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民俗・風俗

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310記事

『テキヤはどこからやってくるのか?』知的好奇心を満たしてくれる一冊 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『テキヤはどこからやってくるのか?』知的好奇心を満たしてくれる一冊

浮かれた雰囲気の場所にはかならずといっていいほど露店が立ち並んでおり、焼きそばを焼くソースの匂いや派手な色彩の店構えがその場の雰囲気を盛りあげている。特に縁日や祭りにとって露店は欠かせない存在であり、露店の賑やかな存在が私たちにハレの気分を味あわせてくれている。 東京下町では、これら伝統的な露天商のことを「テキヤさん」と親しみを込めて呼んでいるが、一般的には

『かくして「源氏物語」が誕生する』by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / HONZ客員レビュー

『かくして「源氏物語」が誕生する』by 出口 治明

僕は、確か小学生の頃、平家物語を読んで感動し、同じ感動を味わおうと思って源氏物語に取り組んだ。田舎の少年は、源氏物語は武家としての源氏の盛衰を描いたものに違いないと勝手に決め込んでいたのである。読み始めて、おそろしく拍子抜けしたことが記憶に残っている。途中で投げ出した源氏物語に、再び取り組んだのは高校生の頃ではなかったか。その時は漱石よりもむしろ惹かれるもの

『有次と庖丁』そうだ 京都行こう 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『有次と庖丁』そうだ 京都行こう

有次。「ありつぐ」と読む。京都市中京区のど真ん中、1200年以上の歴史を誇る錦市場にある庖丁と料理道具を販売する店だ。創業は永禄3年、西暦1560年。桶狭間の戦いがあった年である。8年後に織田信長が上洛し、戦国時代は終焉を迎えた。その時すでに有次は「日本鍛冶宗匠三品家門人藤原有次」として鍛冶を営んでいた。 本書はその有次と、有次の庖丁と、その庖丁を使う料理人

『黙示録――イメージの源泉』by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / HONZ客員レビュー

『黙示録――イメージの源泉』by 出口 治明

フランスのアンジェ城で、薄暗い光の中、壁一面にかけられたアンジェの黙示録を初めて見た時の、摩訶不思議な感動は、まるで昨日のことのようによく覚えている。聖書の最後に置かれた、わずか35ページ(新共同訳)のヨハネの黙示録(アポカリプス)。「イエス・キリストの黙示」で始まるこの両義的でおどろおどろしい不思議な物語のまたとない解説書が現れた。それが本書である。 著者

春 満開!『秘宝館という文化装置』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

春 満開!『秘宝館という文化装置』

イケそうでイケない。 別にイヤらしい意味ではなく、そういう絶妙な距離感にあるのが「秘宝館」という存在であると思う。興味はあるのだが、わざわざそのために足を運ぶほどの気にはなれない。かといって何かのついでに行くというには、あまりにも不自然な場所にある。 だが、本書によると、そう悠長なことを言っている場合でもなさそうである。かつて北海道から九州まで少なくとも20

山に行きたい!『定本 黒部の山賊』 書影

アート・スポーツ / 社会

山に行きたい!『定本 黒部の山賊』

富山、岐阜、長野各県の県境付近に位置する黒部渓谷。登山愛好者には北アルプスの心臓部として知られている。著者によれば、黒部の源流は天候が崩れれば水位が一気に10m以上も上がり、また至るところで鉄砲水が出る。鉄砲水の勢いは凄まじく、突風を引き起こし、大木が40cmほどの木片に、ザクザクと粉砕される。もしこの増水や鉄砲水に飲み込まれれば、遺留品も遺体そのものも完全

『エロの「デザインの現場」』 - R18の想像力 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

『エロの「デザインの現場」』 - R18の想像力

なにもかもが久しぶりの経験であった。 書店でなかなか見つからず、店員さんに「『エロのデザインの現場』って本、ありますか?」と聞いてちょっと恥ずかしかったこと。電車の中で隣の人に覗きこまれないよう、表紙に角度をつけてガードしながら読まなければならなかったこと。家に帰ってきてからも妻に見つからぬよう、大きめの写真集の隙間に背を奥側に向けてしまうなど細心の注意を払

『縄文人になる!』こんなことできちゃうよ 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『縄文人になる!』こんなことできちゃうよ

このタイトルとカバーの写真……縄文人に「なる」といきなり言われても、いったい? 緊張感があるような、まったくないような、私もよくわからない。のだけれど、淡々と縄文人のライフ・スキルを紹介するこの一冊、まったくもって本気なのである。 サブタイトルに「縄文式生活技術教本」とあるが、章ごとに「火」「石」「角」「土」「木」「衣」「食」「住」と分けられており、それぞれ

『リヒトホーフェン日本滞在記―ドイツ人地理学者の観た幕末明治』by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / 日本史

『リヒトホーフェン日本滞在記―ドイツ人地理学者の観た幕末明治』by 出口 治明

長い間、鎖国の殻に閉じ籠っていた幕末明治期の日本は、当時わが国を訪れた外国人の恰好の好奇心の対象となった。彼らは実に多くの著述を残した。僕が覚えている「名作」だけでも軽く10指近くになる。オールコック「 大君の都 」、ハリス「 日本滞在記 」、イザベラ・バード「 日本奥地紀行 」、アーネスト・サトウ「 外交官の見た明治維新 」、ヒュースケン「 日本日記 」、

あらすじだけでも知ってほしい本がある 『種痘伝来』 書影

医学・心理学 / 民俗・風俗

あらすじだけでも知ってほしい本がある 『種痘伝来』

地味といえば地味な学術書である。はっきり言って4千円は高いし、ほとんどの人は買おうと思わないだろう。しかし、この本のあらすじは知っておいて損はない。江戸時代の知識階級のレベルがいかに高かったがよくわかる。 天然痘 は感染力が強く、致死率も高いおそるべき伝染病である。いや、その撲滅が人類によって成し遂げられた唯一の疾患なのだから、『であった』が正しいのかもしれ

『ヴェニスの商人の異人論―人肉一ポンドと他者認識の民族学』by 出口 治明 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『ヴェニスの商人の異人論―人肉一ポンドと他者認識の民族学』by 出口 治明

ダークスーツを颯爽と着こなしたビジネスパーソンが、ビジネスバッグを手に所狭しと歩きまわる、電話を掛ける、キーボードをたたく――20年ほど前にロンドンで観たRSCのヴェニスの商人は、確かそのように始まった記憶がある。本書は、人口に膾炙したこのシェイクスピアの名作を俎上に載せ、片方ずつではあるが聴力と視力を失うという病にみまわれた1人の言語学者が、渾身の力を振り

『WILDER MANN』ヨーロッパの獣人たち 書影

民俗・風俗 / 新刊超速レビュー

『WILDER MANN』ヨーロッパの獣人たち

ヨーロッパ19カ国で現在も行われている冬から春にかけての祭りに登場する「ワイルドマン」たちを撮影した写真集である。それにしてもじつに不思議だ。「なまはげ」も含め、なぜ北国の冬はこのような存在を必要とするのだろうか。 160点の写真に収められている衣装をそれぞれじつに個性的だが、全体を見渡すとどこか同じ匂いがする。毛皮、つの、仮面、ベル、麦わら、袋。使われてい

『ナチュラル・ファッション』自然を纏うアートな人々 書影

民俗・風俗 / 新刊超速レビュー

『ナチュラル・ファッション』自然を纏うアートな人々

華道草月流をご存知だろうか。華道といえば、15世紀京都六角堂の僧侶池坊専慶を祖とする池坊(いけのぼう)が一般に有名だが、草月流は20世紀に入って勅使河原蒼風によって創設された新しい華道である。勅使河原蒼風は「花のピカソ」とも呼ばれ、サルバドール・ダリなどとも親交があった。本拠地は赤坂の草月会館だが、設計は丹下健三、石庭はイサム・ノグチの作品だ。草月流は自由に

『木材と文明』by 出口 治明 書影

生物・自然 / 民俗・風俗

『木材と文明』by 出口 治明

私たちは、ついつい、日本は木の文明で、ヨーロッパは石の文明であると思いがちである。これに対して、「ヨーロッパは木材の文明だった」という歴史的事実の論証を、正面から試みたのが本書である。それだけでも興味をそそるではないか。 本書は5章から成っている。「第1章 歴史への木こり道」では、いわば総論が語られる。「もし我々に木材がなければ、我々には火もないだろう」そう

タイムトリップしてみたい 『芸人の肖像』 書影

民俗・風俗 / プレミアム・レビュー

タイムトリップしてみたい 『芸人の肖像』

ここ10年くらいでしょうか。そういえば、ちんどん屋さんを街で見かけることがほとんどなくなりました。ましてや、個人宅の玄関先で歌や舞いを披露するべく、別の土地からやってくる人たちも、それを待つ人もいなくなってしまったようです。そんな身近にいた「芸人」の姿を写真で紹介するのが、この新書です。 「芸人」といっても、テレビで活躍しているお笑いの方々を思い浮かべてはい

1月のこれから売る本-大垣書店烏丸三条店 吉川敦子 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

1月のこれから売る本-大垣書店烏丸三条店 吉川敦子

底冷えのする毎日が続きますがHONZをご覧の皆様、元気にお過ごしでしょうか。 さて、2014年にご紹介する最初の1冊はこちら。 一般の学校でも授業に茶道を取り入れているところはまだ多いとは言えないのに、なぜ乗馬という専門的な技術を身に着けるための特別な学校で、茶道の授業が行われているのだろう。しかも、競馬と言えばギャンブル。茶道の世界はその対極ともいえるわび

『人生の塩――豊かに味わい深く生きるために』by 出口 治明 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『人生の塩――豊かに味わい深く生きるために』by 出口 治明

人であれ本であれ町であれ、人生の出会いのほとんどは、実は偶然からスタートする。著者の名前を目にした時、シチリアのエリチェの街並みが思わず瞼に浮かんできたので、懐かしくて本書を紐解くことになった。驚いたことには、エリチェの町と同じように、小ぶりだが、とても温かみがあり、深い余韻が残る美しくて素晴らし本だった。 著者は、フランスの著名な人類学者で、あのレヴィ=ス

1月のこれから売る本-トーハン 吉村博光 書影

民俗・風俗 / 書店員のこれから売る本

1月のこれから売る本-トーハン 吉村博光

今年のお正月は「何もしないをする」という言葉が、ずっと頭をめぐっていました。例えば、頭を空っぽにして「子供と過ごす」なんていうのは、私的「何もしないをする」です。日がな一日「競馬場で過ごす」というのも、そう。そして、同じく「釣り糸をたらす」のも、そうです。最近のビジネス書には、トラウマを否定するものがあり前向きで実に素晴らしいのですが、結局私は気がつくとクヨ

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教養・雑学 / アート・スポーツ

『金田一耕助映像読本』でテンション上げてポチりまくり

あけましておめでとうございます。2014年もHONZをよろしくお願いいたします。 さて、今回ご紹介するのはMOOKです。HONZのルール上、MOOKはアリなんだったかどうだか忘れましたが、コンビニのワンコインBOOKSがオーケーなんだからMOOKだっていいだろうということです、はい。なにしろ年末年始、わたくしはこの本でたっぷり楽しみました。実に「使える」本だ

『承 井上雄彦 pepita2』受け継ぐもの 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

『承 井上雄彦 pepita2』受け継ぐもの

『スラムダンク』でお馴染みの漫画家、井上雄彦氏が日本の伝統行事である「遷宮」行事を通じて人々が体験した、先祖または神から受け継いできた歴史を、筆絵とエッセイで解き明かした一冊だ。 また本書には、神宮司庁の河合真如広報室長、出雲大社の千家和比古権宮司、式年遷宮で総棟梁を務めた宮間熊男棟梁、建築家の藤森照信教授との対談も収められている。 絵描き(職人)だからか、

『馬喰』 原発20キロ圏内の馬たちは今 書影

生物・自然 / 民俗・風俗

『馬喰』 原発20キロ圏内の馬たちは今

2011年3月11日、東日本大震災が東北地方を襲い、巨大な津波が沿岸に押し寄せた。ビルも電車も、家も車も、大人も子どもも、犬も猫も、逃げ遅れたものは津波に浚われた。飼育されていた牛も豚も、そして馬も流された。 本書はその流されながら生き残った馬を通して、ヒトとその土地に残る行事と、解決策が見えない原発問題を追ったドキュメンタリーである。 大震災から3週間たっ

つなげる、つながる京の小商い 『街を変える小さな店』 書影

社会 / 民俗・風俗

つなげる、つながる京の小商い 『街を変える小さな店』

ノンフィクションファンの人たちにとってHONZが恐ろしいのと同じ意味において、私は恵文社一乗寺店が怖い。 関西地区では、そのイメージキャラおねえさん『 おけいはん 』で知られる京阪電鉄。その終点の出町柳は、比叡山方面へ向かう叡山電鉄、いまだにICカードを導入していない奥ゆかしき小さな私鉄、の始発駅でもある。 ワンマン電車にとことこ揺られて三つ目の駅が一乗寺。

昭和のカツドウ屋 『東映京都撮影所血風録 あかんやつら』 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

昭和のカツドウ屋 『東映京都撮影所血風録 あかんやつら』

プロローグに出てくるのは小指のない老門番である。2009年秋まで、太秦の東映京都撮影所を訪ねると、正門脇のベンチには眼光鋭い老人がいた。名前は並河正夫という。1950年代の東映時代劇映画黄金期から現場の最前線で予算やスケジュール管理をする制作進行として活躍し、晩年も駐車場の配車係として撮影所に雇われていた。 小指がないだけではない。並河の身体には手首から足首

6次元に行きたい!『人が集まる「つなぎ場」の作り方』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

6次元に行きたい!『人が集まる「つなぎ場」の作り方』

「こんど6次元で(イベントを)やるんで、来てくださいよ。」というような感じで、ここ最近、なんだかやたらと6次元という言葉を耳にしている気がする。「6次元でやる」っていったいなんだ?と頭のなかは???でいっぱい。2次元は平面で、3次元は立体。4次元は時空を超えて、ドラえもん的なことだよね。5次元ってのはスピリチュアルの関係でよくみかけるけど、じゃあ6次元ってい

『歌舞伎は恋』山川静夫の芝居話 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

『歌舞伎は恋』山川静夫の芝居話

歌舞伎役者の坂東三津五郎さんの膵臓に腫瘍が見つかり、9月の歌舞伎公演を休演することになった。歌舞伎界は昨年12月に中村勘三郎、今年2月に市川團十郎という看板役者を失い、千辛万苦の時期だったから梨園とご贔屓筋の心労は計り知れない。 じつは歌舞伎界は2011年1月に中村富十郎、同年10月に中村芝翫、昨年2月に中村雀右衛門という3人の人間国宝も失っている。「新歌舞

『ヤノマミ』文庫版追記 by 国分拓 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『ヤノマミ』文庫版追記 by 国分拓

※2010年3月、単行本刊行時のあとがきは こちらから 。 同居が終わって4年が過ぎた夏のことだった。ニュースを眺めようと思ってパソコンを立ち上げた。調べたいことがあるわけでもなく、世界の動きが知りたかったわけでもない。ただの惰性からだった。 唐突に、「ヤノマミ」という文字が目に入った。液晶画面の中に『ヤノマミ族虐殺か』とあった。予期せぬ出来事だったから少し

『ヤノマミ』あとがき by 国分拓 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『ヤノマミ』あとがき by 国分拓

今でも目を閉じれば、あの暗闇を容易に思い出すことができる。アハフーという声もはっきりと覚えている。機会があれば、もう一度ワトリキを訪れ、あの闇に包まれたいなとも思う。その一方で、畏れもある。また何かが壊れてしまうのではないかという畏れがある。 おそらく、彼らを否定してしまえば何も起きなかったはずだ。彼らは違うのだ、僕たちとは違うのだ、と切り捨てていれば、心身

『包丁侍 舟木伝内 加賀百万石のお抱え料理人』  グルメな殿さま、満足す。 書影

民俗・風俗 / 日本史

『包丁侍 舟木伝内 加賀百万石のお抱え料理人』  グルメな殿さま、満足す。

石川県金沢市。ここは加賀百万石の御膝元で、代々前田家が藩主となり、江戸時代から文化的に栄えた町である。冬の風物詩、 フードピア金沢 は1985年から毎年2月に開催され、日本中から多くの観光客を集めている。2014年の情報はまだないが、きっと企画中だろう。 名前が示すように、このイベントは食を中心にしており、老舗料亭に各方面から著名人を呼び、伝統的な加賀料理を

『実録 ドイツで決闘した日本人』 - 高貴なる野蛮 書影

民俗・風俗 / 世界史

『実録 ドイツで決闘した日本人』 - 高貴なる野蛮

そんな書き出しで本書は始まるのだが、驚くのはこちらの方だ。隣のページに目を移すと、いきなり著者が身長2メートル近いドイツ人の大男と決闘しているシーンの記述に出くわす。それも著者が留学していた当時の話だから、わずか30年くらい前の出来事なのだ。 ドイツ語で「メンズーア」と呼ばれるこの「決闘」は、刃渡り88センチ、柄の部分が15センチもある鋭利な真剣を用いて、顔

『醤油と薔薇の日々』 by 出口 治明 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

『醤油と薔薇の日々』 by 出口 治明

タイトルに魅かれて読んでしまった。誰でも思うはずだ、「酒と薔薇の日々」に決まっているじゃないか、と。それを、よりによって「醤油」とは。 本書は、何気ない日常席活を綴った68本のエッセイをまとめたものである。初出は1993年とあるから、相当に古い。しかし、長谷川町子の「サザエさん」が永遠に新しいように、人間の本質は少しも変わっていないのだから、いいものはいいの

『流星ひとつ』 そして夢は夜ひらく…… 書影

人物 / 民俗・風俗

『流星ひとつ』 そして夢は夜ひらく……

沢木耕太郎31歳、藤圭子28歳。 男は新進気鋭のノンフィクションライター。女は昭和の歌姫と呼ばれながら引退を発表した演歌歌手。 1979年秋、東京紀尾井町のホテルニューオータニ40階にあるバー・バルゴーでふたりは語り始める。 「うん」 「何にします?」 「ウォッカ、あるかな?」 「それはあるんじゃないかな。とりあえず、ここはホテルのバーなんですから」 「それ

京都の対極?  『冷泉家八〇〇年の「守る力」』vs『人生、行きがかりじょう』 書影

教養・雑学 / 人物

京都の対極? 『冷泉家八〇〇年の「守る力」』vs『人生、行きがかりじょう』

面白いだろうと思って買った本が面白かったらうれしい。しかし、まぁ教養のために読んどこかぁ程度に思って買った本が面白かったら、もっとうれしい。すこし失礼かもしれないけれど、わたしにとって、『冷泉家八〇〇年の「守る力」』は、そんな本だった。 藤原定家の息子、初代の冷泉為家まで800年を遡ることができる、天皇家に仕えた和歌の家系。日本でも屈指の名家の話である。タイ

『緊縛の文化史』 - ニッポンのSM 書影

アート・スポーツ / 民俗・風俗

『緊縛の文化史』 - ニッポンのSM

趣味性が高く、マニアックな世界の話を外向けにコミュニケーションしているケースというのは、そうそうお目にかかれない。その手の会話の醍醐味はハイコンテキストなやりとりが交わされるという点にあり、前提となる知識が省かれることによって拍車もかかる。ましてや秘匿性の高い話題となれば、なおさらのことだ。しかし水面下では、地下水脈のように文化的な基盤が共有されており、その

『お洒落名人 ヘミングウェイの流儀』文庫あとがき by 今村楯夫 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『お洒落名人 ヘミングウェイの流儀』文庫あとがき by 今村楯夫

1921年、春まだ浅き3月中旬、ヘミングウェイはブルックス・ブラザーズで仕立てた真新しいスーツを着て、セントルイスにハドレー・リチャードソンを訪ねた。その6ヶ月後、ふたりは北ミシガンの片田舎のメソジスト教会で結婚式をあげた。 このたび新潮文庫に収められることとなった『ヘミングウェイの流儀』のカバー写真はヘミングウェイがハドレーを訪問したときに撮られた1枚であ

『特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸』by出口 治明 書影

社会 / 民俗・風俗

『特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸』by出口 治明

次はアフリカの時代が来る、と言われて、久しいものがある。マリでの騒乱や、それと関連したアルジェリアでの人質事件、エジプトの混迷ぶり等、アフリカから発信される情報は、このところ、後向きのものが多い。それに、アフリカは、何しろわが国から遠い。私たちは、この古くて新しい大陸について、一体、何を知っているというのだろう。 僕は人が学ぶ方法は、3つしかないと考えている

『チーズと文明』 by 出口 治明 書影

民俗・風俗 / 世界史

『チーズと文明』 by 出口 治明

偶に芳醇な赤ワインを飲み、フランス料理をいただくと、何故か、食後に無性にチーズが食べたくなるときがある。でも、これは何も人間に限った話ではない。9,000年前に、西アジアで生まれたチーズは、神々も大好きだったのだ。何しろ、シュメールの豊饒の女神イナンナは、チーズに魅かれて夫に羊飼いのドゥムジを選んだくらいなのだから。 本書は、人間の文明史と交差するチーズ9,

『まるごとインドな男と結婚したら』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『まるごとインドな男と結婚したら』

著者は御年70歳になる普通の独身女性である。居住地はバンガロール。数年前にこの安住の地を見つけ、美術大学に通い始めたのだが、それでは刺激がないと、本書を書き終えてから、また冒険の旅に出るようだ。彼女は人生の冒険者なのだ。 著者がインドの地を踏んだのは1970年代前半。まさにヒッピー世代のインド詣でだ。その旅の途中に英文学修士を持つインド人男性に出会い結婚した

『人魚たちのいた時代』消え去りし景色 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『人魚たちのいた時代』消え去りし景色

HONZの朝会で、本書を取り上げた。東えりかが、「 8月の今月読む本 」として記事にしたさい、この本に付けたコメントに「あまちゃんブーム」という言葉が書かれていた。実はそれがTVドラマのことだと知らなかった。かくのごとく、世情に疎い私が本書を手に取ったのは、無論ブームに乗ったからではない。そもそも、あまちゃんブームを知らなかったのだから乗りようがない。ではな

『潜入ルポ 中国の女』文庫解説 by 金 美齢 書影

民俗・風俗 / 「解説」から読む本

『潜入ルポ 中国の女』文庫解説 by 金 美齢

二〇一三年のゴールデンウィークの休み中、資料を整理していたら、古い新聞の切り抜きが出てきた。そのいくつかが福島香織さんの記事だった。北京駐在としては初めての日本人女性新聞記者ということで、彼女の記事はいつも注目していたのだ。 福島さんに初めて直接会ったのは、二〇〇一年十二月の台湾の立法院・地方首長選挙のときだったと思う。当時、産経新聞の台北支局長だった矢島誠