
『グアンタナモ収容所 地獄からの手記』
本書はGuantanamo Diary by Mohamedou Ould Slahi, edited by Larry Siems (Little, Brown and company, 2015) の翻訳である。 キューバ南東部に位置するグアンタナモ湾にアメリカの海軍基地がある。米西戦争後、スペインから独立したキューバ新政府によって、アメリカが租借するこ
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本書はGuantanamo Diary by Mohamedou Ould Slahi, edited by Larry Siems (Little, Brown and company, 2015) の翻訳である。 キューバ南東部に位置するグアンタナモ湾にアメリカの海軍基地がある。米西戦争後、スペインから独立したキューバ新政府によって、アメリカが租借するこ

204カ国。本書の著者が訪れたことのある国の数だ。限りある人生のなかでは、訪れることのできない国、自分自身の目・耳で感じることのできない世界が山ほどあるのだろう。いや、たとえ同じ国を訪れようとも、タイミングや、そこでの人との出会いが異なれば、見える世界や抱く印象は異なってくる。だからこそ、他者の旅行記は、自分が知らない世界、味わったことのない経験に触れられる

ここ数年、買い手としての自分と売り手としての自分との間に、上手く折り合いをつけられずにいる。一消費者としての立場から考えると、様々なコンテンツが安く、便利に手が入るようになったことは間違いなく喜ぶべき状況である。だが、広告屋としての売り手の立場から考えるとコンテンツが安くなる状況というのは、決して喜ぶべき状況ではない。 ただ喜ぶべき、もしくはただ憂うべきだけ

チベットが自由を取り戻すため、世界平和のために、私たちは焼身する。自由を奪われたチベット人たちの苦しみは、私たちの焼身の苦しみよりも余程大きい。 中国政府の圧政に対するチベット人の焼身抗議は2009年3月に始まり、2011年3月以降連続しながら今なお続いている。2015年8月1日の時点で亡命チベット人を含め147人が焼身を行い、内123人が死亡している。冒頭

町内に信号機が1つもない地方で生まれ育ったわたしは、お受験(小学校受験)には縁がなかった。学力・経済面の問題以前に、近隣に私立小学校が存在しなかったのだ。母校の小学校も廃校になるほどの過疎地域だからかと思っていたのだが、著者も大学に入るまで私立小学校出身者に会ったことがなかったという。私立小学校が身近な存在ではない、というのはそれほど珍しい体験ではないようだ

タイトルに違和感を持つ人は多いかもしれない。政治宣伝を意味する「プロパガンダ」と聞けば、権力者を讃える映像や音楽を嫌々に観たり聞いたりする印象が強い。そして、その映像は退屈きわまりなく、楽しいわけがないからだ。 本書を読めばその考えは一変する。ナチスはもちろん、欧米や東アジア、そして日本でかつて展開されたプロパガンダの実例が豊富に並ぶが、「プロパガンダの多く

2015年3月21日、「世界ダウン症の日」が制定されてから10年目の記念に「ONE+LOVE WORLD」というイベントが、かめありリリアホールで行われた。これは若い世代に歌とダンスを通じて、ダウン症のある子たちのありのままの姿を見てもらおうと企画されたものだ。プロのシンガーやダンスチーム、有名なキッズダンサーとともに、本書の主人公である「ダンスチーム LO

著者のランド・ポール上院議員は、アメリカで最も注目を集める気鋭の政治家の一人である。 2011年に初当選したばかりの新人議員ながら、2016年共和党大統領選候補世論調査で「大統領にしたい政治家ランキング1位」に七度も輝き、ワシントンの政治アナリストたちを大いに驚かせた。また、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に2013年から2年連続で選ばれるなど、

「癒しを求めて」 「極上のセカンドライフを楽しむ」 「ゆったりと海外生活」 パンフレットには謳い文句が踊る。東京ビッグサイトの会場で行われた「ロングステイフェア2012」には、海外移住を考える大勢の高齢者が詰めかけていた。著者が到着した午前10時の時点で、入口にはすでに行列ができあがっていたという。 東南アジアの人気は根強い。年金の範囲である程度充実した生活

私たちは一線を引いたのではなかった。私たちは怖れを知らないのではなく、力がなかったのだ。壊滅的な破綻を防ごうとして失敗したのだ。 アメリカ史上最大規模となったリーマン・ブラザーズの破産申請を、当時の米国財務長官である本書の著者ティモシー・ガイトナーは、このように振り返る。しかしながら、当時のマスコミの多く、左派の《ニューヨーク・タイムス》から右派の《ウォール

光りあるところに影がある。まこと、栄光の陰に数知れぬ忍者の姿があった…(アニメ「サスケ」より) 最初は素手で殴り合っていた喧嘩が、やがて棒や剣のような武器を持ち、飛び道具を作りはじめ、すべての人を焼き殺すような兵器が作られるようになる。しかし、そんな「王道」の兵器の陰に、とっても残念な「超」兵器が開発されていたことを私たちは知らない。 それらは、今きけばバカ

次々と効果的な殺虫剤を開発し、農業化学分野では一目おかれる成果を出していた、とある30代後半の会社員。ある日、自宅でぼんやりテレビを見ながら酒を飲みつつ 考えていた。 自分が本当にやりたいことは、なんだったのだろうか ビジネスマンなら誰でも一度は思いなやむ悩みであろう。そしてこの日の悩み事が、その後、彼が所属する住友化学という大企業を突き動かしていくこととな

前作『驚きの介護民俗学』(医学書院)読んだ衝撃はとても大きかった。民俗学者である著者が、新たに選んだ仕事の場所は老人ホームだった。ルーティンの仕事に追われるある日、ふと聞いた昔話に民俗学の背景を見た。若いころの経験や仕事、恋愛、結婚のことを老人たちは嬉々として語ってくれたのだ。「傾聴」が大切と言われる老人介護だが、その方法は本当にあっているのだろうか。 そう

対談本はこの世に数多く出ているが、質的にはピンからキリまで玉石混交なジャンルである。最悪のケースとしては、忙しくて文章を書いている暇もない人気の著者や著名人を組み合わせて、その場で即興の言葉を拝借する。お互いのことをよく知らないまま表層的な会話に終始し、それっぽいまとめがあって終わってしまい、読後には釈然としない気持ちが残ることになる。 いやなに全ての対談本

マクドナルドや和民など、早く・安く・多くの胃袋を満たしてきたチェーンレストランの不調がニュース紙面を飾っている。日本人の食はこれからどのように変化していくのか。日本の高度成長期を支えた郊外団地から人々が流出し、残った住民も高齢化が進んでいるという。人口減少局面を迎えた日本人は、今後どんな家に住むことになるのだろう。 食や住居だけではない。テレビや車など、戦後

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人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。連載の最終回は「今生きている社会がすべてではない」ことについて。様々な国を知ることや歴史を学ぶことには、どのような意味があるのか?(HONZ編集部) ※過去の記事はこちら→ 第1回 、 第2回 、 第3回 、 第4回 、 第5回 清水 『謎の

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人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。第5回は「カオスでグズグズが室町時代の真実」について。室町時代を捉えるにはどのようなスタンスが求められるのか?(HONZ編集部)。 ※過去の記事はこちら→ 第1回 、 第2回 、 第3回 、 第4回 高野 網野善彦さんという研究者はどんな方だ

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人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。第4回は伊達政宗のイタい恋について。BLのルーツは戦国武将にあり!?(HONZ編集部) ※過去の記事はこちら→ 第1回 、 第2回 、 第3回 清水 江戸時代の元禄年間が日本の歴史のターニングポイントだったという話をしましたよね。ひげがなくな

2008年にアメリカで勃発した金融危機は、起きるべくして起きた出来事ではあった。 リスクが大きいローン債券を証券化した「デリバティブ」(金融派生商品)が主役を演じたバブル崩壊劇であったが、そんな危険物を扱う市場を透明にしようとする努力はクリントン政権時にわざわざ禁止されていた。個々のトレーダーたちは成功すれば莫大な報酬を得る

北朝鮮は、統計上はアフリカの小国ガーナに似ている。2010年の人口は北朝鮮が2,440万人に対してガーナが2,470万人。一人当たりGDPはそれぞれ1,800ドルと1,700ドル。しかし、国際社会から受ける注目度や、先進国から引き出してきた援助の額、政治的譲歩において、北朝鮮はガーナなど比べ物にならない大成功を収めてきた。この差はどこから来るのだろう。 本書

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人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。第3回は「信長とイスラム主義」について。カオスな状況下において、人は専制を求めるもの。そこに現れたのが、信長とイスラム主義であった!?(HONZ編集部) ※過去の記事はこちら→ 第1回 、 第2回 高野 僕は、清水さんが書かれているような歴史

第二次世界大戦中に米国戦略諜報局(OSS)が作成したサボタージュマニュアルの翻訳本である。このマニュアルは枢軸国の占領下にある市民にできるかぎり仕事を怠けさせ組織の非効率化を図ることにより、枢軸国側の占領政策を混乱に陥れ、士気の低下や軍需物資の生産力を滞らせることを目的としている。 内容としては産業機械をそれとなく故障させるという技術的面が強いものから、「常

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人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。第2回は「「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ーー 未来が後ろにあった頃」について。未来の指す方向から読み解く、時間と空間の転換点とは?(HONZ編集部) ※第1回は こちら 清水 日本語に「サキ」と「アト」という言葉があるでしょう。これらはも

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8月26日発売の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集である。「世界の辺境」と「昔の日本」は、こんなにも似ていた! まさに時空を超えた異種格闘技の様相を呈す内容の一部を、HONZにて特別先行公開いたします。第1回は「高野秀行氏による前書き」と「かぶりすぎている室町社会とソマリ社


社会 / HONZ客員レビュー
わが国では社会の高齢化に伴って、毎年1~2兆円ほど社会保障関係費が増嵩していく。それに対応するためには、少なくとも費用を相殺する分だけでもGDPの成長が必要だ。さもなければ、わが国は年々貧しくなっていく他はない。では、どうするか。「議論に関しては、冷静に物事の真をつき自分の感情は一切挟まない英国人」の元アナリストである著者は、人口を増やすしかない、と言う。

子宮頸がんワクチンは、2010年11月26日に成立した「ワクチン接種緊急促進特例交付金」により「公費負担」となり、ほとんどの自治体で接種は無料となった。対象は小学6年生から高校1年生の女子のみ。この年齢が選ばれたのは、性交渉の経験のある人は効果が期待できないからである。製薬会社の説明文書に明記されているのだが、接種した医療機関でその説明はなく、そのため多くの

市場均衡、合理的期待、効率的市場仮説...。これまでの経済思想では、もはや現実の世界を説明することは出来ない。物理学の視点から、経済学の常識へ果敢に切り込んだ『市場は物理法則で動く』。本書の翻訳者解説と、物理経済学の歴史的な経緯を紐解いたソニーCSL研究所・高安秀樹氏による解説記事「経済物理学の誕生と発展」を併せて掲載いたします。(HONZ編集部) 「『今回

あつい、あつい。あつい。暑すぎる。総務省消防庁によると7月20ー26日の1週間で熱中症で搬送された人は全国で7392人。これは前週の約1.2倍。8月に入ったらどうなるのか。「近頃の若い者は軟弱だ!」とご老人たちに説教を喰らいそうだが、暑さで若者が搬送されるのは今に始まった話ではない。 昔の新聞記事を読むと当時の人びとが、実にバッタバッタと暑さで倒れていること

イスラーム関連の話題はいたるところで出てくるが、「日本における」と切り口を限ればその数はぐっと絞られるように思う。国際情勢的に仕方がないということもあるが、メディアでも伝えられるのはほとんどが「異国の存在」としての話で、隣人としての姿に目が向けられることは稀だと感じる。 それがさらに「日本人の」イスラーム事情となれば、ますます目にする機会は少なくなる。推定1

教師は聖職。サービス業と書籍名で断言されて、気持ちのいい教師はいない。一方、苦情に関する調査で、教師の半数が「苦情が増加している」と答えた。特に50代以上が高い割合を占めており、ベテラン教師ほど苦情に悩まされているのが実態だ。多くは地域の住民や保護者から寄せられ、彼らと適切にコミュニケーションすることは円滑な学校運営に欠かせないため、誠心誠意の対応が求められ

国民国家システムは終焉を迎えつつあり、国家権力は衰退していると多くの書籍は言う。その一方で新聞やネットには、強行採決、右傾化というキーワードが飛び交う。 資本主義システムでは経済の格差が広がる一方であることが示される傍らで、政治権力における格差の縮小傾向を示す様々な出来事も起こっている。 これらは一体何を意味するのだろうか? スマホやソーシャルメディアといっ

「そ・つ・ぎょうぉ~、オメデトウ!」 表紙の写真は、その飛び込みの瞬間を収めたものだ。顔は見えないが、皆透き通るような笑顔だったに違いない。実は彼らの約半数は、数年前まで不登校生活を送っていた。 舞台は沖縄本島南部、南城市の沖合約5キロに浮かぶ離島、久高島。卒業生を含め10数人の子供たちが、この島の集落のはずれにある「久高島留学センター」(通称:センター)で

書店で見かけた本書の帯にはこう書かれている「イスラエル政府公認の初の資料!」と。 建国以来、常に近隣の国々と緊張関係にあり続けたイスラエルは、特異な歴史性から、その国家規模に比して驚異的な能力を持つ諜報機関を持つにいたった。 IDI (イスラエル国防軍諜報機関アマン)、 IDA (イスラエル治安機関シャバック)、そして対外諜報担う モサド 。これらの組織は映

本書は史実を丹念に追いながら、チャップリンとヒトラーのメディア戦争の実相を暴く一冊だ。 同時に、それはネット社会の現代を生きる私たちにとって非常に切実な課題を突き付ける。 はたして、迫り来る全体主義の恐怖の中で「笑い」という武器しか持たないチャップリンはいかにして悪夢の独裁者と闘ったのか。 「喜劇王」と呼ばれるチャールズ・チャップリンは1889年4月16日に


平成19年の都知事選に、黒川紀章はなぜ立候補したのだろう。メディアはシボレーのキャンピングカーを改造した選挙カーやクルーザーを駆使した派手なパフォーマンスを話題にしたが、黒川氏が何を訴えようとしたのかは一向に伝えなかった。 功なり名を遂げた有名な建築家の戯れのようにさえ見えた。もちろん結果は惨敗だった。直後の参院選にも立候補、妻で女優の若尾文子さんも街頭に立

本書は2015年2月にサイモン&シュスター社から出版されたばかりの『 Red Notice: A True Story of High Finance, Murder, and One Manʼs Fight for Justice 』の全訳である。 著者のビル・ブラウダーは、ロシアを拠点に投資事業を展開していたエルミタージュ・キャピタル・マネジメント社の創

本書『こうして、世界は終わる』はどんなジャンルの本なのか、ひとことで説明するのは難しい。 時代設定は西暦2393年。温暖化による海面上昇で西洋文明が崩壊してから、300年の時間がたっている。第2次中華人民共和国の歴史研究者が、20世紀から21世紀(つまり私たちが生きている今現在)を振り返って、未曽有の大災害をなぜ防げなかったのかを語るという内容だ。 それだけ

早いもので、今年も既に半分が終わろうとしている。今年上半期に出会った様々なノンフィクションたち。その中で、今でも頭の中からこびりついて離れぬくらい鮮烈な印象を残した一冊がある。それが、 本書『黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』 だ。 ルーシー・ブラックマン事件は、2000年7月に英国航空の客室乗務員が失踪し、7ヶ月後に神奈川県三浦市の海岸近