
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』 認知・農業・科学
わたしたちは孤独だ。人口が70億を超え、世界中に生息域を広げたとしても、現在の地球上にはホモ属に分類される種はサピエンス、つまり現生人類であるわたしたちだけ。ライオンにはジャガーやトラのように同じヒョウ属に分類される仲間がいるのに、サピエンスは系統樹上で一人ぼっちなのだ。 かつて、人類は孤独ではなかった。そもそも「人類」とはホモ属に分類されるすべての動物を指
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わたしたちは孤独だ。人口が70億を超え、世界中に生息域を広げたとしても、現在の地球上にはホモ属に分類される種はサピエンス、つまり現生人類であるわたしたちだけ。ライオンにはジャガーやトラのように同じヒョウ属に分類される仲間がいるのに、サピエンスは系統樹上で一人ぼっちなのだ。 かつて、人類は孤独ではなかった。そもそも「人類」とはホモ属に分類されるすべての動物を指

あなたは読書会に参加したことがあるだろうか? 読書会とは言ってみれば、本を読んで、集まって、語り合うというただそれだけの会のことだが、これがなかなか奥が深い。本はどうしたって読むのはひとりだが、3人いれば3通りの読み方があり、たとえ「この作品がおもしろい/つまらないのはなぜなのか?」ということであっても突き詰めて話し合うことで読みの違いが明確になる。友人同士

この時期脂の乗ったさんまは絶品ですね。目黒のさんま祭りが有名ですが、海に面していない目黒でどうしてさんまなのでしょうか。 実は落語に由来しています。 ある日、殿様が鷹狩りに出掛けた際お腹を空かせて道中で焼いたさんまを食します。当時さんまは庶民の卑しい食べものでしたが、食べてみるとこれは美味しい。お城に帰ってからもさんまを食べたいという殿様ですが、家来は焼いた

「三人寄れば文殊の知恵」という。たしかに多くの場合、何人かでアイデアを出しあえば、ひとりで考えるよりいい決断に至ることができる。しかしその一方で、いつもそうとはかぎらないこともわたしたちはよく知っている。みんなで考えたのに愚かな結論に至ってしまった、いやむしろ、みんなで考えたからこそ愚かな結論に至ってしまった――そんなケースに誰もが思い当たるふしがあるのでは

世の中には「知っておくべきだが、知らされていない事実」がたくさんある。本書が伝えるのは、日本で過酷な労働を強いられている「留学生」や「実習生」の実態である。出稼ぎベトナム人と、彼らを食い物にする日本語学校、低コストで彼らを雇う企業という三すくみの構図がメインだ。また、中国人や日系ブラジル人減少している理由や、外国人介護士が定着しない理由についても書かれている

私たちは自らをホモ・サピエンスと名づけた。自分達を「賢い人」と呼ぶ私たちは、アフリカ大陸で捕食者に怯える、取るに足りない動物であった。なぜ、その取るに足りない動物である「サピエンス」が現在のような食物連鎖の頂点に立ち、地球を支配するような存在になったのどろうか。 15万年ほど前に東アフリカで細々と暮らしていたサピエンスは7万年ほど前になると突如、地球上のあら

住居の間取図を見て楽しめる人がいるように、地図を見てその先の光景に思いを巡らせ楽しめる人もいる。地図上から読み取れる地形や街、河川の形状などから、その場所や住む人間達を想像し、あたかも自分もそこにいるような思いを馳せれる心地よさがあるからだ。 本書はナショナルジオグラフィックから出版された地図を纏めた一冊である。太古の地図から、空想世界の地図、大遠征や探検の

私は堤清二が作り上げたセゾン文化の恩恵にあずかった世代だ。音楽、ファッション、美術と、清二のおかげで知ったことは数知れない。だが同時にビジネス上での異母弟、義明との相克も報道で知ってはいた。 著者の児玉博は2000年の“セゾングル―プ”解体の折の記者会見で、淡々と答える清二に対峙していた。財界を退いて9年、清二は小説家、辻井喬として生きてきた。だがその5年後

人工知能のめざましい進展は、人間の能力に迫り、さらに超えつつあるようにさえ見える。やがて、心や意識をもったAIも生まれると予測する研究者も少なくない。私たち人間と区別のつかないようなアンドロイドが、未来に登場するのだろうか? だが、想像の翼を広げる前に、あたりを見回してほしい。いまあなたの周りにいるひとたち、そしてあなた自身ですら実はアンドロイドだったとした

9月に入り少しずつ過ごしやすい気候になってきました。食欲の秋のせいなのかついつい甘いものに手がのびてしまいます。 お菓子やスイーツと聞くとケーキやエクレアなどのフランス菓子を思い浮かべることが多いのではないでしょうか。 日本人パティシエが留学に行くのもフランスだし、デザートといえばフランスが一番。しかしフランス菓子のイメージが強いチョコレートやマカロンはそれ

この原稿は本来は2016年8月30日の午前7時までに公開しなければならなかったのだが、現在、9月1日の午前9時をまわろうとしている。このまま沈黙を守るわけにもいかず、無理矢理書き出したのだが、原稿用紙5枚程度の分量に過ぎなくても、すんなり書き終える自信がない。いや、延べ90人の作家の〆切に関する文章を集めた本書を読むと、そんなにすらすらと書いたらいけない気す

読書の醍醐味の一つは、自分の先入観や固定観念、常識を覆され、視野が拡がり、新しい目で物事を眺められるようになること、いわゆる「目から鱗が落ちる」体験をすることだろう。読んでいる本が、難しい言葉で書かれた抽象論だらけではなく、一般人でも隔たりを感じずに、すっと入っていける内容がわかりやすい言葉で綴られているものだと、なおありがたい。まさにそのような醍醐味を満喫

稀代の書き手であったオリバー・サックスが亡くなって1年(8月30日が命日)。『タングステンおじさん』は、2001年に単行本として刊行され、このたび文庫化された作品ですが、私は単行本を読んでいなかったので、この文庫版を手に取りました。だって、なんて魅力的なタイトルなのでしょう!(うかつにも読んでなかったわたし...) すこし回想めきますが、私がオリバー・サック

私は、大塚ひかりさんには恩を受けている。大塚さんの仕事の中に、ひとりで全訳をした『源氏物語』(ちくま文庫)があるのだが、その本のおかげで私は初めて『源氏物語』の全巻を読み通すことができたのだ。 それより前には、いろんな作家の現代語訳で挑戦したのに、ついにすべてを読み通すことができなかった。谷崎潤一郎訳では、全10巻のうち第1巻(「若紫」まで)しか読めなかった

HONZが送り出す、期待の新メンバー登場! 堀内 勉は外資系証券を経て大手不動産会社でCFOも務めた人物。自ら資本主義の教養学公開講座を主催するほど経済・ファイナンス分野に明るい一方で、科学や芸術分野にも精通し、読書のストライクゾーンは幅広い。今後の彼の活躍にどうぞご期待ください!(HONZ編集部) 去る7月21日、来日したトーマス・カスリス教授の東大駒場キ

ベッキーや舛添要一前東京都知事をはじめ、謝罪のやり方を誤ったことで、奈落の底に追い込まれる例が後を絶たない。現代では謝罪の必要がないのに、第三者が謝罪を求め、そしてその人たちに向けて謝罪会見を開くというようなことが多くなっている。「世間をお騒がせして申し訳ございません」というのがその時に使われる常とう句であるが、世間は勝手に騒いでいるだけなのだから、それに対

本書は、平成に起きたある漂流事件の詳細をつづったノンフィクションである。また、未解決行方不明事件を追うルポルタージュであり、沖縄における海洋民の成立と広がりを歴史的に考察する一書でもある。 1994年2月、一隻の漁船が連絡を絶った。沖縄のマグロ延縄船、第一保栄丸は、同年1月にグアムを出港、2月2日の無線を最後に連絡が途絶え、その後3月17日フィリピン沖、救命

ベトナムのホイアンに行ってきました。中部の都市ダナンより車で30分ほどにある古い港町です。中国人街を中心に歴史ある建築が残り、「ホイアンの古い街並み」として世界遺産にも登録されています。 あまり聞き慣れない街かもしれませんが、江戸時代には朱印船貿易が行われ、日本人街が形成されました。貿易の廃止とその後の大火により現在の街並みは19世紀以降につくられ、日本人街

正倉院はシルクロードの終着点であると教わった記憶がある。「月の沙漠」の歌ではないが、シルクロードという言葉には、ラクダの隊商が列をなしてローマやペルシャから遥々と中国まで(さらには奈良の都まで)宝物を運んできたロマンチックなイメージがある。著者は、シルクロードの重要な中継地であったクロライナ王国のニチャと楼蘭、鳩摩羅什(有名な仏教の訳経者)の故郷クチャとキジ

よい仕事とは何か、長らく考えられてきた問いである。本書ではクラフツマンとその精神性の歴史的背景を理解し、今の時代と文脈でどう再解釈できるかの議論を通じて、問いと対峙していく。シンプルな問いほど答えを出すのは難しい。本書も答えよりも、問いのまわりをクラフツマンの仕事と共に逡巡し続け、新たな問いを読者に投げかける。 近代の仕事は『絶望的に真面目』なのである。それ

この数年、怒涛のように人工知能関連本が刊行されたこともあって、今となっては「人工知能によって雇用は失われます!」と危険性を指摘するだけの本は真新しくもおもしろくもない。本書もその類の本なのかと思っていたが、議論は既存の同ジャンルノンフィクションに比べても一歩先に進んでおり、未来予測も頷くところ多しで予想を裏切って大変楽しく読ませてもらった。 最初に本書の内容

内澤旬子さんが乳癌の体験の経緯を書いた『身体のいいなり』を読んだのは、私がたまたま軽度の脳梗塞を発症したときだった。独立した存在だと思っていた精神も、所詮、脳という機能の一部であって、身体の物理的な影響を逃れることはできない。まさに身体のいいなりになることこそ肝要。そう淡々と、しなやかに綴られたエッセイだった。 検査検査で病院通いの日々の中にあって、「素直に

タイトルだけを見れば、自分には理解できない種類の人たちが、目を覆いたくなるような行為ばかり繰り広げる内容と思われるかもしれない。だがその予想は、大きく裏切られることになるだろう。最初はよくある感情の行き違い程度なのだが、それが引き寄せられるようにいくつも重なり合い、気付けば取り返しのつかないことになっているーーそんな印象だ。 本書『「鬼畜」の家 わが子を殺す

体重わずか数グラムのハチドリは、ほとんどの鳥が真似することも困難なホバリングをすることができる。空中の定位置に留まるためには、羽を打ち上げるときも打ち下げるときも揚力を発生さるような、回転可能な羽を進化させる必要がある。ハチドリがこの独特なデザインの羽を持つようになったのは、花蜜を吸うためであると考えられる。ホバリングは、花蜜を取り出すために威力を発揮し、ハ

リオ五輪ももうすぐ閉幕ですね。ブラジルというとリオデジャネイロが有名ですが、 首都はブラジリア。かつての首都リオはポルトガル植民地時代からの歴史があり、 新たな首都をということで1960年にブラジリアへと遷都しました。 ブラジリアは1987年に歴史遺産を持たない、造られて40年未満の都市としては異例の世界遺産に登録されました。主要建築物の設計はニューヨークの

自民党が大敗して政権を失った2009年夏の総選挙。その直後から2013年夏の参議院選挙で政権を完全に奪還するまで、自民党の情報戦略の「参謀役」を務めた人物が1461日間にわたる活動を振り返った1冊である。 本書に書かれている野党時代の自民党の情報分析活動の内実は「一度として明らかになったことはない」という。「カネ」や「情実」といったイメージがつきまとう政治の

2001年に海上自衛隊に 特別警備隊 という部隊が創設されるまで、自衛隊に特殊部隊は存在しなかった。特別警備隊はある事件を端緒にして誕生することになる。その事件とは1999年に起きた、 能登半島沖不審船事件 である。 この事件は覚えている人も多いだろう。イージス艦「 みょうこう 」が北朝鮮のものと思われる工作船を追跡し自衛隊史上初の 海上警備行動 が発令され

「今、もっともエキサイティングなバイオテクノロジーは何か」。この質問に対し、多くの生命科学者は次のように答えるだろう。「それはゲノム編集だ」、と。本書は、ゲノム編集がどのような技術で、この技術がいかに未来を変えうるかについて解説した良書である。 ゲノム編集とは、遺伝子の本体であるDNAの狙った位置を切り貼りするなどして「編集」し、その生物のすべての遺伝情報、

本書は、ノーベル賞受賞講演「自然が答えを持っている」を含めた、大村智先生のエッセイ集である。研究以外のいろんな側面、例えば絵画との出会いや、ふるさとへの想い、夢を追いかけることなどがメインとなっていて、大村先生を多方面から知ることが出来る魅力的な一冊だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞した先生は信じられないほどたくさんのことをやってのけている。 まず、大村先生の

ここ数十年で劇的に増加している慢性的な疾患(あるいは不健康な状態)が存在する。たとえば肥満。アメリカでは1950年代から体重の増加が顕著となり、1960年代の初めての全国調査では、成人の13%が肥満(BMI値が30以上)、30%が過体重(BMI値が25~30)とされた。そして1999年の調査では、その傾向に拍車がかかり、肥満率は倍増の30%、過体重の人も34

伊藤祐靖。1964年生まれ。日本体育大学を特待生で入学。体育教師への道を断ち、海上自衛隊に最下級兵士として入隊。幹部候補生学校に合格し20年間勤務する。前半10年は、防衛大学校指導教官としての2年を除けば戦闘艦艇、いわゆる“いくさぶね”に乗船。後半は特別警備隊の創隊と、この隊の先任隊長となって鍛え上げる。42歳で自衛隊を退職。その後、ミンダナオ島に拠点を移し

毎朝ご覧の方も多い、NHK朝の連続ドラマ小説『とと姉ちゃん』。そのヒロイン、小橋常子のモチーフになったのが、戦後の暮らしを明るくし、70年代には100万部を超え国民的雑誌となる『暮しの手帖』を創刊した大橋鎭子(しずこ)さんという女性だ。この「しずこさん」の唯一の自伝がとっても面白いので、ご紹介しておきたい。 この「しずこさん」。 本にあるプロフィールはこんな

生物多様性の喪失と聞けば、熱帯雨林やサンゴ礁が目に浮かぶ。絶滅危惧種と聞けば、中国奥地のジャイアントパンダやガラパゴス島のゾウガメを思いつく。しかし、そうした危機的な状況は遠い異国の話とはかぎらず、もっとずっと身近なところで起こっている。私たちの体は無数の微生物からなる「生態系」であり、そこでも種の絶滅は静かに進行している。 2003年にヒトゲノム・プロジェ

人間にとってただ一つ確実なことは、いずれ死ぬということだけだ。しかし、いつ死ぬのか、どのように死ぬのかはわからない。年老いて不自由になった時、不治の病にかかった時、あなたはどのような人生を望むつもりだろう。医学が発達しているからなんとかしてもらえると思っている人がほとんどではないか。しかし、その考えは、この本の冒頭にある文章を読んだだけで打ち砕かれる。 わず

戦後、上野に葵部落と呼ばれる最貧スラム街があった。世帯数は143。住民数は750人。住民の4割が路上やゴミ箱に捨てられている廃棄物を集める「バタヤ」と呼ばれる職業に従事していた。現在、その地は我々にとって非常に身近な存在だ。7月に世界文化遺産登録が決まった国立西洋美術館本館が建っている。 タイトルから想起されるように歴史を辿りながら、上野の表と裏を描いた一冊

先日、敦賀へ釣りに行きました。60センチ越えのサワラやスーパーだと一杯800円するようなアオリイカ、スルメイカなどが釣れます。イカといえば漢字で「烏賊」と書く理由をご存知ですか? カラスと賊なんて白く美味しいイカからは連想できないですが、海に浮くイカをカラスが啄ばもうとしたところ、逆にイカが腕を伸ばして巻き付き、カラスを捕らえたという中国の故事に由来するそう

科学の進歩は、地球に生命が誕生して以来の数十億年どこにも見られなかった奇妙な生き物を生み出している。バイオテクノロジーによる遺伝子操作だけでなく、電子工学とコンピューター技術の進歩も生命に新たなカタチを与え始めているのだ。キラキラと光る魚、薬の入ったミルクを出すヤギ、遠隔操作が可能なロボット昆虫。SFの世界でしか見られいと思ってい生き物は、既にこの世に存在し

「呉越同舟」という諺が人口に膾炙しているように、春秋戦国時代の呉と越は宿命のライバルであった。両国は30年以上に亘って激しい戦いを繰り広げ、遂に越王勾践が呉王夫差を敗死させる。本書はこの2国の興亡を描いた歴史文学(東漢=後漢の時代に成立)の本邦初の全訳である。 ところで、2500年も前の呉越の戦いが、何故かくも人々の心を揺さぶるのか。それは、夫差の賢臣、伍子

映画『シン・ゴジラ』が話題を集めています。関連する本、雑誌も多く発売されており書店店頭も盛り上がりを見せていますが、この「ゴジラ」、読者の購買動向からは単なる怪獣映画にとどまらない動きが見えてきました。 『シン・ゴジラ』の公式記録集としては9月に『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』の発売が予定されています。 今の段階では「シン・ゴジラ」の内幕に迫れる決定打とな

この本には本当に驚かされた。介護の技法書だと思って読み始めたら、これからの時代を生き抜く哲学の本だったのである。ユマニチュードとは、認知症高齢者ら介護される側の人間性を取り戻すケア技法であり、それを支える哲学のことである。本書のオビには「ケアを受ける人に愛情が伝わるから、ケアをする人も愛と誇りを受け取れる」とある。だから、テクニカル一点張りではないことは、読