ノンフィクションはこれを読め!

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2011年 HONZ 今年の1冊 書影

HONZ今年の1冊

2011年 HONZ 今年の1冊

本に限らず、年末になると「今年のベスト」を選ぶ企画が登場する。HONZもこれにならって、ベスト本を選定しよう、ということになった。なにしろ(かなりダブりはあるものの)メンバー全員で年3000冊以上は目を通している。相当に良い選本ができるはずだ。 ところが、いずれも本へのコダワリがあまりに強すぎる変わり者であるがゆえ、1冊どころが10冊に収めることさえ難しい、

『バカな研究を嗤うな 寄生虫博士の90%おかしな人生力』 新刊ちょい読み 書影

サイエンス / 新刊超速レビュー

『バカな研究を嗤うな 寄生虫博士の90%おかしな人生力』 新刊ちょい読み

今年最後のちょい読みは、うん、この話題で。いかん、間違えた。ウンコの話題で!本書は寄生虫博士・藤田 紘一郎氏の自叙伝的な一冊。その人生の節目節目に、大きくウンコが関与する。 子供の頃は、芋や野菜の肥料に使うためのウンコ運びをしながら、すくすく育った藤田少年。医学部時代に、トイレでばったり出会った教授に声を掛けられ、熱帯病の調査に帯同したのがウンのつき。整形外

『オオカミの護符』 新潮社「波」1月号掲載 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『オオカミの護符』 新潮社「波」1月号掲載

ていねいにていねいに、心をこめて、大切に作られたノンフィクションだ。なにごとかを強く主張するために作られたわけではない。さりとて、第三者である取材者の目で作ったわけではない。この本は思いを共にする人々と土地の記憶をたぐる旅の記録である。 あえて「本を作る」と書いた。本書は二〇〇八年に公開された記録映画『オオカミの護符』をもとに書かれているからだ。そもそもこの

年末年始だ!「食べる前に読む」三冊 書影

教養・雑学 / マニアックな3冊

年末年始だ!「食べる前に読む」三冊

今年も残り2日。怒涛の忘年会ラッシュも終えたのも束の間、明日以降は、家族やら親族やら友人やらと食べて飲んでを楽しむ人も多いはず。暴飲暴食になりがちな時期だが、胃薬を食べる前に飲むのではなく、食に関する本を食べる前に読んで、食べ過ぎ飲みすぎを自制するのもありかも。本ならばいくら読んでも0カロリーだし。 年越し蕎麦を食べるし、蕎麦の本でも読むかと軽い気持ちで手に

『江戸=東京の下町から』 -あたしの町のブリコラージュ 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『江戸=東京の下町から』 -あたしの町のブリコラージュ

2011年も、あと数日。年末の曲といえば?と訊かれても人それぞれだが、自分はユーミンの“A Happy New Year”が思い浮かぶ、そんな時代の人です。 昨晩お会いしましょう 。「第九」だったら誰しも異論がないだろう。不思議な日本の文化だ。年末恒例の「忠臣蔵」は、赤穂事件の討ち入りが12月14日だったことからテレビに登場するようになったらしい。本書によれ

『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部をめぐる旅』 新刊ちょい読み 書影

教養・雑学 / 新刊超速レビュー

『猟奇博物館へようこそ 西洋近代知の暗部をめぐる旅』 新刊ちょい読み

猟奇的という文脈のもとに、古今東西の異貌のオブジェを博物館さながらに紹介している一冊。キュレーションのお手本のような構成だ。 本書には解剖学ヴィーナス、デカルトの頭蓋骨、腐敗屍体像にカタコンベ、奇形標本などのグロテスクな写真がふんだんに登場する。それでいて上品さが損なわれていないのは、対象人物や、その思想へのリスペクトを欠いていない著者の語り口によるものであ

クラシック音楽がいいのだ!『小澤征爾さんと、音楽について話をする』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

クラシック音楽がいいのだ!『小澤征爾さんと、音楽について話をする』

気のおけない仲間との音楽談義は楽しいものだ。知人の部屋に上がり込んで自慢のコレクションを物色しつつ、あるいは銘々がとっておきの名盤や珍演奏を持ち寄り、聴き比べては悦に入る幸福。 音楽は万人の前に等しく微笑みかける。本書で小澤征爾と村上春樹がくつろいで語らい合う様子からも間違いなく言えるのは、二人もマエストロと小説家である以前に、我らと同じ音楽愛好家だというこ

『ヴィクトリア朝時代のインターネット』 新刊ちょい読み 書影

世界史 / 新刊超速レビュー

『ヴィクトリア朝時代のインターネット』 新刊ちょい読み

たかが数十年と言われるインターネットの歴史であるが、先祖を遡れば19世紀まで行き着くという。いわゆるモールス符号などでおなじみの通信手段「電信(テレグラフ)」のことだ。本書はヴィクトリア朝時代のインターネットとも言われる「電信」の歴史を、ダイナミズムたっぷりに描いた一冊。 歴史は繰り返すとはよく言ったものだが、その模様が生き生きとしたエピソードとともに伝えら

自由への扉『「なぜ?」から始める現代アート』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

自由への扉『「なぜ?」から始める現代アート』

昨今の美術館は、どこも休日は大人気で鑑賞者で一杯だ。都内の根津美術館などは平日でも込み合っているし、伊藤若冲の展示を観るため東京国立博物館まで足を運んだ事もあったが、最終日という事で館内は満杯で鑑賞どころではなかった。そんな経験から、晴耕雨読ではないが人の少ない雨の日を狙って、美術館に行く事に決めた。入場すれば白い壁に囲まれ、天井の高い部屋に入り、日常と切り

『音楽の科学 音楽の何に魅せられるのか?』 新刊ちょい読み 書影

サイエンス / アート・スポーツ

『音楽の科学 音楽の何に魅せられるのか?』 新刊ちょい読み

フィリップ・ボールが、完全に量産体制に入っている。「自然が作り出す美しいパターン」三部作の『 かたち 』『 流れ 』、年明けに発売される『枝分かれ』。その合間をぬって『音楽の科学』ときた。それにしても1年間に4冊の本は、なかなか出せるもんじゃない。 それはさておき、本書『音楽の科学』は、心して掛かった方が良い一冊だ。なにしろ全620頁による圧巻のボリューム。

何もしないのがいいのだ!『四次元温泉日記』 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

何もしないのがいいのだ!『四次元温泉日記』

宮田珠己の今度の旅は温泉めぐりである。とは言っても「宮田珠己」が誰か、知らない人のためにちょっとだけ説明する。 彼は常にふらふらとどこかへ出かけていく。しかしそれは冒険とは程遠く、誰でもいつでも行けるような場所ばかりだ。まあ、 世界中にジェットコースターに乗りに行く のが気軽かどうかは意見が分かれるところだろうが、 四国遍路 は、その気になりさえすればなんと

『ニンテンドー・イン・アメリカ』 新刊ちょい読み 書影

ビジネス / 新刊超速レビュー

『ニンテンドー・イン・アメリカ』 新刊ちょい読み

本書を「ちょい読み」で紹介するには気が引けるのだが、まだ丸ごと一冊読み終わっていないので、年末年始用に速報しておきたい。本書は今年最後のおススメ本になるかもしれない。それも飛び切りのおススメ本なのだ。山内・横井・宮本・荒川など魅力的な登場人物、それぞれのゲームタイトルとゲーム機のビジネス・ディテール、セレンディピティと戦略。素晴らしいビジネスケース・スタディ

学生メンバー応募レビュー『なぜ意志の力はあてにならないのか』 書影

医学・心理学 / おすすめ本レビュー

学生メンバー応募レビュー『なぜ意志の力はあてにならないのか』

昨日に続いて、HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビュー。今日は、塚越啓樹さんです。 著者は米国のジャーナリストであり、エッセイスト。読みやすさ抜群、且つ贅沢な内容、この一冊で脳科学、神経科学、生物学、文学、宗教、政治、社会、心理などひと通りの学問の世界を旅することができる。 私たちは誰しもが皆、(悪いと頭でわかっていても)自身の内部にある欲望に忠

学生メンバー応募レビュー『おれは伊平次』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

学生メンバー応募レビュー『おれは伊平次』

今週と来週の週末、HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビューを掲載します。 まず最初は、井上卓磨さんのレビューです。 本書の著者、神坂次郎氏は、徹底した資料収集と丹念な現地取材によって歴史の中に埋もれた無名の人間に光を当て、その自由闊達な生き様を紹介してくれる、さながら歴史のキュレーターのような存在である。氏の著作によってキュレーションされた人物と

『科学の栞』 新刊ちょい読み 書影

サイエンス / 新刊超速レビュー

『科学の栞』 新刊ちょい読み

本書は『 パラサイト・イブ 』などでお馴染みの小説家、瀬名秀明氏によるサイエンス本の書評集だ。「朝日中学生ウィークリー」紙に連載されていたものが中心とのことで、非常に読みやすい。 一口にサイエンス本といっても様々なわけなのだが、脳科学、生命科学から宇宙、評伝本までが幅広くカバーされている。その中でも本書の特徴は、選書の確かさにあるだろう。ためしに生き物のパー

HONZ忘年会 「今日持っている本」 書影

HONZ活動記

HONZ忘年会 「今日持っている本」

22日はHONZ忘年会。 代表・成毛家に集まり激動の一年を振り返る。 単身赴任中の久保洋介と学生メンバーの一色麻衣が欠席。 思えばちょうど1年前、成毛ブログで「本のキュレーター勉強会」への募集が告知されたのが始まりだ。70名あまりの応募者から選ばれた精鋭8名と成毛眞、東えりかが、毎月水曜日の朝7時に集まり、最近読んだ本、これから読みたい本をお互いに公開してい

『手術器械の歴史』 新刊ちょい読み 書影

医学・心理学 / 新刊超速レビュー

『手術器械の歴史』 新刊ちょい読み

「緒言」冒頭の一行目は「アメリカの読者にはC・J・Sトンプソン教授(本書の著者)を紹介する必要はあるまい」だ。しかし、ほとんどのアメリカ人はこの人を知らないであろう。「Nature」のデータベースを調べると、つい最近亡くなったという記事があるのだが、そもそもこの「Nature」の記事は1943年8月28日付けである。本書とは関係ないが驚くのは「Nature」

メディアは、これから 『英国メディア史』 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

メディアは、これから 『英国メディア史』

大英図書館が「 British Newspaper Archive 」というサービスを開始した。このサービス何がすごいかというと、アーカイブしている情報量とその古さだ。なんと、1800年以降にイギリスで発行された新聞のほとんど全てをカバーしており、そのデータに自宅のPCから容易にアクセスできる(1700年代のデータもあるようだ)。1800年といえば日本は寛政

光は闇より出でて、闇より暗し -『ヤクザと原発 福島第一潜入記』 書影

事件・事故 / おすすめ本レビュー

光は闇より出でて、闇より暗し -『ヤクザと原発 福島第一潜入記』

おどろおどろしいタイトルがついているが、語り口は軽妙。しかし書かれている内容は、やはり恐ろしい。オビにも書かれている通り、命懸けのノンフィクションだ。 本書は、福島第一原子力発電所に作業員として潜入し、その内部の実態を明らかにしたルポルタージュである。メインは福島第一原発への潜入取材なのだが、その入口と出口の取材相手として暴力団が鎮座する。表社会と裏社会は、

『ヤクザと原発 福島第一潜入記』 新刊ちょい読み 書影

事件・事故 / 新刊超速レビュー

『ヤクザと原発 福島第一潜入記』 新刊ちょい読み

きっとすぐに誰かが きちんとしたレビュー を書くと思うが、その前に露払いを勤めさせてもらう。著者の鈴木智彦はヤクザ専門のライターで、 こんな本 や こんな本 、そしてHONZ代表・成毛眞絶賛の こんな本 も書いている。 そんなヤクザの専門家がなぜ福島第一原発へ潜入しなければならなかったのか。やはりそこにもヤクザの存在が絡んでいた。 暴排条例は地方公共団体が行

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教養・雑学 / おすすめ本レビュー

一家に一冊『道具と機械の本-てこからコンピューターまで』

出版社/メーカー: 岩波書店 今年も残り10日ばかりだ。学生時代、文系一直線だったからか、30歳を過ぎても変身願望がまだ潰えないのか、今年も「気が進まないが読めたらいいなと思う理系の臭いがプンプンする本」に性懲りもなく手を出してみた。私のレビューは、HONZ副代表の東曰く「色物」が中心だが、一応、「それっぽい本」も買ってはいるのだ。 忘れもしないのは9月。H

『拘留百二十日』 新刊超速レビュー 書影

新刊超速レビュー

『拘留百二十日』 新刊超速レビュー

編集部から献本いただいた。著者は村木事件で証拠改ざんをした前田特捜検事とともに逮捕・起訴され、懲戒免職となった大阪特捜部長だ。じつは村木事件にはいささか思い入れがある。「村木厚子さんを支援する会」による声明文の末席に加わったこともある。人は見かけによらないといわれるが、村木さんだけは別だ。あらゆる犯罪からもっとも遠くにいる人だ。取調べでその人柄を見抜けなかっ

『素晴らしき哉、フランク・キャプラ』-映画の力 書影

人物 / おすすめ本レビュー

『素晴らしき哉、フランク・キャプラ』-映画の力

フランク・キャプラが大陸横断鉄道で両親と共にロサンゼルス駅に到着したのは6歳の時だった。両親は、足下の地にキスをした。フランク少年はひどい旅に疲れ果て、迎えに来た兄に「アメリカなんか大嫌いだ!」と毒づいた。時は1903年、ロスアンゼルスは人口10万人、T型フォード車が登場する5年前であり、ライト兄弟が飛行実験に成功した年であり、エジソンが活動写真を発明した1

『オートファジーの謎』 新刊ちょい読み 書影

医学・心理学 / 新刊超速レビュー

『オートファジーの謎』 新刊ちょい読み

じつは「ちょい読み」どころではなく、最後まで興味深く読んだ。正規の書評にしない理由は本書がかなり専門的だからだ。難読本ではないのだが、大量に最新情報が詰め込まれていて、対象となる読者は一般人というよりは、分子生物学を目指す学生のための入門書という感じなのだ。逆にいうと非常に丁寧に、一切の手抜きなくオートファジー研究の最前線について記述している。 オートファジ

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NEWS

2011年学生メンバー発表!

HONZ学生メンバー募集に多数の応募をいただきました。あらためてお礼申し上げます。みなさん選本もレビューも素晴らしく、選考に苦しみました。当初2-3名の予定でしたが、甲乙つけがたく下記4名の方を学生メンバーとして参加していただくことになりました。惜しくも選考から外れたかたにも、来年から開始予定のHONZイベントに優先して参加いただけるようにしたいと考えており

『和本のススメ』 プレジデント12月19日号「本の時間」欄掲載 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『和本のススメ』 プレジデント12月19日号「本の時間」欄掲載

21世紀に入ってから静かな江戸ブームが続いている。2002年は江戸開府400年で盛り上がったし、江戸の面影をのこす歌舞伎座は2009年1月から2010年4月まで「さよなら公演」を行い、連日の大入り満員だった。2010年には江戸東京博物館が15周年を迎え、来場者数は1000万人をはるかに超えた。 しかし、その江戸ブームのなかにあっても、日本人全体として「和本」

『オオカミの護符』 ~おしゃれなベッドタウンに潜む民俗学~ 書影

民俗・風俗 / おすすめ本レビュー

『オオカミの護符』 ~おしゃれなベッドタウンに潜む民俗学~

あなたの家には仏壇があるだろうか?神棚は?お正月のお飾りや鏡餅はどうしてる?初詣はきまったところに行く?お札やお守りは毎年買うだろうか。 私は普通のサラリーマンの家に育ったが、あたりまえのように仏壇のとなりに神棚があった。そこには毎年どこからか頂いてくるお札が置かれ、仏壇のお供物と神棚への水は毎日祖母が上げ下げしていた。正月には注連縄を新しくし、御幣を飾った

『坂の上の坂』 新刊ちょい読み 書影

教養・雑学 / 新刊超速レビュー

『坂の上の坂』 新刊ちょい読み

著者から直接いただいた。タイトルは言いえて妙。そこに居合わせた一同は感心しきりだった。明治初期の平均寿命は40歳代前半、それに比べて現在は80歳を超える。秋山兄弟の見た明治の雲の下には、いまはさらに坂が続くという現実だ。「55歳までにやっておきたい55のこと」というのが副題。さて55の見出しからいくつかを紹介してみよう。 「無謀なことをやろうとすればするほど

『地図から消えた島々』 書影

日本史 / おすすめ本レビュー

『地図から消えた島々』

問題です!(SE:ジャジャン!) かつて「ロス・ジャルディン諸島」「イキマ島」「グランパス島」「中ノ鳥島」などが位置した海域はどこでしょう? さてさて。クイズ番組にこんな問題が出る日は来るだろうか。たぶん来ない。難問過ぎる! 解答解説もややこしくなりそうだし……。えっ? そんな島あったっけ、聞いたことない。地図にもない……。クイズマニアの方々からお問い合わせ

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サイエンス / 新刊超速レビュー

『流れ』 新刊ちょい読み

著者はフリーランスのサイエンスライター。原書はNature's Patterns3部作の第2作だ。3部作とは『Shapes』『Flow』『Branches』。日本語版はそれぞれ『かたち』『流れ』『枝分かれ』だ。ここ1-2年、『土の文化史』や『砂』、『柑橘類の文化誌』、『フクロウ』など身近で基礎的な物質や物性、生物についての出版が続いている。すべて翻訳もので、

退屈の先に見えるヒトの本性『暇と退屈の倫理学』 書影

教養・雑学 / おすすめ本レビュー

退屈の先に見えるヒトの本性『暇と退屈の倫理学』

パスカル、ニーチェ、ガルフレイズ、モリス…名前を耳にしたことがある思想家・活動家を暇と退屈の間を走り抜ける中で出会いを演出してくれる本書。哲学書だからといって身構え、準備し過ぎることはない。その道のりは含蓄溢れ、順序よく進んでいけばすんなりゴールにたどり着ける。今年読んだ本の中で、一番印象に残った一冊である。 「人が旅するのは到着するためではなく、旅行するた

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新刊超速レビュー

『本へのとびら』 新刊ちょい読み

前半はスタジオジブリが非売品で作成していた小冊子『岩波少年文庫の50冊』からの転載だ。そもそも本書はその小冊子があってからこそ企画されたらしい。後半は阿川佐和子との対談などをもとにして再構成している。前半の50冊のなかから1冊分をまるまる引用してみよう。たとえば『三銃士』を紹介した文章は「痛快冒険活劇という名にこれほどぴったりの本はないでしょう。ワクワクする

『牡蠣と紐育』ー美食と欲望と汚染の「ビッグ・オイスター」史 書影

世界史 / おすすめ本レビュー

『牡蠣と紐育』ー美食と欲望と汚染の「ビッグ・オイスター」史

先日「新刊ちょい読み」で 成毛眞が紹介 し、在オーストラリアの久保洋介も 「今月読む本」 で紹介していた一冊。決してメジャーとは言えないテーマの本だがどこか本好きを惹きつけるものがある。 牡蠣がニューヨークの湾内に生息するようになったのは 紀元前1万年であり、1609年にイギリスの探検家・ヘンリー・ハドソンがニューヨークにたどり着くずっとずっとず〜っと以前の

『決着!恐竜絶滅論争』 書影

サイエンス / 新刊超速レビュー

『決着!恐竜絶滅論争』

6550万年前、恐竜は小惑星の衝突によって絶滅してしまった。すでに一般常識化していると思っていたら、じつは科学界では論争が続いているという。世界中の研究者たち41人はさすがにそろそろ決着をつけようとサイエンス誌に連名で論文を提出した。ところが、その論文に対してさらに衝突説反対派が反論を試みてきたというのだ。 本書はその異説のどこが間違いかをとことん解説するだ

「これで俺もロンドン五輪に出られるんじゃね?」と勘違いしてしまう3冊 書影

アート・スポーツ / マニアックな3冊

「これで俺もロンドン五輪に出られるんじゃね?」と勘違いしてしまう3冊

ロンドン五輪の開幕まで300日を切った。ヨーロッパでの夏季オリンピック開催は1992年のバルセロナ以来、実に20年ぶり。経済でのどたばた劇が続くヨーロッパへのカンフル剤となるだろうか。ちなみに、ロンドンでの開催は1908年、1948年に続く3回目であり、これは同一都市開催の最多記録である。 室伏宏治復活の金メダルと織田裕二の絶叫ぶりに沸いた世界陸上、「なでし

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民俗・風俗 / 新刊超速レビュー

『牡蠣と紐育』 新刊ちょい読み

A5版303ページの分厚い本だ。原書のタイトルはBig Oyster、副題はHistory of the HalfShellである。ニューヨークはBig Appleと呼ばれるまえはBig Oysterと呼ばれていた。Halfshellとはボティッチェリの「ヴィーナスの誕生」のイメージであろうか。帯には荒俣宏氏推薦であるから、間違いなく牡蠣とニュヨークの博物学

勝新太郎の現実歪曲フィールド -『偶然完全 勝新太郎伝』 書影

アート・スポーツ / おすすめ本レビュー

勝新太郎の現実歪曲フィールド -『偶然完全 勝新太郎伝』

久々にジャケ買いした一冊。勝新太郎と言われても、子供のころに記者会見で見たキテレツなイメージしか残っていなかったのだが、表紙の写真に「おいっ」と呼び止められた気がして思わず購入した。読み進めて素顔を知るにつれ、そのイメージは驚きへと変わっていく。 著者は、勝新太郎の最後の「弟子」と称される人物。かつて、勝新太郎が週刊誌で人生相談をしていた時の編集者だ。勝新太

12月の今月読む本 その2 書影

今月読む本

12月の今月読む本 その2

それにしても、だ。 私は本を読むのを仕事にしているからいい。ひと月にだいたい30冊ぐらい読んでいる。それは小説もあるしイラストエッセイも含まれる。15分で読めちゃうものもあれば3日かかってしまうこともある。 しかしメンバーはほとんどが勤め人。出張で移動が多いという内藤の読書量はどうにか納得しても、他はどうしているんだろう?毎月、何冊読んでいるのか次回の例会で

『朽ちていった命』 週刊新潮11月24日号「私の名作ブックレビュー」欄 書影

おすすめ本レビュー

『朽ちていった命』 週刊新潮11月24日号「私の名作ブックレビュー」欄

1990年に東海村で発生した臨界事故の被曝治療を記録した一冊だ。この事故はずさんな作業管理のため、瞬間的に極小の原子炉が出現し、3人の作業者が至近距離で被ばくしたというものだ。亡くなった方の被曝線量は20シーベルトと推定され、これは一般人が1年間に浴びる限度の2万倍にあたるという。 3人が被曝したのは中性子線だ。体内被曝をするアルファ線とちがい、中性子線は外

『宙へ挑む』-リーチ・フォー・ザ・スカイズ 書影

教養・雑学 / ビジネス

『宙へ挑む』-リーチ・フォー・ザ・スカイズ

だだっぴろい風景を見るとなんだかスーッとするのは、きっと私だけじゃないだろう。空の写真を撮るのが趣味、という人もけっこういる。山登りが趣味とか、夜景が好きとか海が好きとか、そういうものにも同じテイストが含まれているに違いない。空を飛びたいというのは究極だ。この大空に、翼を広げ、飛んでいきたいよ。今では当たりまえに乗っている飛行機だけど、そこに至るまでに多くの