
自然と全力で格闘する科学者たちの姿『生物模倣――自然界に学ぶイノベーションの現場から』
生物模倣、バイオミミクリーという用語がある。 これは端的にいってしまえばアリやハチが持っている、生物が進化の果てに築き上げた独自の機能を模倣し、技術として取り込もうという考え方のことである。本書では、そうしたバイオミミクリー(または、「生物に着想を得た」バイオインスパイアード)の事例──具体的には、イカにナマコ、ゴキブリにヤモリ、生態系そのものから着想を得て
741記事

生物模倣、バイオミミクリーという用語がある。 これは端的にいってしまえばアリやハチが持っている、生物が進化の果てに築き上げた独自の機能を模倣し、技術として取り込もうという考え方のことである。本書では、そうしたバイオミミクリー(または、「生物に着想を得た」バイオインスパイアード)の事例──具体的には、イカにナマコ、ゴキブリにヤモリ、生態系そのものから着想を得て

NHKにて、2000年から2005年にかけて放送されたドキュメンタリー番組「プロジェクトX~挑戦者たち~」をご記憶の方は多いだろう。さまざまな困難に立ち向かい、苦闘のうちにそれを克服して、ついに成功を収める「挑戦者たち」の姿を描いた同番組は、共感を呼んで多くの支持を集めた。 中でも人気を集めたのは、新幹線、胃カメラ、液晶ディスプレイといった、新製品開発の物語

この世には「ギフテッド」と呼ばれる神から与えられたとしか思えない才能を持つ凄い人間たちがいる。そのうちの一人がアメリカ、アーカンソー州のテイラー・ウィルソン少年だ。彼は9歳で高度なロケットを”理解した上で“作り上げ、14歳にして5億度のプラズマコア中で原子をたがいに衝突させる反応炉をつくって、当時の史上最年少で核融合の達成を成し遂げてみせた。 彼は核融合炉を

科学はあらゆる謎を暴き続けている。数万年前の遺物から人類がネアンデルタール人と交配していることを突き止め、山手線ほどの大きさにもなる巨大な実験装置を駆使してヒッグス粒子という極微小な存在を確認し、簡単なオペレーションで体細胞を多能性幹細胞にリプログラミングする方法まで編み出した。 巨人の肩の上に積み上がっていく科学の進展スピードはいや増しており、いつかはどん

人類は誕生以来宇宙とは何か、物質とは何かを考え続けてきた。その理解が一気に進んだのは、20世紀になってからだった。 1916年 、アインシュタインが相対論を完成することで、宇宙を現代的に理解する基礎が出来上がった。27 年までに、ハイゼンベルグの行列力学とシュレディンガーの波動力学が発表され、 物質を理解するための量子力学の構築が始まった。現代物理学の基礎は


本書『反ワクチン運動の真実』は『代替療法の光と影』に続き、地人書館から出版されるポール・オフィットの2冊目の著書となる。 ポール・オフィットは1951年生まれ、感染症、ワクチン、免疫学、ウイルス学を専門とする小児科医である。ロタワクチンの共同開発者の一人であり、米国屈指の名門小児科病院であるフィラデルフィア小児科病院で長らく感染症部長を務めた後、現在はペンシ

近ごろアメリカでは、自分の子にあえて小児ワクチンを接種させない母親が増えていて、麻疹が突発的に流行するような事態が生じている。そうした母親のおおよそのプロフィールは、白人で高学歴、社会経済的に恵まれた女性だ。1970年代後半に生まれたユーラ・ビスはまさにそのプロフィールにあてはまる。 ここからは私の想像だが、彼女は子を産むまでは主体的な人生を送ってきたことだ

「話し上手は聞き上手」などとよく言われるが、物事の本質の多くは、その行為の内部ではなく外側に潜んでいる。生物学の分野に今、急速に訪れている変革も、それと近いものがあるだろう。 生物の研究者ならずとも、「人間とは何か」ということを深く理解したいと願うのが人間の常だ。だがここで重要になってくるのは、理解するとは何かということの定義である。 かつてリチャード・ファ

HONZ読者にはお馴染みの仲野先生の著作『こわいもの知らずの病理学講義』の勢いが止まりません。9月に発売、発売即重版、そのまま勢い途切れることなく年末年始の増売期に入り、まだまだ売れ続けています。グラフで示してみるとその動きはこんな感じ。(日販オープンネットワークWIN調べ) ちなみに、最も大きな売上となった1月2週は、朝日新聞の読書面に掲載された週です。

ある国際学会で、若手研究者プログラムの責任者を仰せつかったことがある。世界各国から 100 人程度の優秀な若手研究者が合宿形式で集い、成果を発表する。その中から、 5 名の優秀者を投票で選んで表彰しようという趣向である。 受賞者の顔ぶれを見て、学会トップで賞のプレゼンターである英国人女性研究者が、いきなり烈火のごとく怒り出した。どうして 5 名の中に女性が入

動物たちは人間の五感を超えた世界を生きている。 たとえば、私たちの目には美しく見える花々—— でも、花は人間に鑑賞してもらいたくて咲いているわけではない。虫などを誘惑して、花粉をつけてもらい、受粉を果たすために、咲き匂っているのだ。 花の紫外線写真を見れば、このことがよくわかる。人間の目で見るより、花粉や蜜のある中心部が大きく派手に目立っている。紫外線が見え

最近の人類は当たり前のように未来に生きているので、もうみんな宇宙旅行とかにガンガン行っていると思うのだけれども、そうした時にぜひ一読しておいてもらいたいのが、本書 『太陽系観光旅行読本:おすすめスポット&知っておきたいサイエンス』 である。月や彗星、火星に金星、はては冥王星まで、各種惑星にどうやって行くのか。各惑星はどのような大気組成であり、地面はあるのか。

去る3月14日、著名な宇宙物理学者のスティーヴン・ホーキング教授が亡くなった。ブラックホールや宇宙の始まりについての研究で、数多くの功績を残した巨星の逝去に大変ショックを受けた。平易な文章で、一般読者にも分かりやすく宇宙を語ってくれた『ホーキング 宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』を始めとした多くの著書を、興奮しながら読んだものだ。 個人的に宇宙

古代エジプト、あるいはピラミッドという語句に接して、胸をときめかせずにいられる日本人は、そう多くはあるまい。だが時間的にも空間的にも遠く隔たった魅惑的な異世界に、私たちは勝手な幻想——時に超古代文明から宇宙人まで登場する——を投影してもきた。確かに古代エジプト、そしてピラミッドに謎は存在する。この謎に営々と立ち向かってきた、考古学者たちによる研究の歩みを明ら

本書は、ナショナルジオグラフィックの人気シリーズ、「絶対に行けない 世界の非公開区域99」「絶対に見られない 世界の秘宝99」「絶対に明かされない 世界の未解決ファイル99」に続く、「世界の謎99」シリーズの第4弾である。 古代文明から超常現象、宇宙、生命までも含む未解明ミステリーのうち、世界の謎を99個を集めて、現代科学で何がどこまで分かっているのかを、写

双子研究を筆頭に、遺伝子が我々の身体的特徴だけではなくIQや統合失調症などの病気といった数々の要因に深く関連していることがわかってきている。が、そうであるならば遺伝子についての知見を深めることによって政策レベルで活かす──介入したほうがいい人間には介入し、そうでない人間には介入しない──というような形の、オーダーメイド政策はありえるのか。 たとえば、受け継が

21世紀の今、人類は世界のあらゆる場所にまで生息範囲を広げ、多くの生物を絶滅に追いやり、地球環境そのものを変えるほどの力を持つにいたった。どのような能力が、人類をこれほど繁栄させたのか。持続的な二足直立歩行も人類の特徴ではあるが、何よりその知能が私たちを特別な存在としたことは間違いない。意図的な核融合、宇宙への旅行、地球の裏側との瞬時のコミュニケーションを可

ほんの十数年前に登場したばかりのスマートフォンがそうしたように、新たなテクノロジーは私たちの生活を一変させる。AI、仮想通貨、ブロックチェーンのような新たなテクノロジーが誕生する速度は加速度的に増し、1つのテクノロジーが与える影響もより大きなものとなっている。グローバル化の進展によって小さくなった世界では、破壊的テクノロジーの影響は一瞬にして世界中を駆け巡り

量子力学との出会いは大学2年生の春。恐れ知らずにも物理学を専攻しはじめていた私は、この科目の講義を楽しみにしていた。「シュレーディンガーの猫」(…生きていて、なおかつ死んでいる猫?)や「トンネル効果」(…物体が壁をすり抜ける現象?)など何やらミステリアスな量子力学について、ついに理解するときがきた! しかし何度か講義に出たあたりから、期待は幻滅に変わっていく

NASA JPL(ジェット推進研究所)で火星ローバーの自動運転プログラムの開発に携わる小野雅裕さんの最新作。宇宙を夢見た人々たちの想いと歴史をわかりやすく網羅し、最先端の宇宙開発状況から未来へと想いを馳せる。 現代の宇宙開発はあるSF作家のイマジネーションから全てが始まったことをご存知だろうか?1865年に発表されたジュールベルヌの『地球から月へ』というSF

「私はもう死んでいる」(コタール症候群)、「この足は断じて自分の足ではない」(身体完全同一性障害)、「目の前にもうひとりの自分が立っていた」(ドッペルゲンガー)──わたしたちが「自己」と呼んでいるものに歪みを生じさせるような、驚くべき症例と経験の数々。本書は、それらの症例と経験を手がかりとしながら、「自己とは何か」という大問題に迫る挑戦的な一書である。 挑戦

この冬、最強寒波が世界各地を襲っている。日本の北海道・東北・北陸地方では記録的な豪雪となっているし、世界各地でも年初よりアメリカ北東部やロシアの東シベリアは猛烈な寒波におそわれている。ついには北アフリカのサハラ砂漠にて異例の積雪が観測されたという。いったい全体、何がおこっているのか。 どうやら北極の温暖化がその原因のようである。北極の海氷が溶けたことが中緯度

書店で、テレビで、ツイッターで、AIの二文字が踊っている。創造性あふれる小説の執筆や複雑なビジネスオペレーションの効率化など、これまで人間にしかできないと思われていた知的活動を、最新のAIが軽々と成し遂げたことを伝えるニュースは引きも切らない。 特に、将棋や囲碁のトッププロをAIが打ち破ったニュースは驚きとともに世界に伝えられた。ウサイン・ボルトより早く走る

ベンチャー企業の経営を10年やってみて、分かったことの1つは、ダーウィンの進化論の根源的な正しさだった。強いものや賢いものが生き残るのではない、世界はどう変化するか誰にも分からないのだから、運と適応以外に生き残る術はない。全くもって、その通りだと思う。 2006年にライフネットプロジェクトをスタートさせた時、世の中にスマホはゼロだった。これほどまでにスマホが

『遺伝子-親密なる人類史-』、タイトルのとおり遺伝子についての本である。遺伝子といえばもちろん生命科学の分野なのであるが、この本の内容はそこに留まらない。遺伝子についての科学的な解説だけでなく、人間社会におけるその意義と重要性についても広く論じられている。この本を読むと、二一世紀は、誰もが遺伝子について考えねばならない時代である、と強く印象づけられる。 著者

本書は、素粒子物理学の「標準模型」——その名のとおり、現時点でのスタンダードなモデル——がどのようにしてできあがったかを詳細に綴った物語である。さまざまな物理理論の学術的な解説はもちろん、どこの誰がどんな理論を提出して総体的なモデルの完成にいたったかという歴史的な経緯もたっぷりと描かれている。 著者のローレンス・クラウスは、1954年生まれのアメリカの理論物

ここまでわかったのか。あらためてゲノム科学のインパクトを感じる一冊だ。 ゲノムとは、ある生物の全遺伝情報を指す。地球上の全生物の遺伝情報はDNAに蓄えられている。うんと簡略化して言うと、ゲノム情報とはACGTという四つの文字が延々と書き連ねられた書物のようなものである。そのサイズは生物によって異なるが、人間の場合は30億文字だ。 その配列を決定する方法は猛烈

この原稿を書いている最中に、想定外のニュースが飛び込んできた。Facebookが新しい時間の単位を発表したというものだ。人類(のほとんど)は秒を共通の使用しているが、Facebookが提案した新しい時間の単位「フリック」は、7億560万分の1秒で、映像コンテンツを制作する際に、有用な単位となるらしい。 確かに時計の技術的な進歩により、時間の単位は変わっていな

ランドルフ・M・ネシーとジョージ・C・ウィリアムズ著のWhy We Get Sick は、ダーウィン医学(進化医学)の概念をはじめて一般向けに紹介した本として一九九四年にアメリカで出版された。日本でも、長谷川眞理子、長谷川寿一、青木千里の翻訳により『 病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解 』として2001年に新曜社から出され、ロングセラーとなってい

人類進化の大きな流れを概説しながら、かつてのアジアにどれほど多様な古代型人類が存在したかを、最新の研究結果を踏まえながら教えてくれる一冊だ。現在の地球でホモ属に分類されるのはわたしたちホモ・サピエンスだけだが、数万から数十万年前の世界がどれほどバラエティ豊かな人類によって彩られていたかにワクワクせずにはいられない。本書で特筆すべきは、これまで人類進化を語る上

昆虫サイズの超小型ロボ兵器ナノボットによる毒殺攻撃。まるでSFのような話だが、超小型ナノ兵器の開発状況をつぶさに調べていくと各国がこのナノボットの開発に注力していることがうかがれる。2014年時点で 米軍は 重量1gにも満たない「ハエ型ドローン」の製作に成功している。しかも、これを偵察用に使うだけでなく、攻撃を加えられる兵器にするよう開発中という。SFのよう

本書『生命進化の偉大なる奇跡』はイギリスの解剖学者・人類学者であるアリス・ロバーツによる、人類進化の中でも特に解剖学・発生学を中心としたサイエンス・ノンフィクションだ。彼女はBBCで人類進化をテーマとしたいテレビシリーズにも出演していたり、幅広く一般に向けてわかりやすい科学情報の発信を行なっているが、本書もその成果のうちの一冊である。 中心となるのは、受精卵

本書は、同著者による数学的原理に裏打ちされた傑作ファンタジィ『白と黒のとびら: オートマトンと形式言語をめぐる冒険』、その続篇『精霊の箱: チューリングマシンをめぐる冒険』とはまた違った物語──副題にもある通り、命令を何でもこなしてくれるスゴイ人工知能をつくる上で避けては通れない、コミュニケーションにおける人工知能の意図理解についての一冊である。 図や数式は

「ことりはとってもうたがすき かあさんよぶのもうたでよぶ♪」 子どもの頃、大好きだった童謡。ただ……ふと思う。小鳥が歌うのって、「好き」だからなの? 早朝、森に降りそそぐ小鳥たちのコーラス。聴く側もさわやかで心地よいけれど、小さな体に似合わぬ大きな声で精いっぱい歌う姿を見ていると、やっぱり「歌が好き」なんじゃない?という気がしてくる。 でも「歌う」ことは、わ

「ありそうもないこと、稀有なこと、不可思議なこと、奇跡的なこと」。生物地理学者のギャレス・ネルソンはかつてそんな言葉でそれを嘲笑したという。だが実際には、どうやらそれは生物の歴史において何度も生じていたようだ。それというのは、生物たちによる長距離に及ぶ「海越え」である。 本書が挑んでいる問題は、世界における生物の不連続分布である。世界地図と各地に生息する生物

水・金・地・火・木・土・天・海・冥。かつてそう教えられた太陽系惑星のなかから、2006年に冥王星が除外されたことは記憶に新しい。だがじつは、19世紀後半にはそれら惑星候補のなかにもうひとつ別の名前が挙げられていた。本書の主役は、その幻の惑星たる「ヴァルカン」である。 ヴァルカンはその生い立ちからして冥王星とは異なっている。というのも、そもそもそんな星は存在す

本書は第二次世界大戦のさなか重水をめぐり行われた連合国とナチスとの攻防に脚光を当てた作品だ。舞台はノルウェーのオスロ西方にあるテレマルク県に広がるハンダルゲン高原という荒涼とした大地。極寒の地で冬には雪で閉ざされ、地元の猟師が時々、トナカイをしとめに足を踏み入れるくらいの場所だ。夜になると急激に気温が下がるため、地元では「炎さえ凍る」と実しやかに囁かれる厳し


「十分に発達した科学は、魔法と見分けがつかない」とはSF作家アーサー・C・クラークの言葉だが、現代社会は魔法としか思えない科学であふれている。急速に発達し続ける科学は生活をより便利なものにしてきたが、深化した科学の中身はより理解が困難になっている。生活必需品となったスマートフォンを例にとってみると、その魔法のような機能の全てを科学的に説明できる人などほとんど