ノンフィクションはこれを読め!

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170記事

『血盟団事件』 - 交わるはずのなかった二つの格差 書影

事件・事故 / 日本史

『血盟団事件』 - 交わるはずのなかった二つの格差

アルバイト店員が内輪向けのネタ画像をアップして炎上するなどの騒ぎが相次いでいる。この問題における一つの論点となっているのが、学歴の格差というものだ。「低学歴の世界」というセンセーショナルなフレーズとともに、多くの言葉が交わされているが、一昔前によく見かけた、都市と地方の格差という議論にもよく似た印象を受ける。 格差、就職難、ワーキングプア、社会からの孤立。こ

『証言 陸軍中野学校 卒業生たちの追想』背広を着たスパイたち 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『証言 陸軍中野学校 卒業生たちの追想』背広を着たスパイたち

2008年(平成20年)5月、都内の病院のカフェテリアでのインタビューで、小野田寛郎が筆者にもらした一言である。しかし、その先は同伴者に遮られて聞くことが出来なかったという。 本書は日本陸軍において「諜報、謀略、宣伝、防諜」のノウハウを教えていた「 陸軍中野学校 」の卒業生たちの証言集である。存在したのは日中戦争期から太平洋終結までのわずか7年余り。当時は一

『日本の覚悟』文庫解説 by 安倍 晋三 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『日本の覚悟』文庫解説 by 安倍 晋三

権威におもねることも、大勢に身を任せることも、よしとしない。この国のあり方について、言うべきことは穏やかに、しかしピシャリと言う。櫻井よしこさんの「覚悟」はいつも決まっている。 どんなに激しい議論の中でも、物腰は変わらない。その姿はときに、生徒を諄々と諭す教師のようにも映る。一方、メッセージは強烈だ。日本の国益とは何か。真の自立を達成するために何をすべきか。

『占領史追跡: ニューズウィーク東京支局長パケナム記者の諜報日記』 文庫解説 by 佐藤 優 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『占領史追跡: ニューズウィーク東京支局長パケナム記者の諜報日記』 文庫解説 by 佐藤 優

本書は、連合国による日本占領期に米高級誌『ニューズウィーク』東京支局長をつとめた神戸生まれの英国人コンプトン・パケナム(1893~1957)の日記と手紙を発掘した青木冨貴子氏による戦後史の闇を読み解いた優れたノンフィクション作品だ。 時代の転換期(同時に混乱期でもある)には、山師、ハッタリ屋が政治的に重要な役割を果たすことがある。私自身は、ソ連崩壊前後にその

ユルくても上質『藤森照信×山口晃 日本建築集中講義』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

ユルくても上質『藤森照信×山口晃 日本建築集中講義』

本書を発見し手にとると、帯にはこう書いてあった。 あ、コレ買うなと思った瞬間である。 本の購入には「ジャケ買い」ならぬ、この本絶対面白い!と確信する瞬間があるはずだ。 それは著者だったり、装丁だったりもするが、それ以上にビビっとくる直観だったりする。 ちなみに本書は昨日(8/6)に購入したばかりである。翌日にレビューを書いているのは一気に読んで面白かったから

『家康公の時計 四百年を越えた奇跡』 国宝申請の行方 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『家康公の時計 四百年を越えた奇跡』 国宝申請の行方

1616年4月17日朝、徳川家康公は駿府城で死去した。原因は、鯛の天ぷらに当たったとか胃癌のため、などの説があるが、75歳と当時にしては長命だった。 私は、家康公のお墓は日光東照宮にあると思い込んでいた。実際は静岡市にある「久能山東照宮」にあり、日光は一周忌を過ぎたのちに勧請(分霊)されたものだそうだ。 本書は、この「久能山東照宮」の宮司が綴った家康遺品の一

『吉田茂の軍事顧問 辰巳栄一』文庫解説 by 中西 輝政 書影

日本史 / 「解説」から読む本

『吉田茂の軍事顧問 辰巳栄一』文庫解説 by 中西 輝政

本書は、戦前・戦後を通じた昭和日本の「国家戦略と情報」を考える上で、絶好の評伝となっている。また、辰巳栄一という人物について、これまでは「歴史の脇役」として戦前・戦後の昭和史の一局面で時として顔を出し短かく言及されることはあったが、本格的な評伝が書かれるのが、なぜ「これほど遅く」なってしまったのか、とさえ思える重要な人物である。そこに、日本人の戦略思考やイン

『吉田神道の四百年 神と葵の近世史 』by 出口治明 書影

民俗・風俗 / 日本史

『吉田神道の四百年 神と葵の近世史 』by 出口治明

これは、おもしろい。読み始めた瞬間に、そう思った。良書には、いくつかの必要条件があるが、中でも「おもしろいこと」は、とても大切な要件である。第一、おもしろくないものを、誰が好き好んで読むだろうか。 この本は、天児屋命(あめのこやねのみこと。春日権現。天孫降臨時に随伴)を祖先神(自称)とする京都の吉田山に鎮座する、吉田神社の400年の歴史を綴ったものである。し

『〈三越〉をつくったサムライ日比翁助』士魂商才を貫いた男 書影

人物 / 日本史

『〈三越〉をつくったサムライ日比翁助』士魂商才を貫いた男

明治37年(1904年)12月6日、株式会社三越呉服店が創業した。17日には1ページぶち抜きの新聞広告が踊る。 これが後世に残る日比翁助の「デパートメントストア宣言」である。三百年の歴史を持つ三井呉服店越後屋が生まれ変わった瞬間だ。百貨店という訳語さえないこの時期に、デパートメントという英語を使い「公衆の利益を最優先する」「フェアプライスを貫く」という経営理

『毒婦伝説 高橋お伝とエリート軍医たち』 新刊超速レビュー 書影

事件・事故 / 日本史

『毒婦伝説 高橋お伝とエリート軍医たち』 新刊超速レビュー

あの珍書プロデューサー・ ハマザキカク をして、 とまで言わしめた本書は、まさに珍書の中の珍書である。 タイトルだけを見た時は、やれ木嶋 佳苗が◯◯だの、林 真須美が××だの、その類いかと思ったのだが、中身は全然違った。主人公は明治時代に実在した一人の女性、高橋 お伝。その数奇な運命がヤバい、ヤバい、ヤバい。とにかく奇妙な出来事の連続なのである。 事の発端は

『犬の伊勢参り』 - 色彩を持たない動物たちと、その巡礼の道 書影

民俗・風俗 / 日本史

『犬の伊勢参り』 - 色彩を持たない動物たちと、その巡礼の道

最近では、自分自身の過去と向き合うことを「巡礼」と呼ぶらしいが、こちらは正真正銘の巡礼の話である。ときは江戸の時代、ところは伊勢神宮。だが、ここでお参りを行ったのが犬であったというから、只事ではない。 最初に犬の伊勢参りが行われたのは、明和8年(1771年)4月16日の昼頃のこと。突然、犬が手洗い場で水を飲んでから本宮の方へとやって来て、お宮の前の広場で平伏

『仏像: 日本仏像史講義』 日本彫刻史研究40年、渾身のライフワーク 書影

アート・スポーツ / 日本史

『仏像: 日本仏像史講義』 日本彫刻史研究40年、渾身のライフワーク

「概説を書くことが、学者の最大の義務である」という、著者があとがきで掲げた日本建築史の泰斗・太田博太郎先生の言葉がかなえられた、すばらしい一冊だ。日本彫刻史の研究に携わることおよそ40年という著者の山本氏。長年にわたる仏像研究の成果がまとめられている。説明も平易な記述で読みやすく、長年培われた仏教芸術や日本美術史への深い考察も随所にうかがえる。 ぜひ一度、本

男はつらいよ?『サムライとヤクザ』 書影

民俗・風俗 / 日本史

男はつらいよ?『サムライとヤクザ』

はたして任侠道とは武士道の末裔なのだろうか。武士とヤクザは映画、ドラマ、小説からアニメまで様々なメディアで幅広く描かれている。両者は歌舞伎などの古典芸能に限らず、現代の国民にも絶大な人気を誇る「男」の形であることは間違いないだろう。どこか似た精神性を感じさせる。しかし根本的に何かが違う気もする。武士とヤクザの関係性とはどのよなものなのか。そこにはどんな歴史的

『古代道路の謎』新刊超速レビュー 書影

日本史 / 新刊超速レビュー

『古代道路の謎』新刊超速レビュー

1995年、東京都国分寺市で長さ340mの幅12mの道路が発掘された。造られた時代は約1300年前の飛鳥時代。そして驚くべきことに、この巨大道路は寸分の狂いもなく一直線に造られていたのである。 その後の調査の結果、現在では、7世紀ごろには日本中を張り巡らす巨大道路網が建設されていたことが判明している。東北から九州までの長さ約6300kmもの距離を、最大幅30

『三種の神器 〈玉・鏡・剣〉が示す天皇の起源』 祟り神は守護神となる 書影

民俗・風俗 / 日本史

『三種の神器 〈玉・鏡・剣〉が示す天皇の起源』 祟り神は守護神となる

あなたは「三種の神器」が何か、知っているだろうか。“サラリーマンの三種の神器”とか“セクシー小悪魔の三種の神器”のような慣用句ではなく、天皇を天皇たらしめるための3つの品物のことだ。確か、剣と鏡と宝玉だったような…ぐらいは知っていて欲しいが、難しいかもしれない。 本書は第125代の今上天皇、明仁まで代々受け継がれてきた三種の神器について、いつ、どのように、な

『名刀と日本人』刀に込められた思い。 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『名刀と日本人』刀に込められた思い。

平安時代より天皇家では皇子が生まれると「御剣(みはかし)」を贈るという習慣が存在した。長保元年(999年)11月7日に一条天皇の皇子敦康親王がお生まれになったとき、御剣が贈られたことが『栄花物語』に書かれている。このときの御剣がどのようなものであったのかは、今ではわからない。剣とは直刀で両刃の武器のことだが、このときの御剣はおそらく、片刃の直刀ではないかと著

予習のつもりがどっぷりと。 - 『八重と会津落城』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

予習のつもりがどっぷりと。 - 『八重と会津落城』

正月三が日も終わり、昨日が仕事始めだった方も多いだろう。いよいよ本格的に幕を開けた2013年だが、そのイントロを飾りそうなのが1月6日(日)スタートの大河ドラマ 「八重の桜」 だ。HONZを読まれている方は書店を訪れる頻度も多いと思うが、書店の棚は昨年の暮れから見事なまでの「八重ブーム」だ。日本史のコーナーは勿論のこと、新書にも「八重の桜」に関連した新刊書が

『古代日本の超技術』を年の初めに 書影

教養・雑学 / 日本史

『古代日本の超技術』を年の初めに

毎年、初詣などで神社仏閣系の場所を訪れると、心なしかほっとした気分になる。めまぐるしい変化にさらされている昨今、何年も変わらぬ佇まいを見るということは落ち着くものだ。 世界最古の木造建築である法隆寺五重塔をはじめ、日本には古代からの木造建築が、今でもたくさん現存している。周辺の建物が様変わりしていく中、なぜこれほどもの長い間、これらの建築物は風雪に耐え抜くこ

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日本史 / おすすめ本レビュー

もう、辞めたい・・・。心優しき『戦国の貧乏天皇』

戦国の貧乏天皇 なかなか刺激的なタイトルだ。 わずか7文字の中に、知的好奇心を刺激してやまない「違和感」が内包されている。 まず「戦国」と「天皇」がうまく結びつかない。日本史で習った天皇を思いつくままに挙げてみても、古代であれば神武、推古、聖武、桓武といった有名ドコロがすぐに浮かぶし、中世になると、後に院政を敷いたことで知られる白河、鳥羽といったあたりが思い

壮絶な北海道開拓史 『赤い人』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

壮絶な北海道開拓史 『赤い人』

年末恒例の「今年のベスト・・・」のセレクションがたけなわである。ちょっと早いが、私が今年復刊されて一番うれしかった『赤い人』を紹介したい。私をノンフィクション好きにしたのは、吉村昭であると言っても過言ではないほど、どの作品も思い出深いが、明治初期の北海道を舞台にしたこの作品は衝撃的だった。 本書は、わずか300頁を少し超えたほどの文庫である。昨今の小説では普

『一揆の原理』 Facebookのルーツは一揆にあり? 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『一揆の原理』 Facebookのルーツは一揆にあり?

「一揆」は不遇を託っている。教科書で習い、多くの人がその言葉を知っているのにもかかわらず、一揆が好き、という人にはお目にかかったことはない。信長がどうとか、明治維新がどうとか、語る人はいっぱいいるのだから、「やっぱり正長の土一揆が最高だよな」とか「尊敬する人は、三河国賀茂郡で一揆を指揮した辰造です」とか「延暦寺の僧徒が日吉社の神輿をかついで朝廷に迫ったときは

『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ 書影

日本史 / ビジネス

『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ

本書を読みながらまず思ったことは「おいおい、日本は太平洋戦争からまったく何も学んでいないじゃないか。」という一点だった。 もちろん、この歴史に学ばない日本については、様々な時局で指摘され続けていることは判っている。無責任きわまりない年金行政や、革新性を失い戦力を逐次投入し、衰亡する家電業界などがその代表例だろう。しかし、福島の原発事故とその事故処理を目にし、

血の通った熱い男、藤原岩市が紡いだ歴史の一頁。 - 『F機関』 書影

人物 / 日本史

血の通った熱い男、藤原岩市が紡いだ歴史の一頁。 - 『F機関』

最近、歴史を意識させられることが多い。竹島でも尖閣でも、結局のところ歴史的経緯から紐解いていく必要が生じている。尖閣問題では中国国内で大規模な反日暴動が発生し、多くの日本人が心を痛めたのは記憶に新しいが、日本側が「領土問題など存在しない」と主張したところで、中国や台湾にとっては歴史問題であって、最後はどうしても同じ場所、つまり「日本の近現代史」に行き着いてし

時空を超えた旅への招待状 『岩倉使節団 誇り高き男たちの物語』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

時空を超えた旅への招待状 『岩倉使節団 誇り高き男たちの物語』

西洋列強の帝国主義が猛威を振るうなか、なぜ日本だけが近代化に成功したのか? という問いはいまだに歴史の大きなテーマの一つである。同じ時期に清朝で洋務運動、オスマン帝国でもタンジマートといった西欧文明を導入しようとする改革運動が行われたが、いずれも失敗に終わっていることを考えると確かに興味深い。列強諸国から遠く離れた日本の位置、天皇の存在など、今まで多くの理由

『明治の企業家』 新刊超速レビュー 書影

日本史 / 新刊超速レビュー

『明治の企業家』 新刊超速レビュー

ご存じ三菱グループを創った岩崎弥太郎にはじまり、知る人ぞ知る優れた建築家であり、メンソレータムの近江兄弟社を興したヴォーリズまで、明治時代に活躍した48人の企業家についての図説集である。いいかえると、ふんだんな写真がちりばめられた48人の簡略な伝記集でもある。そう、伝記読みには何ともそそられる本なのである。 こういうオムニバス形式の本というのは、拾い読みには

歌を口ずさみながら。『たった独りの引き揚げ隊』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

歌を口ずさみながら。『たった独りの引き揚げ隊』

2009年に刊行された、飛びきりに面白いノンフィクションが文庫化された。 1975年4月、ソ連南西部マイコープ。柔道によく似たソ連の格闘技、サンボの日ソ対抗国際試合の会場にビクトル古賀はいた。古賀は、1年以上前に引退し、今回の遠征には監督として参加していたが、68kg級の選手が腰を痛め、急遽、選手として出場することになったのだ。 すでに40歳となっていた古賀

ジャパンの行方『日本2.0 思想地図β vol.3』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

ジャパンの行方『日本2.0 思想地図β vol.3』

多くの人間が国を語る光景を見ると三国志のマンガ『 蒼天航路 』の場面を思い出す。関羽がモンゴルの少年と出会い、それまで儒の思想一辺倒から脱却し、これからの中華の未来を描くなかで少年は「辺境の地に生まれた俺がこの壮大な中華の政を考えてもいいのか?」と問う。関羽は君もこの中華のひとつだと返す。少年は「あんたの魂は受け取った、俺はこの種を故郷にまく!」と天に向かい

『東大のディープな日本史』入試問題に見る、アカデミズムへの誘い。 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『東大のディープな日本史』入試問題に見る、アカデミズムへの誘い。

暗記科目の歴史が苦手というアナタに朗報。とにかく、東京大学の日本史の入試問題がたまらなく面白いのだ。 そこで問われるのは詰め込みで得られた知識でも、通り一遍の模範解答でもなく、ズバリ"考える力"。「選りに選りすぐったこの問題に、真っ向からかかってこい。」 「自分の頭で考え、自分の言葉で見事論破してみろ。」 どの設問からも、そんな出題者の声が聞こえてきそうな良

『未完のファシズム』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『未完のファシズム』

そもそもファシズムとは何か、というのは結構むずかしい。手法が強引な政治家あらばやたらファシスト呼ばわりもされたりするが、安易な使われ方は矮小化につながりかねないという気もする。どのような条件下でどういう状況が完成すれば「ファシズム」なんだろう。 本書においてファシズムとは「資本主義体制における一元的な全体主義のひとつの形態」だとして、「強力政治や総力戦・総動

『鉄道と国家』鉄道建設に関わった男たち 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『鉄道と国家』鉄道建設に関わった男たち

本書は日本の鉄道史を「政治」という切り口から解説する良書である。私自身、鉄ちゃんではなく、どちらかというと飛行機派だったので、これまで鉄道史は全く興味なかったし知らなかったが、本書を読んで少しは詳しくなった気がする。しかも本書は歴史を述べて終わりではなく、最近の新幹線輸出ビジネスや東日本大震災で壊滅的な被害を受けた三陸鉄道についてもカバーしているので更に面白

天下無用のお手引き書 『武士マニュアル』 書影

日本史 / 新刊超速レビュー

天下無用のお手引き書 『武士マニュアル』

世にマニュアルはあふれている。Amazonで「マニュアル」というキーワード検索をしたら、1万8千件近くもヒットした。世間の人たちはかくもマニュアルを欲しているのであり、あまたあるマニュアルたちも、その人達に役立とうとがんばっているのである。しかし、ここに画期的なマニュアル本が登場した。今の世にまったく役にたたないマニュアルなのである。武士が跋扈した時代、我々

『商店街はなぜ滅びるのか』+求ム翻訳x2 書影

日本史 / ビジネス

『商店街はなぜ滅びるのか』+求ム翻訳x2

話は飛んで東日本大震災。多賀城市と石巻市、著者が現地に足を運んだ復興の現場風景。石巻市の取り組みはメディアにも頻繁に取り上げられてきた。しかし、被害状況の差はあれど同じく被災した多賀城市の現状は語れることは多くはない。二つの都市の違いは端的に言ってしまうと、商店街の有無である。多賀城市は仙台市のベッドタウンであり,Wikipediaに「”市の中心部が存在しな

『謎とき平清盛』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『謎とき平清盛』

大河ドラマ『平清盛』は、どうやら“苦戦”しているらしい。画面が汚いとか、登場人物や人間関係がわかりにくいとか、視聴率が低いとか、喧しい。そこへまた、劇中の「王家」という表現について国会で問題にされたりと散々のようだ。しかしこれも、「大河ドラマ」という国民的話題になる作品ならでは、だろうか。 かく言う私は、ここ数年の大河ドラマの中では、実に骨太で面白いと思いな

『元商社マンが発見した古代の商人たち』日本の貿易を担った暴れん坊集団 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『元商社マンが発見した古代の商人たち』日本の貿易を担った暴れん坊集団

本書は、邪馬台国や大和政権が活躍した弥生時代・古墳時代の歴史を貿易という視点からとらえなおす本だ。筆者は、古代にも日本の対外貿易や異文化の導入をリードした「総合商社」が存在したのでは、と仮説をたてる。 日本は昔から海外の技術・文化を吸収して、独自の文化・経済を育んできた。早くも弥生時代には、水稲稲作技術・青銅器・鉄器などが中国や朝鮮半島から日本列島に伝わって

『戦国の食術』 生き残りをかけた粗食 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『戦国の食術』 生き残りをかけた粗食

戦国武将は戦死や自刃などでの早死を除くと、意外にも長生きだったらしい。北条早雲88歳、島津義弘85歳、大久保彦左衛門80歳、徳川家康75歳、伊達正宗70歳など、『戦国の食術』には70歳以上で亡くなった60人あまりの武将がリストされている。 人工呼吸や輸液などの延命技術などなかった時代だから、長患いすることもなく、亡くなる直前まで元気であったことだろう。家康な

『鰊場育ち』 新刊ちょい読み 書影

日本史 / 新刊超速レビュー

『鰊場育ち』 新刊ちょい読み

昭和40年代、札幌の小学生たちの社会科見学といえば、雪印乳業やサッポロビールの工場などが人気スポットだったが、小樽近辺にある鰊御殿もかならず訪れる場所だった。鰊御殿とは鰊漁の網元たちが建てた豪奢な自宅である。1890年代から建築がはじまり、いまでも10棟以上が文化財として保護されている。鰊漁の最盛期は1932年。それ以降漁獲高は減り続け、遠い過去の記憶となっ

『江戸歌舞伎役者の〈食乱〉日記』-たった680円なのにお腹いっぱい 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『江戸歌舞伎役者の〈食乱〉日記』-たった680円なのにお腹いっぱい

歌舞伎と江戸と食を愛する人であれば、絶対に外せない本である。味付けはあっさりと「山の幸」と「海の幸」の2章のみだ。底本としているのは3代目中村仲蔵の『手前味噌』という自伝である。文化6年(1809)生まれ、明治19年(1886)没の仲蔵は「食乱」を自認した大芝居(幕府公認の劇場)の名優だった。本書はその江戸の大スターにレポーターとなってもらい、様々な江戸グル

『「むだ」と「うがち」の江戸絵本』 新刊ちょい読み 書影

日本史 / 新刊超速レビュー

『「むだ」と「うがち」の江戸絵本』 新刊ちょい読み

以前、ツイッターで「クラシック音楽は三味線音楽と比べて粋ではない」と呟いたら、えらい勢いで反論されたことがある。クラシック音楽だって粋な楽曲があるというのだ。ボクにとって粋というのは真面目でも重厚でも芸術的でもない、むしろその逆の諧謔性・外連味のある・戯画化した何者かである。クラシック音楽は粋ではないと言ったのは、むしろ褒め言葉でもあったのだ。九鬼周造の名著

カタ【型】+ チ【魂】『にほんのかたちをよむ辞典』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

カタ【型】+ チ【魂】『にほんのかたちをよむ辞典』

日本文化における「かたち」を読み解く事典だ。「かたち」は直接的に目に飛び込んでくるものありながら、独自の文化や思想を含んでいる。つまり「かたち」とは、かた【型】+ち【魂】であり、本書は独特な日本文化の「かたち」を解説している。 発刊元である「形の文化会」の活動は、文化領域に括られる「かたち」を、科学・文化・歴史の視点で総合的に新しく研究し、人類思想上における

学生メンバー応募レビュー『おれは伊平次』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

学生メンバー応募レビュー『おれは伊平次』

今週と来週の週末、HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビューを掲載します。 まず最初は、井上卓磨さんのレビューです。 本書の著者、神坂次郎氏は、徹底した資料収集と丹念な現地取材によって歴史の中に埋もれた無名の人間に光を当て、その自由闊達な生き様を紹介してくれる、さながら歴史のキュレーターのような存在である。氏の著作によってキュレーションされた人物と