ&メディカルな話題が強いですねぇ。数学や物理学の記事は、それに比べるとガクンと少なくなります。まあ、それも当
新年早々、なかなか刺激的なタイトルだが、陰謀論めいた話でもなければ、悲観論のみに終始した内容でもない。 新しい年を迎えると、人は「おめでとう」と言う。友人や知人に赤ちゃんが誕生しても「おめでとう」と言うだろう。だが、そんな身の回りの「おめでとう」の集積が、社会や世界全体で見た時にも、本当に「おめでたい」状況になっているのか。そこには、直視しなければならない現

日経新聞の「私の履歴書」を長年、愛読している。やはり、本人が直接書いた物が、面白い。現在は、コトラー博士が連載中で、毎日、楽しみにしているが、本書は(尊敬するコトラー博士には申し訳ないが)桁外れに面白い。マンデルブロ集合の発見者、偉大なフラクタリスト、マンデルブロの自伝である。全体は3部から構成されている。 第1部は、生い立ちから20歳まで、第2次世界大戦の

ここ数年、数学が何やらブームの兆しを見せている。『フェルマーの最終定理』や、『ブラック・ショールズ方程式』といった、難解な高等数学に関する本がそれなりの売れ行きを見せ、数学者をモデルにした映画もヒットしている。パズルブームは息が長いし、脳を鍛える手段として、数学のドリルをやることに対する一般の関心も高まっている。 このような数学に対する関心の高まりの背景には

文庫本を読むとき、なぜか解説を先に読む人が多いという。だから、この解説も、これからこの本に「挑戦」しよう、という読者を念頭に置いて書くことにした。 すでに本を読んでしまった人には、一部、話のくりかえしになるかもしれないが、どうか、あしからず。 娘が3歳なので、ウチには一杯(折れた)クレヨンがある。この本の解説を書かせてもらうことになり、久しぶりに塗り絵をやっ

「 理論の終焉:データの洪水が科学的手法を時代遅れにする 」 2008年にワイアード誌編集長(当時)の クリス・アンダーソン が、ビッグデータ時代の到来を謳った記事のタイトルである。彼が予見したように、この5年で我々を取り巻くデータは爆発的に増加し、ビッグデータをマーケティングなどに利用した 成功例 も聞かれ始めた。 本当に、大きなデータと強力なコンピュータ

本書は、1人の天才 そう称して良いであろう 数学者の伝記である。 ジョン・ナッシュ(ジョン・フォーブス・ナッシュ・ジュニア)の名前は、「ナッシュ均衡」にその名を残す数学者として、また一般には、ロン・ハワード監督、ラッセル・クロウ主演でアカデミー賞四部門を獲得した映画『ビューティフル・マインド』(2001)とその原作本によって広く知られている。ナッシュは、プリ

本書の著者ローレンス・クラウスは、長年、第一線で活躍してきた宇宙物理学者である。興味のある研究テーマは、彼自身の言葉によれば、「宇宙の始まりから終わりまで」だという。もちろんクラウスは、半分は笑いを取ろうとしてそんな言い方をするのだが、しかしそれは彼の本音でもある。クラウスは本気で、宇宙の始まりから終わりまでを知りたいと思っているのだ。 クラウスは専門の論文

わくわくサイエンス本だ。 2012年11月13日早朝、インド沖合のスリランカに突如として「赤い雨」が降り注いだ。砂漠の微粒子を含む「黄色い雨」や火山灰・石炭を含む「黒い雨」はよく確認されているが、「赤い雨」というのは神話などで紹介されているものの事例が少なく、本格的な科学的研究はあまり進んでいない未知の現象である。本書は久しぶりに確認された謎の「赤い雨」の正

信頼できる筋によれば、現在HONZ内部で、なんと、昆虫食プロジェクトが進行中とのことです! このところ何かと話題の昆虫食に、新機軸を打ち出そうという意欲的なプロジェクトだとか。 昆虫食は、深い問題にわたしたちをいざないます。わたしたちは何を食べ、何を食べないのか--。 食をめぐる状況には、実にたくさんの要素が複雑に絡み合っていて、考えれば考えるほど、問題は果

今年の5月14日、女優のアンジェリーナ・ジョリーが、乳がん予防のために乳房を2つとも切除したことをニューヨークタイムズに告白した。なぜ、まだ健康なうちから、切除という決断をするに至ったのか。 手術は、遺伝子検査の結果に基づく決定であった。そして、この乳がん遺伝子「BRCA1」は、米国のベンチャー企業ミリアド社が特許による独占権を主張している遺伝子である。 本

かの歴史家アーノルド・トインビーは、単独で通史を書くことの意義を語っている。というか、語っている、という話を聞いたことがある。通史となると、膨大な資料からなるのであるから、詳しさや正しさにおいて、一人で書くと不十分にならざるをえないかもしれない。それでも、通史にはおもしろさがある。 この本ほど、そのおもしろさが抜きんでている本はそうないだろう。まず、登場人物

最も強い者が生き残るのではない。最も賢い者が残るのでもない。 唯一生き残るのは変化する者である。 ビジネスの現場において、これまで何度この言葉を聞かされたことだろうか。人類の生存戦略を簡潔に表したこの言葉は、言わば企業の生き残りをかけて戦う姿勢を鼓舞するワードとして、数多の局面で使われてきた。 この言葉は裏を返せば、滅んだもの達は変化に適応できなかったと言う

科学の本というより科学的思考に関する一冊。 あくび、くしゃみ、せき、しゃっくり、わらい、くすぐりなど、これまであまりにも当たり前すぎて、きちんとした科学による検証がなされてこなかった人間の不可思議な行動たち。その深い一般認識と乏しい科学的存在のギャップを埋めるべく、著者は数々の実験を試み、科学の範疇にプロットしていく。 各々が独立した章としての読み物になって

学生スポーツの対抗戦といえば、日本では1903(明治36)年に始まった野球の早慶戦がよく知られている。東京6大学リーグ戦の最終週に開催される伝統の一戦はテレビ中継され、神宮球場は多くの観客で埋め尽される。 一方、イギリスではケンブリッジ大学とオックスフォード大学のボートレースが有名である。こちらもテレビ中継され、レースが行われるロンドンのテムズ河畔はこれまた

「おおー!」「うわっっ」 インジャクターの少し先で、轟音をあげて炎が上がった。火炎放射器のようにオレンジ色の炎が4mほど前方に伸びる。時間にして数秒。 「燃えた‥‥‥」 インジェクターから噴出されたエタノールと液体酸素はみごとに混合し、乗用車のプラグが放つ火花を大きな火炎にした。 歓声があがった。 野田が笑い出す。止まらない。自然にみんなで拍手をしていた。

ここまであたらないものか。かつて、フランスのノーベル賞学者 フランソワ・ジャコブ はその著書『 ハエ、マウス、ヒト 』で、『予測不可能性は科学の性質に含まれている』と喝破した。もっとはっきり、科学予測は基本的に不可能である、と考えておいた方がよさそうだ。 1960年に出版された本の復刻版である。今はなき 科学技術庁 が『識者』に依頼し、来たるべき21世紀、4
いやしかし、こんなにエッジの効いた開発研究をすすめるJAMSTECの皆様。プライベートもちょっぴり知りたい。そんなわけで、ランチタイムに食堂へお邪魔してきました! なに食べようかなあ。おなかすいたー。オススメはありますか?と伺うと、広報・吉澤さん、僕はあまり利用しないんです、とのこと。こけっ 大学の食堂みたい。栄養のバランスがとれるよう配慮されているようです

HONZ活動記― JAMSTEC見学訪問1 - JAMSTEC見学訪問2 - JAMSTEC見学訪問3 「誰も測れないものを測るというのが僕の研究なんです。何かを探しに行く、というよりも、とってきたものを測る、というほうに僕は興味があるんです。」 HONZメンバーの前に現れた大河内直彦さんは、まず開口一番こうおっしゃった。ナショナルジオグラフィック日本版「

本書は、「ベイズ統計」の歴史について述べた本だ。「ベイズの法則」は、迷惑メールの振り分けや商品のおすすめ表示などの様々な分野に応用されている手法である。本書はそれを、このように説明する。 いわく、「何かに関する最初の考えを、新たに得られた客観的情報に基づいて更新すると、それまでとは異なった、より質の高い意見が得られる」 この定理を支持する人からすれば、これは

地球最後のフロンティアを綴る最高のサイエンス・ルポだ。 本書を書店で見かけたとき、「南極はそんなに興味ないし」と平積みされている本の前を一旦通り過ぎたが、著者名が目に入った瞬間に引き返した。ゲイブリエル・ウォーカーといえば、サイモン・シンが絶賛し日本では毎日出版文化賞受賞した『スノーボールアース』の著者である。帯には「人を拒み続ける醜寒の大陸に長期滞在」とい

ぎりぎりのタイトルである。帯には『明日、人類はこうして絶滅する!』とまである。下手をすれば「とんでも」系の本になりかねない。こういう時、まずチェックするのは、著者の経歴である。これまでの著作に『UFOは真実だった』とかいうのがあったら、HONZの対象外、とんでもフィクションである可能性が高い。 しかし、著者のフレッド・グテルの経歴を見ると、『ニューズ・ウィー

『ニューヨーカー』誌の9月9日号に、エリート・アスリート、つまりは並の人ではなく、人間の能力の極限に挑戦する運動選手を通して見るスポーツ科学の現在、といったなかなか興味深い記事が載っていました。その分野の関連書籍をいくつかまとめて紹介しながら、「フェアプレーって何だろう?」といったことまでも考えさせる内容でした。 ところで、『ニューヨーカー』に掲載されたスポ

ワトソンとクリックにより DNAの二重らせん 構造が明らかにされて60年以上が経過し、私企業のサービスを利用すれば個人でも気軽に遺伝子解析が行える時代となった。アンジェリーナ・ジョリーが自らの遺伝子検査結果をもとに乳房切除を決断したように、遺伝子分析の結果が私たちの意思決定に影響を与える事例もみられる。しかし、わたしたちは自分の未来を委ねられるほどに、遺伝子

本書の主役はウジ虫。虫嫌いの方はこの時点で、読み進めるのをやめようと思われたかもしれない。確かにウジ虫は、ぶにょぶにょしていて、バイ菌だらけで、気持ちが悪い。これまで、「ウジ虫が大好きだ」という人にはお目にかかったことがない(HONZ虫班の野坂美帆、土屋敦などはもしかしたら好きなのかもしれないが)。しかし、本書にはウジ虫や生々しい傷口の写真は掲載されていない

部分と全体の相似が特徴的な ロマネスコ 。「フラクタル」と呼ばれるこのような繰り返し形状は、シダや雲、海岸線、北斎の浮世絵、銀河の密度、さらには金融市場の価格変動等にも見られる。これらを対象とする数学を見出したのが、著者のベノワ・マンデルブロだ。「フラクタル次元」という「ラフさ」を表す数値は、次元であるが、整数ではない値になり得る。例えば、下記の繰り返し手順