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社会

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995記事

『無業社会 働くことができない若者たちの未来』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『無業社会 働くことができない若者たちの未来』

いつのまにか浮き世はギスギスし、何かと言えば自己責任、である。お互い様とかお陰様という「生温い」言葉は流行らないらしい。「努力するものが報われる社会を」というスローガンもよく聞いたものだが、その意も「報われない者は努力が足りないのである(だから自己責任ね)」とすり替わりつつあるようだ。そして「こんな時代に負け組になったりしたら大変だ」という恐れの気持ちは、「

『本は死なない』キンドル開発者、読書についてかく語りけり! 書影

社会 / ビジネス

『本は死なない』キンドル開発者、読書についてかく語りけり!

アマゾンが 電子書籍読み放題サービスに参入するというニュース がある 。これは月額9.99ドルの契約を交わすと、約60万タイトルの電子書籍が読み放題になるというサービスだ。日本ではいまひとつ普及していない印象が拭えない電子書籍だが、アメリカでは事情が異なるようだ。本書の記載によると、アメリカの出版業界の市場調査を専門とした機関の報告で、2012年までに成人の

LGBT 自分らしくありのままで『夫夫円満』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

LGBT 自分らしくありのままで『夫夫円満』

はじまりはいつもこうだ。 米国総領事として, 夫のエマーソンと共に大阪や神戸、京都、広島など 各地で行事に参加していると、 社長、部長、課長クラスの年配の男性がやってきて、 「それで、どちらがご夫人ですか?」と尋ねられる。 「どちらが妻というわけではないんです… ゲイのカップルで…同性結婚ですから… 私が夫で、彼も夫。夫と…夫。夫がふたりなんです」 と答える

『異邦人』文庫解説 by 麻木 久仁子 書影

社会 / 「解説」から読む本

『異邦人』文庫解説 by 麻木 久仁子

上原さんは、いつも旅をしているひとなのだ。日本の路地を。世界の路地を。構えたところもなく、ありのままの心で。 なぜ旅をするのか、第一章にこうある。 〈この世の中で、父と母との喧嘩ほど醜いものはない。まだ幼かった私にとって、それ は修羅場であった。〉 〈両親の修羅場は、まさに幼かった私にとって「小さな戦争」であった。私は何もできずに戸惑う、

鼻孔をくすぐる悲しみ『世界はフラットにもの悲しくて』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

鼻孔をくすぐる悲しみ『世界はフラットにもの悲しくて』

洋書の写真集が好きな私は、大型書店を訪れた際には必ず洋書コーナーで様々な写真集を眺める。必ず手に取るのは、ファッション写真と報道写真だ。ファッション写真は人間の美しさを私に教えてくれる。そして報道写真は広い世界に渦巻く人間の業と悲しみを教えてくれる。同じ時代を生きつつ、決して出会う事の無い人々の悲しみや欲望や生のエネルギーを私に突きつける。 そのような写真を

つなげ!つなげ!『紙つなげ!』たすきを渡し、思いよ届け! 書影

社会 / おすすめ本レビュー

つなげ!つなげ!『紙つなげ!』たすきを渡し、思いよ届け!

東日本大震災がもたらした甚大な被害は、この国の物作りの基盤を揺るがした。東日本が支えていたサプライチェーンが混乱、自動車・半導体をはじめとして、さまざまな製造現場では操業停止という事態も起こった。「納豆の容器が無い」「ペットボトルの蓋が無い」など、身近な品々にも影響は及んだ。「あのときは部品調達にひどく苦労した」という記憶をお持ちの方も多いだろう。 「紙」も

東北が日本を支える。『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

東北が日本を支える。『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』

今ここに、数冊の文庫本がある。角川グループパブリッシング発行、どれも2011年3月以降に印刷されたものだ。私の目には、他の文庫本とそれほど違いはないように見える。軽く、柔らかい文庫本。しかし、印刷された物語とはまた別の、ある物語を秘めた本。今ここにあるこの本は、もしかしたら未曾有の大震災を奇跡のように生き残った紙で作られたものかもしれないのだ。 2011年3

自分が旅立つ前に残しておくべきものは?『死者を弔うということ』 書影

教養・雑学 / 社会

自分が旅立つ前に残しておくべきものは?『死者を弔うということ』

医師や救命士をはじめとした世界中の医療関係者による甚大な努力にもかかわらず、人類の死亡率は100%に留まっている 誰にとっても死は他人ごとでもあるかのように振り払いたくなるが、避けられない死。本書は、人が意識を失った後のできごと、「弔い方」を世界各地で探求した旅日誌である。 自分の葬儀を自分で計画することも突飛な時代ではなくなった。過去にはウィンストン・チャ

『紙つなげ!』2014年上半期最高の社会派感動ノンフィクション 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『紙つなげ!』2014年上半期最高の社会派感動ノンフィクション

「この工場が死んだら、日本の出版は終わる・・・」 こんな帯が巻かれた本を書店で見て、手に取らずに店頭を通り過ぎることができる本好きは少ないであろう。その工場とは一体どこにあるのか。なぜ日本の出版は終わってしまうのか。そしていまだに日本の出版は終わっていない理由とは。表紙には巨大なマシンと誇らしげな人々と千羽鶴。 ひさしぶりに読みはじめる前から身が引き締まる思

『キルギスの誘拐結婚』 - ある日突然、花嫁に 書影

社会 / 民俗・風俗

『キルギスの誘拐結婚』 - ある日突然、花嫁に

中央アジアのキルギスという国は、北はカザフスタン、東は新疆ウイグル自治区、南はタジキスタン、西はウズベキスタンに囲まれた場所に位置しており、国土の面積は日本の約半分という小さな国である。 山や湖に囲まれたこの美しい国には、今なお続く信じ難い現実がある。それは仲間を連れた若い男が、嫌がる女性を自宅に連れていき、一族総出で説得し、無理やり結婚させるというもの。キ

思考こそが世界を救う 『ハンナ・アーレント』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

思考こそが世界を救う 『ハンナ・アーレント』

まず、ここ数年の間に読んだなかで、いちばん感銘をうけた本といっておこう。憲法改正に、在日差別に、いろいろなバッシングに、新しい視点を与えてくれた。人間の『複数性』が重要であると。そして、『思考欠如』は罪悪であると。 ハンナ・アーレント 。どれくらいの知名度なのだろう。恥ずかしながら、昨年、 この名を冠した映画 を見るまで、その業績はおろか名前すら知らなかった

『排泄物と文明』うんちのうんちく 書影

サイエンス / 生物・自然

『排泄物と文明』うんちのうんちく

訳者がこんなに「ウンコ」を連発したのは小学生のとき以来かもしれない ウンコが溢れているのは本書の中だけではない、世界中で溢れはじめている。約70億の人類は約4億トン近いウンコを、家畜(ニワトリ約190億、ブタ約10億、ウシ約14億、ヒツジとヤギ約18億)は控えめに見積もって、141億3645万トンの畜糞を算出する。畜糞だけで、地球上すべての人に一日1ℓ以上を

『真実 新聞が警察に跪いた日』 - 栄光からの転落 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『真実 新聞が警察に跪いた日』 - 栄光からの転落

時代がいくら変わっても、新聞には変わらない役割があります。その重要な 一つが権力監視、権力チェックではないでしょうか。権力監視の力は弱くなってきたと言われていますが、読者のためにも権力監視の役割を放棄するわけにはいきません。北海道警察の裏金問題の報道は、まさにそうした、新聞本来の役割を取り戻すための作業でした。 2004年10月、本書の著者・高田昌幸氏が北

『中国の歴史認識はどう作られたのか』 共産主義から愛国主義へ 書影

社会 / 世界史

『中国の歴史認識はどう作られたのか』 共産主義から愛国主義へ

この10年間の最大の過ちは教育にありました。ことにイデオロギー的、政治的教育です。単に学生たちに対してのみならず、人民一般に対する教育です。 1989年に世界を震撼させた 天安門事件 を振り返り、鄧小平はこう語った。彼は、民主化を求める抗議行動の拡大を目の当たりにして、1980年代における共産党の最大の過ちは、人民に銃をつきつけたことではなく、イデオロギー教

『切断ヴィーナス』 - もっと高く、もっと遠くへ、そしてもっと美しく。 書影

アート・スポーツ / 社会

『切断ヴィーナス』 - もっと高く、もっと遠くへ、そしてもっと美しく。

OL、モデル、アスリートにイラストレーター... 本書に登場する11人の女性には、一つの共通点がある。 それは、全員が義肢装具士・臼井二美男さんによって手がけられた義足を身につけているということである。一人ひとりの思いを実現するため、何度も対話を重ねながら生み出された「夢見る義足」。足の切断というアクシデントに見舞われた女性たちが、今、新たな一歩を踏み出した

『孤独死のリアル』 おひとりさまの老後に向けて 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『孤独死のリアル』 おひとりさまの老後に向けて

「死ぬ時まであなたと一緒!」などというかつてどこかで聞いたせりふはもはや昼メロでしか見当たらないのかもしれない。死は最後の最後は誰もがひとりで直面するものだが「自宅で誰にも看取られずに亡くなり、その死が数日後に発見され、自殺や犯罪性を除く遺体」(孤独死)は年間3万体にも達すると言われれば穏やかではない。死ぬ時まであなたと一緒どころか、死ぬ時もひとりで、死んで

『沸騰!図書館』市長、おきつーござんした! 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『沸騰!図書館』市長、おきつーござんした!

夕方の5時に市立図書館に本を借りに行った市長に対して 「市長、もう、閉館です。市長であっても特別扱いはできません。」 「それと明日は休館日です。平日でも休館日なんです。昔からそういう決まりですから」 閉架に所蔵されている資料を頼むと10−20分待たされる。そこで市長が市立図書館の内部を見せてくれいうと 「市長といえども、部外者ですから、お見せできません」 こ

『暴露 スノーデンが私に託したファイル』世界24カ国同時発売−世界最速レビュー 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『暴露 スノーデンが私に託したファイル』世界24カ国同時発売−世界最速レビュー

【本書は世界24カ国同時発売である。日本では本日朝から書店店頭に並べられている。ということはこのレビューが世界最速になるかもしれない】 このレビューを書くため、「スノーデン」や「NSA」などのキーワードを20回以上Googleで検索し、何件かの事実確認をするためにMicrosoft Office 365を経由してメールを送受した。すでにこれらの通信は北米大陸

『年収は「住むところ」で決まる』 プログラマーが多い街にはヨガ教室が多い 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『年収は「住むところ」で決まる』 プログラマーが多い街にはヨガ教室が多い

中国から“ものづくり”を取り戻せ。こんなスローガンが聞かれるのは、かつてのものづくり大国・日本だけではない。リーバイスのようなアメリカン・スピリッツを象徴する企業までもが製造拠点の全てを海外に移し、失業率が高止まりするアメリカでも“製造業保護活動家”たちが製造業の復権を強く訴えているようだ。しかし、カリフォルニア大学バークレー校教授で経済学者の著者エンリコ・

『社会はなぜ左と右にわかれるのか』 - 断層を乗り越えるための技法 書影

サイエンス / 社会

『社会はなぜ左と右にわかれるのか』 - 断層を乗り越えるための技法

保守とかリベラルとか、その手の話題とは願わくば一線を引きたいと思っていたし、あまり深入りせずに真ん中あたりをうろちょろしていると思われたいのが本音だ。だが、ここまで明確に人間社会における道徳の機能的価値を晒されると、むしろ知らないことの方が怖くなってくる。 道徳心理学という手法を活用した本書の明快すぎる論考には、いささか著者固有のバイアスもかかっていることだ

『サイレント・ニーズ』新しい見方というシンプルな武器 書影

社会 / ビジネス

『サイレント・ニーズ』新しい見方というシンプルな武器

2008年7月、iPhoneが発売された。その時から凋落の一途を辿っていったのが、Nokiaの携帯電話事業である。2007年に最高益を達成した後は、「第3・4世代(3・4G)移動通信システムvsスマホ」におけるイノベーター・アップルの前にひれ伏すこととなる。そして、2012年には14年間に渡った販売数トップの座をサムスンに明け渡し、 昨日 、携帯電話事業をマ

『悪い奴ほど合理的』 世界を少しずつよくするために。 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『悪い奴ほど合理的』 世界を少しずつよくするために。

時代劇が好きで、よく観るのだが、『 神谷玄次郎捕物控 』(NHK BS時代劇金曜午後8時)を観ていたら「おっ?」と目を引くシーンがあった。 探索中の定廻り同心・神谷が、事件とは何の関わりもなさそうな某藩上屋敷に入っていくので何かなと思いきや。三宝に載った袱紗が出てきて、開けてみれば黄金色。それを神谷は悪びれもせずしれっと受け取って懐に入れる。江戸詰めの藩士が

『レーガンとサッチャー』 書影

人物 / 社会

『レーガンとサッチャー』

その時代にその人物がいなかったら歴史はどのようになっていたのだろうかと思わせる人物たちが存在する。多くの場合、それは混沌とした世の中で強いリーダーシップを発揮した英雄的な政治家や軍人だ。本書の主人公二人がそのような人物であったという評価はこれまでなかったかもしれない。だが、冷戦という特殊な時代状況の中で20世紀中盤に超大国アメリカとその同盟国イギリスを率いた

『外務省に告ぐ』文庫解説 by 原田マハ 書影

社会 / 「解説」から読む本

『外務省に告ぐ』文庫解説 by 原田マハ

初めに言っておく。超ド級のトップ・インテリジェンスにして「月産原稿量千枚超」を誇る怪物のごとき作家・佐藤優の知性と筆力には、どんなにがんばったところで私は到底かなわない。ゆえに、この解説では少々ふざけたことを書く。けれど、ここまでフルスピードでページをめくってきた読者に読み飛ばされないように、細心の注意は払いたい。 本書の解説にまったくの畑違いである私を指名

『河北新報のいちばん長い日』 文庫解説 by 後藤 正治 書影

社会 / 事件・事故

『河北新報のいちばん長い日』 文庫解説 by 後藤 正治

二〇一一年三月十一日に勃発した東日本大震災にさいして、地元紙・河北新報が、震災にいかに対応し、何をどう伝えたか……を克明に記すドキュメントである。 河北新報は、宮城・仙台を本拠に、東北各県をエリアとするブロック紙である。震災で本社の建物は持ちこたえたが、沿岸部にある支局や販売店は軒並み被災した。販売店でいえば、店主が死亡した店が三店、全壊が十九店舗。配達員な

キャバ嬢という矛盾した存在『キャバ嬢の社会学』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

キャバ嬢という矛盾した存在『キャバ嬢の社会学』

23歳の京大大学院生が、自らキャバ嬢となって潜入捜査!と帯に書かれている文言に惹かれて購入したらこれが大当たりだった。著者が自らキャバ嬢となって体験したことを、社会学のフィールドワークとしてまとめた作品なのだが、普通の女の子がキャバ嬢になるプロセスや、男性がなぜキャバ嬢にいれこんでしまうのか?ということが書かれていて非常に興味深い。著者は1年あまりキャバクラ

『メキシコ麻薬戦争』 ゴッドファーザーよりヤバイ現実 書影

社会 / 事件・事故

『メキシコ麻薬戦争』 ゴッドファーザーよりヤバイ現実

12万人。2006年から6年続いた カルデロン 政権下、メキシコ麻薬戦争によって失われた命の数である。異常なのは犠牲者の数だけではない。用いられる武器、残虐性も想像を超えている。けん銃やマシンガンは当たり前、手榴弾も決して珍しくはないという。メキシコが直面しているのは、マフィアたちの抗争や縄張り争いなどという言葉では片付けられない、“戦争”なのだ。 敵対集団

3月のこれから売る本―紀伊國屋書店富山店 野坂美帆 書影

サイエンス / 社会

3月のこれから売る本―紀伊國屋書店富山店 野坂美帆

BMC、ビルマニアカフェ という団体をご存じだろうか。「月刊ビル」というリトルプレスまで出版している1950~70年代ビルを偏愛する5人グループで、大阪を中心に活動。 参加する設計士の高岡伸一氏は『 大大阪モダン建築 』を上梓するなど近代建築への関心で知られ、岩田雅希氏は東京R不動産と提携する大阪R不動産の運営元、株式会社アートアンドクラフト所属のリノベーシ

『原発敗戦 危機のリーダーシップとは』 リーダーには何が必要か 書影

社会 / 事件・事故

『原発敗戦 危機のリーダーシップとは』 リーダーには何が必要か

福島原発事故は「第二の敗戦」だった。 著者は、深い敗北感のただなかにいる。わたしたちは何も学んでいないのではないか、日本は70年前の敗戦から何も変わっていないのではないか。 民間事故調 のプログラム・ディレクターとして、ジャーナリストとして、つぶさに事故の経過を調査・検証してきた著者は、敗北感にとらわれながらも、日本再出発への道を模索する。 本書では事故を時

『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』解説 by 板垣 恵介 書影

アート・スポーツ / 社会

『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』解説 by 板垣 恵介

強ェえ男が好きだ。強ェえ男を見たい。強ェえ男を聞きたい。強ェえ男を笑いたい。強ェえ男に畏怖えたい。 そんな事を50年以上は考えている。本書はそんな俺の願望を余す所なく、有り余る程満たしてくれている。 50年以上も”強き者”に目を光らせていたハズなのに木村政彦の名はアンテナに掠った程度だった。力道山戦の敗北、柔道界の政治的な意図、理由は様々であろうが、俺はここ

『記者たちは海に向かった』 - 半径10kmのジャーナリズム 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『記者たちは海に向かった』 - 半径10kmのジャーナリズム

記録を残すとは、時に残酷なものである。 本書の表紙をめくると、そこには一枚の写真が掲載されている。カメラに向かって微笑む、福島民友新聞の6人の記者たち。撮影されたのは、2011年3月9日。後方には激震と津波によって後に消失してしまう「ろうそく岩」もそびえ立つ。そして6人の運命が、やがてジグソーパズルのようにバラバラに引き裂かれていくことを、彼らはまだ知らない

『遺体 震災、津波の果てに』文庫版あとがき by 石井 光太 書影

社会 / 「解説」から読む本

『遺体 震災、津波の果てに』文庫版あとがき by 石井 光太

あの日から、三年が過ぎようとしている。 東日本大震災が起きて間もなく釜石の地に着いたとき、私は3年後の釜石を想像することができなかった。あまりに凄惨な現実に圧倒され、目の前にある光景以外のものを思い浮かべる力が木端微塵に砕け散ってしまっていたのである。異臭と寒さと瓦礫が私にとっての被災地すべてだった。 本書の執筆は、そんな私にとって祈りともいうべき作業だった

『救命 東日本大震災、医師たちの奮闘』文庫版後書き by 海堂 尊 書影

社会 / 「解説」から読む本

『救命 東日本大震災、医師たちの奮闘』文庫版後書き by 海堂 尊

文庫化にあたり、単行本の後書きを読み返してみた。後書きを執筆したのは2011年7月で、世の中が東日本大震災の余波の真っ只中にあった頃だ。 あれから二年半。世の中は変わった。 被災地の頑張りの方向性は一貫しているが、社会のベクトルは大きくぶれ、被災地をネグレクトする方向に動いてしまった。そうした動きをここで詳細にあげつらうと却って論点がぼけてしまうので、一点に

『前へ! 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』取材ノート by 麻生 幾 書影

社会 / 「解説」から読む本

『前へ! 東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録』取材ノート by 麻生 幾

文庫本として出版するにあたり、広報セクションを通してあらためて関係者の方々よりお話を伺った。 東日本大震災より3年近い月日が経っていたが、皆さんのご記憶は鮮明だった。 それだけ、あの災害は、皆さんにとって忘れえぬ思いが、体に刻みつけられていると、今更ながら深い思いに浸った。 私自身も、幾つかの記憶がある。 その多くが「恐怖」だ。 家々を呑み込む大津波、漆黒の

この写真から目を背けてはいけない『フォト・ドキュメンタリー人間の尊厳』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

この写真から目を背けてはいけない『フォト・ドキュメンタリー人間の尊厳』

最初はちょっとした好奇心からだった。アメリカ・ペンシルバニア州の大学に通う林典子が、大学の掲示板に貼りだされていた「西アフリカ・ガンビア、研修参加者を募集」の掲示に興味を持ち、参加を申し込んだのは2006年1月。大学3年の春学期になったばかりのことだ。 ガンビア共和国は大西洋とセネガルに囲まれた細長い国土で人口は180万人ほど。その年の5月に教授の引率で入国

山に行きたい!『定本 黒部の山賊』 書影

アート・スポーツ / 社会

山に行きたい!『定本 黒部の山賊』

富山、岐阜、長野各県の県境付近に位置する黒部渓谷。登山愛好者には北アルプスの心臓部として知られている。著者によれば、黒部の源流は天候が崩れれば水位が一気に10m以上も上がり、また至るところで鉄砲水が出る。鉄砲水の勢いは凄まじく、突風を引き起こし、大木が40cmほどの木片に、ザクザクと粉砕される。もしこの増水や鉄砲水に飲み込まれれば、遺留品も遺体そのものも完全

『いつまでも美しく』 書影

人物 / 社会

『いつまでも美しく』

装丁の写真に写る少女は輝く大きな瞳と、笑った口元からのぞく白い歯がとても魅力的だ。その瞳、その笑顔はまだ、自らが何者かになれるという確信と希望に満ちているように感じられる。自らの立ち位置とその存在の小ささを現実という絶望から叩きつけられたことのない、幼き者だけが持つことの許される独特な輝きに満たされている。だが、彼女が顔を出している建物は、さびたトタンと棒切

『FBI秘録』 監視された安全かリスクある自由か 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『FBI秘録』 監視された安全かリスクある自由か

FBIとはFederal Bureau of Investigationの略称であり、日本語では連邦捜査局となる。その名前や映画で伝えられるイメージから、FBIをアメリカの州をまたがる凶悪犯罪を担当する警察、と考えている人もいるだろう。ところが、FBIの主たる目的はその誕生から今日まで、秘密諜報活動にあると著者はいう。 CIAとは異なり 、FBIには犯罪を取

最高裁中枢を知る元エリート裁判官はなぜ司法に〝絶望〟したのか? ー 『絶望の裁判所』著者・瀬木比呂志氏インタビュー第2弾 書影

社会 / HONZブックマーク

最高裁中枢を知る元エリート裁判官はなぜ司法に〝絶望〟したのか? ー 『絶望の裁判所』著者・瀬木比呂志氏インタビュー第2弾

本日(2月18日)講談社現代新書より、裁判官たちの精神の荒廃と堕落を描いた『絶望の裁判所』が刊行されます。外部には知られることのない「法服の王国」で、現在何が起きているのか。最高裁中枢の暗部を知る元裁判官 瀬木比呂志氏(明治大学法科大学院専任教授)への待望のインタビュー第2弾!(インタビュー第1弾は こちら ) --先日のインタビュー記事公開直後(現代ビジネ

『殺人犯はそこにいる』この国の正義を問う 書影

社会 / 事件・事故

『殺人犯はそこにいる』この国の正義を問う

現在、HONZが怒涛のキャンペーンを張っている作品がある。それが本書、『殺人犯はそこにいる』だ。 野坂美帆 。 内藤順 。 仲野徹 。さらに、マンガHONZの山田義久もそれぞれの立場から本書をレビューしている。また、栗下直也が 著者インタビュー を行っている。 ここまでレビューされているのだから、もういいじゃないか?そんな思いも少しはある。しかし、本書にはそ