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社会

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995記事

『犯罪は予測できる』 防犯ブザーは役立たず 書影

社会 / 事件・事故

『犯罪は予測できる』 防犯ブザーは役立たず

書店でタイトルを眺めつつ、犯罪の予測といえば、フィリップ・K・ディックの「少数報告」だよな、などと思いながら手に取ると、まえがき1ページ目でそのことに触れており、一気に著者に対する親近感が増してそのまま購入してしまった。 もちろん、本書には予知能力者のプレコグたちを使った犯罪予知法が書かれているわけではない。著者は、日本人として初めて英ケンブリッジ大学で犯罪

『関東連合』、『鎮魂』 新刊超速レビュー 書影

社会 / 新刊超速レビュー

『関東連合』、『鎮魂』 新刊超速レビュー

昨年9月の六本木クラブ襲撃事件以降、新聞、雑誌をこの漢字四字はどれだけにぎわしただろうか。俗物の塊である私も雑誌を捲ったり、そういう筋を取材している知人に聞いたりもしたのだが、聞けば聞くほど、よくわからないのである。東京の夜の街を全て牛耳っているだの、山口組も戦闘力ではしのぐだの。メディアは実態が見えないからか、煽り続け、彼らの姿をひたすら肥大させた。こうし

『特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸』by出口 治明 書影

社会 / 民俗・風俗

『特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸』by出口 治明

次はアフリカの時代が来る、と言われて、久しいものがある。マリでの騒乱や、それと関連したアルジェリアでの人質事件、エジプトの混迷ぶり等、アフリカから発信される情報は、このところ、後向きのものが多い。それに、アフリカは、何しろわが国から遠い。私たちは、この古くて新しい大陸について、一体、何を知っているというのだろう。 僕は人が学ぶ方法は、3つしかないと考えている

『真珠の世界史』珠からみた世界 書影

社会 / 世界史

『真珠の世界史』珠からみた世界

私はダイヤモンドが好きだ。20代の頃はHIPHOP系の服を扱うショップの店員をしていたこともあり、指にはダイヤの指輪を常に複数はめていた。ダイヤの冷たい輝きは、私の自己顕示欲や虚栄心を満たしてくれる存在だった。ダイヤこそ宝石の王者だと思っていた。しかし、本書で古代から近年にいたるまで、最も高い評価をされていた宝石が真珠であるということを知った。養殖真珠が登場

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サイエンス / 社会

HONZ活動記-JAMSTEC見学訪問③

興奮と充実感に包まれたまま会議室に戻ると、次はなんと海洋工学センター観測技術担当役・土屋利雄さんが直々にJAMSTEC技術開発の歴史をお話しくださるという。なんなんだ!贅沢すぎるじゃないですか!土屋利雄さんは、主に水中音響工学を研究なさっていて、科学技術長官賞にも輝いた実績を持つ海洋工学のエキスパートだ。JAMSTECでは探査技術開発に広く深く長く関わってこ

『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』奇跡の教育モデル 書影

アート・スポーツ / 人物

『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』奇跡の教育モデル

南米ベネズエラといえば、反米主義のウゴ・チャベス元大統領、石油、野球などが思いつく程度で、あまり日本人には馴染みのない国だろう。もしかするとミスユニバースを何人も輩出する美女大国として知っている人の方が多いかもしれない。 そんなベネズエラでは、ここ数年『エル・システマ』という音楽育成プログラム発祥地として世界中の注目を浴びている。注目を浴びるきっかけとなった

「地球は青かった」などとは言わず 『ガガーリン』 書影

教養・雑学 / 人物

「地球は青かった」などとは言わず 『ガガーリン』

偉人伝にも、はやりすたりがある。野口英世やシュバイツアーの凋落は著しい。ユーリ・ガガーリンも、世代によってずいぶんと知名度が違う偉人のひとりだろう。知っている人にはいうまでもないが、『地球は青かった』という名言とともに記憶されている世界最初の宇宙飛行士だ。 ソビエト社会主義共和国連邦の秘密主義というのはここまですごかったのかということがよくわかる本でもある。

コンセプトは”エロうま” - 『キレイゴトぬきの農業論』 書影

生物・自然 / 社会

コンセプトは”エロうま” - 『キレイゴトぬきの農業論』

農家が農業の話をしているだけなのに、まるでスタートアップ系企業のプレゼンテーションでも聞いているかのよう。本書の読書体験を一言で表すと、そんな風になる。 そこにはステレオタイプな農家像に見られるような、寡黙さも清貧なイメージもない。「日本一話のうまい農家」を自負する著者が作り出しているのは「安全」なだけの無農薬野菜でも、「環境にやさしい」だけの有機野菜でもな

『ウェブ社会のゆくえ』 地元とジモトと私とワタシ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ウェブ社会のゆくえ』 地元とジモトと私とワタシ

本書において、著者は、日常生活の様々な場面においてウェブへのアクセスが発生する現在の状況を「現実空間の多孔化」と呼び、そのような状況が、社会にどのような影響を及ぼしているかを考察する。 本書は、当初は AR(Augumented Reality) 等の「現実世界とネットの情報を紐づける技術」について社会学的に考察することを想定していた。しかし、その後、東日本

そうだったのか 『生理用品の社会史 : タブーから一大ビジネスへ』 書影

教養・雑学 / 社会

そうだったのか 『生理用品の社会史 : タブーから一大ビジネスへ』

読んでよかった、という本がある。いろいろな場合があるけれど、そのうちのひとつは、その一冊を読んだら、この分野では、もう本を読む必要がないだろう、と思わせてくれる本である。『暗号本』はたいがい好きであったけれど、サイモン・シンの『 暗号解読 』を読んで、もうそれ以上は読む必要がなくなった。『野口英世本』は何冊読んだかわからないが、イザベル・プレセットによる『

『名誉の殺人 母、姉妹、娘を手にかけた男たち』 書影

社会 / 事件・事故

『名誉の殺人 母、姉妹、娘を手にかけた男たち』

「名誉の殺人」とは、結婚前に肉体関係を持った女性などをその家族が殺し、一族の「名誉を回復する」こと。中東や南アジアなどで行われている。 こう書けば、 『生きながら火に焼かれて』 という本を思い出すHONZ読者も多いかもしれない。ヨルダン川西岸地区の若い女性が恋人と肉体関係を持ったため、義兄が彼女にガソリンをかけ、火をつけて殺そうとするが、なんとか助けだされた

『生き心地の良い町』この自殺率の低さには理由がある 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『生き心地の良い町』この自殺率の低さには理由がある

2万7858人。 2012年の日本の自殺者数だ。15年ぶりに3万人を割り込んだが、依然高水準にとどまっている。自殺者数が発表されるたびに、自殺の原因や対策を巡る議論があちこちで起きるが、自殺が起きない要素は議論されない。起きてない事象について「なぜ起きないか」を探るのは素人ながら難しいと思ってしまうのだが、果敢に挑んだのが本書だ。 太平洋に面する総面積27

『宰相のインテリジェンス 9.11から3.11へ』 著者ノート by 手嶋 龍一 書影

社会 / 「解説」から読む本

『宰相のインテリジェンス 9.11から3.11へ』 著者ノート by 手嶋 龍一

アメリカ大統領は決まって毎朝8時半からインテリジェンス・ブリーフィングを受ける。政府部内の17を数える情報機関から選り抜かれてくる特上のインテリジェンスが国家情報長官を通じて報告される。PDBと略称される大統領への諜報報告は、戦争のさなかも、外遊先でも、休暇中でも、一日も欠かさず行われる。外交・安全保障上の最高機密が明かされるこの場に日本の総理として初めて同

『プア充』新刊超速レビュー 書影

社会 / 新刊超速レビュー

『プア充』新刊超速レビュー

「プア充」ってなに?とタイトルに惹かれて衝動買いして読んだ本が面白かったので紹介したい。プア充っていうのはプアなリア充(プアだけどリアルが充実している人)ってこと?と思ったら当たらずといえども遠からずという感じだった。本からプア充の定義を引用しよう。 ※ 少欲知足=世間の中で出世してお金を儲けるのではなく、欲望を抱かず満足して生きていくという考え方 そんなの

『国家はなぜ衰退するのか(上、下)』その僅かな差が何を変えたのか!? 書影

社会 / 世界史

『国家はなぜ衰退するのか(上、下)』その僅かな差が何を変えたのか!?

かつて梅棹忠夫は『文明の生態史観』の中で、世界を第一地域と第二地域に大別した。ユーラシアの中央部を占める専制的権力の発達した帝国が乱立した地域を第二地域、封建制を主体とした西ヨーロッパと日本を第一地域とし、その制度と文化の違いが近代の形成に大きな影響を与えたとする。繁栄と衰退とを巡る問題は梅棹忠夫に限らず多くの人々が答えを得ようと議論を重ねてきた。 貧富の格

『ほとんど人力』  - 達人 菅原文太 書影

人物 / 社会

『ほとんど人力』 - 達人 菅原文太

本書は、2010年から2013年にかけて、小学館『本の窓』に連載された17回の対談をまとめたものである。大きく5つの章に分類されており、それぞれ、「「のど元過ぎれば…」で、また戦争するのか?」、「「知らぬが仏」では、すまされない」、「アメリカよりアジアを向いた脱官僚の国へ」、「人間力をとりもどすために」、「人は「資源」ではない。型破りのススメ」と題されている

『こんな夜更けにバナナかよ』文庫解説 by 山田 太一 書影

社会 / 「解説」から読む本

『こんな夜更けにバナナかよ』文庫解説 by 山田 太一

ひとりの進行性重度身体障害の男がいた。 渡辺一史さんがこの本を書いている大半の日々では、まだいきいきと生きていた人だった。 その鹿野靖明さんと、亡くなるまでに関わった多くのボランティアの人たちとの物語である。 と書くと、ああよくあるやつね、と内容の見当がついてしまうような気がする人もいるかもしれない。それは間違いです。これはまったく、よくある本ではない。凄い

『日本と出会った難民たち――生き抜くチカラ、支えるチカラ』by 出口 治明 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『日本と出会った難民たち――生き抜くチカラ、支えるチカラ』by 出口 治明

楽しくて、ワクワクするような本ではない。おもしろくて、ページをめくるのがもどかしくなるような本でもない。それでも、なお、この本は、出来るだけ多くの市民に読んでほしいと思わずにはいられないのだ。 はじめに、次のグラフを見てほしい。 一般に、先進国とみなされているG7の中で、日本の次に難民の受け入れが少ないイタリアが1,803人(G7全体の3%)、これに対して日

『エイズの起源』 注射・売春・ハイチ 書影

医学・心理学 / 生物・自然

『エイズの起源』 注射・売春・ハイチ

「この程度の傷、たいしたことではない。」 男は、心の中でつぶやいた。チンパンジー狩りには困難がつきものだ。引っ掻かれ、噛みつかれるのには慣れている。今回の狩りがこれまでと違っていたのは、狩りの最中に負った傷にチンパンジーの返り血を浴びたことくらい。 「いつものことだ。」 男は再びつぶやき、いつものように家路を急いだ。 男の思いもよらないところで、この狩りは、

『世界が認めたニッポンの居眠り』 ギンギン!って言われたい。 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『世界が認めたニッポンの居眠り』 ギンギン!って言われたい。

この本を読み始めた日は、朝早く出社する日だった。日頃と違って、すいている車両。ちょうど1つ空いていた席に座り、本を開いた。今日はラッキーだ。著者は、ウィーン大学の日本学研究所で睡眠の研究をした後、ケンブリッジ大学東アジア研究所の先生になった人だ。居眠りは、日本特有のものだという。 ふと見ると、対面の席に座っている7人のうち5人が寝ている。朝早いこともあるが、

『連続講義・デフレと経済政策』by 出口 治明 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『連続講義・デフレと経済政策』by 出口 治明

久しぶりに、寝食を忘れて、一晩で読んでしまった。今、まさに知りたかったことに、真正面から答えてくれる本に出会ったからである。 巻頭に福沢諭吉の言葉が引かれている。 著者の問題意識が、この一文に見事に凝縮されている。そう、本書は一世を風靡しているかに見えるアベノミクスの上質で真っ当な経済分析なのだ。 本書は一問一答の形式で書かれており、文章も平易で論理的である

女性向けに書かれた本だけど、男性にこそ読んでほしい『リーン・イン』 書影

社会 / ビジネス

女性向けに書かれた本だけど、男性にこそ読んでほしい『リーン・イン』

一昨日、開催された『 グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミット 』に参加するため、シェリル・サンドバーグが来日していたようだ。グローバル・ウーマン・リーダーズ・サミットとは、女性がいきいきと働くことで社会を活性化し、経済成長につなげるために、グループが総力を挙げてさまざまな活動を展開するプロジェクトだという。 まさに『 LEAN IN(リーン・イン) 』に

『ザ・ナイン アメリカ連邦最高裁の素顔』 アメリカの正義を決める9人 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『ザ・ナイン アメリカ連邦最高裁の素顔』 アメリカの正義を決める9人

2013年6月26日、アメリカ連邦最高裁判所は2つの大きな決断を下した。1つは、「男女間の結婚に与えられる税制優遇などの権利を同性婚のカップルには与えない」とする連邦法( DOMA )は違憲であるとするもの。もう1つは、「同性婚を禁止する カリフォルニア州法 は違憲である」という地裁の意見を維持するとしたものである。 このニュースは全米で歓喜の声をもたらし、

『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』by 出口治明 書影

社会 / HONZ客員レビュー

『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』by 出口治明

主要欧米先進諸国を「アングロサクソン型」「欧州大陸型(ドイツ、フランス、ベネルクス等)」「南欧型」「北欧型」の4つに分類して、2010年~12年の3年何の平均実質成長率を算定すると、北欧型が唯一2%を超え、最も高くなっている。加えて、財政も健全であり、かつ、出生率も高い。本書は、気鋭の4人の研究者が、その北欧モデルの「秘密」に迫った労作である。 一般に北欧と

『フェイスブック 子供じみた王国』王は来りて笛を吹く 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『フェイスブック 子供じみた王国』王は来りて笛を吹く

本書はいわゆる暴露本として世間に認知されているようだ。フェイスブックの51番目の社員、キャサリン・ロッシが社内での出来事を赤裸々に綴った内容は、確かに驚くような話が含まれている。女性社員全員に3Pを誘うメールを送りつける男性社員や著者に向かい「君はホットだね」と語りかける営業部の男性など、セクハラまがいのものから、人種的なヒエラルキーの存在があったことを臭わ

へんにまじめな『変な協会』たち 書影

社会 / おすすめ本レビュー

へんにまじめな『変な協会』たち

『私をメンバーにするようなクラブには入りたくない』と言ったのは、 グルーチョ・マルクス だ。しかし、そんなへそまがりは多くないだろう。とかく人は群れたがる。どんな会にも一切関係していない人というのはいないのではないだろうか。 いや、私はどんな協会にも関与していないという人もいるかもしれない。しかし、協会は世の中にはびこりまくっている。日本放送協会(NHK)

『死刑でいいです』モンスターと呼ばれて 書影

人物 / 社会

『死刑でいいです』モンスターと呼ばれて

エロとグロのレビュー担当者を自認しているとはいえ、朝から気味の悪い言葉を記してしまった。山地悠紀夫の言葉である。 2000年、16歳で実の母親を撲殺。少年院を出所後の05年に面識のない姉妹を刺殺。反省を一切見せずに死刑を自ら望み、09年7月28日に25歳で死刑に処せられた山地悠紀夫。本書は彼の人生に迫った一冊である。 親族、医師、同級生、担任教師、少年院仲間

『世界はひとつの教室』技術、教育、そして世界は動く 書影

人物 / 社会

『世界はひとつの教室』技術、教育、そして世界は動く

世界中の人々に無料で質の高い教育を。そんな理想を掲げたNPOが存在する。その名は カーンアカデミー 。グーグルやビル・ゲイツなどから支援を受け、2012年時点で利用者数は月間6000万人にも達している。You Tubeで一コマ10分ほどの講義を公開し、無料で行える練習問題、学校の先生などが生徒の進捗具合を確認できるフィードバックソフトなど様々な機能がすべて無

『レイヤー化する世界』 - 光の帯になっていく個人 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『レイヤー化する世界』 - 光の帯になっていく個人

佐々木俊尚さんの著書には、いつも打ち出されるキーワードに注目している。漠然と無意識に感じていたような空気感が上手く言語化されており、僕にとっては自分と時代との距離を測るモノサシのような存在だ。 ノマド、キューレション、当事者。そして今回はレイヤー。ノマドの時には、そのキーワードをずいぶん遠い世界のことのように受け取っていたのだが、キュレーションの時には「きっ

『身の下相談にお答えします』 知らないことは熟女に頼め! 書影

教養・雑学 / 社会

『身の下相談にお答えします』 知らないことは熟女に頼め!

朝日新聞の土曜別刷り版「be」の人気連載である人生相談「悩みのるつぼ」。相談内容も幅広く、週替わりの回答者も多彩だが、その中で、なぜか下ネタ系の質問に重点的に答えてくれるのが社会学者で東大名誉教授の上野千鶴子先生だ。 「なぜか」と書いたが、ある意味必然かもしれない。最近は『おひとりさまの老後』でヒットを飛ばしたが、出世作は四半世紀前の著書『スカートの下の劇場

もの悲しい人間の虚飾『プライドの社会学』 書影

医学・心理学 / 社会

もの悲しい人間の虚飾『プライドの社会学』

プライドが邪魔をすることもあれば、プライドがなくて動き出せないこともある。 プライドが逆境を支えるときもあれば、人を狂わせることもある。 自分がつくったプライドの檻の中から、いつの間にか抜け出せなくなることもある。 それでも、人間はプライドを持たざるを得ない存在である。 それが本書の出発点である。 人間は理想の自分を思い描く。それと同時に、理想の自己で現実の

『輸血医ドニの人体実験』 - サイエンスをめぐるサスペンス 書影

サイエンス / 社会

『輸血医ドニの人体実験』 - サイエンスをめぐるサスペンス

今となっては笑い話のようにも聞こえるが、太古から現代まで、数多くの迷信が科学的知識として信じられてきた。何でも金に変えられるという賢者の石を探し求めた錬金術師たち、不老不死を願って水銀を飲み続けた人たち、地球平面説や地球空洞説を信じていた人たち。 古代ギリシア時代から19世紀半ばまで信じられていた「四体液説」も、その一つと言えるだろう。これは人体が血液、粘液

『ランドセル俳人の五・七・五』いじめと才能 書影

人物 / 社会

『ランドセル俳人の五・七・五』いじめと才能

この本は俳句集であり、いじめを受けている子どもを持つ家族の手記である。まさしく文芸書だ。HONZが得意とするノンフィクションではない。しかし、この本がより多くの人に読まれるよう、僅かばかりでも役に立たなければ、書評を書くものとしての矜持が保てないのだ。すこしだけお付き合い願いたい。いや、無理やりにでももう少しだけ読んでもらいたいのだ。 著者の凛くんはこの6月

未来を切り拓こうとするすべての人に。『ロジカルな田んぼ』 書影

生物・自然 / 社会

未来を切り拓こうとするすべての人に。『ロジカルな田んぼ』

またしても、素晴らしい本に出会ってしまった。このコメ作りをめぐるささやかな一冊が、まさかこんなにも生きるヒントに満ちているとは、ぼく自身、思いもしなかった。もし今、自己啓発書やスキルアップ系ビジネス書を読んでいる方がいたら、今すぐそれを閉じ、何よりまず、この本を読むべきである。 まず読者にお願いしたいのは、「なんだ農業の本か」、とこのレビューを読むのを止めな

『アマン伝説』 アジアンリゾートの風景 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『アマン伝説』 アジアンリゾートの風景

アマンリゾートに行ったことがある人も、きっと多いのではないか。私にとっては、いつか訪れてみたい場所の一つだ。1988年にタイのプーケット島にオープンした「アマンプリ」に始まり、インドネシアのバリ、スリランカ、フィリピン、ブータン等に展開されているラグジュアリーリゾートホテルは、今や押しも押されぬブランドとなった。本書は、そんなアマンリゾートと創業者のエイドリ

泥棒稼業も楽じゃない『空き巣なう』 書影

社会 / 事件・事故

泥棒稼業も楽じゃない『空き巣なう』

闇夜を駆け、密かに忍び、大金をせしめて逃げる。 普段、私達は空き巣の稼業など想像もしないだろう。タイトルがあまにりにポップなので侮っていたが、事実は小説よりも奇なり。本書は空き巣家業50年余の著者による体験録である。 著者が犯行におよんだ場所は、滋賀、奈良、三重など実際の現場が登場している。パトカーから逃走した国道42号線、ナンバーを控えられた津市など具体的

『インターネットを探して』現代社会最重要インフラを巡る旅 書影

教養・雑学 / 社会

『インターネットを探して』現代社会最重要インフラを巡る旅

インターネット。とても身近な単語だが漠然としており、具体的に何を指しているのかはよく分からない。テクノロジー雑誌『Wired』の記者である著者でさえも、とある事件が起こる前まではその単語が何を差すのかを正確に把握できていなかったほどである。 「お宅のインターネットが接続できなくなったのは、リスが裏庭にあるケーブルをかじってしまったからです」、修理員にそう告げ

『中国絶望工場の若者たち』 希望という病気にすら罹れない人びと 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『中国絶望工場の若者たち』 希望という病気にすら罹れない人びと

「絶望工場」と聞き、多くの人が思い浮かべるのは鎌田慧氏の『自動車絶望工場』だろう。愛知県のトヨタ自動車の工場に期間工として半年間潜入し、書かれたルポである。1973年の作品だ。当時、鎌田氏が描いたのは、工場内の自動化や合理化を進める企業とそこで疎外される労働者の姿だった。それから40年。今や世界の工場となった中国でも日本とは異なる形で「絶望」が生まれている。

いちおう公務員です、よろしくま!『くまモンの秘密』 書影

社会 / 民俗・風俗

いちおう公務員です、よろしくま!『くまモンの秘密』

熊本といえば、阿蘇山であり、熊本城であり、北里柴三郎であり、川上哲治であり、水前寺清子であり、辛子蓮根であり、馬刺だったはずである。しかし、今は違う。熊本といえば、ゆるキャラ界の人気を ひこにゃん と二分する くまモン なのである。『ゆるキャラ格』としては、ひこにゃんに一歩ゆずるような気はするが、関連商品売り上げはすでにひこにゃんを超えている。 ご存知くまモ

『歴史を変えた外交交渉』と『戦争学原論』 争わないための知恵 書影

社会 / 世界史

『歴史を変えた外交交渉』と『戦争学原論』 争わないための知恵

1904年2月8日、旅順港外での日本海軍によるロシア艦隊への奇襲攻撃によって、日露戦争が開戦した。多くの犠牲者を出しながらも終わる気配を見せない戦闘は、次第に激しさを増していく。ロシア相手に勝利を続ける日本であったが、大国相手に長期戦を戦い抜くほどの力は備わっていなかった。また、国力で優りながらも連敗を続けるロシアも、戦闘が長引けば、既に失ってしまった面目以