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455記事

『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』自分がいま立っているその足元から発せられる言葉 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』自分がいま立っているその足元から発せられる言葉

保育園に子どもを迎えに行っていた頃、保育士が毎日のように子どもがこしらえたすり傷やたんこぶなどについて懇切丁寧に説明するのに面食らった。 「すべり台を降りた瞬間にお友だちとぶつかって……」、「ボールを追いかけていて転んで……」といった具合。こちらは田舎の野山を駆けずり回って育ったくちだ。子どもなんてケガするのが普通と呑気に構えていたものだから戸惑いを覚えてし

『われらの子ども 米国における機会格差の拡大』 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『われらの子ども 米国における機会格差の拡大』

わが国ではシングルマザーの家庭を中心として、子どもの実に6人に1人が貧困に喘いでいる、といわれている。このまま放置すると、社会的損失は40兆円に達するとの試算もある(「子供の貧困が日本を滅ぼす」文春新書)。本書は、アメリカにおける子どもの貧困と格差の固定という社会的危機の現実を赤裸々に描き出した力作である。 まず、著者のふるさとの街が登場する。オハイオ州ポー

『全国版 あの日のエロ本自販機探訪記』失われる光景を求めて 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『全国版 あの日のエロ本自販機探訪記』失われる光景を求めて

ガソリン携行缶10リットルを2缶、救急セット(傷薬、消毒薬、包帯、ガーゼ、絆創膏など)、非常用食料(カロリーメイト、乾パン、栄養ゼリー、アルファ米など)、非常用飲料水(2リットルを4本)、結束バンド、ダクトテープなど車両トラブルの際の応急修理用品。 まるで被災地に救援に向かうような持参品だ。その他にも簡易トイレやトイレットペーパーや乾電池などなど。実際、著者

『科学者の網膜 身体をめぐる映像技術論』「ありのまま」に挑んだ5人の科学者たち 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『科学者の網膜 身体をめぐる映像技術論』「ありのまま」に挑んだ5人の科学者たち

人は機械に取り込まれているのよ!!(注:若干意訳) なんと言うことだろう、昔の人は写真に魂を吸い取られると信じて撮られるのを本気で恐れたという話があるが、まさか真実だったのか。思わず震え声になってしまう。人間が気付いていないだけで人類は機械の掌で転がされているだけの存在だということなのか…。実は読み終えた今でも、機械の中で生きる人類を想像してちょっと怖い気持

自分であるということ 『成駿伝 孤独の◎は永遠に──』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

自分であるということ 『成駿伝 孤独の◎は永遠に──』

狩りの素人が山に入っても、獲物の存在に、なかなか気づかないそうだ。その一方で、猟師は山を見ただけで獲物がどこにいるかわかるという。私は小学校の頃から競馬をみてきたが、JRAにお金を預けっぱなしである。しかし、出馬表を見ただけで獲物がわかる予想家はいるものだ。本書は、昨年の夏に他界した、清水成駿という大物予想家の人物像に迫った本だ。 ダービーなどのG1レース前

『愛と怒りの行動経済学 賢い人は感情で決める』その感情は意外に合理的かも 書影

サイエンス / 医学・心理学

『愛と怒りの行動経済学 賢い人は感情で決める』その感情は意外に合理的かも

意思決定のプロセスでいつも感情に左右されがちと嘆いている人にとっては朗報だ。本書によると必ずしも感情的になるのは悪い事ではないようだ。 仕事や日常生活の中で私たちは常に何らかの決定を迫られて日々生きている。そして、意思決定の際に理性と感情のせめぎ合いを経験し、感情を排して合理的に決断できない自分に少なからず自責の念を感じているのではないだろうか。しかし、本書

『日本の工芸を元気にする!』同族企業だからこそ、出来ること 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『日本の工芸を元気にする!』同族企業だからこそ、出来ること

「日本の観光をヤバくする」 というのが星野リゾートのミッションだと知っているビジネスマンは少なくないだろう。観光カリスマである星野佳路社長率いる星野リゾートは、リゾート施設運営におけるイノベーションと独自性のある戦略が評価され、2014年度の ポーター賞 を受賞している。 本書で取り上げられる中川政七商店は、工芸分野における星野リゾートとも呼ぶべきユニークな

『成功する人は偶然を味方にする』そのための具体的な手段は存在する 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『成功する人は偶然を味方にする』そのための具体的な手段は存在する

本書はコーネル大学の人気教授で、ニューヨーク・タイムズの人気コラムニストでもあるフランク教授の著書ということで、よくありがちなアメリカ的な成功指南書なのかと思って読み始めた。 特に、邦題が『成功する人は偶然を味方にする』となっているので、偶然さえも自分の力でコントロールできるという意味なのかと誤解しそうだが、実際には成功者に自分の成功をもっと謙虚に受け止める

今週のいただきもの:2017年4月30日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2017年4月30日週

5月の第2日曜日は母の日ですね。母の日の習慣は、アメリカである女性が母親の命日に教会でカーネーションを配ったことに由来します。その後、母の日が制定されると、母親へ日頃の感謝として赤のカーネーションを贈り、母親を亡くした人は白のカーネーションを胸に飾るようになりました。 様々な色があるカーネーションですが、色によって花言葉が異なります。赤は「母の愛」、白は「私

「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

「生物とは何か」を問い直す──『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像』

『巨大ウイルスと第4のドメイン』を筆頭に魅力的なウイルス論、入門を書いてきた著者による最新作『生物はウイルスが進化させた』は、「生物」に対する見方を根底から覆す、最新のウイルス研究成果についての一冊だ。多くの野心的な仮説と、確かにそうかもと思わせる検証でぐっと惹きつけ、読み終えた時にはウイルスに対する考え方が大きく変わっていることだろう。 まさにそれによって

『欲望の資本主義』おカネとは何か? 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『欲望の資本主義』おカネとは何か?

ゲーム理論の専門家で大阪大学准教授の安田洋祐氏がナビゲーターを務める NHKドキュメンタリー『欲望の資本主義〜ルールが変わる時〜』 の内容をまとめた本書は、およそ経済活動に関わる全てのビジネスマンにとってmust readの一冊である。 番組の中では、コロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ氏、スタンフォード大学教授のアルヴィン・ロス氏、『善と悪の経済学

『クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説』血を吐くほど観察し続けながらも、ピュアな心を護り抜く 書影

サイエンス / HONZ客員レビュー

『クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説』血を吐くほど観察し続けながらも、ピュアな心を護り抜く

最近のHONZの流行りから言うと、鳥類学者だからといって鳥が好きとは限らないそうだが、クマムシの研究者はどうなのだろうか? HONZメンバー堀川 大樹が上梓した『クマムシ博士の クマムシへんてこ最強伝説』は、ある意味「恋愛本」として扱っても差支えないくらいだという。こちらも負けず劣らずバッタを愛するバッタ博士・前野 ウルド 浩太郎氏に、本書の魅力を寄稿いただ

『人はなぜ物語を求めるのか』物語との、虫のいい付き合い方 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『人はなぜ物語を求めるのか』物語との、虫のいい付き合い方

本書は物語論(ナラトロジー)と呼ばれる研究分野の視点から、人はいかに物語によって世界を理解しようとしているのかを説く一冊だ。 物語論の一部門である「筋(プロット)」研究には、「それなりに人間学的な背景があります」と著者は言う。本書では旧約聖書から桃太郎に至るまで、古今東西の様々な物語とその分析が引用され、さらには認知心理学や神経科学などの知見にも触れながら、

『ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA』 SFを現実に変換する科学集団 書影

サイエンス / 社会

『ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA』 SFを現実に変換する科学集団

1962年10月16日、ソ連が密かに核ミサイルをキューバに設置していることを発見したアメリカ大統領ケネディは、ソ連首相フルシチョフにミサイルの撤去を迫り、拒否された。この日からフルシチョフがミサイル撤去の決断を下すまでの13日間ほどに、人類が核兵器による全面戦争に近づいたことはない。キューバ危機で核ミサイルが攻撃に用いられることはなかったが、実はこの危機の最

出版業界でロボット戦争勃発か!?  『週刊鉄腕アトムを作ろう!』を買っているのは、どんな人たちか? 書影

教養・雑学 / 併せて読まれたこの一冊

出版業界でロボット戦争勃発か!?  『週刊鉄腕アトムを作ろう!』を買っているのは、どんな人たちか?

「鳥類学者の本を読むからって、鳥が好きだと思うなよ。」というコメントまで考えておいたのに、今話題の『 鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ 。』の分析がGWに間に合いませんでした。面白いことを読み解くにはまだまだデータ不足! 全国の皆さんの積極的な購買と、新潮社の皆さんの積極的な重版を期待します。 そんなこんなで、ネタが枯渇したのも一瞬の話。目の前に、可

『物理学者の墓を訪ねる ひらめきの秘密を求めて』死者と過ごす静かな時間 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『物理学者の墓を訪ねる ひらめきの秘密を求めて』死者と過ごす静かな時間

世に渋い趣味は数あれど、極めつきの渋いやつとなると、「掃苔」ではないだろうか。「掃苔」は「そうたい」と読む。苔を掃除する。つまりは墓参りのことである。 何を隠そうぼくも掃苔愛好者だ。特にお気に入りは青山墓地で、これからの新緑の季節は特に気持ちがいい。職場のホワイトボードに「打ち合わせ 青山」などと書いて外出しているときは、ほぼ例外なく仕事をサボって青山墓地を

『親鸞「四つの謎」を解く』 書影

人物 / 「解説」から読む本

『親鸞「四つの謎」を解く』

親鸞には法然や日蓮と違い、宗派の開祖としての自伝的な書物は少ない。また90歳にも及ぶ長き生涯において、足跡に不明瞭なことも多々ある。それゆえに今日でも文人や知識者たちの研究の対象になっている。謎が多いのだ。そのことを改めて解きほごそうとしたのが本書だ。中でも重要な四つの謎、「出家の謎」「法然門下に入門した謎」「結婚した謎」「悪の自覚の謎」をキーワードに、著者

今週のいただきもの:2017年4月23日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2017年4月23日週

映画 『メットガラ ドレスをまとった美術館』 を観ました。メットガラとは、ニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)を舞台に、1946年から行われているファッションイベントです。2014年には一晩で1,200万ドルもの資金を集め、収益金はメトロポリタン美術館の服飾部門1年間の活動資金に充てられます。 本作は『プラダを着た悪魔』のモデル、VOGUEの編集長ア

『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『ダイエットの科学 「これを食べれば健康になる」のウソを暴く』

高校2年生のことだ。クラスメートのお弁当箱(というかプラスチックの密閉容器)に入っていたのはリンゴだけ。昼ご飯はそれだけだと言う。「リンゴダイエット」だ。おかずとご飯でぎゅうぎゅうのお弁当箱を広げていた私には信じられなかった記憶がある。リンゴダイエットは今も根強い人気があるらしく、インターネットで検索すると何千件もヒットする(もちろん広告サイトも多いはずだ)

どうしても手元に欲しかった本『失われたパリの復元 バルザックの時代の街を歩く』 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

どうしても手元に欲しかった本『失われたパリの復元 バルザックの時代の街を歩く』

正直に告白しよう。本稿の執筆を引き受けた理由は本書『失われたパリの復元』がどうしても手元に欲しかったからである。とはいえ、19世紀のパリ市街にさほど関心を持っていないどころか、バルザックもまともに読んでいない。にもかかわらず、本書が欲しかったのだ。なんとしてでも早く手に入れ、時折ページを開いて、挿絵を眺めながら暮らしてみたかったのである。 「芸術新潮」で連載

『廃墟遺産』あったかもしれない風景に想いを馳せて読む 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『廃墟遺産』あったかもしれない風景に想いを馳せて読む

巨大な廃墟はスキャンダラスでセクシーな匂いを発している。だからか、縁もゆかりがなくとも、大きいという理由だけで、建造された経緯を調べ、廃墟となった理由を粗探したくなる。 当初はどの計画においても、卓越したリーダーの大きな計画と巻き込まれた沢山の関係者の想いがあったのだろう。しかし、当初の計画から予測できなかった出来事やトラブルにより実現しなかったがために、そ

犬! 飼わずにはいられない!──『ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

犬! 飼わずにはいられない!──『ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー』

人生の大半を、犬と過ごしてきた。 だから心の底からの実感としていえるのだが、犬ってのは良いものだ。つらい時は慰めてくれるし、楽しい時間はさらに楽しくなる。撫でているとあっという間に時間が過ぎるし、心地がよい。というわけで僕は10でも20でも人類が犬を飼うべき理由を挙げられるが──、本書『ジャングルの極限レースを走った犬 アーサー』を読んだら、また犬を飼いたく

『字が汚い!』あきらめるのか? それとも本気を出すのか? 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『字が汚い!』あきらめるのか? それとも本気を出すのか?

私のプロフィールには「趣味:万年筆集め」と書いてある。特に珍しいものを持っているわけではないが、新しい番組に携わるとき景気付けにとか、自分なりに課題をクリアしたと思った時に自分へのご褒美とか、とにかく折々買い集めて、いま30本くらいある。 MCやキャスターの仕事が多かった頃は、台本に書き込みをしたりメモを取ることが多く、すべて万年筆で書いていた。フリップを指

『色という奇跡 母・ふくみから受け継いだもの』それは色の神秘を紡ぎだす営み 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『色という奇跡 母・ふくみから受け継いだもの』それは色の神秘を紡ぎだす営み

「紺屋高尾」という落語がある。紺屋に勤めている染物職人、久蔵が最高位の花魁の高尾太夫に岡惚れする話だが、金を溜めて花魁に会えるというその日、案内をしてくれる人から、決して手を見せるなときつく言い渡される。紺屋の職人は藍の中に手を浸すので、手首から下は真っ青なのだ。だが、花魁はその律義さに惚れて…。いや、いい噺である。 『色という奇跡』の口絵の最初は、その藍の

今週のいただきもの:2017年4月16日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2017年4月16日週

長崎に行ってきました。出島や島原など、長崎には歴史の舞台となった場所が数多くあります。世界遺産に登録された グラバー邸 は、南山手の外国人居留地にあり、日本最古の洋風木造建築です。 スコットランド出身のグラバーは、英国の貿易会社の代理人として来日しました。維新派の藩に艦船や武器を売り込み、伊東博文や井上馨など、明治維新の中心となった若者の海外留学も支援しいて

『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』 書影

ビジネス / 「解説」から読む本

『POWERS OF TWO 二人で一人の天才』

創造は孤独な世界であり、歴史を変えるひらめきが天才に降臨する。そんな「孤高の天才」のイメージは、実は神話にすぎない。真のクリエイティビティとイノベーションは、親密な人間関係や社会のネットワークのなかで生まれ、育まれる。それがこの本の出発点だ。 では、天才たちはどのようにイノベーションを成し遂げるのだろうか。そのプロセスを分析するために、著者は人間関係の基本で

『本屋、はじめました』と『ローカルブックストアである』本屋の仕事の本質は、「待つ」に凝縮されている 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『本屋、はじめました』と『ローカルブックストアである』本屋の仕事の本質は、「待つ」に凝縮されている

荻窪駅の改札を出て、手頃な惣菜の店などが並ぶ庶民的な品揃えの駅ビルを抜けると、目の前はもう青梅街道だ。青梅街道を左折したら吉祥寺方面へと歩きはじめよう。迷ってはいけない。ひたすら歩を進めるべし。ただ駅を離れるにつれてお店も少なくなってくるし、「ホントにこの道でいいのかな……」と次第に不安になってくることはあらかじめお伝えしておこう。 しばらくすると目の前に環

『情報と秩序 原子から経済までを動かす根本原理を求めて』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

『情報と秩序 原子から経済までを動かす根本原理を求めて』

世界でもっとも経済が洗練されている国は日本──それが本書Why Information Growsの著者セザー・ヒダルゴらの開発した「経済複雑性」という独自の指標から導き出された結論だ。 日本が経済大国と呼ばれるようになって久しい。近年になって世界第2の経済大国(GDPベース)の地位を中国に明け渡し、ひとりあたりGDPではすでに他の先進国に大きく水を開けられ

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』受け身であること、それは最高のエンターテイメントである 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』受け身であること、それは最高のエンターテイメントである

「HONZで紹介する本って、どんな基準で選んでいるんですか?」そう聞かれることは結構多いのだが、いつも歯切れの悪い回答になってしまう。 むろん小説はのぞくとか、いかにもなビジネス書は紹介しないとか、ジャンルとしての縛りは色々あるのだが、それだけが重要なわけではない。要は、難解なサイエンス本や分厚い歴史本ばかりをスラスラ読みこなす小難しい集団、そんな風に思われ

『太陽王ルイ14世 ヴェルサイユの発明者』文化現象の北極点を創った男 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『太陽王ルイ14世 ヴェルサイユの発明者』文化現象の北極点を創った男

時間や空間を図るには確かな基準点が必要となる。しかし、贅沢や美しさという抽象的なものにも基準となる点や線は存在するのだろうか。フランス文学者の鹿島茂は世間一般で言われるように、これまで美しさや贅沢というものには基準となるものなど存在しないと思っていた。しかし、フランス文化史を長年の間、研究し続けるうちに美や贅沢にも基準点が存在するのではないかと思うようになっ

『覗くモーテル観察日誌』屋根裏からの先駆的性科学研究報告 書影

社会 / 民俗・風俗

『覗くモーテル観察日誌』屋根裏からの先駆的性科学研究報告

よその家の生活は気になるものだ。スーパーマーケットの買い物かごの中身や捨てたゴミの種類など、芭蕉ではないけれど「隣は何をする人ぞ」という興味は誰もが持っている。ましてや性生活ともなれば、口には出せないが興味のあるところだ。 その思いが嵩じて、アメリカのデンヴァー近郊に住むジャラルド・フースはモーテル自体を買ってしまった。屋根裏に細工し通風孔と見せかけた穴から

『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか? 書影

サイエンス / 「解説」から読む本

『心を操る寄生生物 感情から文化・社会まで』あなたの心を微生物たちはいかに操っているのか?

あなたの性格や行動が知らないあいだに、腸内や脳などに住む寄生生物によって操られているとしたら? 「まさか、そんなことは!」と思うだろうか。近年、「神経寄生生物学」と呼ばれる分野の研究が明かしているのは、まさにそんなことが起こっている、しかもごく日常的に!である。 たとえば、世界中で3人に1人が感染していると言われるトキソプラズマ原虫。この微生物は主にネコから

今週のいただきもの:2017年4月9日週 書影

今週のいただきもの

今週のいただきもの:2017年4月9日週

六本木の国立新美術館で開催中の ミュシャ展 に行ってきました。ミュシャ×スラブ叙事詩(チェコ国外での公開は初めて)ということで、混雑覚悟で臨みました。混雑を少しでも避けるなら会期半ば、平日16時以降でしょうか。チケット売場も並ぶ(草間彌生展も開催中)ので、金券ショップでチケットを購入してから行くのをオススメします。 ミュシャといえばアールヌーヴォー、美しい女

行かなくてもいいくらいに解説されてるけど、やっぱり行きたくなってしまう『国立科学博物館のひみつ 地球館探検編』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

行かなくてもいいくらいに解説されてるけど、やっぱり行きたくなってしまう『国立科学博物館のひみつ 地球館探検編』

HONZの成毛代表、何を考えているのか、忙しいとぼやきながらも、今年はめったやたらと本を出すらしい。大丈夫か。しかし、いちばん気合いがはいってるのはこの本だ。なんせ、ADHDを誇る成毛代表が、国立科学博物館という同じテーマに固執して二冊目の本を出すのだから。ただし、本人に確認した訳ではありませんので、まぁ、いま巷に流行る忖度いうやつですわ。 しかし、相当に力

『イブン・バットゥータと境域への旅』 書影

人物 / 世界史

『イブン・バットゥータと境域への旅』

イブン・バットゥータの「三大陸周遊記」(抄訳)を初めて読んだのは、もう、半世紀以上昔のことになるだろうか、「あぁ、こんな旅がしてみたい」と心から思ったものである。本書は、この「大旅行記」の完訳を成し遂げた1939年生まれの碩学によるまたとない案内書だ。 14世紀の初めにモロッコで生を受けたイスラームの法官、イブン・バットゥータは、なぜ30年に及ぶ大旅行を達成

みんな”フベンエキ”に生きようぜ!とは思うものの、『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか? ~不便益という発想』って、なんぼなんでもタイトル長すぎるやろ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

みんな”フベンエキ”に生きようぜ!とは思うものの、『ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れてみてはどうですか? ~不便益という発想』って、なんぼなんでもタイトル長すぎるやろ

不便益と書いてフベンエキ、聞き慣れない言葉である。便をしなかったら御利益がある、という話ではない。あたりまえか。便利は益をもたらすが、反対に「不便であるからこそ得られる益」もあるのではないか、という発想だ。なんじゃそれは、と思われるかもしれんが、著者の川上浩司さんは歴とした京都大学教授で、専門はデザインユニット学。あの、何に使ったらいいのかようわからん『 京

側近の書いた「信長」 『信長公記(全)』 書影

日本史 / プレミアム・レビュー

側近の書いた「信長」 『信長公記(全)』

家臣が同時代に書いた、織田信長の一代記『信長公記』。これを歴史小説家が現代語で訳したのが本書だ。本能寺の変で自害するまでの15年間がつぶさに記された、歴史資料としても、読み物としても第一級の一冊。これがまあ、おもしろくて一気読み! 時には歴史の海へ身を投げ出して、戦国時代にタイムトリップをしてみるのもいいぞ。 著者の太田牛一は、尾張の田舎(といっても、現在の

『コンスタンツェ・モーツァルト 「悪妻伝説の虚実」』本当に「琥珀の中に閉じ込められた蠅」のようだったのか? 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『コンスタンツェ・モーツァルト 「悪妻伝説の虚実」』本当に「琥珀の中に閉じ込められた蠅」のようだったのか?

「世界三大○○」という見立てが日本人はなぜか大好きである。「料理」だったり「テノール」だったり、「〇〇」のバリエーションはいろいろだ。世界とまではいかないが、個人的に知っているところでは「芸能界三大悪妻」というネタもある。だがここでその名を明かすのはやめておこう。いま流行りの忖度というやつである。 世界三大〇〇にはもちろん「世界三大悪妻」もある。その三人とは

『豪腕 使い捨てされる15億ドルの商品』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『豪腕 使い捨てされる15億ドルの商品』

肘の靱帯再建であるトミー・ジョン手術。野球好き以外には聞き慣れない言葉かも知れないが、ダルビッシュ有や松坂大輔、古くは村田兆治などが受けている。かつては成功率1%とも言われたが、現在は8割近くが復帰に成功している。 本書はトミー・ジョン手術を中心に米国や日本の野球投手の「腕」の故障に関する問題を検証しているが、その背景にあるのは、野球界に限らず抱える古くて新

人は見た目が、何パーセント?『顔ニモマケズ どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

人は見た目が、何パーセント?『顔ニモマケズ どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』

「人は見た目が9割」「人は見た目が100パーセント」「美貌格差」……その内容はさておき、こうした本やドラマのタイトルは多くの人が「見た目」に関心があることの表れだろう。 では、もしも顔などの見た目に大きなあざや変形などの目立つ症状がある場合、ネガティブな人生が約束されてしまうのか? 本書は、そうした症状をもつ「見た目問題」の当事者9人へのインタビュー集である