ノンフィクションはこれを読め!

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178記事

『ヒトラーの馬を奪還せよ』KGB、シュタージ、ネオナチが絡みあるミステリー小説のようなノンフィクション 書影

おすすめ本レビュー

『ヒトラーの馬を奪還せよ』KGB、シュタージ、ネオナチが絡みあるミステリー小説のようなノンフィクション

独裁者アドルフ・ヒトラーが建設したベルリンの総統官邸の中庭には2体の巨大な馬のブロンズ像が立っていた。1体はちょうどヒトラーの執務室の前に飾られており、ヒトラーがその馬の像を眺めながら日々の執務をこなしていたことは間違いないであろう。作者はヨーゼフ・トーラックといいヒトラーお気に入りの芸術家でナチスの庇護のもとで名声を博していた。このほかにも官邸入り口にはア

熱き男が叶えたジャパニーズドリームここにあり! 『逆転力、激らせろ−希望を咲かせて』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

熱き男が叶えたジャパニーズドリームここにあり! 『逆転力、激らせろ−希望を咲かせて』

あるんや、ジャパニーズドリームって。この本、山分ネルソンの一代記を読めば、誰もが驚きを持ってそう思うだろう。もうひとつ、私にとっての大きな驚きは、それが身近なところでおこっていたことだ。すこしわかりにくいが、タイトルの「激らせろ」は「たぎらせろ」とルビがふってある。 山分ネルソン祥興、マレーシア出身の50歳。大阪や関西圏以外の人はご存じないかもしれない。私が

『創造性はどこからやってくるかーー天然表現の世界』創造とは外部を召喚すること 書影

教養・雑学 / アート・スポーツ

『創造性はどこからやってくるかーー天然表現の世界』創造とは外部を召喚すること

ワクチンを開発した科学者パスツールは「Chance favors the prepared mind.(幸運は用意された心のみに宿る)」という言葉を残している。準備する心によって偶然に気づくことができるのだということだろう。心構えはとしては納得できる、と同時に疑問が湧いてくる。チャンスそのものを増やしたり、再現性を高めることはは可能なのだろうか。 本書の射程

『最後の海賊』その先に待つのは破滅か、栄光か 書影

人物 / ビジネス

『最後の海賊』その先に待つのは破滅か、栄光か

楽天グループが危機に瀕しているという声をよく聞く。 2023年1月~6月期の連結決算は、最終損益が1399億円の赤字。好調な事業もグループ内にはあるものの、営業赤字が1850億円にのぼったモバイル事業が大きく足を引っ張っているとされる。加えて来年以降は、基地局整備などに充てるために発行した社債も大量の償還を迎える。償還に向け、グループ会社の上場や一部資産の売

『南半球便り 駐豪大使の外交最前線体験記』 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『南半球便り 駐豪大使の外交最前線体験記』

著者の山上信吾氏は、コロナ禍の2020年12月から2023年4月までの2年4か月、駐オーストラリア日本国大使として、日豪両国の関係発展に尽力した外交官である。 山上氏が在任期間中に、在オーストラリア日本国大使館公式ホームページに和英両文で102回発表した「南半球便り」の中から、50回余りを厳選してまとめて一冊にしたものが本書である。 2020年にオーストラリ

これから出る本 2023年10月 書影

併せて読まれたこの一冊

これから出る本 2023年10月

まだまだ暑い日が終わらない日本列島。アツい、と言えば店頭は「厚い」本で(が?)盛り上がっています。イーロン・マスクの自伝上下巻、文芸書では製本の限界に挑んでいるように見える『鵺の碑』などなど、今年は厚い本選手権をやっても面白そうです。 ようやく秋に突入しそうな10月、ノンフィクションも気になる本が盛り沢山。注目作品の筆頭は『遺伝と平等:人生の成り行きは変えら

ポートフォリオはあなた次第『じぶん時間を生きる』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

ポートフォリオはあなた次第『じぶん時間を生きる』

書店で本を選ぶとき、まずオビに目がいくという人も多いだろう。本書を手にしたとき、私の目に最初に飛び込んできたのは「資本主義から自由になる生き方考」というフレーズだった。同じような内容の本を、これまで山ほど読んできた。棚に戻そうとした次の刹那、ひっかかる言葉が目に飛び込んできた。 「効率化するほど時間に追われるのはなぜ?」 その時私は、これと同じ問題意識を抱え

『イラク水滸伝』向かうは古代から続く元祖”梁山泊”! 書影

社会 / 民俗・風俗

『イラク水滸伝』向かうは古代から続く元祖”梁山泊”!

約480ページ。もはや本の厚さごときでは驚かない高野秀行の新作冒険譚の舞台はイラクの南東部、ティグリス川とユーフラテス川の合流地点に四国ほどの大きさで広がる巨大湿地帯〈アフワール〉である。 著者は現代でも謎に満ちた民族が生活し、迫害された人々が逃げ込むという、迷路のように水路が入り組む世界遺産。著者は2017年にこの場所を知り、「行ってみるしかない」と決意し

『世界がわかる資源の話』世界の地政学のベースに「資源」がある! 書影

生物・自然 / 著者自画自賛

『世界がわかる資源の話』世界の地政学のベースに「資源」がある!

資源は私たちの生活に欠かせないものである。エネルギーや有用な元素を供給してくれる鉱産資源は、46億年に及ぶ地球の歴史のなかで培われてきた。すなわち、太陽系の第3惑星として成立する上での地球固有の特殊な環境の中で、貴重な資源の数々が誕生したのである。 国土が狭く険しい山地の多い日本列島は、世界でも有数の地殻変動地帯にある。そのためヨーロッパやアメリカをはじめと

『熟達論』“走る哲学者”が伝授する、「今を生きる」ための心と身体の使い方 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

『熟達論』“走る哲学者”が伝授する、「今を生きる」ための心と身体の使い方

「走る哲学者」為末大氏自身の手による初の書き下ろし、しかも編集担当が元DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長の岩佐文夫氏ということで、期待値は出版前から否応なしに高まっていたが、実際に本書を読んでみると、それを遥かに上回る内容だった。 私のような昭和生まれ昭和育ちにとってのスポーツは、『巨人の星』や『あしたのジョー』に代表されるような、ただひたす

『自衛隊の闇組織』「別班」は実在する! 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『自衛隊の闇組織』「別班」は実在する!

TBSのドラマ『VIVANT』が話題だ。我が家もドはまりしていて家族は毎週考察に夢中である。主人公の乃木憂助は自衛隊の裏の組織「別班」の工作員だったが、その後テロ組織の一員となった。「潜入」なのか「転向」なのかはいまのところ不明だが、予測を裏切る脚本が売りなので、この先もあっと驚く展開が用意されているのかもしれない。 さて、設定が自衛隊の秘密部隊ともなると、

先月出た本 2023年8月 書影

おすすめ本レビュー

先月出た本 2023年8月

先月「暑い暑い7月が終わりました。」と書いたのに、暑さは9月スタートになっても変わらず、クーラー猛稼働の日が続いています。とはいえ、秋はもうすぐ、読書の秋に向けて気になる本の発売が相次いだ8月でした。本好きにオススメしたいのが『索引 ~の歴史』です。本読みだったら当たり前に目にしている「索引」には、ものすごーい歴史と多くの人々の努力が隠されていた、という索引

『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』駆け抜けた25年の生涯 書影

アート・スポーツ / 人物

『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』駆け抜けた25年の生涯

大切なことはいつも“向こう側”からやってくる。不意に、思いもよらないタイミングで。 今年の夏はひさしぶりに一家で旅をした。行き先は香川。家族旅行はコロナ以降ご無沙汰だったので、てっきり海外にでも行きたいと言い出すものとばかり思っていたが、妻と子どもたちで話し合ううちに、どういう流れか「本場の讃岐うどんの食べ歩きがしたい」と盛り上がったらしい。 そうと決まれば

『特攻服少女と1825日』特攻服少女が令和に蘇った! 書影

教養・雑学 / 社会

『特攻服少女と1825日』特攻服少女が令和に蘇った!

1989年、昭和から平成に変わる時代に、女暴走族を取り上げた『ティーンズロード』という雑誌が並んでいたのをご存知だろうか。初代編集長の比嘉健二さんが当時の回想を交えながら書き上げた本書は、第29回小学館ノンフィクション大賞を受賞した。 女暴走族というニッチなジャンルで賞を受賞!? 小学館ノンフィクション大賞は、「未発表作品に限り、海外冒険旅行や、博物誌、観察

ペットボトルのキャップは外せ! 『コンビニオーナーぎりぎり日記』は全コンビニ利用者必読の一冊だ 書影

社会 / おすすめ本レビュー

ペットボトルのキャップは外せ! 『コンビニオーナーぎりぎり日記』は全コンビニ利用者必読の一冊だ

『汗と涙のドキュメント日記シリーズ』、ちょっとなさけないイラスト付きの新聞広告を目にされたことはあるだろう。『交通誘導員ヨレヨレ日記』、『派遣添乗員ヘトヘト日記』、『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記』など、すでに10冊以上が出版されている。何冊か読んだけれど、どれもおもろい。しかし、今回の『コンビニオーナーぎりぎり日記』はレベルがちがう。 おもしろさのレベルとい

我々は今後数十年間でどこへ移動していくのか?──『気候崩壊後の人類大移動』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

我々は今後数十年間でどこへ移動していくのか?──『気候崩壊後の人類大移動』

夏真っ盛りの8月下旬だが、とにかく毎日暑すぎる。昼外にちょっとご飯を買いにいくだけで殺人的な太陽に体を焼かれ、数分後に家に帰ってきたときには命の危険を覚えている。それぐらいに毎日暑いし、間違いなく毎年夏は暑くなっている。 とはいえ、こんなにも毎日暑い理由ははっきりしている。気候変動、地球温暖化だ。これによって地球の温度が実際に少しずつ増しているせいだ。30年

『ロバのスーコと旅をする』相棒ありの放浪 書影

生物・自然 / 社会

『ロバのスーコと旅をする』相棒ありの放浪

うんと幼い頃、ロバのパン屋さんという行商があった。記憶は遠く、かすかに覚えているのはロバの瞳だ。大きな目の中の全部が黒くてまつ毛が長かった。考えてみれば、自分の生活圏の中で働く動物を見たのはあれが最初のことだし、犬以外の動物では最後だったのではないか。 会社を辞め海外を一人旅していた著者は、モロッコで使役されるロバの姿を見た。あいつに荷物を載せて旅をしてみよ

これから出る本 2023年9月 書影

おすすめ本レビュー

これから出る本 2023年9月

お盆を過ぎたら残暑、と教わったはずですがいまだ暑さ真っ直中といった感のある日本列島です。この分だと9月も涼しいところで読書がいいね、という季節になりそうです。9月のノンフィクション界はそんな時間にぴったりの重厚なラインナップが揃いました。筆頭は『イーロン・マスク(上下)』 TwitterからXへ、日々お騒がせの存在になっているイーロン・マスクの評伝。著者は『

『イラク水滸伝』謎の湿地帯をめぐる圧巻のノンフィクション! 書影

生物・自然 / 世界史

『イラク水滸伝』謎の湿地帯をめぐる圧巻のノンフィクション!

本書を手に取った人は幸せである。なにしろ世界初の報告をいち早く日本語で読むことができるのだから。それも公的機関がまとめたような無味乾燥な調査レポートではなく、抱腹絶倒の冒険譚として読める。これはもう何を措いても読むしかない一冊だ。 イラクに〈アフワール〉と呼ばれる湿地帯がある。ティグリス川とユーフラテス川の合流地点付近にひろがる湿地帯で、かつては日本の四国を

『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか』地球環境を知るにはまず太陽を見よ! 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

『地球の変動はどこまで宇宙で解明できるか』地球環境を知るにはまず太陽を見よ!

わが国屈指の太陽物理学者が、太陽の活動が地球環境にどのような影響を及ぼすかを論じた入門書である。「宇宙気候学」を専門とする著者は、宇宙に目を向けながら過去から未来までの環境について、写真や図表をふんだんに使いながら丁寧に読み解いてゆく。 サブタイトルに「太陽活動から読み解く地球の過去・現在・未来」とあるように、太陽系の中心にある太陽は地球環境のすべてをコント

先月出た本 2023年7月 書影

併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2023年7月

暑い暑い7月が終わりました。海外旅行に行く人も多くなる一方で、国内はとにかく外国人観光客で大盛り上がり。世界が近くなったのを改めて感じています。 そんな時に読みたくなるのが旅行記でしょう。辺境作家として大人気の高野秀行さんの新作『イラク水滸伝』が発売と同時に注目を集めています。イラクにある謎の巨大湿地帯〈アフワール〉に挑む旅模様。この夏、旅行に行く人も行かな

『師弟八景』『師匠はつらいよ』悩み多きイマドキの師匠たち 書影

教養・雑学 / 社会

『師弟八景』『師匠はつらいよ』悩み多きイマドキの師匠たち

「働き方改革」が叫ばれている。厚生労働書のHPによると、「現代日本が抱える少子高齢化や介護育児との両立などの問題にたいして働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し(後略)」とある。だが現実は多様な働き方に対応しているとは言い難い。 確かに伝統的な徒弟制度には問題があっただろう。長時間労働を強いられたうえ、賃金は安く、技術習得は「

北方謙三、全ての記録『完全版 十字路が見えるⅠ-Ⅳ』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

北方謙三、全ての記録『完全版 十字路が見えるⅠ-Ⅳ』

「北方謙三は長篇作家」。たしかにそのイメージは強い。 『三国志』 から始まった中国史シリーズはユーラシア大陸を駆け抜けた 『チンギス紀』 が2023年7月に完結を見る。男が抱く歴史の大ロマンを25年に渡り書き続けてきたことになる。まさに偉業だ。 だが純文学出身で和製ハードボイルドブームの立役者であったころに培った、情景描写と短いセンテンスで構成された短篇小説

『なぜヴィーガンか?』 シンプルな論理とそれが人びとに与えた影響 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

『なぜヴィーガンか?』 シンプルな論理とそれが人びとに与えた影響

読むたびに思う。ピーター・シンガーの論理はシンプルで、それゆえに強力だ。シンガーの論理に異を唱えようとすると、その反論のほうが小手先の屁理屈のように聞こえてしまう場合も少なくない。そして、シンガーの論理は強力であると同時に、そこから帰結する内容が厳しくもある。シンガーの論理を反駁できないならば、またそれを頭で理解したならば、わたしたちは自らの生き方を変えなけ

明日はわが身『職場問題グレーゾーンのトリセツ』 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

明日はわが身『職場問題グレーゾーンのトリセツ』

世の中の変化に法律が追いついてない。多くの職場で「業務指導しただけでパワハラ?」「テレワーク中の怪我は労災?」「会社支給のスマホを壊したら弁償?」「そもそも副業ってどうなの?」など、働く側も雇う側も戸惑ってばかりだ。こういった事案を“職場問題グレーゾーン”と定義し、その疑問に実務経験豊富な社会保険労務士が丁寧に答えていくのが本書だ。 「もうすぐ育休復帰する後

爆笑!、いまをときめく『桂二葉本』 書影

人物 / おすすめ本レビュー

爆笑!、いまをときめく『桂二葉本』

「○○のすべて」みたいなムックを買うことはけっこうあるが、たいていは拾い読み程度で終わってしまう。いろんな事柄が載っているのはいいけれど、中には興味のない記事もあるからいたしかたなし。しかし、この『桂二葉本』は違った。66年の人生にして初めて、ムックを通しで読破した。桂二葉を知る人はもちろん、タイトルを見て「誰やその桂二葉は」と思った人にとっても絶対におもろ

日本の競輪、その特殊性と、だからこその魅力についてを英国人記者が語る──『KEIRIN: 車輪の上のサムライ・ワールド』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

日本の競輪、その特殊性と、だからこその魅力についてを英国人記者が語る──『KEIRIN: 車輪の上のサムライ・ワールド』

この『KEIRIN: 車輪の上のサムライ・ワールド』は、英国人記者が語る日本の競輪論である。日本でどのように競輪が生まれ、育ち、危機を乗り越え、そして日本ならではの独特な魅力はどこにあるのか、それを一冊を通して語り尽くしていく。 それにしても、なぜ英国人記者が日本の競輪を語っているんだと疑問に思うかもしれない。その理由は簡単で、著者のジャスティン・マッカリー

『射精責任』望まない妊娠の全ての原因は男性にある! 書影

社会 / おすすめ本レビュー

『射精責任』望まない妊娠の全ての原因は男性にある!

きっかけは以下のツイートから始まる63個からなる一連のスレッドだった。 私は6児の母であり、モルモン教徒です。宗教的なことも含めて、私は中絶についてよく理解しています。これまで男性たちが女性のリプロダクティブ・ライツについて、女性に代わって好き勝手に議論してきたことを聞いていました。私は、男性が実際のところ中絶をなくすことには全く関心がないことを確信していま

『射精責任』訳者あとがき by 村井理子 書影

社会 / 「解説」から読む本

『射精責任』訳者あとがき by 村井理子

著者ガブリエル・スタンリー・ブレアは、フランス・ノルマンディ地方 の小さな町に住む、アメリカ人作家、ブロガー、デザイナーであり、6人の子どもの母親である。初めての著書『Design Mom: How to Live With Kids』は、二冊目となった本書『射精責任』(原題:Ejaculate Responsibly: A Whole New Way to

『カミカゼの幽霊』死人となって戦後を生きた男の物語 書影

人物 / 日本史

『カミカゼの幽霊』死人となって戦後を生きた男の物語

特攻兵士の遺書ほど読むのが辛いものはない。先日も海上自衛隊佐世保資料館を訪れた際に目にする機会があった。遺書は母親に宛てたもので、育ててくれたことへの感謝と立派に最期を遂げたいという覚悟が綴られていたが、「母様」という呼びかけに、そこに記すことのできない思いのすべてが込められているような気がして、胸が苦しくなった。 特攻は愚劣極まりない人命軽視の戦法である。

これから出る本 2023年8月 書影

おすすめ本レビュー

これから出る本 2023年8月

この1ヶ月、ワグネルの乱によって大きく世の中が揺れました。これにより、民間軍事会社が戦争を行っている、ということが改めて白日の下にさらされ、この反乱によってワグネルという存在を知った人も多かったのではないでしょうか。 世の中を見回してみると“こんなことも民間が!”という話が沢山あります。そしてそんなノンフィクションも多く出ている中、ひっかかったのがこの『民間

『ニッポン美食立国論』食の「ヘンタイ」を発掘せよ!ネット時代の「美食」ツーリズム 書影

社会 / ビジネス

『ニッポン美食立国論』食の「ヘンタイ」を発掘せよ!ネット時代の「美食」ツーリズム

もはや新型コロナは過ぎ去ったかのように、人は旅を楽しんでいる。異国への興味はどの国の人も等しく持っているらしく日本の観光地は外国人で溢れている。 とくに日本の「食」は世界中の憧れだと言われている。インバウンドや富裕層を対象に美食を核に据えた観光立国論を語るのが本書である。 いまや世界のどんな辺鄙な場所のレストランであろうとも、魅力があればその情報はネットで拡

『ぼくの大林宣彦クロニクル』偉大なる義父との日々 書影

アート・スポーツ / 人物

『ぼくの大林宣彦クロニクル』偉大なる義父との日々

「義理の父」というのはなんとも不思議な存在である。妻と出会わなければ知り合うこともなかった男性が、結婚した途端、父親になるのだ。世間の約束事といえばそれまでだけど、だからといって、いきなり仲良くできるとは限らない。どう接していいかわからず、ぎくしゃくしてしまう人も多いのではないだろうか。 本書を読んで、そんな範疇にはおさまらない親子関係もあるのだと知った。著

「一寸先は闇」の未来を予測する文理を超えた歴史学者の力業!『未来とは何か』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

「一寸先は闇」の未来を予測する文理を超えた歴史学者の力業!『未来とは何か』

「一寸先は闇」 と言う言葉があるが、未来は誰にとっても予測不能の世界である。そして「未来とは何か」は、極めて身近でありながらも納得する解答を得ることが非常に難しい問いだ。 その問いに対してオーストラリア在住の優秀な歴史学者が、宇宙物理学・地球科学・生物学・情報科学・心理学・哲学の知見を総動員して、果敢に答えようと試みたのが本書である。 著者のデイビッド・クリ

宇宙生物学からヒト脳オルガノイドが「生きているか」問題まで幅広く扱われた良書──『「生きている」とはどういうことか:生命の境界領域に挑む科学者たち』 書影

サイエンス / おすすめ本レビュー

宇宙生物学からヒト脳オルガノイドが「生きているか」問題まで幅広く扱われた良書──『「生きている」とはどういうことか:生命の境界領域に挑む科学者たち』

「生きているもの」と「生きていないもの」を見分けるのは、直感的には簡単に思える。たとえば、人間や犬が生きていること、石のような無機物が生きていないことにそうそう異論は出ないだろう。しかし厳密に境界線を引こうとすると、ことは途端に難しくなる。たとえば「自己複製するか」「自分で代謝活動を行うか否か」あたりの細胞性生物の特徴を「生命の定義」にしようとしても、(基本

『AIの倫理リスクをどうとらえるか 実装のための考え方』訳者あとがき 書影

ビジネス / おすすめ本レビュー

『AIの倫理リスクをどうとらえるか 実装のための考え方』訳者あとがき

本書は2022年7月に出版された、 Ethical Machines: Your Concise Guide to Totally Unbiased, Transparent, and Respectful AI (倫理的なマシン:完全にバイアスがなく、透明性の高い、人を尊重するAIを実現するための簡潔なガイド)の邦訳である。副題が示す通り、AIすなわち人工

先月出た本 2023年6月 書影

おすすめ本レビュー

先月出た本 2023年6月

ノンフィクション業界の6月の話題といえば、なんと言ってもハヤカワ新書の創刊でしょう。先が見えない時代、SF的な発想が必要になっていると言われている中で、どんな書籍が産まれてくるのか楽しみです。6月創刊は5点、中でもフィクションとノンフィクションが混ざり合ってきたような時代に「現実」とは何かを考えた『現実とは?―脳と意識とテクノロジーの未来』に注目しました。

『空想地図帳 架空のまちが描く世界のリアル』最高密度かつ圧倒的熱量の密室趣味 書影

教養・雑学 / 社会

『空想地図帳 架空のまちが描く世界のリアル』最高密度かつ圧倒的熱量の密室趣味

思い出話だが、評者は小学生のとき、空想の街を考えるのが好きだった。自由帳にRPGの地図ような架空世界を描いたり、家にあるレゴブロックやオモチャを並べて街に見立てたり。シムシティやシティーズスカイラインといった街づくりゲームにハマり、寝食も忘れてプレイした記憶もある。 そうした、実在しない街や地域を大人になっても地図に描き、追究し続ける人々がいる。それも、描き

『明治 大正 昭和 化け込み婦人記者奮闘記』化け込み=潜入取材ルポ 型破りな女性記者たちの物語 書影

社会 / 民俗・風俗

『明治 大正 昭和 化け込み婦人記者奮闘記』化け込み=潜入取材ルポ 型破りな女性記者たちの物語

2022年度の新聞・通信社における女性記者の割合は男性の4分の1弱である(一般社団法人日本新聞協会調べ)。放送業界は多少マシな気もするが、それでもメディアが圧倒的に男性中心であることは変わらない。現代ですらそんな体たらくなのだから、戦前なんて推して知るべし。女性記者(当時は「婦人記者」といった)は各社片手で数えられるほどしかいなかった。 婦人記者という新たな

科学はいまだに法律に導入されない 『人を動かすルールをつくる──行動法学の冒険』 書影

サイエンス / 社会

科学はいまだに法律に導入されない 『人を動かすルールをつくる──行動法学の冒険』

わたしたちは法律や条例などのルールに囲まれて生きている。そして、それらの多くがわたしたちを深刻な危害から守ってくれていることは間違いない。だがその一方で、何らかの理由でルールがうまく機能していない場合も少なくない。ほとんどのドライバーが守っていない、ある道路での速度制限。日々新たに報じられる、企業のコンプライアンス違反。では、そうした一部のルールがあまり守ら