ノンフィクションはこれを読め!

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178記事

『The Tokyo Toilet』「PERFECT DAYS」が作る新しき聖地巡礼の旅 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『The Tokyo Toilet』「PERFECT DAYS」が作る新しき聖地巡礼の旅

2023年も押し詰まった、ある日のあさイチの映画館。シネコンで一番広いスクリーンなのにほぼ満席だ。「PERFECT DAYS」が公開されて1週間で評判はうなぎのぼりである。年末の仕事を終えて私が3日前に予約したときは1/3ほどの埋まり方だった。 中高年のカップルが多い。ポップコーンと飲み物はだいたい女性が持っている。男性は座席の場所を探し奥に入ろうとして「こ

2023年のイチオシ本=関東大震災100周年を忘れるな! 『関東大震災がつくった東京』 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

2023年のイチオシ本=関東大震災100周年を忘れるな! 『関東大震災がつくった東京』

今年も日本各地で地震が頻発する1年だった。地球科学を専門とする私には、ある意味で予測されていることでもある。 というのは12年前の東日本大震災以来、「大地変動の時代」に突入した日本列島としてはノーマルの姿なのである。すなわち、これから首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火の3点セットが控えているからだ。 今年は関東大震災100周年の年だ。今からちょうど

『私の体がなくなっても私の作品は生き続ける』桃紅が人生の弟子に残した作品と言葉をかみしめる。 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『私の体がなくなっても私の作品は生き続ける』桃紅が人生の弟子に残した作品と言葉をかみしめる。

2021年3月初旬「美術家」の篠田桃紅さんが亡くなったというニュースが流れた。享年107。一世紀以上、日本の美術界で独特の光を放ちつづけた存在である。5歳のときに父親から書の手ほどきをうけ、戦後まもなく墨を用いた抽象表現という新たな地平を切り開き、1956年に渡米。ニューヨークで評価され日本に帰国後は、膨大な作品を制作した。 言わずもがな、だが、このプロフィ

ヒトは自らを家畜化したのか 『キツネを飼いならす 知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

ヒトは自らを家畜化したのか 『キツネを飼いならす 知られざる生物学者と驚くべき家畜化実験の物語』

キツネの家畜化実験、 ナショナルジオグラフィックなどで紹介 されたりしているので、その驚くべき成果の概要をご存じの方も多いだろう。かくいう私も人並みならぬ興味を持ってこの壮大な研究を見つめてきたのだが、その裏で、研究成果にも劣らぬ人間ドラマがあったとはまったく知らなかった。主人公はふたり。ひとりはキツネの家畜化実験を考案し、1952年に始動し1985年に亡く

沖縄に行きたい! また行きたい!! 垂見健吾『めくってもめくってもオキナワ』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

沖縄に行きたい! また行きたい!! 垂見健吾『めくってもめくってもオキナワ』

はいさい。 ヤンバルクイナを見たい。当初の予定はそれであった。 「HONZ生きものがかり」の塩田春香と軽い腰をあげて南へ飛んだのはこの秋のこと。沖縄への自然探索の旅である。 そして、無事にヤンバルクイナを見ての、その帰りの最終日の夜のことだ。 私たちはとある那覇の人気店でアグー豚を食べていた。隣では愉快な地元のおじぃが楽しそうにやはり、アグー豚を食していた。

論理にねじ伏せられていく快感『そこにある山 ー 人が一線を越えるとき』 書影

教養・雑学 / 「解説」から読む本

論理にねじ伏せられていく快感『そこにある山 ー 人が一線を越えるとき』

角幡唯介の名を初めて知ったのは二〇一〇年、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』を読んだ時だった。心底驚いた。探検――子どもの頃から思い描いていたイメージの探検――などというものは、すでに世の中からなくなってしまったと思い込んでいたからだ。しかし、その本には、真の探検があった。誰も踏査したことがないからというだけの理由で、命を懸けた冒険

『五輪汚職』巨大イベントの裏で行われていたこと 書影

アート・スポーツ / 事件・事故

『五輪汚職』巨大イベントの裏で行われていたこと

「東京五輪の招致は、僕でなければできなかった」 東京五輪・パラリンピックが閉幕して1年後の2022年7月、男は若い記者にそう胸を張った。男の名は高橋治之。世界的な広告会社「電通」で専務まで務めた後、コンサルタント会社代表に転じ、東京招致委員会では「スペシャルアドバイザー」の肩書を持っていた。「スポーツビジネスの第一人者」との呼び声も高い人物だ。 「まず僕が数

これから出る本 2024年1月 書影

おすすめ本レビュー

これから出る本 2024年1月

いよいよ年の終わりが見えてきました。ここからの季節、年末年始は重厚なノンフィクションの読み時、ということで今年も多くの本が出版されそうです。1月は1年の始まりということで、今後の世界を予測するノンフィクションなどが目立ちました。 は以前話題となった『人口で語る世界史』の著者、ポール・モーランドの新刊です。少子化は政策の影響より個人の思想の影響の方が大きい、高

『ホールアースの革命家 スチュアート・ブランドの数奇な人生』ホールアースという名の革命 書影

人物 / 「解説」から読む本

『ホールアースの革命家 スチュアート・ブランドの数奇な人生』ホールアースという名の革命

2005年6月12日のスタンフォード大学の卒業式でのことだった。スピーチに立ったアップル創業者のスティーブ・ジョブズが、自分は大学を早々にドロップアウトしたのだがと前置きしてから波乱に満ちた自らの人生を語り、その締めくくりとして、若い頃に最も影響を受けた「ステイ、ハングリー。ステイ、フーリッシュ。」(Stay hungry. Stay foolish.)とい

「どんな本を読むべきか」と問う人の深刻な問題『人生を変える読書』 書影

教養・雑学 / 著者自画自賛

「どんな本を読むべきか」と問う人の深刻な問題『人生を変える読書』

「どんな本を読めばよいですか?」 講演会やセミナーなどで、ビジネスパーソンや学生など、さまざまな方とお会いするたびに、必ずこのような質問をいただきます。 そのように聞かれる私はじつはかなり当惑している、というのが正直なところです。もちろん、お尋ねの意図が明確な場合には、できるだけその質問の意図に沿った形でお答えするようにしてはいますが……。 たとえば「ファイ

『災害の記憶を解きほぐす』『異邦人のロンドン』記憶の風化を止めるためには…。 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『災害の記憶を解きほぐす』『異邦人のロンドン』記憶の風化を止めるためには…。

記憶の風化を止めるには新しい世代に記憶を移植するしかない。誰かに継代されることで災害の防御にも繋がっていく。 『災害の記憶を解きほぐす』(新曜社)は関西学院大学社会学部、金菱清ゼミの学生たちが、28年前に起こった阪神淡路大震災の体験者たちに当時と現在の状況、その間の経緯を取材しまとめた一冊だ。 金菱清教授は東北学院大学在籍中、専門の災害社会学研究の一環として

科学の名著を再読しよう! 『科学革命の構造 新版』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

科学の名著を再読しよう! 『科学革命の構造 新版』

トマス・クーンという名前を聞いたことがある人は少なくないだろう。『科学革命の構造』 という科学古典の著者だが、ちゃんと読んだ人は意外と多くない。 科学の歴史を見ると、天動説から地動説、またニュートン力学から量子力学へというように、革命的に大きく見方が変わるイベントが何回もある。 今から60年ほど前、マサチューセッツ工科大学の科学史教授の著者は、こうした革命の

『映画館を再生します。小倉昭和館、火災から復活までの477日』奇跡の復活を追った胸アツのドキュメント! 書影

アート・スポーツ / 事件・事故

『映画館を再生します。小倉昭和館、火災から復活までの477日』奇跡の復活を追った胸アツのドキュメント!

2022年8月10日、北九州市小倉駅近くの旦過市場に隣接する「昭和館」という映画館が焼失した。もらい火ではあったが、創業83年の歴史を見てきた映写機もフィルムもスクリーンも、たくさんの映画スターのサインや小説家の手紙も何もかもが燃えて無くなってしまったのだ。 残ったのは「昭和館①②」というネオンサインとチケット売り場の表札だけ。 祖父が創業し、父から後を継い

『八ヶ岳南麓から』山暮らしのリアル 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『八ヶ岳南麓から』山暮らしのリアル

これまでたくさんの本やエッセイを書いてきた著者だが、意外にもプライベートな暮らしについては、ほとんど書いたことがないという。本書はここ20年余りの二拠点生活について書かれた一冊だ。 著者は50代で八ヶ岳南麓に土地を買った。八ヶ岳には東麓と西麓もあるが(北側は霧ヶ峰へと続くため北麓はない)、東麓には夕陽がなく、西麓には朝日がない。一方、八ヶ岳南麓は年間日照時間

先月出た本 2023年11月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2023年11月

2023年もあと残すところ1ヶ月となりました。毎年恒例のベストセラーランキングなども発表され、一挙に年末モードが盛り上がって来ました。 今回の先月出た本は『夜明けを待つ』をまずご紹介します。『紙つなげ!』など数々のノンフィクションを送り出して来た佐々涼子さんの『夜明けを待つ』が発売されています。 実は、この本“これから出る本”でも紹介するかどうかを悩んだ1冊

『かがくを料理する』:「サイエンス×工作×料理」のおいしい世界! 書影

サイエンス / 青木薫のサイエンス通信

『かがくを料理する』:「サイエンス×工作×料理」のおいしい世界!

先般、東京出張の折に、はじめて HONZの朝会というもの に参加しました。HONZのメンバーが原則(少なくとも今回は)ひとり一冊、今読んでいる本、あるいはこれから読もうと思っている本を持ち寄り、その本に対する期待やおもわく(?w)について語る会です。 で、そのときHONZレビュアーの首藤淳哉さんが、『かがくを料理する』という本を持っていらしたのです。 いえね

『あのとき売った本、売れた本』永遠に読んでいたい「本屋の裏話」 書影

教養・雑学 / ビジネス

『あのとき売った本、売れた本』永遠に読んでいたい「本屋の裏話」

人生でもっとも長いおつきあいの書店は、紀伊國屋書店新宿本店である。かれこれ35年。つきあいが長くなれば倦怠期だってありそうなものだが、半日滞在しようが、週に何度も通おうが、いまだに飽きることがない。行くたびに発見や刺激があるのだ。こんな素晴らしい場所、他にあるだろうか。 本書は新宿本店で25年間にわたり文学書売り場に立ち続けた名物書店員の回想録である。とにか

『つむじ風の向かう場所』を読みながら書くことの効用について考えた 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『つむじ風の向かう場所』を読みながら書くことの効用について考えた

ご依頼をうけて、キャリアパスとか、人生いかに楽しく生きるべきかとかいう講演をすることがある。我ながら僭越なことではある。ひょっとしたら、面白おかしく過ごしながら、そこそこ業績をあげたおっちゃんと思われているかもしれん。そこはそれレトリックみたいなものであって、本当は血の滲むような努力をし、苦しいことがあっても笑顔で耐えてきたのである。 というのは、やっぱりウ

『n番部屋を燃やし尽くせ』デジタル性犯罪を暴け! 書影

社会 / 事件・事故

『n番部屋を燃やし尽くせ』デジタル性犯罪を暴け!

本書を読み始めてすぐ、これは映画やドラマ化のオファーが殺到するのではないかと思った。映像化された際の宣伝文句はおそらく次のようなものだろう。 「韓国社会を震撼させた『n番部屋事件』。前代未聞のデジタル性犯罪の実態を暴いたのは2人の女子学生だった!」 卑劣な犯罪に立ち向かう女子学生のバディもの。さぞや痛快な物語に仕上がるのではないか。 だが、読み進むうちに考え

これから出る本 2023年12月 書影

併せて読まれたこの一冊

これから出る本 2023年12月

いよいよ年の終わりが見えてきました。年末年始は重厚なノンフィクションの読み時、ということで今年も多くの本が出版されそうです。 12月のはじめには『大阪の生活史』が登場します。この姉妹版とも言える『東京の生活史』はベストセラーになったほか、多くの賞も授賞し話題になりました。150の人が聞き、語った膨大なインタビュー集。人の経験やまなざしを通じて大阪という街が描

『SWITCHCRAFT 切り替える力』著者インタビュー 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

『SWITCHCRAFT 切り替える力』著者インタビュー

幸福に生きていくには、『すばやく変化に気づき、最適に対応するための人生戦略』が必要だ。そう力強く説く認知心理学者・神経科学者であるアデレード大学エレーヌ・フォックス教授へのインタビュー。きっと生き方を変えるヒントが見つかるはず! 仲野 長い間、科学者として生活してきました。まずその立場から申し上げたいのは、「切り替える力(スイッチクラフト)」―必要な時には躊

『富士山噴火に備える』「噴火スタンバイ状態」の富士山はどうなっているのか? 書影

生物・自然 / おすすめ本レビュー

『富士山噴火に備える』「噴火スタンバイ状態」の富士山はどうなっているのか?

万葉集が編まれた頃、富士山の頂上から噴気がなびいていた。つまり、当時の人々は富士山が「生きている」ことを知っていたのである。その後は何回も噴火を繰り返したが、最近の富士山はいたって静かである。 そして前回の噴火は江戸時代中期の1707年だから、日本人は300年ほど富士山の活動を目撃していない(小山真人著『富士山』岩波新書)。 日本最大の活火山である富士山は、

『怪物に出会った日』敗北が持つ豊かな可能性 書影

アート・スポーツ / 人物

『怪物に出会った日』敗北が持つ豊かな可能性

彼の強さを確認するのは容易い。たとえば「井上尚弥 パヤノ」で検索してみよう。それだけで何本もの動画を見つけることができる。 2018年10月7日、横浜アリーナで行われたこの試合は、バンタム級最強を決めるトーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」の一回戦であるとともに、WBA世界バンタム級タイトルマッチでもあった。 勝負は一瞬でついた。王者の井上

『続 窓ぎわのトットちゃん』続編はパパとママの話から 少女から大人へ 書影

人物 / 社会

『続 窓ぎわのトットちゃん』続編はパパとママの話から 少女から大人へ

1981年に刊行された 『窓ぎわのトットちゃん』 は現在まで読み継がれ空前のベストセラー、ロングセラーとなっている。日本人のほとんどが「トットちゃん」は黒柳徹子のことだと知っているってすごいことだ。 さらに芸歴70年で今も第一線で活躍し、冠番組の「徹子の部屋」は2023年9月に、同一司会者によるテレビ番組最多放送のギネス記録を更新した。黒柳徹子さんは生ける芸

先月出た本 2023年10月 書影

おすすめ本レビュー

先月出た本 2023年10月

読書週間が始まっています。今は読書週間が拡大して読書月間になって、読書の秋を盛り上げています。そんな今月の先月出た本。1冊目は『なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか』から。 最近「バーンアウト症候群」という言葉がよく聞かれます。まさに“燃え尽き”ですが、耳慣れた言葉に思えて、この意味は正確に理解されていないのだそうです。この文化を終わらせるためにはまずは知ること

『遺伝と平等』刊行記念!4年ぶりのリアル朝会を開催しました。(その2) 書影

今月読む本

『遺伝と平等』刊行記念!4年ぶりのリアル朝会を開催しました。(その2)

その1はこちらをご覧ください。 この度、青木薫さんは『科学革命の構造 新版」で2023年日本翻訳家協会翻訳特別賞を受賞されました。なんと18年もの間、恋焦がれてプロポーズをしてきた本だそうです。詳しい経緯は 東えりかとの対談内 で話していますので、ぜひご一読ください。 さて朝会の続きである。リアルに参加したメンバーの一巡目が終わりましたが、何冊か隠し持ってき

『遺伝と平等 人生の成り行きは変えられる』刊行記念 翻訳者:青木薫さんに聞く! 書影

サイエンス / 社会

『遺伝と平等 人生の成り行きは変えられる』刊行記念 翻訳者:青木薫さんに聞く!

青森から、HONZメンバーの青木薫さんが上京されると聞き及んだ。骨太な新刊『遺伝と平等』の翻訳について、日本の代表的な書店のひとつ、紀伊國屋書店新宿本店にて語り尽くすという(青木薫の推薦本フェアは3階人文書コーナーレジ前で開催中 期間はお店に確認してください)。何を隠そう、聞き手は私、HONZ副代表の東えりかである。『フェルマーの最終定理』を始めとるするサイ

『海賊たちは黄金を目指す』未知の「南海」に挑んだ海賊たちの冒険記 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『海賊たちは黄金を目指す』未知の「南海」に挑んだ海賊たちの冒険記

1680年4月5日の夜明け、イギリス人を中心とした331人のバッカニアが遠征の途に就いた。この遠征は現在のパナマ領内に横たわるダリエン地峡を大西洋側から徒歩で越え、太平洋側のスペイン植民地を襲撃するという、途方もなく野心的な試みであった。彼らの行く手にはこれまで何度もヨーロッパ人を拒み続けてきた鬱蒼としたジャングルと連なる山々が待ち構えているのだ。 この遠征

『触法精神障害者』精神障害者の犯罪について考える 書影

医学・心理学 / 社会

『触法精神障害者』精神障害者の犯罪について考える

4年前、東京・霞が関の家庭裁判所で、離婚調停のために訪れた女性が男にナイフで切りつけられ殺害された。逮捕された男は米国籍で、亡くなった女性の夫だった。 検察は鑑定留置の結果、責任能力に問題はないと判断し、殺人などの罪で男を起訴、懲役22年を求刑する。一方、弁護側は統合失調症による心神喪失を主張した。2023年10月20日、東京地方裁判所は、妄想や幻聴の影響で

正しく恐れるために読め!『津波 暴威の歴史と防災の科学』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

正しく恐れるために読め!『津波 暴威の歴史と防災の科学』

津波について、ほとんど何も知らなかった。この本を読んだ感想をひとことで書くとそういうことになる。本当に勉強になった。世界中で過去におこった津波について、さまざまなエピソードがわかりやすく綴られていく。 よく知られているように、Tsunami は日本語から世界共通語になった数少ない言葉のひとつだ。語源からいくと、「津(=港)をおそう波」、すなわに「港の内部に押

『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 書影

サイエンス / 生物・自然

『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束

ロビン・ダンバーは、彼が提唱した「ダンバー数」とともに、その名が広く知られている研究者である。ダンバー数とは、ヒトが安定的に社会的関係を築ける人数のことであり、具体的には約150と見積もられている。ダンバーは、霊長類各種の脳の大きさ(とくに新皮質の大きさ)と集団サイズの間に相関関係があることを見てとり、ヒトの平均的な集団サイズとしてその数をはじき出したのであ

優生学に陥らないようにしながら、遺伝がもたらす人生への影響を「平等」の観点から考え直す──『遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる―』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

優生学に陥らないようにしながら、遺伝がもたらす人生への影響を「平等」の観点から考え直す──『遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる―』

近年、遺伝子研究が進展してきたことで身長や顔といった見た目の要素だけでなく、「学歴」のような生涯収入やそれに伴う生活の質に直結する部分も遺伝子の影響を受けることがわかってきた。しかしそうしたデータは気軽に世に出すと、何度否定されても議論が絶えることのない優生学や、何をもってして社会は「平等」や「公平」といえる状態になるかといった、簡単には答えのでない議論を呼

これから出る本 2023年11月 書影

おすすめ本レビュー

これから出る本 2023年11月

昨年の11月、『笑い神 M-1、その純情と狂気』が発売され、ノンフィクション業界では大きな話題になりました。気づけば11月~12月はお笑いの季節として定着してきたようです。今年もいくつか気になるお笑い本が出てきます。中でも注目したいのが『M-1はじめました。』です。 著者、谷良一さんはM-1グランプリをつくった元吉本社員。そこにはお笑いブーム、漫才ブームを立

『遺伝と平等』刊行記念! 4年ぶりのリアル朝会を開催しました。 書影

今月読む本

『遺伝と平等』刊行記念! 4年ぶりのリアル朝会を開催しました。

祝!青木薫さん翻訳『遺伝と平等』発売! というわけで、HONZの 「青木薫のサイエンス通信」 でお馴染み、翻訳家の青木薫さんの翻訳新刊出版および『新版 科学革命の構造』が日本翻訳家協会翻訳特別賞を受賞された記念に上京されました。トークイベントを開催されるなら、ついでにHONZメンバーと初お目見えしましょう!ということになり、なんと4年ぶりのリアル朝会が開催さ

『焼き芋とドーナツ』「わたし」でつながる女性史 書影

社会 / 世界史

『焼き芋とドーナツ』「わたし」でつながる女性史

初めてフェミニズムに触れたのは10代の頃、上野千鶴子氏の『セクシィ・ギャルの大研究』がきっかけだった。もちろん現在の岩波現代文庫版ではなく光文社のカッパ・サイエンス版で、タイトルだけ見てそそくさとレジに持って行ったのをおぼえている。 ところが読みはじめて面食らった。そこには10代男子が期待していたようなスケベな話は一切なく、むしろこちらのスケベな視線そのもの

『人類滅亡の科学』近未来の危機を冷静に分析し「正しく恐れる」ために 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『人類滅亡の科学』近未来の危機を冷静に分析し「正しく恐れる」ために

国連が世界の総人口が80億人を突破する推計を発表した。こうした中で人類が近い将来に直面する「滅びのシナリオ」を25項目取り上げ、「科学的根拠」と「回避する方法」を提示したのが本書である。 コンピューターサイエンスで修士号を取得した著者は、ノースカロライナ州立大学の工学起業プログラムを主催する。全米のラジオやテレビ番組で難しい内容を平易に伝える科学ジャーナリス

なんだか全然わからないことの楽しさ『中国の死神』 書影

教養・雑学 / 民俗・風俗

なんだか全然わからないことの楽しさ『中国の死神』

2000年の夏、ある子どもが家族で北京の公園に遊びに行った。広いその公園には、お化け屋敷のようなものがあった。こわごわ暗闇の中に入っていくと、ゴワゴワした髪の毛の首つり女の人形や、地獄の鬼卒がいた。なぜかそこにティラノサウルスが現れた。 針の山で血みどろになったおじさんや、血の池地獄で煮られているおじさんの間に、草をはむステゴサウルスもいる。最初は怖がってい

現在に至る種を広範囲にわたってまきつづけてきた悪魔的な天才──『未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマン』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

現在に至る種を広範囲にわたってまきつづけてきた悪魔的な天才──『未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマン』

この『未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマン』はその名の通りジョン・フォン・ノイマンの伝記である。1903年生まれの1957年没。数学からはじまって、物理学、計算機科学、ゲーム理論、気象学など幅広い分野で革新的な成果をあげつづけ、史上最高の天才など、彼を称える言葉に際限はない。彼と同時代を生きた人物に、クルト・ゲーデルやアルベルト・アインシュタインなどそう

先月出た本 2023年9月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2023年9月

9月は『イーロン・マスク(上・下)』の発売が大きな話題となりました。レビューのほか口コミでも、その面白さが話題になっていますが、ノンフィクションがベストセラーランキングの上位にいるのも久しぶりのこと。読書の秋のスタートに相応しい号砲が鳴らされた感があります。大物新刊として忘れてはならないのが『万物の黎明』。私たちに“ブルシットジョブ”という便利な言葉を教えて

面白すぎてヤバい!『イーロン・マスク』 書影

サイエンス / 人物

面白すぎてヤバい!『イーロン・マスク』

こんなに面白い伝記を読んだのは初めてかもしれない。「面白い」という言葉には、「ワクワクする」「興味深い」「楽しい」「目が離せない」「胸が熱くなる」「笑える」などいろいろなニュアンスが含まれるが、本書にはそのすべてが詰まっている(実際、声をあげて笑った箇所もあった)。間違いなく今年を代表するノンフィクションだ。 イーロン・マスクを知らない人はおそらく少数派だろ