
『犬の伊勢参り』 - 色彩を持たない動物たちと、その巡礼の道
最近では、自分自身の過去と向き合うことを「巡礼」と呼ぶらしいが、こちらは正真正銘の巡礼の話である。ときは江戸の時代、ところは伊勢神宮。だが、ここでお参りを行ったのが犬であったというから、只事ではない。 最初に犬の伊勢参りが行われたのは、明和8年(1771年)4月16日の昼頃のこと。突然、犬が手洗い場で水を飲んでから本宮の方へとやって来て、お宮の前の広場で平伏
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最近では、自分自身の過去と向き合うことを「巡礼」と呼ぶらしいが、こちらは正真正銘の巡礼の話である。ときは江戸の時代、ところは伊勢神宮。だが、ここでお参りを行ったのが犬であったというから、只事ではない。 最初に犬の伊勢参りが行われたのは、明和8年(1771年)4月16日の昼頃のこと。突然、犬が手洗い場で水を飲んでから本宮の方へとやって来て、お宮の前の広場で平伏

大変失礼なことだが、デビュー当時、林真理子はキワモノだと思っていた。『ルンルンを買っておうちに帰ろう』は面白かったけれど、地方の大学を出て、東京で働き始めたばかりのねーちゃんである私には、なんだか空恐ろしい世界であった。本書を読むと「等身大の20代を赤裸々に語った」エッセイは、野心と気合の結果であったことを知る。 本書の太い帯には30年前の著者が読者を睨みつ

毎年4月になると新しいことを始めたくなります。今年は「英語」。 最近オフィスで海外からの電話を受けることが多く、そのたびに後輩に転送していたところ、「いい機会だから英語を勉強したらどうですか」と、やんわり今後の転送を拒否されてしまったからです。HONZ代表成毛眞の『 日本人の9割に英語はいらない 』を心の支えに生きてきたのに、実に無念です…。 斯くなる上は英

ヴェルサイユに初めて館を建てたのはルイ13世だ。それはつましい小さな狩りのための館だった。ルイ13世は劣等感の強い人物だったようだ。王としての器ではないと母から嫌われていた。ヴェルサイユの館は母からの逃避の場所として造られた。王はそことで男性側近とだけの時間を過ごした。女好きである父アンリ4世には似ることなく女性に対し消極的で、妻ともあまりまともに性交渉を行

アマンリゾートに行ったことがある人も、きっと多いのではないか。私にとっては、いつか訪れてみたい場所の一つだ。1988年にタイのプーケット島にオープンした「アマンプリ」に始まり、インドネシアのバリ、スリランカ、フィリピン、ブータン等に展開されているラグジュアリーリゾートホテルは、今や押しも押されぬブランドとなった。本書は、そんなアマンリゾートと創業者のエイドリ

エルメスといえば女性の誰もが憧れるブランドのひとつだろう。バーキンやケリーといったバッグは100万をゆうに超える代物だが、人気がありすぎて、購入するのに何年待ちというのがザラだという。そんなことが実際にありうるのか?と思ったら、「職人の手仕事による限られた量の家業ビジネス」をいまだに貫いているとのことなので、さもありなんと思った次第である。 エルメスは創業以

「概説を書くことが、学者の最大の義務である」という、著者があとがきで掲げた日本建築史の泰斗・太田博太郎先生の言葉がかなえられた、すばらしい一冊だ。日本彫刻史の研究に携わることおよそ40年という著者の山本氏。長年にわたる仏像研究の成果がまとめられている。説明も平易な記述で読みやすく、長年培われた仏教芸術や日本美術史への深い考察も随所にうかがえる。 ぜひ一度、本

若い世代に絶大な人気を誇るサイバーエージェントの藤田晋社長が、サイバーエージェントの成長と苦難を赤裸々に告白した本である。もしかしたら、この本は若い世代にとってバイブルとなるような本になるんじゃないか?そんな予感がしている。そう思うくらい30代の私には心に響くものがあった。 ネットバブル崩壊後、買収危機にあったサイバーエージェント。そのことは前著 『渋谷で働

某一流メーカーの会議室――。自社イメージを重んじる、つまり、すっごくうるさい会社が監修する単行本の企画がまとまろうとしています。隣にいる女上司をちらり見やれば、あんたは黙ってなさいよ! と目で御されちゃった。ハハっ。どうせ、私が担当するのよね。複雑な想いを煎茶で流し込めば、腹には苦さしか残りませんでした。 似たような本が溢れる出版業界。他にはないコンテンツで

闇夜を駆け、密かに忍び、大金をせしめて逃げる。 普段、私達は空き巣の稼業など想像もしないだろう。タイトルがあまにりにポップなので侮っていたが、事実は小説よりも奇なり。本書は空き巣家業50年余の著者による体験録である。 著者が犯行におよんだ場所は、滋賀、奈良、三重など実際の現場が登場している。パトカーから逃走した国道42号線、ナンバーを控えられた津市など具体的

2002年に“人類の旅”をひとまず終えた関野が次に目指したものは、日本列島に人類はどうのようにやって来たのか、をたどる旅だった。そのルートは大きく分けて3つあると考えられた。 1.〈北方ルート〉ユーラシア大陸をヒマラヤの北部に進み、シベリアからサハリンを経由して北海道に至った。 2.〈南方ルート〉東南アジアから中国の海岸沿いに陸地を北上し、朝鮮半島を経由して

インターネット。とても身近な単語だが漠然としており、具体的に何を指しているのかはよく分からない。テクノロジー雑誌『Wired』の記者である著者でさえも、とある事件が起こる前まではその単語が何を差すのかを正確に把握できていなかったほどである。 「お宅のインターネットが接続できなくなったのは、リスが裏庭にあるケーブルをかじってしまったからです」、修理員にそう告げ

たとえば、干上がってしまった池があるとして、その乾いた池の底には、わずかな水しか溜まってないとする。一見、乾ききって水が失われたように思えても、わずかな水の穴の底には、もしかすると地下水脈とつながっているかもしれない。 これは本書を読み終えた後のイメージだ。会社員として働き、日常生活でこんなものか、と現実的かつ半ば落としどころを探しながら働いている人、もしく

版元のみなさま、毎度ありがとうございます!今週献本いただいた新刊本をご紹介いたします。 レビュアー一覧で、久保洋介が “ 今月は誕生日。「今週のいただきもの」は狙ってます。” とさり気なく他のレビュアーを牽制しておりますが、誕生日くらいでは誰も容赦しません。あくまで早いもの勝ちなのだ!今月も<いただきもの>を巡りレビュアーたちの熾烈なバトルが繰り広げられます

はたして任侠道とは武士道の末裔なのだろうか。武士とヤクザは映画、ドラマ、小説からアニメまで様々なメディアで幅広く描かれている。両者は歌舞伎などの古典芸能に限らず、現代の国民にも絶大な人気を誇る「男」の形であることは間違いないだろう。どこか似た精神性を感じさせる。しかし根本的に何かが違う気もする。武士とヤクザの関係性とはどのよなものなのか。そこにはどんな歴史的

ナイジェリアの貧困地区で生まれ育ったアンドリュー・サボルは、家計を支えるために、16歳で廃品回収を始めた。炎天下でゴミ山を漁る過酷な仕事を、アンドリューは1日12時間、16年間に渡ってやり抜いた。そして、その下積み生活で貯めた資金をもとに、リサイクル用廃棄物のディーラーとして独立することに成功した。独立後の彼は、小奇麗なワンルームマンションに住んでいる。今頭

4月13日、第2回将棋「 電王戦 」5番勝負の第4局が行われる。第3局までは4段・5段の棋士だったが、いよいよA級棋士の登場だ。A級棋士とは160名ほどのプロ棋士のうち1年間の順位戦を戦い、勝ち抜いてきたトップ10人のことをいう。対する電脳は第22回コンピュータ将棋選手権を勝ち抜いてきたプログラムたちだ。最終局に登場するのは東京大学にある800台近くのPCを

コレステロール、中性脂肪、高血圧... 毎日を健康的に過ごすための情報は、ネット上や書籍などでも溢れかえっている。そして身の回りの人間に相談すれば、様々なアドバイスを得ることだって出来るだろう。だが、そこで得た膨大な情報の中からどの選択肢を選ぶのがベストなのか、そこに最大の関門が待ち受けている。 かつて医師は権威そのものであった。医師は判断を下し、患者はそ

HONZのサイトやメルマガを楽しんでいるのは本好きな大人たちがほとんどで、本書のターゲットである野球好きの小中学生はあまりいないと思われます。したがって、このワンコイン広告も「野球好きな子を持つ、本好きな大人」が対象です。「うちはあいにく娘で…」「息子はもう就職だし…」という方は、親戚や友人のお子さんに野球少年はいませんか? 本書のつくりは、「どこか懐かしい

「絶望工場」と聞き、多くの人が思い浮かべるのは鎌田慧氏の『自動車絶望工場』だろう。愛知県のトヨタ自動車の工場に期間工として半年間潜入し、書かれたルポである。1973年の作品だ。当時、鎌田氏が描いたのは、工場内の自動化や合理化を進める企業とそこで疎外される労働者の姿だった。それから40年。今や世界の工場となった中国でも日本とは異なる形で「絶望」が生まれている。

熊本といえば、阿蘇山であり、熊本城であり、北里柴三郎であり、川上哲治であり、水前寺清子であり、辛子蓮根であり、馬刺だったはずである。しかし、今は違う。熊本といえば、ゆるキャラ界の人気を ひこにゃん と二分する くまモン なのである。『ゆるキャラ格』としては、ひこにゃんに一歩ゆずるような気はするが、関連商品売り上げはすでにひこにゃんを超えている。 ご存知くまモ

切断手術を受けた後、失ったはずの腕を鮮明に感じ続ける人がいる。幻の腕が痛むこともある。 特定の数字に、特定の色がついて見える人がいる。例えば、「7」には赤い色がついている。 本書は、名著『脳の中の幽霊』から14年、あのラマチャンドラン博士の新刊である。カリフォルニア大学サンディエゴ校の脳認知センター長であり、上記の「幻肢」や「共感覚」のような脳疾患を研究し、

青木薫さんによる連載の第二弾です。 読んでいただければわかると思いますが、執筆時期は今年始め。実は青木さんのFacebookにアップされたものです。とはいっても、このエントリー、ちょっと興奮してしまうほど、ものすごく面白いです。 今回まではFacebook上で公開された記事ですが、次回からはいよいよ、HONZが初出の書き下ろし連載となります。ということで、ど

ガウディー、サグラダ・ファミリア教会、サッカーのバルサ……。「それってみんなスペインのものじゃないの」と思った人や、ヨーロッパ観光旅行でバルセロナを訪れただけなのに「スペインを旅行した」と思い込んでいる人は要注意。それは100パーセント正確な認識とは言えないようなのだ。 スペインであって、スペインでない(かもしれない)独自の文化が花開く「奇跡の土地」カタルー

1995年、東京都国分寺市で長さ340mの幅12mの道路が発掘された。造られた時代は約1300年前の飛鳥時代。そして驚くべきことに、この巨大道路は寸分の狂いもなく一直線に造られていたのである。 その後の調査の結果、現在では、7世紀ごろには日本中を張り巡らす巨大道路網が建設されていたことが判明している。東北から九州までの長さ約6300kmもの距離を、最大幅30

HONZの一員でもある麻木久仁子がパーソナリティを務めるラジオ番組「麻木久仁子の『週刊ほんなび』」(TBSラジオ 毎週月曜日夜9:00〜9:20)が4月1日に始まりました。その最初のゲストとして、HONZ代表の成毛眞が3回にわたって登場、著書 『面白い本』 で紹介した本の話題を中心に、まさに「面白い本たち」について語り倒します。 先週の初回に続き、第2回は明

ストンと身体に入っていき、「腑に落ちる」という表現がしっくりくる…… 私には、そんな感覚がある。 三木さんの言葉の意味はひとそれぞれだろう。 音楽のようなリズムもそこに加わる。 さて、三木さんの処女作である本書は、あなたにどう響くだろうか。 生前の三木成夫を知るひとが、その出会いや人柄を語る場面に何度か遭遇したことがある。 文庫版解説を書かれている養老孟司さ
HONZは、4月より主たる事務所(本店)を移転いたしました。 新しい住所は下記です。 〒107-0062 東京都港区南青山5-3-10 FROM-1st 3F 一般社団法人 HONZ

版元のみなさま、毎度ありがとうございます! 4月3日の朝会では、お送りいただいた本を巡り恒例の 激しい争奪戦が 譲り合いの精神に満ちた、大変和やかな配布会が開催されました♪ それでは、今週献本いただいた新刊本をご紹介いたします。

HONZで紹介する本は、メンバーがそれぞれ選び読んで、面白かったり勉強になったりして人にオススメできるものをレビューしている。しかし『今月読む本』だけは違う。基本、読んでないものを持ってきている。たまに「あれっ?」っていう本があるのもご愛嬌。 その2の“おまけの1冊”に行く前に、朝会欠席者のオススメ本を紹介する。 まずは代表・ 成毛眞 。ゴルフと歌舞伎を大い

18番目に登場するアイザック・ニュートンは「なぜ、あなたはそれほどの先見性があるのですか?」と尋ねられた際の答えである。この一言に本書を読むべき理由が、凝縮されている。 とは言っても、登場する150人の科学者の小難しい業績が並んでいる事典ではない。イメージからは想像しがたいエピソードをフックに、科学者の人柄や恋愛関係、どういった経緯から社会から賞賛される研究
平素は格別のご愛顧を賜り、心より御礼申し上げます。 3月28日付エントリー内の写真画像につきまして、利用許諾に関する事前確認を怠った事実が認められましたため、当該のレビューを削除いたしました。関係者の皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。 これを受けましてレビュアー全員に注意喚起を行うとともに、再発の防止に万全を期してまいります

「場の空気が読めず、人の話が聞けない」「いつも落ち着きがなくソワソワしている」「頭に浮かんだことをすぐに口に出して人を怒らせる」「同じ失敗を何度もくり返す」「物事が予定どおりに進まないとパニックを起こす」……あなたの周りにもこんな人はいないでしょうか。 こうした行動は、以前は子供に特有のものと考えられ、親のしつけや育て方が原因とされていました。しかし、現在で

今年の桜の開花は早かった。しかし、それから寒い日が続いたせいか、例年より長く花見が楽しめたような気がする。それも今日まで。朝会のために早起きしたら豪雨に強風だった。それをものともせずに出かけるのだから、我ながら相当変だ。本が濡れないように、レジ袋でしっかり包んで六本木へGO! 昨日、東銀座の新しいビルで、朝から夜まで観劇していた代表の 成毛眞 から、朝会1時

しつこいのは分かっているのだが、どうにもこうにも止められない。既にHONZで3度目の登場ともなる本書は、紹介されるや否や、たちまちAmazonでも在庫切れ。おかげで買うタイミングを逸した方も多かったのではないかと思い、忘れられないうちにトドメをさしておきたい。 代表・成毛眞、編集長・土屋敦。この二人が 揃い も 揃って はしゃぐ姿を眺めるのも、それはそれで

出版から少し時間が経ってしまったが、すばらしい写真集をご紹介したい。 シマウマのお腹の模様を見たことがあるだろうか。目の前10センチでワニの顔とにらめっこしたり、ライオンの子どもたちがじゃれ合ったりするのを、同じ目の高さで観察できるなんて、誰も考えていなかっただろう。 この写真集の原題は「 Serengeti SPY 」動物たちにカメラを気づかれないようにカ

1904年2月8日、旅順港外での日本海軍によるロシア艦隊への奇襲攻撃によって、日露戦争が開戦した。多くの犠牲者を出しながらも終わる気配を見せない戦闘は、次第に激しさを増していく。ロシア相手に勝利を続ける日本であったが、大国相手に長期戦を戦い抜くほどの力は備わっていなかった。また、国力で優りながらも連敗を続けるロシアも、戦闘が長引けば、既に失ってしまった面目以

地球上には数多の動植物が存在しているが、およそ80%を超える種類が、西洋科学の範疇において未だ存在を知られていない。それらの種は特定の地域に集中しており、その多様性から生態学のホットスポットと呼ばれているが、同時に深刻な衰退にも陥っているという。 一方で、言語に関しても同じような事態が起きている。少なくとも80%が未だ記録に残されておらず、今現在、何が失われ

知的興奮と驚きの事実に満ちた素晴らしい本である。一度読み始めたら、読了するまで眠ることができなかった。こんな本を読みたくて、こんな本を紹介したくてHONZをやっている。「よし、誰よりも早くレビューを書こう」と思ったところで仲野徹がみっちりとレビューしているところに気がついてがっくりきたが、どうしても自分でも紹介したい本なのだ。 本書の主役であるサルファ剤は、

生命科学や医学の領域では、物理学や数学のように天才は多くない。しかし、遺伝の法則を見つけ出したグレゴール・ヨハン・メンデルや、進化論を唱えたチャールズ・ロバート・ダーウィンは、まぎれもない天才だ。メンデルとダーウィンは、19世紀の中盤から終盤にかけて、その天才的な洞察力を発揮した。 この二人とほぼ同時代に活躍したルイ・パスツール、それに少し遅れたロベルト・コ